東方新記伝   作:黒鉄球

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どうも黒鉄球です。今回は前回の話に出てきた慧音との絡みです。あとあの人もでます。


第八話 皐月と寺子屋

 

 

あの紅霧の異変から早2週間が経過した。皐月はいつも通り博麗神社の境内の掃除をしていた。

 

皐月「今日もお賽銭来ねぇよなぁ。博麗神社ってなんでこんな誰も来ねぇんだ?」

 

霊夢「………そんなのわたしが知りたいわよ。」

 

皐月が掃除をしながら呟いていると後ろからひょっこりと霊夢が現れ、その目は悲しみに溢れていた。

 

皐月「うわぁ………とんでもねぇ哀愁を感じ取ったぜ。なんつうか、目が死んだ魚のような感じに見えてきた。」

 

霊夢「………寝起きなのにあんたが悲しいこと言うからよ…………。ほんと、誰か来てくれないかしら(お賽銭に)。」ハァ

 

何を馬鹿な。そう言った矢先、神社の前の階段を登る足音が聞こえた。

 

皐月「………?こんなオンボロ神社に参拝か?」

 

霊夢「あんた等々言い切ったわね?なに?喧嘩売ってんの?」

 

皐月「はっ!馬鹿め。味のある神社だと聞こえんのかお前は。もうちょい発想を豊かにしろよ。」

 

霊夢「よし、分かったわ。あんたが私に喧嘩を売ってるってのがよーく分かったわ。そこ動かないでよ。今から[夢想封印]撃つから。」

 

皐月「お前は俺を殺す気か!」

 

???「やれやれ、相変わらず仲が良いなお前たちは。」

 

いつの間にか足音は止み、鳥居の前にはロングの青髪に青と白のロングスカートのワンピースを着た女性がいた。

 

皐月「あ、慧音じゃん。どしたのこんなところに。お賽銭なら自分の豚ちゃんにでもやった方がいいぞー。」

 

霊夢「あんた一応私よ同居人でしょ!勧誘しなさいよ!!」

 

皐月「あれぇ?お賽銭ってそういうものだっけ?」

 

慧音「話を持ってきたのだが………。」

 

慧音が少し困った顔をしたので皐月は話を聞く態勢に入った。

 

皐月「そいでどした?」

 

ようやく話が出来そうになったので要件を切り出した。

 

慧音「この前の宴のときに寺子屋に来ると言ってから1週間経ったぞ?そろそろ時間も空いてると思って来たんだ。」

 

皐月「あ〜、わりぃな。この一週間ちょっと忙しくってな。まぁでも今日は暇だしそっち行くよ。」

 

嘘は付いていない。この一週間は皐月の体力回復に専念していた。忙しいと言っても休んでただけ。だが皐月にとっては重要なことなのだ。

 

慧音「な、なら今から来れるか?今日に限って皆病に倒れてしまって手が足りないんだ。」

 

皐月「そりゃ大変だな。おい霊夢、そんなわけだから行ってくる。」

 

霊夢「え!?ちょっと!!待ちなさいってば!」

 

皐月は話も聞かずに慧音と一緒に人里へと向かった。下の方からすぐ帰ってくるからよーと聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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皐月「へぇここが人里ねぇ。いいところだなぁ。」

 

皐月は目を奪われていた。それもそうだろう。皐月のいた世界では珍しい光景だったのだから。木造建築がずらりと並び活気に溢れていた。皐月は服装なども見て江戸時代の日本を連想した。

 

皐月「なんつーか、風情があるな。ほんと、昔の日本って感じだ。なんだがタイムスリップした気分。なんだか少し懐かしささえ感じるな。」

 

鑑賞に浸っていたがその時は慧音の声で終わりを告げた。

 

慧音「鑑賞に浸っているところ悪いが急いでいるんだ。あとに出来るか?」

 

皐月「おっと、そうだった。急ぐか。」

 

こうして皐月は慧音の案内のもと、寺子屋へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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皐月「こりゃまた風情溢れる建物だな。やっぱり日本人の血筋なんだなぁって思うわ。こういう[和]って好きなんだよねぇ。」

 

皐月と慧音は寺子屋の前に着いた。見た目は屋敷の様な感じで奥から子どもたちの声が聞こえる。恐らく校庭で遊んでいるのだろう。そして二人は寺子屋の中に入っていった。

 

皐月「中も綺麗だな。掃除の手が隅々まで行き届いててどれだけ大切にしてるかが分かるな。」

 

