東方新記伝   作:黒鉄球

35 / 62
 どうも黒鉄球です。お気に入り登録者70人を突破しました!いやぁほんとにありがたいですね。それにUAも7000超えましたし……ほんとありがとうです!






第三十四話 見慣れない人と人助け

 

 

 

 

 

 春雪異変を終え、春は戻った。だが時期も時期だったため一ヶ月強で春は終わりを告げ、今はすっかり夏になってしまった。今は6月24日、チラホラと蝉の喧しくも夏の到来を感じる、そんな6月になった。なったのだが………。

 

 霊夢「あ、暑い………。雨季すっ飛ばし過ぎじゃないってぐらい暑いんですけど。」

 

 皐月「いや雨季は飛んでねぇよ十分ジメジメしてるよ。一ヶ月前が寒すぎて温度差に慣れてないだけだ。体感温度が変わるのも無理ないのだよ。」

 

 暑すぎるのだ。地球温暖化を疑うレベル。ほんとに氷河期が来るのかすら疑える。霊夢はうちわを扇ぎ、溶解化しそうな勢いで汗をかいていた。確言う俺も温度差が激しかったせいか汗をかいていてうちわを扇いでいる。能力さえ使えれば扇風機を使えるのだが………。

 

 皐月「まだ使えないんだよなぁ……。いつになったら使えるようになるんだろうな。」

 

 霊夢「仕方ないでしょあんた無理したんだから。アンタの言ってた「せんぷうき」ってやつ使いたいけど回復してない以上仕方無いわよ。あんたに負担もかけたくないしゆっくりじっくり回復させなさいよ。」

 

 なんてことだ。あの霊夢が俺を労ってくれている。命を張った甲斐があったってもんだぜ。それにしても今回は期間が長い。辛うじて飛翔と回復、そして復活は使えるのだが最悪な事に攻撃的能力が一切使えないのだ。つまりこの状態で異変なんか起きたら俺はベホマスライムの様な回復しか脳のないヒーラーなのだ。ザオリクは使えないから寧ろホイミスライムかもしれないレベル。へこむわ。

 

 皐月「俺はホイミスライム俺はホイミスライム俺はホイミスライム俺はホイミスライム俺はホイミスライム俺はホイミスライム………。」ブツブツ

 

 霊夢「何ブツブツ言ってんのよ怖いからやめてよ心配するでしょ。………気分転換に散歩でもしてきなさいよ。」

 

 皐月「散歩?………まぁどうせ暇だし行くか。霊夢もどうだ?」

 

 霊夢「私はここで寝てるわ。」

 

 言い出しっぺのくせに寝るとか………。まぁいいや。一先ず里の方に降りてみるか。もしかしたら涼めるところがあるかもしれん。

 

 皐月「んじゃあ行ってくるぞい。」

 

 霊夢「zzz」

 

 寝てやがった。もういいや行こう。あとついでだから食料調達にも行こうかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 博麗神社を降り、歩いて人里へと向かった。道中は木々が生い茂っており森林浴をしているような感覚になった。外の世界じゃ滅多に味わえなかった感覚だ。実に気分が良かった。風で草木が踊り、大いなる自然を感じさせた。そんな中で人里に到着した。

 

 皐月「やっぱり風情を感じるよねぇ。こういうのを侘び寂びって言うのかねぇ(適当)。」

 

 人里の町並みはいつ見ても落ち着く。さて、来たのはいいがどこへ行こう。買い物は最後でいいとしてそれまでは………そういえば本屋があるとか前に霖之助が言ってたな。そこ行くか。

 

 ???「ど、どうしたんですか僕。迷子ですか?」

 

 少年「ま、ママとはぐれちゃった………ママァ!!」エーン

 

 早速躓いた。俺の行く手には母親と逸れたであろう子供が一名と藍色のスカートとブレザー、白いYシャツに赤いネクタイを着用した菫色の髪をした女の子が一名。そしてうさ耳。なんでうさ耳つけてんのあの人。見覚えがあるような無いような気がするけどまぁいいや。目撃してしまった以上手を貸さざるを得ないな。出なきゃ罪悪感に押しつぶされちゃう。

 

 ???「わっ!え、えっと、な、泣かないでください。私が見つけてあげますから!で、でも土地勘あまり無いし……どうしよう。」

 

 皐月「よけりゃ手伝ってやろうか?」

 

 声をかけると肩をびくっと震わせるうさ耳少女。ちょっと傷付いちゃったよ。

 

