東方新記伝   作:黒鉄球

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幻想学園と連続投稿!超疲れた!あと一か月近く待たせてすんまそん!


第四十七話 永夜異変第八話 : 戸惑い

 

 様々な記憶が流れてくる。楽しかったこと、戦った事、悲しかったこと、一緒に食べたご飯の事、旅の事、そして別れた時の事。そんな懐かしく、二度と会えないと思っていた人物が目の前にいる。そんなこと誰が予想できようか。俺自身もそうだが目の前にいる女性、八意永琳も同じ心境だろう。なぜ此奴がここにいるんだ、と。

 

 皐月「……永琳、お前…………太った?」

 

 永琳「ちょっと皐月!久しぶりに会ったって言うのにひどいわ!それに太ったのは胸だけよ!」

 

 皐月「そんな情報いらねぇっつの。つーかなんでお前ここにいんだよ。ほんでお前は何で生きてんだよ」

 

 淡々という。いや、いえる自分に驚いてる。これでも結構困惑しているんだが……多分心のどこかで思うところはあったんだろうな。いるんじゃないか、また会えるんじゃないかって。この幻想郷は全てを受け入れる場所。人と妖怪の楽園。そんなところにいても……おかしいんだけどな?本来なら俺もここには来れなかった筈だし。人生何があるか分からないな。

 

 永琳「……気づいてるんじゃないの?私が……いえ私たちがどういうわけで生きているのか」

 

 皐月「蓬莱の薬を飲んで不老不死化だろ?分かってるっての。だが、それはお前の口から聞きたかったね。なんでそんな薬に手を出したのか、そしてなぜ輝夜まで服用したのかってのも全てな」

 

 実際のところはシルエットの時点で人ではないという点は見抜いていた。妹紅と同じ感覚に陥ったからな。待ったく、急展開すぎてついて行けないぞ。後ろのやつら同様な。見ろよ、みんな口をあんぐり開けてるぞ。紫と幽々子はニヤついてやがるし、目以外は。怖い、超怖いよこの長寿達。

 

 永琳「そう……やっぱり見抜かれていたのね。じゃあ私がこの異変を起こしたわけは…?」

 

 先ほどと何も変わらず淡々と話す永琳。多分見抜かれてることを見抜いてそれでいて敢えて質問してやがるなコイツ。それならご希望通り俺の推理結果を発表しようじゃねぇか。

 

 皐月「それは輝夜を匿うためだろ。月の使者たるウサギ軍団からの追ってを遠ざけるため。アイツらは満月の夜にしか地上に降りられないからな。だから月を一部だけ欠けさせてあいつらを欺こうとしたってとこだろう」

 

 実のところを言うと俺の子の推理はつい先ほど完成したとこだ。永琳の姿を見るまではまったく理由が解らなかった。だからどうしたものかと考えてたがよもやこいつらとは予想外。まぁお蔭で理由も対処法も分かったわけだが。

 

 永琳「八割正解。答えはウドンゲを匿うためよ」

 

 皐月「……鈴仙?なんでコイツが………」

 

 全くわからん。なぜ永琳が鈴仙を匿う必要がある。現に当の本人も様相だにしない返答に驚いてるし。………考えろ。なぜこんな答えが出た。なぜだ。月、輝夜、鈴仙、満ち欠け、月の使者、ウサギ……ウサギ?そうだ、鈴仙はウサギだ。月の使者たるウサギと同じ耳、同じ髪をしている。むしろこの二人は敵対していてもおかしくない。それをなぜ……。

 

 紫「それはあれでしょ?月面戦争で無様にも戦いから逃げた彼女をかくまうためでしょ?」

 

 答えを出したの幻想郷の賢者である八雲紫だった。月面戦争ってなんぞ?そんなもんなんでこいつが知ってるんだ。俺でもしらん情報だぞ。……こうなりゃ聞き出すしかなくなったな。

 

 永琳「ええ、そうよ。無様って言うのは聞き流せないけど大半は正解よ。輝夜の命でね、ウドンゲを匿うことにしたのよ。理由は簡単。戦いたくもないのに戦いに出されるこの子に輝夜がえらく感情移入してね。皐月の様に人を助けるなんて言い出す始末よ」

 

 理不尽に怒られた。遠まわしに皐月のせいよと言われた気がした。おい紫、なにわろてんねん。いてこましたろか?お?……でもそうか。あいつも元気にやってんだな。よかったよかった。だがそれとこれとは話が別である。現実を叩きつけねばならない。この異変が誰かの侵入に対する対策だったのなら俺はやらねばならぬ。言わねばならぬ。

 

