アリアに命令され、教務科に忍び込むことになった。
逆らうと俺の
「アリア、お前は一番最後だ」
「なんでよ」
「幼女のパンツを見て犯罪者になりたく───」
直後、コンクリートブロックをも砕くアリアの右ストレートが俺の左頬に炸裂したのは言うまでもないことだ。
顔半分の感覚がなくなっている俺、そしてキンジ、最後尾にアリアという並びで教務科の部屋に侵入する。目的地の少し手前の通気口まで行き 、俺はアリアを窮屈ながらも前に行かせたところで俺とキンジは目を瞑る。アリアの右ストレートはもうくらいたくないです。少し進み、耳をすませると綴先生の声が聞こえてきた。
「星伽、この点数はなんだぁ? まあ点数なんてどーでもいいけどさ」
「最近ちょっとありまして・・・・・」
「星伽、お前少し前からデュランダルに狙われてるだろう? 」
デュランダル、その名を聞いた瞬間アリアから少し殺気を感じた。
「デュランダルなんて都市伝説ですし……私は弱いです。狙われるわけがないですよ」
「あのなあ、お前はうちの秘蔵っ子だぞ? 外部から人がわんさか来るアドシアード期間だけでもいいからさ、どうだ? 上のダクトで隠れている3人でもいいぞ」
あ、バレてたか……俺はいつでも逃げれるよう気配消してたのに、流石としか言えないな。
アリアはダクトの入口を乱暴に開けると、俺とキンジを引っ張って降りた。いや、俺とキンジに関しては落ちたという表現が正しいな! 床に頭をぶつける前に受け身をとれたが、起き上がった時に綴先生と目が合う。
綴先生の何もかもを見通すような、深く広い目に恐怖覚えたがここは意地でも怖がってはいけない。怖がってしまったらその時点でオワリ。更なる恐怖が綴先生から発せられ、言いなりになってしまう犯罪者を何人も見ているから。
「教務科に忍び込むとは勇気があるなあ」
「「すみませんでした! 」」
「えっと、遠山キンジ。性格は非社交的で他人、特に女子と距離を置く傾向。だが、強襲科の生徒には一目置いている者も多く、潜在的なカリスマ性を備えている。探偵科のEランクで今年の達成依頼は青海の猫探し、それと高級旅客機のハイジャック制圧・・・・・あんた、なんでやること大小の差が大きいのさ」
「俺に聞かないで下さい・・・・・」
「武装は違法改造のベレッタ、それとバタフライナイフだよな? 」
「うっ・・・・・でもベレッタは壊れました。もう普通のやつです」
「それも装備科に改造の予約いれてるよな? 」
「ハイ・・・・・」
綴は満足そうな笑顔を浮かべ、アリアを見る。
「神崎.H.アリア、二つ名は
「あたしはマヌケじゃない! 貴族は自分の手柄を自慢しないし、他人にその功績を盗られても何も言わないの! 」
「私は平民でよかった。で、あんた泳げ──」
「そんなことない!」
アリアは必死になって反論しているが綴はそれを無視し、今度は俺を見る。てか泳げなかったんだな。
「京条朝陽、あだ名はゴミ条、クズ条、等々ヒドイものばかり。性根から腐っており欲望に忠実である。人に優しく親切なところもあるがほとんどその後のクズ行為によって帳消しになっている。強襲科、諜報科、超能力捜査研究科でSランク、車輌科でC、衛生科でDランク。武装はグロック18Cと厨二病刀、仕込みダガー 。高い難易度の達成依頼も多く、二つ名を検討中……」
「先生、俺の心傷つけないでください! あと厨二病刀じゃなくて、氷刃雪月花です!! 二つ名がわかったらすぐ知らせてください! なるべくカッコイイやつを頼みます! 」
「そんなことはどうでもいい。星伽、どうだ? この3人ならボディーガードが務まりそうだが」
白雪は両手で頭をかかえ、血走った目で悩んでいる。ボディーガードであればキンジがいつもそばにいる。だが、キンジといつも一緒にいる
それから少し時間が経ち、綴先生に急かされると白雪は笑顔でボディーガードを頼みますと言ってきた。アリアに対してだけは、般若のお面でもかぶったのか? と言えるほど歪んだ笑顔を見せていたが。アリアは一瞬ビビったものの、すぐにいつもの強気な態度をとった。
それからは早速、俺たちは各自の働きや緊急時の連絡等決めるため寮に戻る────
「あ、京条ぉ〜ちょっと残れ」
「……悪いことはしてませんよ」
───前に綴に首根っこを掴まれた。なんで俺だけ残されるんだよ! 嫌な予感しかしないんだよ! 幸運を愛し、不幸にとっても愛された男だからな!
キンジ達を先に帰し、俺は綴先生のそばまで行く。
「ちょっと頼みたいことがあってな」
「どうせロクなことじゃないんでしょ先生」
「アドシアード期間中、というか一年間峰と一緒に行動しろ。一般人から見てもラブラブカップルと思われるくらい大胆に」
「なんですかそれ!? 」
この人は俺に恨みでもあんのか!? 理子? どこにいるかも分からないのに!?
