東方新記伝   作:黒鉄球

36 / 62
 どうも黒鉄球です。常連さんは昨日ぶりですかな?笑笑

 今回初めて多機能フォームと言うものを使ってみました。まぁだからなんだって話なんですけどね笑








第三十五話 変化する何か

 

 

 

 鈴仙の喧嘩、仲直りから二時間ほど経った。少年の母親はまだ見つかっていない。目撃情報は得られるのだがその場所へ行っても見つからず、情報を得ては見つからずの繰り返し。いい加減この無限ループも飽きてきたし疲れた。死に戻りの辛さが分かってきた。そして今は人里の少し外れにある空き地に座って休憩中。

 

 皐月「お前の母ちゃんマジどこにいんだよ……。くそっ、能力さえ使えればこんな事には……。」

 

 鈴仙「皐月君能力持ちなんですか!?」

 

 皐月「どこに食いついてんだよ。今は使えないんだよ諸事情で。なぁ少年。」

 

 少年「何お兄ちゃん?」

 

 軽く泣きそうな顔してんなおい。本格的にやべぇぞ。もう夕方だし親御さんも心配してるだろうし探してる。………探してる?あ、やらかしたかもしれん。

 

 皐月「………やらかしたぞ俺達。」

 

 鈴仙「え?」

 

 皐月「俺達が探してる……それってもしかして母ちゃんも同様に探してるんじゃ……。んで俺達は母ちゃんの情報を、母ちゃんは俺達の情報を頼りに進んでいて多分そろそろ………。」

 

 ???「ゆう!」

 

 空き地の真ん前に青い着物を着た女性が立っていた。髪を下ろし、確かに美人だった。間違いなく少年の母ちゃんだわ。

 

 ゆう「ママ!」

 

 鈴仙「え!?」

 

 皐月「やっぱり……。」

 

 俺の予想通り俺達の来た方角からやって来た。やれやれ見つからない訳だわ。同じ距離、同じ方角、同じ速度で歩いてたら遭遇も発見も出来ないからな。俺とした事がやらかしたぜ……。そして気付いてしまった。いや、今更気づいたと言ったところか。この距離になって初めて気付いた。ゆう?の母ちゃんが来た方角から妖力がピリピリと伝わっている事に。

 

 「ゆう……!」

 

 皐月「やべぇ!」

 

 俺はすぐさまゆうの母ちゃんに駆け寄り、すぐに引っ張った。母ちゃんの来た方角からツルが勢い良く向かってきていた。

 

 皐月「あぶねぇ……。なんだこのツル……。西行妖じゃ………ないな。あいつの妖力はこの非じゃない……。中妖怪ってやつか…?」

 

 鈴仙「な、何これ!?植物……なの!?」

 

 空き地の奥へといったのがどうやら運の尽きらしい。逃げ道を塞がれた。なんせ真ん前には某配管工のオジサンの敵キャラで出てきそうな食人植物的な奴がいるのだから。

 

 皐月「コイツは妖怪だ。多分中級妖怪だから………強ぇぞコイツ。」

 

 ヤバいな。女二人と子供一人、そして今やただのヒーラーである俺。こんなパーティーで勝てるわけがない。こんなのホイミスライム、スライム×2、アルミラージのパーティーでゴーレムに立ち向かえって言ってるようなもんだぞ。鬼畜すぎる。

 

 鈴仙「なら私が相手をしますからそのスキに二人を逃してください。」

 

 指を銃のように構え、植物妖怪に退治する鈴仙。何あれ?レイガン?あの世に行って魔王化しちゃったの?

 

 皐月「バカ言えお前が逃がせよ。女にこいつを任せる訳には……。」

 

 鈴仙「今戦えるのは私だけだよ!私しかこいつは引き付けられないの!だから早く!」

 

 確かに鈴仙の言う通り今の俺には能力は使えないし多分この親子にも無理だ。となれば俺の取るべき行動は……。

 

 皐月「お前ら、俺が見張ってるから今のうちに裏へ登って逃げろ。」

 

 ゆう「お、お兄ちゃん達は……?」

 

 皐月「安心しろ、あとから必ず行くから。今は行け。せっかく母ちゃんと会えたんだから二人でいけ!」

 

 ゆう「で、でも……。」

 

 ゆうママ「行こうゆう。今はこの人たちに任せて私達は……。」

 

 くそっ、まだ狼狽えてんのか。鈴仙が光の玉で応戦してくれてるけど奴が俺たちに手を出してくるのも時間の問題だ。ここは………。

 

