東方新記伝   作:黒鉄球

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 どうも黒鉄球です。UA数が4400を超え、お気に入り登録者様が50人を突破いたしました。これからも宜しくです。約5000文字ですけど読んでってください。あと何か有りましたらコメよろしくです。









第三十話 春雪異変第十話 : 足りない者

 

 

 

 

 あの皐月の命を賭けた行動は直ぐに紅魔館主であるレミリアに伝えられ、そして従者達にも伝えられた。レミリアは黙ってその話を受け入れた。咲夜は平常を装っていたが目には涙が溜まっていた。パチュリーと美鈴は帰ってくると信じ、自分の仕事に打ち込んでいた。まるで現実から目を逸らすように。フランは部屋に篭り、昔の様に出てこなくなったという。そして冥界から帰還した私達は今……紅魔館にいる。理由はレミリアの一言から始まったのだ。

 

 レミリア『あなた達はここに留まりなさい。傷を休めて行くといいわ。部屋は安心しなさい。空きが有り余ってるから。』

 

 私たちはその一言に甘んじ、家へ帰らず只々紅魔館に居座った。

 

 魔理沙「それにしても一週間………皐月、お前……大丈夫かよ……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 あの日から一週間、私は部屋に篭りっきりだった。現実逃避……もあるけど外に出る気分になれなかった。枕のシミの数を数える度に私の無力さを知った。それでも尚私はあそこに残りたかった。家族を失うのはもうたくさんだったから。

 

 霊夢「外……出よっかな……。」

 

 ふと外に出たくなった。外の空気を吸いたくなった。私は部屋のドアを開け、中庭へ出た。綺麗な花が数種類に渡って植えられていた。私はそこを横切って噴水の縁に座った。只々花を眺めて外の空気を吸って、二酸化炭素を吐いた。それだけで気分はマシになった。そしてふと空を見上げた。雪は降っておらず、晴天で、暖かい風が吹いていた。季節は春、異変による春の減少は収まり、いつもの幻想郷が戻っていた。異変は終わった。なのに清々しい気分にはなれず、こんな所で呆けている。春ってこんなに苦しい季節だったっけ……。

 

 美鈴「霊夢さん、こんなところで何してるんですか?」

 

 後ろから声がした。そいつは緑色のチャイナ服を着ていて、長い赤色の髪を靡かせていた。

 

 霊夢「……美鈴。何のよう?今私忙しいんだけど。」

 

 美鈴「こんなところで呆けてる人が忙しいのなら幻想郷中の人が忙しいですね。」

 

 等と他愛のない会話をした。手元には如雨露が見えた。なるほど花壇に水やり中だったのね。それにしてもこいつ……。

 

 霊夢「目、腫れてるわよ。」

 

 美鈴「そういう霊夢さんこそ目が腫れてる上に死んでますよ?」

 

 と言うか窶れてますよ。と言われた。本音を言うと参っている。いくら外の空気を吸っても、顔色は変わらないようね。ここ最近余り食事も喉を通らなかったし食欲もなかった。咲夜が居ながら不衛生な生活を送っていた。多分彼女も参っているのだろう。それほどまでに皐月の存在は大きかったという事かしらね………。

 

 霊夢「目が死んでるは余計よ。そういうアンタこそ目に光が見えないわよ。アンタこそ窶れてるじゃないのよ。」

 

 たはは、と笑う美鈴。その笑みは哀しみに満ち溢れていた。無理もない。彼女は皐月の事を好いていたからその分私とは違った哀しみがあるんだと思う。私が言うのも変だけど少し痛々しく見えてしまった。

 

 美鈴「分かっちゃいますよね……。……ちょっとすみません。」パタパタ

 

 駆け足でその場を離れていく美鈴。恐らく泣いてしまったのだろう。いくら仕事で気を紛らわせようとも皐月がいない現状が重く突き刺さる。皐月を思い出すだけで泣き崩れてしまう。皐月一人がいないだけで私達の心にはぽっかり穴が空いたようだった。

 

 霊夢「お願い……皐月………生きてて…。」

 

 私は祈る事しかできなかった。誰とも分からない博麗神社の神様に………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 皐月が異変解決のために一人冥界に残った。そう聞いたとき私は愕然とした。あの霊夢と魔理沙が居ながら二人は敗走し、皐月一人が残り戦う事になってしまったことに。私がこの話を聞いたのは皐月が異変解決に向かった次の日だった。私は少し後悔をした。私もあの時ついて行ってればこうはならなかったのではないのか、と。だけどもう時間は戻らない。死んだ人は帰ってこない。

