東方新記伝   作:黒鉄球

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端折ったかもですけど勘弁してください


第四十六話 永夜異変第七話 : ヒーロー見参

人間という生き物は感情に正直なやつとそうでないやつがいる。多分俺は前者であり、自分の気持ちに素直である。怒りに身を任せて倒した相手は少なくないし、助けたかったから助けた人も少なくない。それだけでなく、自分がやりたい事には素直にやる。それが俺であり、それが俺の美学だ。つまり何が言いたいかというと。

 

皐月「マジで行きたくないんです勘弁してください紫さん」

 

紫「手伝ってよ!霊夢行く気満々よ!今回は貴方の力を借りたいの!お願い!」

 

霊夢「…………何この状況」

 

紫に対して全力の土下座をする俺、その俺に両手を合わせてお願いする紫、そしてそんな俺達を冷たい目で見つめる霊夢。やめろそんな目で見るな。今回だけはやる気でねぇんだって。しかも敵をあぶるときた。めんどくせーの一言に尽きる。だってそれって異変の首謀者宅を殴りこむための労力半端ないじゃん。幽々子の時もそうだったじゃん。手がかりなんてこれっぽっちも………。

 

皐月「………なぁ、ヒント出すだけで勘弁してくれる?」

 

俺の一言に紫は一瞬だけ戸惑ったがすぐに了承してくれた。よし、これで俺は家から出なくて済む。では早速与えようじゃないか。俺の見つけた、というより「思い出した」手がかりを。

 

皐月「実は少し前に迷いの竹林で怪しいとこ見つけたんだ。そこだけ不自然に隠れてたっつーか。ほら、俺の眼ってそういうの見抜けるだろ?だからそこに行けばなんかあるんじゃねーかなーって。どうだろうか?」

 

そう、俺は見ていた。妹紅宅を訪問した際に目撃したのだ。俺からしてみれば不自然に隠れてた空間を。当初はまぁ気のせいかなくらいに思ってたあれがもしかしたら犯人への手がかりになるのでは?と踏んだのだ。すごいだろ?俺を褒め称えろ霊夢。だからプルプル震えんな拳を下ろせ………。

 

霊夢「なんでそれを早く言わないのよ!」

 

皐月「痛ってぇ!!!」

 

とんでもねぇげんこつを食らった。垂直に、真っ直ぐに振り下ろされた。超痛い死ぬ。コブできたかもしれん。マジ烏丸先生だわ。俺と霊夢で騒いでいると紫が質問してきた。

 

紫「皐月、そこの場所覚えてる?」

 

皐月「ん?だから迷いの竹林………あ、お前まさか!」

 

読めた。完全に分かった。こいつの顔でわかった。だが分かったところでもう抵抗できない。何故ならこいつは俺の足元にスキマを展開したからだ。俺が声を上げた瞬間に俺は重力に従って落ちた。それに続きて霊夢と紫も飛び込んできた。最悪だ。結局行く羽目になったのだから。紫には後で報酬(金)を請求せねばならないな。

 

皐月「お前後で覚えてろよ」

 

紫「だって道案内が必要じゃない?貴方みたいに「けーたい」があるわけじゃないし、連絡手段がないでしょ?」

 

御尤もだ。はぁ、俺はどう転んでも現在地である迷いの竹林には向かわなきゃならんかったのか。まぁもう来ちまったもんはしようがねぇ。とっとと終わらせて帰ろう。

 

皐月「………?」

 

霊夢「どうしたの?」

 

俺は四方八方を見渡した。しかし、歪みが消えていた。俺が見た歪みが跡形もなく消えていたのだ。これでは敵の本拠地を見つけられない。………めんどくせーな帰ろうかな?

 

紫「消えたのであれば貴方がまた場所に一度向かいましょ。どこで見たの?」

 

紫の機転で俺が見た場所に行くことになった。という事は妹紅宅である。いきなり現れたらびっくらこくだろうな。

 

皐月「妹紅宅」

 

紫「それじゃレッツゴー!♪」

 

何故かテンションが高いなこいつ。そのテンションで着いたのは妹紅宅。俺はすぐに歪みのあった方向を向いた。そこでもやはり消えていた。だが方角はわかってる。ならその方向に歩けばいいだけだ。

 

霊夢「えぇ……飛びましょうよ」

 

皐月「バカだなお前、飛んだら建物見えねぇよ。歩いた方が確実に建物にぶつかるだろ?」

 

霊夢「あ、そっか。って馬鹿言うな」

 

いつもの毒を吐きながら歪みの方向へ向かう。だがもちろん全てが道になっているわけではないので通れそうなとこはなるべく通った。それでも真っ直ぐというわけにはいかなかった。ちなみに何故ここが迷いの竹林と呼ばれているかというと景色が一切変わらないからである。それを見たの通りに進んだら迷うのだ。ならば道無き道を行けば問題ない。それにしても………。

