壊れた黒い立花響   作:ヴィヴィオ

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第4話

 

 

 鎧のコスプレ少女を剣のコスプレ少女に投げつけて防ぐ。流石は鎧の完全聖遺物だけあって、頑丈だね。取り敢えず、離れて仕切り直しかな。

 

「その鎧は二年前に盗まれた物だ。二人共、話を聞かせて貰うぞ」

 

剣をこちらに向けてくる。

 

「はっ、断る! てめぇなんてお呼びじゃねえんだよ!」

 

鎧は鞭を放って妨害する。

 

「そちらの都合など知らぬ。私はただ、取り戻すだけだ!」

 

まあ、そうだよね。私、もういいみたいだから帰ろうかな? 二人で楽しそうにじゃれ合いだしたし。うん、帰ろう。

 

「逃がすと思ってんのか!」

「余所見をするとは余裕だな」

「ちっ、てめえの相手はこいつらだ!」

 

鎧が杖を振るうと、ノイズが沢山出て来た。

 

「ノイズを操るか! しかし、この程度で剣を止められると思うなっ!」

 

大量の剣を空から降らせてノイズを殲滅していく。これ、やっぱ帰れないよね~というか、聖遺物を手に入れるチャンスだし……真面目に不真面目に戦おうか。取り敢えず、木の枝を圧し折って回収。要らない枝は取って、後はペタペタ、ぺったんと……よし、これで完成。

 

「――――束ねるは星の息吹」

「あ?」

「なんだ?」

 

私の持つ剣に光が集中していく。私は携帯を片手で操作しながら、詠唱を読む。

 

「卑王鉄槌、極光は反転する。光を呑め。約束された勝利の剣、エクス、カリバァァァァァッ‼‼」

 

剣に集めて反転させた光をビームとして叩き込む。着弾点に居た二人は爆発に巻き込まれ、黒い光の柱に飲まれていく。残ったのはクレーターと倒れている二人だけ。私の剣は負荷に耐えられずに消滅した。

 

「くっ、エクスカリバーだと……」

「ふざけんなぁぁぁぁぁっ!」

「おおっ、流石は完全聖遺物。立つなんて響さん、驚いちゃったよ」

 

鎧がボロボロに崩れさせながらもしっかりと立っている。うん、本当に凄い。

 

「てめぇっ、ガングニールの奏者だろうが! エクスカリバーとかざけんなぁぁぁぁぁっ!」

「えー私は聖遺物を沢山持ってるだけの女の子だよ。ふざけてないし」

 

唇に指をあてて言ってあげると、無茶苦茶怒り出してノイズをいっぱい呼び出してきた。これは流石に不味い。こっちも()()()を使わないと。魔術でも多分、大丈夫だろうけど。

 

「仕方ない。歌ってあげよう……Balwisyall Nescell Gungnir Sleipnir」

 

姿は靴とガントレット、グリーブが出来たぐらいで他はそのまま。腕に黒い槍が出現した。歌うのは聖遺物の槍だから、これだね!

 

「Dieser Mann wohnte in den Gruften, und niemand konnte ihm keine mehr,nicht sogar mit einer Kette,binden.(その男は墓に住み あらゆる者も あらゆる鎖も あらゆる総てを持ってしても繋ぎ止めることが出来ない)」

 

聖約・運命の神槍(ロンギヌスランゼ・テスタメント)の奴だけど、気にしない。神槍には変わりない。ガングニールに魔術を使用し、力を増幅させて振るう。斬撃が飛び、纏めてノイズを切り飛ばす。

 

「ちっ、化け物がっ!」

「失礼な。私はただの女の子だよ!」

「んな訳あるかぁぁぁぁっ!」

 

ガングニールに力を溜めつつ、高速で移動して相手の背後に回る。そこで上段から必中と勝利、破壊の魔術を使って槍を放つ。

 

「穿つは死の槍ってね」

「ちぃっ!」

 

鞭を盾にして防ぐけれど、あっさりと破壊されて心臓目指して突き進む。今度は腕をクロスさせて防ごうとするけど、無駄なんだよね。

 

「Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el baral zizzl Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el zizzl」

「え?」

「ナイスっ!?」

「さっきのお返しだ。しっかりと味わえ」

 