 

 アリス「はぁ……。魔理沙……大丈夫かしら?」

 

 リビングの椅子に座り、紅茶を飲みながらため息をついた。

 

 上海「シャンハーイ」

 

 この子も心配をしているのね。あの日以来魔理沙は森に帰ってない。レミリアの話によれば当分は家に帰るつもりはないらしい。無理もないでしょうね。信じて後を託した人が一週間も帰ってこない。もはや死人も同然。自分を責めているのだから……。けど……。

 

 アリス「大丈夫……皐月は必ずどこかで………。」

 

 そう呟きながら私は紅茶を飲んだ。その時の紅茶は少し塩っぽい気がした………。きっと、私も………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 あの日、私がもしあの人を止めていたならこうはならなかった。霊夢が泣き崩れ、美鈴さんが光を失い、私も主を失うことは無かったのかもしれない。

 

 あの異変以来私は下界にある紅魔館というところに滞在している。今の冥界には近づきたくなかった。幽々子様との思い出があるから……。

 

 紫『冥界には誰もいなかったわ。多分相討ちになったんだと思うわ………。西行妖は枯れ、皐月と幽々子は消息不明。相討ち以外考えられないわ。』

 

 紫様は涙を流しながらそう言っていた。自分の親友が行方不明になったのだから当たり前といえば当たり前だと思う。私も主が消え、枕を濡らす日々が続いていたのだから。

 

 妖夢「幽々子様………私はどうしたら……。」

 

 枕を抱き、顔を埋めながら私はそう呟いた。主も守れず、命を賭けた人を救う事も出来なかった。その事実は重くのしかかり、私を苦しめていく。いっそ誰かに責められたほうが楽になれる……。

 

 妖夢「……帰ってきてください……幽々子様……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 レミリア「………空気が重すぎるわよ。ここ本当に紅魔館かしら?」

 

 あの日以降皆の空気が重い。勿論私だって悲しくないわけじゃない。皐月には恩があるし、嫌いじゃない。多分みんなもそう。でもそれにしたって重すぎるわ。自分家じゃないみたい………。

 

 レミリア「フランも閉じ籠っちゃったしこういう場合どうすればいいのかしらね?ねぇ咲夜?」

 

 咲夜「私に振られても困りますお嬢様。そもそも霊夢達をここに置いたのは他でもないお嬢様が言い出した事ですよ?」

 

 私の隣で紅茶を入れつつ話を進める咲夜。いや、貴方も大概よ?初日はがん泣きしてたじゃないのよ……。と言うか復活早すぎだし。

 

 レミリア「仕方ないじゃない。あのまま帰して生気の無いまま生きていずれ死ぬなんてことさせたくなかったし。」

 

 まぁ泊めた所で気持ち的には変わらないだろうけど。咲夜もいるし少しはマシだと思ったのよ。

 

 咲夜「あ、そう言えば先程パチュリー様が妙な気配を察知してましたよ。」

 

 あら、あの子は意外と普通なのね。妙な気配……ね。どうせ意気消沈の博麗の巫女を倒して最強の座を頂けるとか思ってる少妖怪だと思うけど一応確認に行かせようかしら。

 

 レミリア「美鈴に門を張らせなさい。それよりパチェの調子は?妙な気配を察知とは言ってたけどあの子の具合はどうなの?」

 

 実のところパチェは皐月の消息不明を聞いて以来図書館に篭って何やら魔法陣の構築をしているとか。まぁ無理し過ぎて倒れたけど。喘息持ちなのに無茶するから……。

 

 咲夜「割りと普通でしたよ。でもやはりと言いますか……精神的には参っているみたいで……。今コアが看ていますから問題は無いとはおも……いたいですね。」

 

 何でそこは自信ないのよ。あの子が自殺するとでも?無い無い、絶対無いわ。皐月に拾われた命を態々捨てるほど馬鹿じゃないわよ。……フランは分からないけど。

 

 レミリア「はぁ……。フランはどう?」

 

 咲夜「お兄様が帰ってくるまで遊ばない!って言ってました。次来たときに遊ぶ約束をしたから必ず帰ってくるって。」

 

 割りと普通だった……。なんだ、あの子が一番大丈夫そうじゃないのよ。もしかしたらあの子が一番皐月の生存を信じているのかもね……。でもあの賢者は……。

 

 紫『冥界には誰もいなかったわ。多分相討ちになったんだと思うわ………。西行妖は枯れ、皐月と幽々子は消息不明。相討ち以外考えられないわ。』

 