「実は峰のファンクラブに外部の人間が沢山いてな。アランが余計な嘘をついてくれたおかげでお前に暗殺依頼がかけられているほどだ。大物政治家も絡んでいるぞ」
「なんで……それが嘘の情報だって教務科からも言ってくださいよ! 簡単なことでしょう! 」
俺が泣きそうな目で訴えると、綴先生は諦めたようにため息をつき、可哀想な者を見るような目で俺を見てくる。
「教務科から伝達された情報に三度偽りがあった場合その教務科全員を解雇処分する、という規則があってな。これは年度末に毎回更新されるんだがアランのやつは既に二度、嘘の情報を伝達させてしまっている。これがバレたら私達のクビが切られるんだ」
つまり・・・・・隠しておきたいから訂正してもらいたいならば年度末まで待てと?そんな薄情な!? おかしいだろ!
「だから峰とお前がラブラブしていれば暗殺も中止になるだろう。恋人であるお前が死んだら峰も悲しむからな。アドシアードは民間人も来る。お前が殺され民間人まで巻き込まれたら非難殺到で武偵という存在自体が危うくなる。てことでよろしく」
そ、そんなに危ないの!? 理子のファンクラブに危ない奴多すぎだろ! 暗殺とか依頼される人も可哀想だ。まあでも確かに、理子といた方が安全だな。肝心の理子はどこにいるんだ?
「先生、理子は今どこに? 」
「ああ、今は原宿警察署の留置場にいるはずだ。お前と同じことを伝えたら絶望してたぞ。司法取引でこっちに戻ってくるから心配はいらない」
司法取引か……理子も大変だな。アドシアード期間中の白雪のボディーガードはキンジとアリアに任せるか。はあ、命ばかり狙われて、ヤンデレに呪いをかけられてもう疲れたよ!
なんで恋人なんて……あ、そういえば、
「綴先生、ジャック先生とのディナーはどうでしたか? 」
俺が話を振ると、綴先生は一気に顔を真っ赤にし、下に俯いてしまった。おや? これはイジるチャンス!
「先生〜何したんですか〜? 」
「う、うるさい! 」
綴先生は俺を睨みつけると、俺と同じグロック18Cを収めているホルスターに手をかける。まずい! こんなにすぐキレるとは思わなかったッ!!
俺はすぐさま電光石火のごとく綴先生から離れ、部屋の扉を乱暴に開ける。
だがその苦労も虚しく背中に3発もらってしまい、背骨が折れるような激痛が走るが、ここで止まったら後でもっと痛い目を見る。
そう思うと自然と足は前に進み、再び電光石火のごとく廊下を駆け抜ける。背後で綴先生の怒鳴り声が聞こえたが聞こえなかったことにしよう。その方が断然平和だ。
寮の自室に戻ると、アリア、キンジ、白雪の3人が部屋の要塞化をしていた。赤外線レーザーはまあいいとしよう。だが、アリアが今壁に埋め込んでいるクレイモアだけは後で撤去しよう。ワイヤーが見えてないし、きっと平賀さん特性の特殊クレイモアか。
「朝陽、なんで残ってたんだ? 」
「ああ、ちょっとな」
理子のことは秘密にしといたほうがいいだろう。アリアが知ったら激怒しそうだしな。今そのアリアは天井に大きなドリルで穴を開けている。
ん? ……その天井の位置って……
「なあアリア? お前なんでそこに穴開けてんの? 」
「カメラを設置するの。外からは見えないようにね」
「待て! そこには有線LANケーブルが───」
「ん? 今なにか切ったような感じがしたわ」
アリアがドリルを止め穴に手を突っ込みそのナニカを引き出した。それは無残にも引きちぎられた俺の……
「ケーブルがああああああ!? 」
「なんなのよこれ! 」
「それがないとパソコンでインターネット使えないんだよ! 」
アリアと一悶着あったあと、アリアが弁償ということで決着がついた。ピンポイントで切断されてるあたり、どれだけ不幸か思い知らされるよ……
俺も部屋の要塞化を手伝っていると、気づかぬうちに夜になっていた。どうりで空腹なわけだ。俺がキッチンに向かい夕食を作ろうとすると、白雪が作ってくれるらしい。夕食は白雪に任せ、俺とキンジとアリアはソファーで休む。キンジとアリアはテレビのリモコンの取り合いで忙しいみたいだし、ネットでも見るか。
30分ほどすると豪華な和食が出来上がっていた。アリアにだけは丼に割っていない箸が突き立てられただけの食事だったがな。アリアは机に手を叩きつけ、文句を言っていたが白雪はまるで聞こえていないかのようにそれを無視。俺とキンジはその光景を横目に白雪の和食を味わって食べる。
アリアが白米をやけ食いしているのを横目に夕食を食べ終えると謎の眠気が襲ってきた。最近多いな……耐えれないほどではないんだけど、俺が超能力の使いすぎで入院した時から不定期にくるんだ。寝ようかな?