 ???「あ、あの、お願いします。私ここの土地勘無くて………と言うかあまり覚えてなくて。」

 

 皐月「ふ〜ん、まぁいいよそれは。少年、母ちゃんの特徴は?」

 

 目線を子供に合わせ、いつもの口調で話す。威圧的に見えるだろうが仕方がない。俺はそういうの苦手なんだ。

 

 少年「え、えーっと……美人って言われてるよ。あとは……あとは……。」

 

 皐月「髪型とかはどうだ。後ろ結びとかあのお姉ちゃんみたいな長い髪を下ろしてるとか。」

 

 俺の横に立つうさ耳少女に指を指す。特徴さえ掴めればあとはどうとでもなるからな。

 

 少年「髪は結んでないよ………お姉ちゃんといっしょだよ………。」ヒック

 

 皐月「それじゃあ服装は?何色?」

 

 少年「……青。」

 

 青色………。青の浴衣かな。それならばかなり簡単に見つけられそうだな。外の世界なら。だがここは幻想郷。ザラにいるから非常に困った。

 

 ???「わかりました。それじゃあ早速探しに行きましょう!」

 

 こうして俺達の迷子捜索は始まった。ただの散歩のつもりがいやはや面倒事に首を突っ込んでしまった。このままでは妖怪の争い事にも巻き込まれていくんじゃないかと思えるレベル。今はただのヒーラーだってのに。

 

 皐月「あ、そういやあんたの名前は?」

 

 ???「名乗ってませんでしたね。私は鈴仙・優曇華院・イナバといいます。出来れば鈴仙と呼んでください。」

 

 皐月「う、うど……?まぁいいや、俺は神条皐月だ。気軽に皐月でいい。」

 

 鈴仙「皐月………何処かで聞いた名前ですね。まぁいっか。ヨロシクね皐月くん。」

 

 自己紹介が終わり、一先ず歩く事にした。うむ、視線が痛い。まぁそれもそうだろう。俺の服は洋のものだし鈴仙に至ってはもはや制服だ。そんな二人の間に黄土色の浴衣を着た少年がいるのだ。アンバランスにも程がある。しかもうさ耳だし可愛い。男どもの視線を感じる。

 

 皐月「……………。」

 

 鈴仙「し、視線が……。私達何か変なのかな?」

 

 皐月「いや俺らの服装が馴染んでないって事に気付けよ。まぁそれだけじゃないと思うが……。」

 

 すれ違う奥様方からは「あらあら若い夫婦ねぇ」とか「お子さん可愛いわねぇ」とか聞こえてくるしその辺の男達は舌打ちしてるし鈴仙の事ガン見してるし殺気感じるし本当に勘弁してくれ。俺の胃が持たない。誰か胃薬プリーズ。

 

 鈴仙「それにしても見つからないね、青い着物を着た女性。」

 

 皐月「チラホラいただろうが。他の特徴は不一致だったからスルーしてたけど。」

 

 鈴仙「い、居たの?全然気が付いてなかった……。」

 

 皐月「はぁ……お前探す気ある?」

 

 ここまで来るとその気さえ疑える。ほんとなんで協力しちゃったかな俺。ほっとけばこうはならなかっただろうに。つーか本屋行きたい。

 

 少年「ねーねーお兄ちゃん。」

 

 待て子供の「それ」は嫌な予感しかないぞ。トイレか?アイスか?お菓子か?

 

 皐月「なんぞ。」

 

 少年「あのお団子食べたい。」

 

 はいお団子のオーダー入りました。ふざけんな、こちとらお前くらいの歳のときから既に自分でどうにかしてたわ………って俺が特殊すぎるだけか。はぁ、こうなったら子供は面倒くさいぞ。「ママ買ってよ~!買って〜買って〜!!」って駄々をこねてくるのがテンプレだ。だが団子を買ってやるほど俺はお人好しじゃない。ここはキッパリ断ろう。

 

 皐月「ダメだ、とっとと母ちゃん探すんだろ。だったら寄り道してないで行くぞ。」

 

 少年「やだぁ!今食べたい!買って買って〜!!」

 

 ほら出たやっぱりこうなった。買ってくれなかったらすぐこれだからな。少しは我慢しろよ。つーかさっき会ったばかりの赤の他人の金で何買おうとしてんだ。図々しいぞ。子供だから仕方ないなんて言うのは甘々な答えだ。買わんと言ったら買わん。

 

 鈴仙「な、泣かないで。ほら、お姉さんが買ってあげるから。」

 