皐月が称賛していると慧音の頬が少し赤らんでいた。

 

皐月「ん?どしたの?」

 

慧音「…………あ、いや。そこまで褒められるとは思ってなかったから…………ちょっと恥ずかしくなってな。」

 

一瞬何を言ってるのかわからなかったが直感で理解した。

 

皐月「え!ここ全部お前が掃除したのか!?す、すげぇな………。博麗神社でもここまでは掃除しねぇぞ。」

 

皐月は慧音がなぜここまでしているのか気になった。掃除を隅々までして、子供たちに勉学を教えて、自分の時間を割いてなぜ?っと。考え事をしている横で慧音はニコニコしながらこう告げた。

 

慧音「さ、よろしく頼むよ。皐月[先生]。」

 

皐月「え?先生??…………ってそうだった。手伝うんだった…………。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ――――――場所は変わって博麗神社――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢「……………………あいつ、大丈夫かしら?」

 

皐月が慧音とここを出て三十分。霊夢は皐月のことを心配していた。今回の戦いで皐月が強いと言う事は分かったのだがなんだか自分からトラブルに巻き込まれていくんじゃないかと不安に駆られていた。なぜなら霊夢は紫から聞いていた。皐月が自分たちが紅魔館に向かい、相手が吸血鬼だと知ると血相を変えてここを飛び出し、助けに来たことを。

 

霊夢「……………って何でこんなにあいつの事考えてんだろ。変な私………。」

 

そんな事をぼーっとしながら考えていると後ろから聞き覚えしかない声が聞こえてきた。

 

紫「そんなに心配なら様子を見に行けばいいじゃない。」

 

そこには隙間から上半身だけを出した紫がいた。

 

霊夢「し、心配なんて………してないわよ。

 

紫「そんな顔で言われても説得力ないわよ?」

 

傍から見ても霊夢は心配そうな顔をしていた。大方、紅魔館での出来事を思い出しているのだろうと紫は思った。

 

紫「まぁでも確かに彼はトラブルに自ら飛び込むような人間よね。まぁでもそれは少なくとも[誰かの為に]だと私は思うわ。」

 

今回はそうだったしね。と一言付け加える。

 

霊夢「…………やっぱりちょっと見てくる。」

 

そう言うと霊夢は寺子屋に向けて飛んでいった。

 

紫「あ、霊夢!私も見に行くから待ちなさい!(面白そうだから)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ――――――またまた変わって寺子屋――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皐月は慧音の手助けのため、一日だけ先生をやることになった。誰かに何かを教えた経験のない皐月はどうすればいいか教室の前で考えていた。

 

皐月「…………ど、どうすりゃいいんだろ。俺ガキ共に何かを教えられるほど器用じゃ………。」

 

慧音「なるようになる。さぁ行くぞ。」

 

皐月「あ!ちょっ、待っ!!」

 

有無を言わさず戸を開けられた。テンパったがもう開き直るしかないなと思った皐月であった。

 

皐月「はぁ……。もうなるようになりやがれ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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慧音「みんなおはよう。今日は授業を始める前に報告がある。」

 

そういうと慧音は神妙な顔で先生の殆どが病気にかかった事を告げ、その代わりに手伝いに来てくれた人がいると説明した。

 

慧音「それじゃあ入ってきてくれ。」

 

そう言われると皐月は教室の中に入り、黒板に自分の名前を書き、そして名乗った。

 

皐月「あー、ゴホン!俺は神条皐月だ。今日は先生方が休みで手が足りないっ事で来た。分からねぇことがあったら俺に聞け。お前らヨロシク。」

 

慧音「と、言うわけだ。何か聞きたいことがあったら皐月先生にも聞くんだぞ?」

 

そう言われて生徒の一人が元気よく「はいっ!」と手を上げ、皐月に質問した。

 

生徒A「慧音先生と皐月先生ってお付き合いしてるんですか?」

 

皐月&慧音「は!?」

 

一瞬何言ってんのか分からずありきたりな反応をした。先に弁明したのは慧音だった。

 

慧音「あ、いや、そうじゃなくてだな?皐月は今日普通に手助けに来てくれただけなんだ。他意は無い。」

 

皐月が頭に手を当てた。今このタイミングで呼び捨ては不味いだろ………と。

 

生徒B「あー!呼び捨てにしてるー!!!やっぱり付き合ってんだー!」

 