横合から強烈なエネルギー破を喰らって、ガングニールが飛ばされてしまう。本番はこの後みたいだから、これは転移しないと不味い。そう思った瞬間。しかし、私の手足は鞭で縛られる。しかも、今度は私が盾にされた。

 

「おっと、逃がすかよ。こいつもくらっておけ、利息をつけたお返しだ。アーマーパージっ!」

「うわっ、それは遠慮したいなぁ~なんて」

「遠慮はいらねえよ!」

 

弾けんとんだ鎧がが散弾となって私に襲い掛かる。しかも、背後からエネルギー破の本番。転移はした所でダメージは喰らうけど、そっちの方はまだまし。

 

「ちょっ、なんで転移できないの! 身体も動かないし!」

「逃がすと思ったのか」

 

私達の影に剣が突き刺さっていた。いや、正確には私のだけだ。重なっていた影は鎧のは外れている。こうなったら喰らうしかない。仕方ないから、再生の魔術だけして後は運を天に任せる。いや、どうせならもっと賭けちゃおう。ガングニールを解除して破片を身体(ライフ)で受け止める。

 

「ごふっ」

 

血塗れになりながらも、私はなんとか生きている。鎧はいつの間にか消えている。再生の魔術が早速、効果を発するけれど……その前に発動する物がある。

 

「あっ、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァッ‼‼‼」

 

雄叫びを上げて、全身が黒く染まっていく。これぞ私の切り札。さあ、今度はどんな被害をもたらすかな? 前はとある施設を半壊させてとっても怒られたんだよね。まあ、そこから仲良くなったんだけど。

 

 

 

 

 

了子

 

 

 

 

 戦闘が行われている公園に弦十郎君と一緒に来た訳だけど、立花響が暴走し、翼ちゃんに襲い掛かる前に弦十郎君が割って入った。壮絶な殴り合いを行う二人。そして、直ぐに制圧してしまった。どう考えても弦十郎君がおかしい。この人、本当に人間?

 

「大丈夫なの?」

「獣の扱いは容易いものだ。暴走する前の方が彼女の場合は特にやっかいだ」

「そうなの?」

「出力は上かも知れんが、そこに技術が無い。ならば相手の力を利用すればいいだけだ」

「そう……」

「そっちはどうだ?」

「翼ちゃんの応急処置は終わり。そっちは?」

「既に傷が治りだしているようだ」

「そう……どれ、今の間に調べようかしら」

 

立花響に近付き、触れようと手を伸ばすと弾かれた。立花響の周りには結界が展開されている。小癪な。

 

「どうした?」

「弾かれたのだけど、弦十郎君はどうもないの?」

「ああ、そうみたいだ。原因はわかるか?」

「おそらく、これはルーンによる結界ね」

「ルーンだと?」

「ええ。恐らく、彼女が使っているルーン魔術ね。さっきのエクスカリバーだって、アレは勝利と破壊のルーンを多重展開していただけで、聖遺物ではないわ」

「なんだ、そうなのか……って、ちょっと待て。威力は間違いなく聖遺物の物だったぞ」

「そりゃそうよ。おそらく、彼女が使っているのは現代に伝わっているルーン魔術ではなく、オーディンが開発した神代の術よ」

 

本当に懐かしくもムカつく術を使ってくれるわね。

 

「ガングニールにスレイプニル。それにルーン魔術か。彼女はまるでオーディンだな」

「この子の片方の瞳も聖遺物の反応があるから、おそらく……」

「現代に蘇ったオーディンか。笑えんな」

「普通は有り得ないわよ……あくまでも聖遺物ってだけなんだから……待って。ねえ、この子って心臓にガングニールの破片を持っているのよね?」

「ああ、そのはずだ」

「なら、それらと融合していたら?」

「おい」

「彼女はペンダントなんて持っていないわ。だったら、可能性はそれしかないわ」

「どちらにしろ、本部まで運ぶぞ。救急車も来た」

「ええ」

 

どうにかして、手に入れないといけないわね。この子なら、デュランダルの起動も問題なく出来るはず。オーディンと同じになりかけているのなら、フォニックゲインの異常な量も納得できるのだから。

 

 

 




エクスカリバーなんて持ってる訳ありません。基本的に響が使うのはオーディン系列です。

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