 

皐月「建物一つも見つからないな」

 

紫「もしかして迷っちゃったのかしら?」

 

多分なと一言だけ入れてた。霊夢が何か言っていた気がするがそんなのは今はどうでもいい。一先ず策を考えないとな。敵さんは月を隠した。満月を隠した。という事は満月を嫌ったという事。なぜ?妖怪ならば隠す意味がない。むしろ力増幅のために晒すだろう。ならば何故?なぜ歪みが消えた?何者かが解いたから?なぜ解けた?………俺たちの他に誰かがすでに敵本拠地に辿り着いたから?……やべぇよ果てし無く嫌な予感しかしねぇぞ。月が関連している事でこんな真似すんのは月の民しかいねぇじゃねぇか。だとしたら敵は月の民で、歪みがないのが誰かが辿り着いたのが原因だと仮定すればそこには魔理沙がいる。

 

皐月「おいヤベェぞマジで!もしかしたら俺たちの敵は……!」

 

月の民かもしれない。と言いかけた瞬間爆発音が聞こえた。その方向に目を向けると煙が立ち上っており、赤い光が弧を描き、降り注ぐ様子が見え、地上から打たれたであろう七色の光が見えた。間違いない、魔理沙の[マスタースパーク]だ。

 

皐月「おい紫!急いで俺たちを彼処に飛ばせ!」

 

紫「分かってるわよ、もう繋げたから」

 

俺の声に合わせて既にスキマを展開していた。さすが紫だ、と褒める暇はない。スキマの出口が展開され、目の前には冥界組とアリスと魔理沙とレミィと咲夜。そして敵は、赤い光に包まれて見えなかった。だがそれが攻撃なのは一目瞭然だった。正直真ん前だったため肉壁覚悟で俺は最高速で飛び出し、電撃で払いのけ、霊夢は爆風に巻き込ませないように結界で守りに徹していた。

 

霊夢「間に合ったわ!あんたがチンタラしてるから危うく魔理沙たちが死ぬとこだったじゃない!」

 

皐月「ウルセェな!俺だったあんな強ぇのがいるなんて思わなかったんだよ!つーか危うく俺が死ぬとこだったわ!」

 

紫「はいはい、夫婦喧嘩はそこまでね」

 

「「違うわ!」」

 

紫の発言にツッコミを入れる。やめろよ霊夢、ハモったらそれこそ夫婦っぽいだろうが。別に嫌ではないが。そう思いながら後ろを振り返った。そこには多少怪我をしていたが五体満足で地に座っていたレミィがいた。

 

皐月「大丈夫か?レミィ。遅れて悪かった」

 

 

 

 

 

 

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レミィ「結局、お手を煩わせてしまったわね」

 

皐月「は?」

 

レミィのよくわからん発言に少々驚いた。なにこいつ、まさか俺がくる前に終わらそうとか思ってたのか?あえて言おう、無理であると。だって明らかに敵さんの力は妖怪のそれじゃない。それにもう既に俺は感知している。もう1人かなりの力を持った奴があの建物内にいることを。そして………。

 

皐月「なんでお前がここにいんだよ鈴仙」

 

鈴仙「バレてる……」

 

妖夢の傍にいた鈴仙に目を向ける。どうやら敵の将だったようだ。それの証拠に妖夢にロープで縛られてる。完全に捕縛されている。プレイではないとだけ言っておく。しかしこいつがここにいるということは月の民の可能性があるな。というか絶対そうだ。今思い出した。こいつあの時のうさ耳軍団のやつと同じ気配を感じる。たかこいつにもうさ耳あるしなんでその時点で気がつかなかったんだろ?まぁうさ耳軍団の1人って事は敵さんはやはり月関連のやつって事になる。まったく、本当に嫌になる。また死闘を繰り広げなければならなくなる。さぁて、砂埃も晴れて来たところだし敵の顔でも拝もうか。

 

???「新手かしら?ほんと、邪魔ばっかりね。でも、私に勝てるかしら?」

 

比較的若い声が聞こえた。普通なら美人さんか!?とかふざけるとこだが今の俺にはそんな余裕はない。なぜならその声は何処かで聞いた、懐かしい声だったからだ。その声を背に、俺は振り返った。三つ編みにおろした銀髪、赤と青の奇抜な服装、そして、時代に似合わない十字の入った帽子。嘘だ、そんなはずはない。あれから何年経っていると思ってんだ。あの時代から計算したら1000年近く経っているはずだ。生きているはずがない。しかしそれは目の前にいて、名前を、彼女の名を呼ぶしかなかった。

 

皐月「永…琳……なのか?」

 

永琳「さ、皐月………あなた、どうして?」

 

 

 

 

 




次回 : 第四十六話 永夜異変第八話 : 戸惑い

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