 皐月「くそっ!不安定だから使いたくないんだけど仕方ねぇ!飛ぶぞお前ら!!」

 

 俺は二人の腹部に腕を回し、目一杯飛んだ。案の定ふらついたしそこまで長くは飛べなさそうだ。一先ず大通りに下ろした。

 

 ゆう「お姉ちゃんは!お姉ちゃんがまだ……!」

 

 皐月「いいか少年。お前は今すぐ紅魔館ってとこに行け!ここから北に紅い屋敷がある!そこの人に俺のことを伝えろ!そしたらお姉ちゃんも助かるから!だから早くいけ!母ちゃんと一緒に!」

 

 ゆうママ「………わかりました!いこうゆう!」

 

 手を引っ張られ、どんどん遠くへと走っていく親子を見送った。俺は少年に名前は教えてないし紅魔館はここからそこそこ遠い。これでいい。これであの子達が巻き込まれる事はなくなった。あとは……俺が囮になってあいつを逃がすだけだ。

 

 皐月「………おいおいマジかよ。」

 

 空き地へ戻るとそこにはツルに捕まっている鈴仙がいた。完全に動きを封じられ、弾も撃てない状態だった。俺はその辺にあった石を思いっきり投げた。鈴仙を食わせない為に。案の定妖怪は俺へと視線を変えたが虫けら程度にしか見てないのか直ぐに鈴仙へと意識を向けた。

 

 鈴仙「早く………逃げて…。」

 

 かなり力を込められているのか苦悶の表情を浮かべていた。このままだと内蔵やら血管やらが潰れてしまう。こうなりゃやつをぶん殴るしかなくなった。俺は全力で走り、奴の顎へとアッパーをかました。

 

 皐月「逃げるわけねぇだろ!鈴仙が戦ってたのに俺が逃げたら意味ねぇだろ!」

 

 妖怪「ぐぉ、ぐぉぉぉぉぉ!!」

 

 つるでナギ払いをする妖怪。空中にいたためかわせずもろに食らった。

 

 皐月「ぐあっ!……いってぇ………。」

 

 初めから全力で殺しに来ているのだろうか一発一発が重い。クソッタレが………。能力さえ使えれば………こんなやつすぐにぶちのめせるのに……。

 

 鈴仙「もういいよ!私の事はいいから早く……逃げ……て…ぐっ…!!」

 

 この光景……前にも見たような………。俺の中に流れるのはいつぞやの記憶。黒髪の少女が敵に捕まった光景。銀髪の女性は買い出しか何かでいなく、俺一人で応戦している記憶。この絶望的な状況であの子は確か………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ???「もういい!私の事はいいから早く……逃げ……て…むぐっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうだ、あのとき俺は諦めずに………なら今回も同じだ。やらなきゃ何始まらないし終われない。

 

 皐月「逃げるかよ………。俺の辞書には後退って言葉はあっても逃げるって言葉は載ってねぇんだよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 胸がざわつく。血の流れが早くなる。感覚が研ぎ澄まされていく。力が………湧いてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 皐月「待ってろ鈴仙。今助けてやるからよ……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 雷鳴が………轟く!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 皐月「雷神の拳撃(トールハンマー)!」

 

 右の拳から雷撃が飛び、そのまま妖怪に直撃、鈴仙を手放した。

 

 鈴仙「うぐっ……!な、何が起きて……。」

 

 妖怪「ぐぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 皐月「………あれ?雷神化してねぇ。」

 

 [雷神の拳撃(トールハンマー)]を撃ったのに雷神化していなかった。その上[スパークモード]にすらなっていなかった。

理由は定かではないが俺の能力が変化したらしい。自然を操れることには変わりはなさそうだが………とにかく感覚が少し変だ。久しぶりだからだろうか。まぁいいや。力は戻ったんだ。これでやつを葬れる。

 

 皐月「覚悟しろよこの野郎。お前は跡形もなく焼き尽くしてやるからよ。」

 

 右手に目一杯の炎を纏わせた。烈火というより業火。全てを焼き尽くす神の炎の様に紅い紅蓮の炎。出した俺ですら驚くほどの火力。少し自分の力を試したくなったが……それよりも目の前の妖怪をぶちのめさなきゃ収まらないくらいに今の俺はキレていた。

 

 皐月「俺の友達に手を出したんだ………跡形もなく吹き飛びやがれ![炎符 : 火之迦具土(ヒノカグツチ)]!!」

 