皐月「それだけで付き合ってるんならお前らのクラスメイトで呼び捨てにしあってる奴らは全員付き合ってる事になるけどそれでも良いのか?」

 

生徒B「それは嫌だ!」

 

慧音「容赦ないなお前………。」

 

皐月「俺は差別はしねぇ!ガキ相手でもハッ倒す自信がある!」

 

何を自慢げにしているんだ。と呆れられている皐月。そんな中皐月は後ろの方の寝てるやつを発見した。

 

皐月「おーい、そこの後ろにいるやつ。起きろー。寝るんだったらバレないよう工夫しろよー。」

 

慧音「バレない寝方を教えるな!」

 

二人の声でその生徒は起きた。そして皐月は「あ、こいつ知ってるわ。」と思った。と言うかその隣の子も知ってるわ。と言った。

 

チルノ「ふあぁ…………。よく寝た…………。あ、おはよう慧音センセ………………。あーーーー!!!!」

 

起きて慧音に挨拶をし、その隣にいる見覚えのある男に向かって指を指してそして勝負を挑んだ。

 

チルノ「この前は手加減してやったんだ!さいきょーのアタイが負けるわけ無いだろ!さぁ今度こそアタイがさいきょーだって証明して…………。」

 

慧音「チルノ、これ以上騒ぐと宿題倍にするぞ?」

 

そう言うとチルノは縮こまって正座をした。

 

皐月「…………何処の世界でも宿題は恐ろしい武器なんだな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    ――――――1時間目、算数――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

慧音「それじゃあ、教科書の28Pを開いてくれ。ここのやり方は…………。」

 

慧音は黒板に掛け算のやり方を書いていた。なぜ2x2=4になるのかを丁寧に説明していた。ちなみに皐月は後ろで授業の様子を観察していた。どういう流れで進むのかを見るためだ。前からだと生徒しか見えないが後ろからなら全員が見えるからである。

 

皐月「へぇ、しっかり先生やってんじゃん。」

 

皐月は感心していた。内容は外の世界と何ら変わりはない。だが周りを見てこっちの方がいいんじゃないかと思ったのだ。外の世界では受験だなんだと競争する弱肉強食の世界だ。学歴で全てが決まるところが多い。それに、落ちこぼれだと判断されれば見放されるケースも少なくない。それにイジメが起きればそれを見てみぬふりをして被害者が死ねば責任を負わず、平謝りするだけ。要は生徒を見ているようで全く見ていないのだ。自分が大事、自分の仕事、身の安全のために生徒への救いの手を差し伸べず、見てみぬふりをする。だが慧音は違った。生徒一人ひとりを見て、親身になって話しをしていた。差別なんて見られなかった。クラス内にも誰かを蹴落とそうなんて考えてるやつが見られなかった。優劣はあるにしろ、それで誰かを哀れんでいるようには見えなかった。皐月は強く思った。これこそが、慧音こそが先生の理想像なのだと。

 

皐月「…………慧音みたいな先生と出会っていたなら俺も少しは違ったのかな…………………。ここの生徒が少し羨ましいな。」

 

そう呟いていると声が聞こえた。

 

慧音「さ、皐月?どうしたんだお前?なんで………泣いているんだ?」

 

チョークを落とし、すごく驚いていて、そしてすごく心配そうな顔をした慧音がそこにはいた。

 

皐月「え……?あ、こ、これは。……ちょっと眠くて欠伸しちまった。悪ぃな。気にせず続けてくれ。」

 

そう言って皐月は直ぐに涙を拭って大丈夫だと言わんばかりの笑顔を見せた。

 

慧音「そ、そうか?なら続けるが………もしかして少し退屈か?」

 

皐月「いいや、それだけここに馴染んでるって事だよ。退屈なもんか。」

 

苦しい言い訳だが自分が泣いてるとこなんて察してほしくはなかった。だから嘘をついたのだ。慧音は不信がっていたが皐月がそう言うならと詮索をすることをやめた。

 

慧音「…………それじゃあこれから小テストをやるから皆、ズルはしないように!」

 

生徒一同「えぇ!!!?」

 

皐月「……………………どこの世界もテストには勝てないか。」ハハハ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    ――――――2時間目、図工――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2時間目は図工。お題は…………。

 

皐月「…………俺を描く…ねぇ。」

 

慧音「まぁ今日くらいいいじゃないか。」

 

皐月「だめとは言ってないけどなぜに俺?慧音でも良かったんじゃ…………。」

 

