東方新記伝   作:黒鉄球

51 / 62
 やっと書けたぜぃ


第五十話 永夜異変第九ノ三話 : 犯人像

 

 

 警部「どういう事か説明してくれぬか?」

 

 警部のおっさんはそう訪ねてきた。だから俺も語るとしよう。俺の思う犯人像を。おっさん刑事も若手の刑事も早く言えという風な目でこちらを見て来るのが若干うざいが口には出さずに語るとしよう。

 

 皐月「まず、犯人についてだがこいつはかなりの切れ者、そして慎重な男だ。それだけじゃなく、人を何のためらいもなく殺すことが出来るほど冷酷で、冷血な人物」

 

 これに関しては全員が「そりゃそうだ」というような顔をした。大方予想はついていたのだろう。まぁ若干怪しい反応を示したおっさんは放っておこう。

 

 皐月「そして凶器はナイフ、動機は自己主張、自分を証明するための犯行とみて間違いない。なんせ人を選んでいない。老若男女問わずに殺してるからな」

 

 自己主張、俺は平気で人を殺せるぞという俺達一般人に対するアピールとみて間違いはなかった。でなければ犯人が遺体をその場に放置なんてありえないからな。これも全員が頷いた。これも予想済みってわけか。なるほどな。と、ここで若手刑事が挙手をした。

 

 若手刑事「でも犯人はどうやって犯行現場を選んで、赴き、そして逃走しているんだ?」

 

 若手刑事からごもっともな質問が出てきた。まぁそりゃ全員が気になってる事だから当然話すつもりではあったがナイス質問だ。

 

 皐月「犯行現場はおっさん達が気付いてる通りすべての現場を照らし合わせると螺旋状になる。これの意味はまだ解ってないが………犯人の逃走手段と来訪手段、そして構成人数も分かった」

 

 「「「「!!」」」」

 

 刑事、警部、そして先ほど三件の同時多発事件を持ってきた警官も驚きを隠せないでいた。普通なら構成人数なんてあくまで予測しかできない。しかし俺は違う。これは確信だ(・・・)。なぜなら、そうでなければ説明がつかないことだらけだからだ。

 

 皐月「犯人の構成人数は………一人だけだ」

 

 「「「「!?」」」」

 

 全員が「そんな馬鹿な」という顔をしたが気にせず話をつづけた。

 

 皐月「犯人の逃走手段は恐らく車でも自転車でもない。ましてや歩きでもない。………テレポーテーションで間違いない」

 

 「「「「………」」」」

 

 あ、あれ?そこで黙るのか?俺そんなおかしい事言ったか?いや、言っていない。なぜならこれはほぼ確定したことだ。北海道で起きた事件が決め手だがな。なぜならあそこは超がついてもおかしくないほどの田舎だ。さらに言えば山と海に挟まれいる小さな街という事も考えるとまず間違いなく車での移動が必須となる。だが、資料上ではその事実は確認されていない。あれだけ小さな町に車が来たら誰だって記憶に残るはずだしな。それなのに目撃者がいないのはおかしい、という説明も付け加えたところで警部から質問が上がった。

 

 警部「一応聞いておくが自転車という可能性は?」

 

 皐月「それこそ有り得ない。さっきも言った通りあそこは山に面している。山を越えないと街に行けないような場所を態々時間をかけて自転車で行くやつがあるか?」

 

 まぁ一人知ってるけど。夏休みにママチャリで九州まで行ったアカツノチリゲムシを。日雇いバイトが繋がったからってそこまで行けるか?俺は無理だな。閃光駆足(ライトニングアクセル)を即使用するだろうから。むしろそっちの方が楽なまである。最悪飛べるし。

 

 警部「確かにそうだが……テレポートなんて使える人物なんているのか?」

 

 皐月「まぁ普通はいない」

 

 だったらなぜ?と返してきた。ここまで言って分からないとは、よっぽどの馬鹿なんだなと思う今日この頃。

 

 皐月「俺みたいな能力者(バケモノ)がいるんだからテレポーターがいても可笑しくはないだろ」

 

 全員が黙り込んだ。自虐も込めて言ったのがダメだったのかはたまた納得して絶望したのかは分からない。分からないが沈黙は善なんていうのだから納得してしまったのだろう。

 

 皐月「ちなみに先ほど発覚した三件の事件はテレポートで赴いたところにいた人間を片っ端から殺していったんだろうよ」

 

 どういう意図でやったかは知らんけどな、と一言付け加えて説明を終えた。ここから先は絶望しかない。相手が能力者かもしれないとなった以上捜査範囲は日本全土、市町村全てに配備させなければならない。しかし日本全土で切り裂きジャック以外ににも事件が数多あるというのに全警官を配備させるわけにもいかないのも事実だ。警部は頭を抱え、ほかの刑事たちも絶望した顔をした。俺以外は。

 

 おっさん刑事「皐月……お前は何でそんな澄ました顔ができるんだ?」

 

