三点リーダとか作中に書いてあったら変換ミスです
あと今のこの状況とサブタイトルは無関係です・・・・・本当に。
俺たちは小夜鳴先生と一緒に不気味な館内トコトコと歩いている。不気味といったら悪いが、本当にホラゲーに出てきそうな雰囲気なのだ。というかこの館を題材にしたホラゲーあるんじゃないか? なかったら俺が作る。
「いや〜驚きましたよ! まさか武偵校の生徒さんが2人も来るなんて」
「私もビックリしましたよ。同じ学校の先生と生徒だったのなんて」
変装している理子は小夜鳴先生の横でしっかりとした受け答えをしているが若干顔が引きつっている。まあそれも無理ないだろう、武偵校の先生が依頼主だったとは俺も考えもしなかった。
いかにも洋館らしい客間に着くと俺たち、いや私と理子とアリアは3人がけの真紅のソファに仲良く座るよう指示された。キンジは私達女──俺は女装だが──の横に座らなくていいという安堵の表情で1人がけの椅子に腰掛ける。小夜鳴先生は私に目を向けながら机をはさんで私たちと対面するような形で高価そうな洋風の椅子に腰かけた。
「同じ学校のお二人には不要かと思いますが、そちらの女性は知らないと思いますので。私は
ニコッとご自慢のイケメンスマイルが私に向けられた。女性に向けたらさぞ喜ばれるだろうが私は男なんでね。
私は地獄の6日間で手に入れた女声と笑顔でイケメンスマイルに応戦する。
「私は京条
小夜鳴先生は『京条』という苗字を聴くと、目をパチクリとさせた。理子もキンジもアリアも小夜鳴先生と同じ表情で私を見ている。
大方、『同じ名字でバレないのか? 』とでも思っているのだろう。俺だってそう思うよ。だって
小夜鳴先生は首を少し傾げ考えるような仕草を見せてから私に尋ねてきた。
「京条さんで武偵・・・・・もしかして兄、もしくは弟さんはいますか? 」
「私は一人っ子ですよ。もしかして武偵校にも京条という人がいるんですか? 」
「ええ、彼は非常に優秀な生徒ですよ。性格を除いて、ですけど」
「そうですか・・・・・その人によろしくお伝えください」
「はい、彼とのいい話題になりそうですね」
ちくしょう! 武偵校の教師どもで私をマトモと言っているやつはいないのか⁉︎
任務終わったらどんな顔でその話題について触れればいいんだよ!
「では、ハウスキーパーの仕事内容は各個人の部屋に資料がありますのでそれを読んでくださいね。それと、この館の伝統といいますかルールで、ハウスキーパーさんは男女で制服を着るのことになっています。種類とサイズは色々とありますので自由に選んで着てください」
小夜鳴はメガネをクイっと上にあげ、位置を直した。
「あと、申し訳ないことに私は研究で多忙でして地下の研究室にずっとこもっているんですよ。なので3人と遊べる時間はあまり取れません。ほんとすみませんねぇ……」
いや、研究でずっと引きこもっていてください。演技するの疲れるんです。
「代わりと言ってはなんですが、ビリヤード台とその他遊戯道具があります。自由に使って構いませんので楽しんでください。それと、朝食時と夕食時には呼んでくださいね。それでは、よろしくお願いします」
小夜鳴先生はそう言うと、椅子から立ち上がり、客間の大きい扉を開けてトコトコと地下の研究室へと行ってしまった。
「・・・・・じゃあ早速やるか」
「部屋は3階よね」
「メイド・・・・・私は死んだ」
俺、いや私達は理子と別れ、小夜鳴の指示通り制服を着るために各自の部屋へ赴く。ちなみにアリアの隣、キンジと対面の部屋だ。部屋に入り、クローゼットをバッと勢いよく開ける。そこにはハンガーに掛けられているいくつものメイド服。胸元が大きくはだけ、スカートも短すぎる過激なメイド服から、肩からストラップを回しウエストで締めている本格的なメイド服まで何でもござれだ。ゴスロリも入ってるだろ絶対。
「うーん、これでいいか・・・・・」