 妖怪にアッパーを打ち、そのまま妖怪を空に打ち上げた。そのまま上空遥か彼方へと燃え尽き飛んでいった。その姿は火をつけられた花火の様に勢いを増し、静かに消えていった。

 

 皐月「…………戻ったな、完全に」

 

 だが一つ気になる事があった。明らかに力が増大しているのだ。別に「ためる」を使ったわけでも「バイキルト」を使ったわけでもない。「つるぎのまい」や「とおぼえ」もした覚えはない。俺の能力はまだ未知数なのかもしれない、まだ完成形では無いのかもしれない。それはまだ分からないが心当たりがあるとすれば俺が一度死んだ事にあるかも知れん。まぁ今ここで考えても仕方ないし取り敢えず鈴仙を回復させないとな。

 

 皐月「おーい起きろー。回復させたんだからもう起きれるだろ。」

 

 鈴仙「は、はい。起き上がれるけど………一体何したの?」

 

 一から説明した。クソめんどくさかったけど仕方ない。俺の能力の細部に付いては言わなかったが回復能力と炎、雷に関しては一通り話した。途中驚いていたがそんな事は知らん。

 

 鈴仙「凄いね皐月君………。私も頑張らなきゃ。それじゃまたね。カッコよかったよ!」

 

 …………カッコよかったね。初めから使えてりゃこうはならなかったんだ。カッコよくなんかねぇよ情けなくて仕方ねぇよ。二度と能力の使用不可なんてならない様になんとかしないとな………。

 

 美鈴「皐月さん大丈夫ですか!!?」

 

 皐月「うおっ!……ってなんだ美鈴か。何でこんなとこに?」

 

 ゆう「僕が呼んだんだよ。だってお兄ちゃん言ってたじゃん。助けを呼べって。」

 

 ま、真に受けてたのか……。あの母ちゃんでさえも。なるほどそれで息切れした美鈴がいるのか。納得納得。

 

 皐月「来てもらったとこ悪いけどもう終わったぞ。敵は灰になったし襲われてたお姉ちゃんも無事帰ったからな。」

 

 美鈴「そうなんですか!?って事は………皐月さんの能力が元に戻ったんですか!!」

 

 皐月「え、まぁそう言うことに………。」

 

 美鈴「やりましたね!」ムギュー

 

 何やってんだコイツいきなり抱きついて。2つのメロンが当たってます柔らかいです離れてください。

 

 皐月「ちょっ!抱きつくなって!」//////

 

 ゆう「お兄ちゃん顔赤いよ?」

 

 ゆうママ「あらあらほんとね。ふふ。」

 

 くそっ、こいつら………。まぁいっか。どうせ「皐月お兄ちゃんが襲われてるんだ!」とか言って美鈴を引っ張ってきたんだろうし心配もされたんだろうな。これくらいは良いだろ。むしろご褒美かもしれん。美鈴に抱きついてもらえてるんだからな。

 

 皐月「ほんじゃ俺も行きますかな。ついでに買い物もしたいし。」

 

 美鈴「私もお供しますよ。この前妹様が林檎を所望されてましたから買いに行きたいですし。」

 

 皐月「んじゃ行くか。またなゆう。あと美鈴顔が近い。」

 

 ゆう「またねー!!」

 

 ゆうママ「本当にありがとうございました!」

 

 俺と美鈴は帰路を辿った。そのさなかオレはふと思った。仮に俺の能力が発現しなかったら鈴仙と俺はどうなっていたのか。いや、あのタイミングで美鈴が来たのだから多分死ぬことは無かったのかもしれない。しかしあの親子はどうやってあの距離をあの短時間で………。

 

 美鈴「しかし功を奏しましたよ。買い物行く最中にあの親子を発見して事情を聞いたら皐月さんが危ないって話をしたんですから。」

 

 なるほどね。美鈴は人里にすでにいたのね。やれやれ運がいいな俺は。

 

 皐月「まぁ結局俺の能力が再発現して事無きを得たって感じだし意味無かったけど……来てくれてありがとう。ちょっと嬉しかったぞ。」

 

 美鈴「!!………はい!」

 

 満面の笑みで答えてくれた。俺はいい友達を持ったものだ。幻想郷に来て本当に良かったと心から思える。

 

 結局帰りは美鈴と共に買い物をし、その足で博麗神社へと帰った。買ったのは主に野菜だが何を作るかは決めてない。適当に足りないものを増やしただけという感じだ。

 