そういうと慧音は「それは前にやった。」と言った。デスヨネー。

 

因みにここは教室の隣だ。出来たものから部屋に持って来いと慧音の提案でそうなった。そしてこの時間は慧音のある意味休憩タイムだった。何故なら教えることがほとんどないからだ。「子供なのだから思うがままに描かせる。」との事だ。…………単に休みたいだけじゃ………。そう思っていると引き戸が開いた。

 

???「お?やってるねぇ。慧音、手伝いに来たぞーって誰だ?」

 

そこには銀髪の長い髪にリボンがいくつも結んであるこれまた[美人]の部類に入る人が現れた。上は白の襟付きの長袖に下は赤いモンペを履いていた。

そして皐月は瞬時に理解した。彼女は[自然]から外れた者だということを………。

 

皐月「俺は神条皐月だ。あんたは?」

 

???「おぉ!あんたが異変解決の立役者か!宴会の時に挨拶に行けなくて済まなかったねぇ。行こうと思ったらあんたが気絶してたんで挨拶し損なってしまった。

私は藤原妹紅。焼き鳥屋をやってるんだ…………ってなんでそんなに私を見つめてんだい?」

 

妹紅と名乗る女性は不思議がって皐月に質問をし、それに応答した。

 

皐月「間違ってたら済まないんだがあんた…………[不老不死]なんじゃないか?」

 

妹紅&慧音「!!!」

 

二人は驚きを隠せなかった。それもそうだろう。彼女は見た目は人間そのもの。一目で[不老不死]だと言われ事など一度もなかったのだから。

 

慧音「皐月!なぜそれを?!」

 

妹紅「私は一度も[不老不死]なんて言わなかったぞ………。なんで、分かったんだ?」

 

妹紅は皐月を警戒し、妖力を放出した。普通の妖怪ならこの妖力だけで存在を保てなくなるのだが皐月は平然とし、そして答えた。

 

皐月「そう警戒しないでくれよ。俺の能力である[自然を操る程度の能力]の副産物で[何が自然か不自然か]を感知出来るんだ。それであんたから[不自然]を感知したんだよ。生き物の不自然って言ったら俺の中では[不老不死]しかなかったから俺はそう予測したってわけ。ま、当たってたみたいだけど。」

 

妹紅「…………理由は分かった。だが一つ聞きたいことがある。その…………怖くないのか?私は年を取らないし死なない。みんなその事に恐怖して私から遠ざかって行く。私を[化け物]だって。」 

 

皐月「!!!……………そうか、あんたも俺と同じか。」

 

妹紅は信じがたい言葉を聞いた。「自分と同じ」だと。

 

妹紅「え?」

 

皐月「俺もさ、死ねねぇんだよ。この能力のせいでな。そして、この能力を所有してるせいで外では[化け物]なんて呼ばれて忌み嫌われ、蔑まれてきたよ。だからまぁ自分と同じ境遇のやつを見て怖いなんて思うのは可笑しいだろ?それにここは幻想郷。すべてを受け入れる世界なんだろ?なら俺も受け入れるさ。自分も、みんなも。」

 

そう答えながら皐月は立ち上がり、妹紅の頭に手を乗せた。自分がそうだったように、妹紅もきっと人に知られるのを拒んでいたのだろう、と。だからこう言った。

 

皐月「だから俺は妹紅を拒んだりしねぇよ。」

 

同じ境遇だしな!っと付け加えてニカッと笑った。自分の正体を知って尚、優しくしてくれる人は慧音以来だった。妹紅が何かを言いかけた直後引き戸が勢いよく開き生徒たちがわらわらと寄ってきた。

 

生徒一同「皐月せんせー!!!みてみてー!!」

 

皐月「うおっ!!おぉ、終わったか。どれどれ………。」

 

この日の図工は皐月の似顔絵で溢れかえっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    ――――――3時間目、体育――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皐月「次は体育か。妹紅、具体的には何やんだ?」

 

体育の全般は妹紅が請け負っている。理由は「私の出来そうなもので一番簡単だから。」だそうだ。

 

妹紅「う〜ん。せっかくだし[鬼ごっこ]なんてどうだ?みんなで走り回れるし、体力作りの基礎は走ることだ。どうだろうか?」

 

皐月「鬼ごっこか、ガキの頃以来だな。でもいいのか?俺らの身体能力は人よりあるし捕まえるの無理じゃね?。」

 