 なんて言ってたし……かと言ってフランにそれをストレートに言うのも嫌だし……はぁ、何このジレンマ。すごい嫌。

 

 レミリア「あーもう!早く帰って来なさいよ皐月!」

 

 両腕を上下振りながら文句をたれる。その際咲夜が鼻血を出した気がしたけど気のせいってことにしておこうそうしましょう。

 

 咲夜「そ、それでは美鈴に門の見張りを再命令してきます。」

 

 あ、消えた……。はぁ……無理しちゃって……咲夜も、パチェも、私も。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 パチュリー「むむむ……コア、そこどいてちょうだい。」

 

 コア「拒否します!いくらパチュリー様の命令でもそれは聞けません!今は寝てください!」

 

 コアに制止されたわ……。早くあの魔法陣を完成させて皐月の居場所を突き止めようと思ったのに。……成功するかどうかはわからないけど。

 

 パチュリー「でも皐月の居場所……。」

 

 コア「その前にパチュリー様が倒れられては本末転倒ですよ!?会う前に死にますよ!?」プンスカ

 

 ダメだ正論で返されてしまう。でも一刻も早く知りたいのよ。生きているのなら早く会いたいし、もし死んでいるのなら意地でも生き返らせるし。その法はまだ手がかり一つ掴めてないけど。

 

 コア「会いたい気持ちは分かりますけど無理して倒れちゃったら皐月さんが呆れちゃいますよ?「何やってんだお前馬鹿だろ。」って言われちゃいますよ?」

 

 何それ皐月の真似?に、似てない……。と言うかこの子さり気なく私に馬鹿って言ったわね。

 

 パチュリー「次のお小遣い半減ね。」

 

 コア「何でですか!?馬鹿ですか!?馬鹿って言ったからですか!?」

 

 パチュリー「冗談よ……。だからそんな涙目にならないで。それに……馬鹿なことしてるって自覚はあるもの。」

 

 ずっと図書館に篭って特定の人を探知する魔法陣の構築の為に魔道書を漁っては構築して改良して失敗しての繰り返し……。本当に何やってるんだろ私……。皐月が居なくなっただけでこんなになっちゃうなんて………私本当に皐月の事が好きなのね……。

 

 パチュリー「皐月……生きててちょうだい……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 美鈴「はぁ………こんな時に妙な気配がとかやめてくださいよ……。今やる気起きないんですから……。」

 

 咲夜「普段から寝てる人が何言ってるのかしら?しっかり見張ってて。じゃあよろしくね。」

 

 そう言って咲夜さんは館に戻った。ただでさえ皐月さんが居なくなって意気消沈なのに侵入者が来るかもしれないなんて………なんて日でしょう。

 

 美鈴「でもどうせ此方には来ませんって。だから……寝よう。」

 

 門の脇に寄りかかって眠り……基、見張りを開始した。どうせ誰も来ない。来ても紫様くらいだと思いますし……。と言うか……。

 

 美鈴(ライバル多すぎて怖い。)

 

 いつの間にかと言うかパチュリー様、紫様、お嬢様が皐月さんに恋心を抱いているような……。しかも皆綺麗で可愛いし……。勝てる気がしません……。霊夢さんは……よく分かりませんけど……。と言うかあの人私の目から光が消えてるなんて言ってたけどほんと……なのかな?私もあんな表情をしているのかな……。

 

 美鈴「皐月さん……私も含めた皆さんが貴方を待ってるんです……。死んでなんか……いませんよね………。」ウルウル

 

 涙が出てきた。もし本当に永遠に帰ってこなかったら私はどうすればいいのか……そしてそんな事を考えたくなかった。彼が好きだから。そんな考えを目を瞑りながら巡らせていた。そんな時に遠くから足音が聞こえた。気配を悟らせることなく、私の近くから。

 

 美鈴「!誰ですか?!」

 

 目を開き、拳を構えた。でもその拳も無意味だった。なぜならその人物は………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 皐月「何だチミはってか?そうです私が変なオジサンです。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私の想い人が包帯や、ガーゼをつけた状態で目の前に立っていたから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 作者「帰ってきた皐月、そしてそこには幽々子ノ姿も。二人は一体何をしていたのか!?そして一週間の間に何があったのか!?」


 次回 : 第三十一話 春雪異変第十一話 : 戦士の帰還禄


 作者「因みにかなり長めに書く予定です✩」
 皐月「一人で何言ってんだ?」





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