 霊夢「それにしてもあんたの能力が戻ってよかったわね。あれから一ヶ月何をしても戻らなかったのに。」

 

 箸を勧めながら話す霊夢。こらこら食べながら話すなと習わなかったのか。俺は習ってないけど。

 

 皐月「多分目の前で誰かがやられそうになったからだろ。まぁ何はともあれ戻ってよかったわ。これでようやく掃除が楽になる。」

 

 俺が掃除をする時は外は風、家は水+風で掃除してたからそこまで時間が掛からなかったが無能力者になった途端箒やら雑巾掛けやら面倒な仕事になった。ホント掃除好きの精神がわからん。

 

 霊夢「それでアンタの能力が強化されてる理由については分かったの?」

 

 皐月「確証はないけど俺が一度死んだからかも知れん。あの時俺の心臓は一度停止したって幽々子が言ってた。でも俺の息を吹き返して今もこうして稼働してる。その上で俺は能力の過剰使用で能力停止状態に陥った。多分この2つが重なったからこそ起きた現象なんじゃないかと俺は踏んでる。」

 

 霊夢「つまりなんにも分かってないじゃない。」

 

 皐月「そういうこった。まぁこれ以上深く考えても意味無いしこの話は終わりだ。」

 

 食べ終わった食器をちゃちゃっと片付け台所へと歩く俺と霊夢。その最中でふと思った。俺の能力の再発現の原因となった鈴仙は一体何者なのか、と。今まで人里には何度も行っているが彼女のことを見たのは今回が初だ。それに土地勘もないと言っていた。そしてうさ耳。謎が多すぎる。

 

 霊夢「どうしたの皐月。何か気になることでもあるの?」

 

 皐月「ん?いやなんでもない。それより早く食器洗って風呂入って寝ようぜ。あ、一緒に風呂はいる?」

 

 霊夢「は、入るわけ無いでしょバカじゃないの!」//////

 

 皐月「いってぇ!!?」

 

 思いっきり平手打ちを食らった。いってぇ……冗談だったのに本気でやりやがった………。

 

 皐月「本気でやらんでも………。」

 

 霊夢「あ、あんたが変なこと言うからでしょうが!」//////

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鈴仙「ただ今戻りました師匠!」

 

 ???「遅かったのね。何やってたの?」

 

 鈴仙「それが色々な事に巻き込まれてしまいまして………。迷子だったり妖怪だったり……。」

 

 ???「それで倒していた……と?」

 

 鈴仙「いえ、私がではなく私と一緒に行動してた人が凄い力で助けてくれたんですよ。雷と炎を纏って妖怪をたったの二撃で倒すほどの力で。多分私の「眼」を使わないと勝てない強さでしたよ。」

 

 ???「それは厄介な能力者ね。どんな妖怪だったのかしら。あなたを助けたって言うその能力者。」

 

 鈴仙「それが妖怪じゃなくて地上人、つまりただの人だったんですよ。」

 

 ???「人?ただの人がそんな力を……?私達の策に支障をきたすような人でなければいいのだけど。」

 

 とある一室での出来事。銀髪で赤と紺のツートンカラーで右上と左下が赤、左上と右下が紺色のどこの世界でも珍しいと言われるであろう色の中華服に近いものを着用している女性とうさ耳少女鈴仙の会話。

 

 鈴仙「大丈夫ですよ!もしもの時は私の眼を使って止めますから。」

 

 ???「そう。ならお願いね。これも全ては姫様の為に。」

 

 鈴仙「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして別室にて…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 ???「私のため……ね。私だけでなく私達全員の問題なの。だから………なんとかしないと。月の使者が来る前に。」

 

 三日月の夜、その月を眺めながら小さな声でつぶやく一人の女の子。ストレートで腰より長い黒髪、ピンク色で胸元には白色のリボン。地面についてもなお横に広がるほどの長い赤いスカートを穿いた少女がそこにはいた。

 

 ???「私も他の為に動いているの。貴方の気持ち、少しはわかるようになったわ………皐月。貴方は今どこで何をしているのかしらね……。会えるものなら会いたいわ。」

 

 

 

 

 

 

 

 




 霊夢「次はなんの話?」
 皐月「作者曰く暫くは日常系でいきたいらしい。」
 魔理沙「戦闘シーンあったよな……。」
 皐月「まぁそういう人なんだよ察して差し上げろ。」


 次回 : 第三十六話 呼ばれて行ったら……


 霊夢「どういう事?」
 皐月「察してくれ……。」
 魔理沙「何やったんだ…………。」




▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。