口からミャーミャーという音がなる。自分が鳴いているのだと気がついたのはもう少しあとだった。
俺は、猫に転生した。

※お前チラ裏に投稿してたんかワレェって思ったので、通常投稿にしました。

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猫転生

 

 吾輩は猫である。名前はシュヴィラ、家の者からはシュビーと呼ばれている。

 

「はぁ……シュビー、あなたはなんて美しいの……」

「んにゃお」

 

 この金髪美女は吾輩の飼い主であるジョリーナ伯爵だ。ジョリーナ伯爵は胸が小さいところが魅力的である。本人はそれがコンプレックスのようだが。

 

 ジョリーナ伯爵は仕事の合間を縫って吾輩に会いに来てくれる。彼女が吾輩で癒されている間、吾輩も癒されるのでこの関係はwin-winというやつなのだろう。

 しかし彼女は忙しい人だ。王から頂いた土地をより豊かにする為に開拓や難民の受け入れ作業など様々なことをしなくてはいけないのだ。おまけに面会時間もとらなくてはいけないとあっては、彼女と吾輩が一日で会えるのはそれほど多くない。

 そして今日もまた、別れの時間が来てしまったようだ。

 

「ジョリーナ様、お時間でございます」

「あぁ、シュビーとまた離れ離れになってしまう……」

「んにゃあ」

 

 吾輩が声をかけると名残惜しそうにこちらを振り向きながら部屋を出ていった。

 ジョリーナちゃん……頑張れ。

 

 

 吾輩の自己紹介をしよう。

 吾輩は雄猫である。去勢はされていない。

 そもそもこの世界に去勢というものが存在しているかもわからぬ。

 吾輩は元人間である。所謂前世というものの記憶を持って生まれたのだ。

 前世でも男だった吾輩は、初めての交尾で興奮しすぎて出すと同時に昇天した。吾輩が言ったいくはそっちの“いく”ではなかったのだが……。

 前世ではフリーターをしていた。魔法使い一歩手前でそれはダメだよなと思いながら日々を生きていた。

 昇天し、裁判を受け、地獄をどれぐらいか分からないが体験した後の天国は、素晴らしかった。

 天女はそこらにいるし、美人も多いし、暴力もない。あるのは自然と湧き出る水に、願えば出てくる美味しい食べ物たち。店も多かった。金は勿論いらなかった。

 そんな天国を体験したあと、転生の説明会を受け、転生した。

 まあ、人や犬とかの種類は選べることが可能だったのでランダムにしたら、猫になった。

 多分だが、当たりだろう。中には蛞蝓とか百足とかの選択肢があった中での猫だ。百味ビーンズでゲロ味を初端から当てる俺……吾輩としては中々のくじ運だった。

 世界は平等に配られると言うことでドキドキしていたが、何と剣と魔法の世界だった。しかし猫である。

 生まれて少しして母から離され、引き取られた先はジョリーナ伯爵の家だった。その時伯爵だったのは彼女の父親だったが。

 吾輩はジョリーナちゃんとその母上に可愛がられスクスクと育った。今では立派な一家の大黒柱である。勿論精神的支柱という意味だ。

 それに前世には出来なかった仕事も、今ではバリバリ熟すサラリーマンだ。

 吾輩の仕事、それは寝て癒し、撫でられ癒し、舐めて癒すという、精神干渉系の魔法が禁忌とされている中で最強の無魔力魔法、心を癒すというものである!

 

「シュビー様、ご飯ですよー」

「にゃぁん」

 

 たまにはお米が食べたいですぞ。

 

 



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