 皐月「あのさ永琳。その……大変言いにくいんだけど…この異変、意味ねぇぞ?」

 

 永琳「………え?」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 この幻想郷を見つけ出すのはほぼ不可能だ。俺やユグドの時のような事例がない限り、物理的にも科学的にも見つけるのは不可能に近い。ユグドは偶然にも結界のゆがみを発見し、そこから微弱にも流れでたパチェの魔力を辿ってきたという。俺は本当に偶然、空間が歪んだ瞬間に近所の神社に足を踏み入れてしまったからというわけだ。座標はどんぴしゃで博霊神社。偶然が重なりまくった結果である。若しくは紫が神隠しの如くさらってくるかのどれかしかない。ほぼ偶然ってのが事実だ。つまり、自ら望んで見つけるなんて芸当は例え月の民の技術といえど不可能なのだ。つまり、つまりである。

 

 皐月「お前らの行いは全くの無意味だったってことだ……って痛い!なんで今叩いた!?」

 

 永琳「いや、むかついたからよ。無意味なんて断言されたらそりゃ叩きたくなるでしょ。ね、ウドンゲ?」

 

 鈴仙「え!?え、えぇ、そ、ソウデスネ」

 

 おい鈴仙。いくらなんでもひどくねぇか?そこは「皐月さんを叩かないでください!」って言えよ。可哀想だろ、俺が。可哀想すぎてみんなが俺にお金をくれるレベル。同情するなら金をくれ!

 

 紫「それで?本当にこっちなのよね?月のお姫様がいる部屋は」

 

 紫からドスの利いた声が聞こえた。え?怒ってるゆかりん?なんで?俺なんもわりぃことしてなくね?

 

 魔理沙「まぁ、ドンマイ皐月。諦めろ。色んなことを」

 

 皐月「いや助けろよ!」

 

 もうヤダこの面子。右からも後ろからも叩かれるんだもん。潰れちゃうよ俺。

 

 永琳「さぁ着いたわ。ここが輝夜のいる部屋よ」

 

 大きな襖の前に着いた。どうやらここが輝夜部屋らしい。うん、超入りたくない!だって絶対「え……皐月?なんで…」ってなるもん。目に見えてるもん。そのやり取りはもう飽きたんだよ!沙絡まって開けないでくれ永琳!や、やめ、やめろォォ!!!

 

 永琳「姫様、客人よ。それもとびっきりの、ね」

 

 襖を開けて早々とんでもねぇこと言いやがったコイツ。ほんと止めろよ恥ずかしい。俺ごときが本来は会っちゃいけねぇ人間なんだからそんな持ち上げんなよ。

 

 ???「客人?永琳、貴方一体何をやっているの?侵入者の排除があなた……の…しご………と」

 

 長い黒髪をふり、こちらへ顔を見せた少女。上はピンク、下は紅葉色のスカート。間違いない、昔と全然変わっていない。あの、竹取物語の主人公にして竹取の翁夫妻の一人娘、蓬莱山輝夜が、そこにはいた。

 

 皐月「よ、よう輝夜。……約千年ぶりか?そっちの感覚じゃ」

 

 輝夜「え……皐月?なんで…」

 

 丸っ切り同じこと言いやがったよコイツ。マジふざけんなよ。もうちょい面白おかしく反応できねぇのか。

 

 皐月「まぁ、そのなんだ。現実を叩けつけに来たんだわ」

 

 俺は一からすべてを説明した。俺の幻想郷入りの理由。これまでの出来事。そしてこの異変が無意味であったことを。勿論叩かれたがな。そのあとは……まぁあれだ。泣いてた。さすがの俺にもわかるくらい泣いてた。あれは多分嬉し泣きだ。なんで嬉しかったのかは分からない。でもそれだけは分かった。さて、こっちの話は終わった。それじゃあ帰ろう。

 

 霊夢「ちょっと待ちなさい」

 

 待ったの声をかけたのは霊夢。神妙な顔をしている。……ダメですか?話さなきゃあかんですかそうですか。

 

 霊夢「皐月と輝夜の過去、そろそろ話してくれない?」

 

 皐月「………よかろう。ならば話してやろうじゃねぇか。俺が過去へ飛ばされた話とその冒険譚を。長いから眠らないようにしろよな」

 

 こうして俺は語り始めた。俺の過去を。そして輝夜たちとの出会いと旅の話を。

 

 

 

 

 

 

 




 次回予告は無しで。あ、でも永夜異変として書き続けるんでそこん所は問題ないっす。まぁどういう風に描かれるかっていうのは次回予告があったらネタバレみたいになりますし……今後もやめようかな、次回予告。

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