俺が選んだのは膝丈までの黒色ワンピースで上から純白のエプロンを着るタイプ。フリルも丸みを帯びていてとても可愛らしい。肩のフリルも蝶々のような形で主張しすぎず、かといって目立たないわけでもない絶妙なバランスでこれもなかなか・・・・・おっと、私は男だ。胸パッドの位置を確認しカチューシャを頭に被りながら鏡の前に立つ。太陽の光が格子窓から差し込み、私の腰から下を縁取るように照らし出した。その姿は本物のメイドのようで──
「おーい朝──
「私が女だったらお前をぶん殴ってるところだ」
ガチャりと部屋の扉が開き、意外と似合っている執事姿のキンジが入ってきた。まったく、なんでノックもせずに女の部屋に入ってくるのかと小一時間問いただしたいがなにせ仕事がある。寮に帰ってからにしよう。
「すまんな。あと・・・・・女声とその姿、すごく似合ってると思うぞ」
「あとで殺す」
キンジの尻に蹴りをいれ、それに対しての文句を聞き流しながらアリアの部屋へと向かう。キンジと一緒に俺の部屋に来ないということは自分に合うメイド服をまだ探しているのか。ま、アイツも女子だからな。年頃の女子なら可愛いの着たいもんな。私達はアリアの部屋の前まで行き、コンコンと2回ノックする。
─────返事はなし。
「開けていいんじゃないか? 」
「私、そういう男性は嫌いです」
「うるさい! さっさと行くぞ」
キンジは私を横に退かすと、恐怖を微塵も感じさせない顔で
「きゃ! ノックくらいしなさいよこのドレイ! 」
「紗英がしたって! っていない!? 」
「死ね変態!! 」
ドゴン!! と床に硬いモノが叩きつけられる音と共にキンジの悲痛な叫びが洋館内に大きく木霊した。
「はァ・・・・・なんで着替え途中に来るの? 」
「アリアさーん? 着替えはやくしてくださーい」
「あら、待っててね
私はキンジのようになりたくはないので部屋の外からアリアに聞こえる声量で呼びかけた。アリアは私をしっかり『紗英』と呼んで場に適応してるあたり、アリアもSランクなんだなぁって痛感させられるよ。
その後、もはや国宝級と言っても過言ではない姿となって出てきたアリアと凡人の私で洋館内の掃除、頭にデカいタンコブが出来ているキンジは料理と洋館の外──敷地内の掃除を担当することになった。私は小夜鳴先生の持ってきて欲しい物を持っていく仕事もある。休み時間は各自とっていいと指示書に書かれていたので3人で時間を合わせ館内の情報交換を行う。夜にも理子を交えて情報交換会なるものをやるんだが、見落としが無いようにとアリアが念を押したからだ。
私は広い洋館内の掃除に苦労しながらも、ホコリ一つ落ちていないように隅々までしっかりとモップで磨く。ただ磨いているのも飽きるので鼻歌交じりで。だが・・・・・この洋館、マジで広い。ここどこだっけ? なんて1時間に1回起きる。方向音痴なのは今でも前世でも変わらないし、特に治す必要性もないから放置だ。
それから少し経ち、掃除を進めていくうちに謎の開放感が出てきた。田舎の朝早く道路に出ると車が通っていない時のソレと同じだ。自分以外誰もいないし、変なこと言っても誰も聞いてないしな。とりあえず変な事でも叫びたくなってきた。私は肺いっぱいに息を吸い込み、
「あー 私は女だぁ!! 史上最強の女ァ! 私に全世界の男どもは屈服し、皆頭を垂れるのだ! さァ私を崇めよ! てか胸パッドじゃななくて本物の胸が────」
「何言ってるのアンタ・・・・・」
「・・・・・え」
私の後ろには別の場所を掃除しているはずのアリアがいて─────
「お嫁に行けない・・・・・あ、お婿だった・・・・・」
「アンタも大変ね」
「アリアぁ! そんな可哀想な人を見るような目で見ないでくれ! 魔が差しただけなんだ! 」
私はキンジとアリアがビリヤードしているのを尻目に椅子に腰掛け、なぜあの時あんな事を言い出したのかと両手で頭を抱えている。過去に戻って
「まあまあ紗英、誰しもそういう事はあるさ」
「キンジさんはこういうことあったんですか? 」
「いや・・・・・流石に女装はないけど・・・・・」
「ヘッ」