 子供に弱すぎるだろ……。あと睨むな怖いから。

 

 皐月「なんだよ睨むなよ。他人のガキにこれ以上優しくする道理はねぇだろ。」

 

 鈴仙「乗りかかった船って事もあります!もう少し優しくしてあげたらいいじゃない!」

 

 皐月「あのな鈴仙。俺は別に神様でも仏様でも聖母マリアでもないの。なんで俺が見ず知らずのガキの駄々を聞かなきゃいけないんだ。」

 

 鈴仙「子供は我慢するのが難しいの!大人ならそれ相応の対応をして!」

 

 皐月「甘やかしてたらそういう大人になっちまうだろ。駄々さえこねれば周りが手助けしてくれるなんて思わせたら嫌な大人に成長しちまうだろ。」

 

 往来の中で俺と鈴仙は口論しまくった。周りの目なんて気にせずにただ自分の意見を主張した。自分では分かっている。あんな小さな内からそんなことを覚えさせる必要はない。でもなんだろうな、自分の置かれていた状況があまりにも酷かったから自分を押し付けてしまっている様なそんな感覚にも見舞われた。

 

 鈴仙「もういいよ!私が買うから!」

 

 皐月「おい!………ったく。ホントなんでこんな事になってんだろ……。」

 

 鈴仙が団子屋に消えた頃に自分の中で少し反省をした。何をムキになっているんだと。自立出来ていない子供を見たから?違う、それが当たり前なのだ。親や大人に付いていないと何も出来ない事が当たり前なのだ。だが俺は違う。自立せざるを得なかった。その現実が多分俺を今でも苦しめているのかもしれない。大人げないことをしたな。とは言え………俺は子供が苦手だ。これ以上優しくできるか、出来ないな諦めよう。

 

 少年「あの……お兄ちゃん。」

 

 皐月「ん?なんだ。お兄ちゃん今反省中だから鋭利な言葉とかやめろよ。」

 

 少年「お姉ちゃんと仲直り……して。」

 

 子供というのは純粋だ。汚い事を知らない。だからこそこの少年は涙を流して俺に言っているのだろう。仲良くして欲しいと本気で思っているのだろう。参った本当に情けない。俺の考え方は一から改めないとな。

 

 皐月「安心しろよ。もう喧嘩なんざしねぇからよ。だから泣き止め少年。男がそんな簡単に泣いてちゃナメられちまうぞ。」

 

 右手を頭の上へと持っていき雑に撫でた。これが今の俺にできる精一杯の優しさだ。子供には厳しすぎるのもダメだが甘やかしすぎるのもだめだ。こういう時にもアメとムチと言うのは非常に需要がある。甘やかす時は甘やかし、我慢させる時はさせる。そういうバランスが必要なのだ。

 

 少年「うん!お兄ちゃんも仲直りしてよね!」

 

 皐月「へいへいわかりやしたよ。っとお姉ちゃんが来たぞ。」

 

 鈴仙が団子屋から駆け足で帰ってきた。手には木のプレートに三本のみたらし団子があった。……三本?なぜに?

 

 鈴仙「待って、言いたいことはわかるから言わなくていいよ。なんで三本なのか……だよね。」

 

 皐月「分かってんのなら言えよ。いじめ?三本買ってきたけど実は二本は少年、もう一本は自分用ですーとかって新手のいじめか?」

 

 本当にそうだったらかなり傷付く。多分当分外出られないくらいに落ち込めるレベル。

 

 鈴仙「違いますよ。一本ずつです。………少し言い過ぎたかなって思ったから。」

 

 顔を斜め下に向けてモゴモゴとしている。何これなんてラブコメ?いや俺にはそんなラッキーは起き……ないとも限らないけど悪印象は持たれてるだろうからこいつはないな。とは言え鈴仙なりの反省なのだからこちらも折れないとな。

 

 皐月「俺の方こそ悪かったよ。言い過ぎた。すまん。」

 

 鈴仙「わかればいいんです。さ、みんなで歩きながら食べよう!」

 

 なんか元気になってるし………まぁいっか別に。あ、この団子うまいな。

 

 

 

 

 




 霊夢「この話延ばすの!?」
 皐月「ちょっと区切りが良くなったから……つい。」
 魔理沙「作者の気持ちを代弁してるぜこいつ……。」


 次回 : 第三十五話 変化する何か


 霊夢「何が変化するのかしら?」
 作者「北○鮮の意向。」
 皐月「やめろよ!怒られるだけだから!」



▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。