「キンちゃん! 巫女占札やらない? 一種の占いみたいなやつだよ! 」
白雪はヒマワリのような眩しい笑顔をキンジに向け、占いとやらを勧めている。俺もちょっと興味あるな。眠気は覚めてないが、見てみるか。
「んー・・・・・じゃあやってもらうか」
「何占いがいい? 恋占いとか、金運占いとか、恋愛運、健康運、恋愛運、進路とか将来の結婚相手とか! 」
そんなに恋愛運を見てもらいたいのか白雪は! キンジも鈍感だから気づかないと思うけど・・・・・
「じゃあ俺の進路について頼む」
白雪は一瞬舌打ちのような音をだし、「はい」と答えた。カードを伏せて机の上に星型に並べ、そのうちの何枚かを表に返し始める。アリアもいつの間にか横に来てジッと見つめている。白雪は険しい表情を見せた。
「総運、幸運です。あと、黒髪ロングの女の子と結婚します」
いつもの笑顔で白雪は答えたが、どうも作り笑いっぽいな。ま、キンジのことだし、不幸なんだろう。俺もだけど。試しに占ってもらうか!
「白雪、俺も頼めるか? 」
「あ、いいよ! 少し待ってね」
再びカードを伏せて星型に並べる。2枚くらい表にしたところで信じられない、という顔をし始めた。その後、何枚か表にするが、表情はキンジの時よりも数倍険しくなっている。
「えっと……総運───」
「とっっっても不幸だろ? 」
「──ッ・・・・・なんでそう思うの? 」
「そういう呪いがかけられてるんだ。今日も帰り道で危うく転生トラックに轢かれるところだったしな」
キンジ達は分からないという顔をしているがアレだよ! 轢かれて死んだら神様が目の前にいて、異世界に転生するアレ。本能的に転生トラックって分かったからよかったけど……
「で、でも2人の女性に凄く好かれてるって占いがでてるから! 」
「1人は、俺のことを殺したいほど愛してるヤンデレ、あとの1人は知らんけどな」
「じゃあ言うけど……朝陽君はこの世界で一番不幸なの。気をつけてね? 」
「忠告、感謝するよ巫女さん」
キンジは心底不思議だ、って思ってるのが見え見えなくらいの表情をしている。
「なんでそんな呪いがかけられてるんだ? 」
「それはまた今度話すよ。ちょっと長くなるけど」
少し暗い雰囲気にしちまったかもな。4人の間で沈黙が流れる。何かここで場を和ませる一発ギャグでも考えついたらいいんだけどな。俺にはそんなスキルはない。
「じゃあ今度はあたし! 」
沈黙を破ったのはピンクツインテことアリアさんだ。こういう時に頼りになるんだよなあ。白雪はカードをまた星型に伏せて並べると、1枚だけめくり、
「総運、不幸です! 終わり! 」
と言ってさっさと片付けてしまった。
───カーン! と、どこからかゴングの音が聞こえ、アリアと白雪の対決が今、始まってしまう。今日も大変だ……
アドシアード当日、俺は留置場から帰ってきた理子と一緒に武偵校の裏、つまり人気のない場所に二人きりでいる。理子とアドシアード中の動きを確認するためだ。
今日この日まで白雪が襲われることはなかった。
だが事件という事件はあった。アリアと俺が買い物から帰ると、巫女服がだいぶはだけている白雪が廊下でパンツ1丁のキンジに襲われていたり。キンジは、白雪が暴走したから止めようとしていたらお前達が帰ってきたと言っていたが、そんなことは当時知らない。
だからキレたアリアがキンジを真っ暗で冷たい東京湾に落とし、その後キンジが風邪をひいて、なんだかんだあってキンジとアリアが喧嘩。そのままアドシアード当日まで来てしまった。なんでこんなことにいつも巻き込まれるんだよ……
「ダーリン、元から醜い顔をもっと醜くして何考えてるの? 」
「マイハニーよ、お前の胸にある余分な脂肪のせいで地球が重いって悲痛な叫びを聞いてたのさ。斬り落としたらどうだ? 」
「黙れ
「舌引っこ抜くぞビッチが」
「「ああ? やんのかコラ!? 」」
表向きは仲良いカップル像を見せなければならないし教務科からの指令でダーリン、ハニーと呼びあうことが強制ってクソゲーかよ! 裏ではこんな理子も表ではしっかりやってくれるんだろうな?
はぁ、何も起こらなければいいけど。あれ? これってフラグ……じゃないよな。
お気に入り200人突破ありがとうございます。
まだまだ書き方や、表現、地の文でおかしいところが多々ありますが日々精進していきたいと思います。
次回やっと戦闘はいります(と思います)
偽物の恋人・・・・・ダーリン、ハニー・・・・・うっ、頭が!