なにかと吹っ切れた私はアリアとキンジのビリヤード対決に参戦し、見事最下位という今の自分にはふさわしい結果を残した。
それから数日たった夜、あと数分経てば理子を含めた情報交換会。そして私はそれをベッドの上で待つだけだ。今日まではなんとか女装していることを小夜鳴先生にバレずにやっていけている。その素晴らしい私の演技を思い返していると・・・・・ひとつ気になっていたことを思い出した。小夜鳴先生に資料を持っていった時に、
『京条さんは愛についてどう思いますか? 』
なんて聞かれて焦った。私は愛する人がいなかったからな。その時のことを思い出すと・・・・・確か小夜鳴先生は私へと振り向き、メガネの奥にある切れ長の目は少し寂しそうにしながら言葉を紡いだ。
『──私の考える愛とはね、相手を自分の力の及ぶ限り愛すること、そして愛された人は愛してくれた人を力の及ぶ限り愛さなければならない。相思相愛ですね。そしてそれ以外は何もいらないと思うんです。日を重ねる毎に愛は深くなっていきます。私もそれと同じでした』
『小夜鳴さんは相手の方を大切に思っているんですね』
『はい。私は彼女の為なら何でもできた。彼女もまた、私の為なら何でもできました。私達が恐れていることは相手にそっぽを向かれること、これは死と同等のことなんです』
次第に小夜鳴先生の拳を握りしめ始めた。
『だから私は彼女が他の男の獣欲にまみれた目で見られることが嫌でした。彼女自身もまた、私が他の女の盛りの目で見られることが嫌だった。その時私は思いました。ならば2人とも、家から一歩も出ず片時も離れぬまま一生を終えればいいのだと! だから私は彼女と手錠で身体的に繋いだ! 彼女もまたそれを望んでいた! なのに! 』
ドンッとパソコンとコーヒー、紙の資料が置いてある机に握りしめた拳を叩きつけた。コーヒーカップの縁からコーヒーが1滴、静かに垂れていくのが見える。
『・・・・・少し長話でしたね。京条さんはどうですか? 』
小夜鳴先生は我に返ったように元のイケメンスマイルに戻し私に質問をした。
『私は・・・・・彼氏というものができたことありませんし、愛する人もいません。まだ私には分からないです』
『そうですか・・・・・仕事の邪魔をしてすみませんねぇ。』
『いえ、大丈夫ですよ。それと今の話は秘密にしておいたほうがいいですか? 』
『ええ、お願いします───』
あの時の私はよく答えられたなと思ったよ。偉いな私。でも小夜鳴先生って・・・・・。武偵校の女子なら喜ぶだろうが、彼女って言ってるあたり昔は小夜鳴先生にもいたんだなって思う。手錠の続きが聞きたいけどそれはあの人のプライベートだ。それに・・・・・切ない話なんだよなぁ、きっと。切ない? 使い方あってるのか?
ピリリリリリッ
突如、過去の思い出から現実へと戻す携帯の音がなった。相手は───理子だ。応答ボタンを押すと、夜中なのに元気な声が聞こえてくる。
確かこの電話は会議通話だからキンジ達もいるはずだ。
『理子でーす! では第一回、情報交換会を始めマース! 』
「『なんでそんなハイテンションなんだよ』」
キンジとセリフが被った。でもこいつの夜のテンションは毎回思うがホントにおかしいのだ。
『もうそんなことは置いといて! まず館内の監視カメラの位置と、地下金庫の警備システム! 』
「地下金庫は掃除した時に調べたけど、かなり強化されいたぞ。物理的な鍵から磁気カードキー、指紋キー、声紋キー、網膜キーに加えて赤外線と感圧床だ」
『なんだよそれ・・・・・』
キンジが絶句するのも無理はない。米軍の機密書類だってこんな厳重な警備システムはない。金庫は開けられないし、開けたとしても赤外線と感圧床の餌食となる。理子の大切なものに対する警戒っぷりは大人げないほどだ。
『やりますねぇ! でも! 理子のお宝は返してもらいます! 世紀の大泥棒に不可能はないのです! 』
『どうやるのよ』
『明日までに考えとく! それはそうと、小夜鳴先生と仲良しなのはキンジ? アリア? 朝陽ちゃん? 』
捻り潰すぞこいつッ!! 何が朝陽ちゃんだ!