 俺のすまし顔に気が付いたおっさんは御尤もな言葉を口にした。これから先も人が死ぬかもしれないというのに不謹慎極まりないと言いたげだった。確かに不謹慎ではあるかもしれない。それでも俺はその顔を止められなかった。

 

 皐月「……[自然を操る能力]ってのが俺の能力だ。大抵の自然的なもの、超自然を意のままに操れる」

 

 おっさん刑事「い、いきなり何を……」

 

 おっさんが戸惑っているが俺は話を止めない。いや、止めてはならない。誰かの為ではない。決して刑事たちを安心させようなんて思いはない。だから俺は事実だけを述べる。

 

 皐月「自然に育った草木、人の手が加わって育った草木、野菜の見分けなどもお手の物。俺の能力の副作用と言っても過言ではない」

 

 警部「……」

 

 おっさんだけでなく警部も、ほかの刑事たちも俺の言葉に耳を傾ける。

 

 皐月「つまり俺は自然であるものと、不自然であるものを見分ける眼を持ってる。簡単に言えば一般的なものとそうでないものを見分けられる」

 

 俺の最後の言葉におっさんが反応した。ようやく理解したか。この事件は俺の独壇場で、そして俺にはアドバンテージがあるという事に。

 

 皐月「だから俺には見分けられるんだよ。無能力者と超能力者の違いってやつが」

 

 「「「「…………よっしゃー!!!」」」」

 

 皐月「!?」

 

 いきなり沈黙が喝采に変わってビックリした。まぁ嬉しいだろうな。一筋の光が見えたんだから。となると俺が前線に出ることは間違いなくなった。多分相当な労働を強いられるだろうが……まぁいいや。その分報酬を増やしてもらえば。

 

 警部「ようし!そうと分かれば皐月君、君にはかなり苦労を掛けるだろうがよろしく頼むよ」

 

 皐月「……報酬の上乗せ、よろしく頼むぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺が自然、不自然を見分けられる目を持っていると分かったのは小三の頃。この頃は炎を使う事にハマっていて某ボンゴレのボスのような感じで飛行していた時期がある。その頃丁度流行ってたしな。俺も憧れてたからやりたいなとは思ってた。まぁ流石に死ぬ気の零地点突破・初代エディションは出来なかったけど。つーか普通に氷操れるし。まぁそんなことを思っていた時期があってその時に京都まで出てたのだ。その時に自分と同じような奴を見た。正確に言えば他とは違う「何か」を有していると直感で分かるという感じだ。実際に確認もしたしな。

 

 そんな具合に俺は能力者が有している人を視ることが出来る。だから今回の捜査に俺が参加しなければ多くの死者を出すことになる。そんなことは分かっている。だから俺は参加してやった。人に為に。

 

 

 

 

 

 皐月「………500万」

 

 警部「いいや、300万で手を打ってくれ!」

 

 皐月「1000万の賞金首の半額だろ?それくらい出せよ」

 

 警部「いいや、300万だ!」

 

 おっさん刑事「いやなにやってんすか警部……」

 

 呆れた声を出すんじゃねぇよおっさん。これは戦いだ。普段の俺の報酬は20万なんだ。今回はでかい山なんだから500万もらったっていいだろ!賞金首1000万なんだから!半額になっただけありがたく思ってほしいもんだ。

 

 警部「交渉中だ。今回の山はでかすぎる。だからそれなりに報酬をはずもうと思ったら……」

 

 皐月「当たり前だろ。俺にも生活があるからな。見合った報酬をもらわんと割に合わん。1000万じゃないだけありがたく支払え」

 

 警部「何故上から目線なんだ君は!」

 

 かなりご立腹らしい。でも仕方ないだろ?俺がいなきゃ解決できないんだから。ならば俺はそこを逆手に取るだけだ。さぁ払え。でなきゃ手伝わん。

 

 おっさん刑事「400万で手を打ってくれないか?いつもの20倍なんだからそれでいいだろう?」

 

 警部「そ、そうだ!でなきゃ逮捕するぞ!」

 

 皐月「おいコラ、なに職権乱用しようとしてんだよあんたが捕まるぞ。つーか日本の警察が全員立ち向かっても、逆立ちしても俺には勝てねぇんだから諦めろよ」

 

 俺は事実を述べる。実際俺の能力を悪用しようとした連中が来たときは全滅させたしな。別に殺してはない。全員ブタ箱に放り込んだだけだ。多分核を打撃ち込まれても生きられる自信がある。つーか操れるし。

 

 警部「私が諦めるのを諦めろ!」

 

 皐月「どこのナルトだよ……」

 

 結局450万で手を打った俺は優しいと思う。まぁ警部は完全に涙目だろうがそんなのは知らねぇ。さて、働きに出るかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ――――――――皐月が飛ばされるまであと18時間――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 次回もゆったり気長にお待ちください

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。