妹紅が呆れた顔をしていた。何を言ってるんだこいつはと。

 

妹紅「皐月………お前まさか全力でやるつもりか?」

 

皐月「悪いか?」

 

そう言いながら準備運動を始める皐月。見たまんま、そして文字通り[やる気満々]である。

 

妹紅「私はともかく子どもたちが可哀想だろ!手を抜け手を!!」

 

皐月「えー!?いいよ。」

 

妹紅「…………もうツッコミも疲れた。」

 

こうして皐月と妹紅が鬼の鬼ごっこが始まった。言われた通りめちゃくちゃ手を抜いた。走って、歩いて、疲れたふりして、たまに煽ってくるチルノを鬼にして。そしてものの三十分でみんなが飽き、次はドロケイをする事となった。鬼はもちろん…………。

 

皐月「………………って俺一人かよ!」

 

妹紅「ドロケイなんだし一人でいいだろ?宝無しだし。」

 

皐月「いやまぁ全員で17人だし、楽といえば楽だよな。」

 

そう言うと妹紅は皐月の言動に不満を抱いた。

 

妹紅「ほほう?私を相手に[楽]だと?それは喧嘩を売ってると言う事でいいのか皐月?」

 

皐月「まぁそう捉えてもらってもいいぞ。さぁ、早く逃げろ。」

 

そう言って妹紅は遠くに離れ、30秒を数えてスタートした。

 

皐月「さぁて、始めますか。」

 

そして10分で16人捕まえた。

 

妹紅「……………私が十分で捕まるなんて…………。」

 

思った以上に皐月の身体能力が高く、油断していた妹紅。めちゃくちゃ落ち込んでいた。

 

皐月「さぁて、あと一人は………。」

 

そんな妹紅を尻目にし、辺りを見回すと屋根の上に人影が見えた。そして…………落ちた。

 

皐月「あのバカ!!!」

 

皐月は能力で移動速度を上げ、生徒を受け止めた。妹紅は皐月の叫び声に反応し、助けに行けず、動けなかった。

 

生徒「さ、皐月センセ………「馬鹿野郎!」!!!」ビクッ‼

 

皐月の目は怒りに満ちていた。だがそれは心配の目でもあった。

 

皐月「なんであんなとこに登ったんだ!俺が助けられたから良かったけど気づかなかったら死んでたぞ!!!」

 

そう言うと生徒は泣き、謝った。

 

生徒「ご、ゴメンナサイ………恐かったよぉ………。」

 

その言葉を聞き、皐月の表情は変わり、微笑んだ。

 

皐月「もう、あんな危ない事するなよ?そして…………お前で17人目だ。はい、俺の勝ち。」

 

こうして体育は終わった。このあと慧音にめっちゃ感謝された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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紫「ね?心配なかったでしょ?」

 

霊夢「……………うん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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時刻は夕方。博麗神社に帰る最中だった。皐月はきょうの出来事を思い返していた。

 

皐月「今日は中々充実した一日だったな。教えたり、怒ったり、…………泣いたり。妹紅にあって同類がいるって分かって。なんか色々あったなぁ。」

 

そんな独り言をブツブツ言っているといつの間にか博麗神社に着いていた。

 

皐月「…………霊夢怒ってるかな?話し聞かずに行っちまったし。怒ってたらどうしよう。取り敢えずフライング土下座はしとくか?」

 

霊夢「何馬鹿なこと言ってんのあんた。早く入ってきなさいよ。」

 

霊夢は賽銭箱の前で待ち構えていた。どうやら今の独り言を聞かれてたようだ。

 

皐月「……………………怒ってる?」

 

一応確認を取ろうと思い聞いてみたが即答された。

 

霊夢「怒ってないわよ?元々約束してたんでしょ?ならいいわよ。それに、あたしが束縛する必要もないでしょ?」

 

怒ってない、そう言われて一安心したがやはりちょっとは申し訳なく思っていたので晩御飯だけは作っておこうと思った皐月であった。

 

 

 

 

 




???「取材、お願いしていいですか?」

皐月「別に良いけど大したこと言えないと思うぞ。」

霊夢「辞めたほうがいいわよ。ろくな事書かないから。」


次回 : 烏天狗と皐月


皐月「てかなんで今更?」

???「だって取材しようしたら殴り飛ばされて気絶してたので…………。」

皐月「あぁ、なるほどね。」


作者「また次回お会いしましょう!」

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