『アリアじゃないか? 新種のバラにアリアとか命名されて喜んでたしな』
『喜んでなんかないわよ! 』
キンジの売り言葉にアリアが反応して怒り・・・・・あーあ、また始まったよ夫婦喧嘩が。そもそもコイツらは一週間に一回は必ずアリアが発砲からのキンジが逃げ回るということをしなきゃ生きていけんのか?
「そのへんにしとけ、地下金庫から何分くらい遠ざけられる? 」
『研究熱心の彼なら・・・・・10分ってところね』
『10分かぁー・・・・・15分なんとか頑張れない? 例えば、胸! は無いからお尻とか触らして。はうー! 』
『このバカ! アタシができるわけないでしょ! 』
『じゃ、それも考えておきまーす! ではまた明日、うっうー! 』
プーップーップーッ。
理子とキンジ達との通話が切られ、私は明日も紗英になるために朝早く起きなきゃならないので早めに寝ることにした。枕を定位置に置き、夢の世界へレッツゴーだ!
私達が紅鳴館で働く最終日、の前日。私はメイド服のまま、午前2時という真夜中に紅鳴館の外へ抜け出している。理由は最初の情報交換会の次の日に理子に言われた一言から始まった。
『理子が考え抜いた結果、朝陽ちゃん──紗英ちゃんには一回理子のところに来て物資を受け取りに来てもらいます! 』
だそうだ。もちろん、『理子が来いよ』と反論したが裁判の関係で計画実行日以外は抜け出せないそうだ。面会に来るのはよしということで何故か俺が行っている。メイド服姿で来ないと理子を見張っている警備の人に通してもらえないらしい。なんという羞恥プレイだ! 鬼畜の所業だ。
ブツブツと夜道1人で文句を言いながらも理子のもとへと歩く。だが・・・・・目的地まであと半分というところで急に視界が揺らぐような眠気が襲ってきた。
普段寝てる時間でもあるが、最近はそれとは別の、原因不明のどこかに引きずりこまれるような眠気もある。今の眠気は引きずりこまれる眠気。衛生科に見てもらっても分かんないらしいし、耐えるしかないか。
フラフラと倒れそうになるも気合でどうにか理子の居場所──第三女子寮まで着いた。エレベーターの内部に設置されている手すりに寄りかかり落ちかけかけている意識を頬をつねることでなんとか引き戻し、理子の部屋の前までつく。チャイムを鳴らすと10秒後、かなりハイテンションな理子が私に突進してきた。何か言っているようだが眠すぎてうまく聞き取れない。
私は適当に相槌を打ち、ピンク色の派手な小袋を受け取ると、理子はダッシュで部屋に戻っていった。監視役の人も大変だな。 いや・・・・・・そんなことは帰って寝てから考えよう。
私はピンク色の派手な小袋をメイド服の内側にしまい、またフラフラと紅鳴館へと踵を返す。
歩いて歩いて、何分たっただろうか。視界は揺らいでいるが、公園や住居の配置などで紅鳴館に近いと感じ安堵のため息をついた───その時だった。後ろから鈍いエンジン音が真夜中の静けさを切り裂くようにしてデカい車がものすごいスピードをだしてコチラに向かってきていた。轢かれないように路肩へよると、その車は私の横にピタリとつけ、
「ハハッ! やはりいい女じゃねえか! しかもメイド服! 」
「バカ! 大きい声出すな! 」
「へいへい」
中から2人の覆面を被った───下卑た目をしている男がでてきた。腕を掴まれ無理やり車の中に押し込まれそうになるが、これでも私はSランク武偵だ。私の腕を掴んでいる男の手を握り、ひねるようにして手を外させようとしたが・・・・・力が出ない。意識も落ちかけ視界もさらぶ不明瞭になってきている。
そして、突然バチバチッという音が背後で聞こえて─────身体全体を痺れさせる強烈な電撃を首に流され、意識は完全に落ちていった。
小夜鳴先生と『彼女』のストーリーと18話同時執筆中。小夜鳴先生は番外編? で出します。本編のほうが大事だから遅くなるかもしれません。
メイド服ってなんだろう。