俺達は上空に空いた穴に入った。その中は一点の光の無い[闇]が広がっていた。空気が重く、長居すれば呑まれそうな空間だった。つーか長くね?早く降りたいんだけど。
魔理沙「おーい皐月!今度魔理沙ちゃん特製のきのこスープ作ってやるから機嫌直してくれよー!」
うっわすげぇくだらねえ取引持ちかけられた。つーか魔理沙のきのこスープとかお腹壊しそうで嫌だわ。霊夢の腕前だったら普通に美味しそうになるけどな。魔理沙は料理出来そうな感じはない。
皐月「あ、地面だ。」
どうやら着いたようだな。石造りの地面、そして目の前には石の階段。そしてその端にはこれまた石造りの灯籠が並んでいた。と言う事は犯人は日系……なのか?とか考えたいたら上から魔理沙達が降りてきた。遅かったな。
霊夢「これまた長い階段ね。はぁ……とっとと終わらせて寝たいわ。あと人里で食料増やしてもらわないと……。」
こいつが来た目的はそういう事か。人里ね、どうせ慧音に言われてきたんだろうな。食糧難になりそうだー、人里の物価が高くなるーとか言われたんだろうな………。アリスと慧音GJ部!
魔理沙「私はとっとと終わらせて炬燵に入りたいぜ。」
お前はまだ家にいるつもりかよ……。いや呼んだの俺だけどさぁ。もうちょい遠慮しろよ。というか働けコタツムリが。
皐月「はぁ……行くぞ。」
自然と溜息が出る。本当真面目に思うけど昔は霊夢こんなんじゃなかったよな?もうちょい働いてたよな?誰だよこいつこんなにしたの。………俺か紫さんだな。
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一体何段登ったのただろうか。長すぎるせいでちょっと面倒くさいぞ。確か日本一長い階段は3333段だったよな?下手したらそれより長い説が浮上するぞ。
霊夢「………疲れた……。」
俺の一つ後ろにいる霊夢から聞こえてきた。いやまじかよ。ここ敵の本陣だぞ。んなとこで休めるか!とか思ったのでしかたが無い。俺の能力を使おう。
皐月「しょうがねぇな。ほーらちょいと失礼。」
俺は霊夢の肩に手を置いて体力を元に戻した。俺の能力は傷の回復だけではなく体力すら回復させる事のできる[超回復]をも扱える。使いたくないけどまぁ霊夢には色々世話になってるし何時までも拗ねてても仕方ない。
霊夢「あ、ありがとう……。あの……その……。」
霊夢が何かを言いかけたので耳を傾けようとしたら反対側、上の方からカツカツと階段を降りる足音が聞こえてきた。俺達は直ぐに臨戦態勢を整えた。魔理沙はミニ八卦炉を、俺は雷を、霊夢は払い棒と札を用意した。それからすぐに足音の正体がわかった。日本の刀を携えた短髪にして白髪、黒いリボンを頭につけ、傍らに白い「何か」を漂わせている女の子が歩いてきた。歩き方、仕草、雰囲気から咲夜を連想させた。そして思った。この子は強い、と。
???「侵入者は三人……ですか。一応お尋ねしますがこの[冥界]になんの御用でしょうか?」
何やら礼儀正しい子だな。常に敬語を使ってます感があるな。まぁそれを差し引いても雰囲気からしてかなりの手練だから油断は出来ないけどな。つーか冥界って言った?ここあの世なの?死んでもないのに冥界に来るとは思わなかったゾイ。にしてもこの子何処かで……?
???「あの……なんですかそんなに私の顔を見て。」
皐月「あぁいや、お前の顔何処かで見たなーと思ってな。今思い出したわ。お前無縁塚の歪みの中にいたやつだな。」
???「………何の話でしょうか?」
うん何言ってるかわかんないよね。だってあの時霖之助も魔理沙もあの歪みは見えてなかったんだもんな。と言う事は向こうも見えてなかったってことだよな。つーか俺が見たのは横顔だったし見えてなかったんだろうな。てことはあの時の歪みは冥界に繋がってたってことだよな。俺だけ見えてたとかなに?俺今日死ぬの?
魔理沙「もしかしてこの前のか!」
さすが魔理沙。あの場にいたから理解してくれたか。まぁこいつも見えてなかったんだろうけどな。
霊夢「その話は後でにしなさい。今は要件だけ伝えましょう。……とっとと退治されなさい。」
好戦的すぎだろお前!いきなり退治されろとかひどいなお前。つーかもうお互いに構えてるし!待って!ちょっとだけ待って!
皐月「落ち着けよお二方。今お前らが戦ったって仕方ないだろ。ここは一旦話をだな……。」
言いかけたところで白髪の少女から刀が飛び出し、俺の喉元に突きつけられた。少し刺さってるし血出てるし。
???「侵入者の話は聞きませんよ?私は主の為にあなた方を止めるだけですから。安心してください。苦しまないように[殺しますから]。」
この子……本気だ。このまま俺を殺す気だ。本気で殺す目をしている。この子にはその覚悟がある。ならオレは……。
皐月「殺すって事はお前さん………死ぬ覚悟も出来てるってことだよな?」
その瞬間俺は殺気を放った。目の前にいた少女は後ろに跳ね跳び、後ろに居た霊夢と魔理沙は二歩ほど後ずさっだ。そこまでの殺気だった。だってそうだろ?殺すって事は同時に殺される覚悟をしなきゃいけない。生命を奪うってことはそういう事だと言う事を俺は嫌というほど知っている。俺を殺しに来た奴はそんな覚悟もなしに俺に向かってきて、いざ自分が殺されそうになったら命乞いをしてきた。命ってのはそんなに軽くない。命には生命をかけるしかないんだよ諸君。
???「私は死にませんよ。まして貴方は人間ではないですか。半人半霊の私には勝てませんよ。」
皐月「なるほどその白いのはお前の半身って事か。また随分と常識外れな奴がいたもんだな。まぁんなことはいいや。魔理沙、霊夢。お前らは先に行け。こいつは俺一人で相手をする。」
俺の一言に眉を引くつかせているがそんなのは気にしない。二人を前に行かせないといけない気がした。二人でなければいけない予感があった。だから二人にボス戦は託す。
霊夢「……え、えぇ。わかった。行くわよ魔理沙!」
魔理沙「え、お、おう!皐月!ここは任せるぞ!」
呼ばれてようやく反応を示す魔理沙。こいつまさか俺の殺気に当てられて意識飛んでたな?まぁいいや。ひとまず………こいつの刃を止めないとな!
???「行かせませんよ!」
半人半霊の少女は刀を横一線に振り魔理沙の首を目掛けて振った。だがその刃は届かず、黒い物体によって防がれた。少女は驚愕し、霊夢と魔理沙は脇目も振らずに上へと飛んでいった。
皐月「殺らせるわけねぇだろ。お前、俺が丸腰だからって油断してたな?俺がその刃を止められねぇとでも思ったんだろう?残念、俺にもその刃を止める刃くらい持ってるぜ?」
そう言いながら俺の周りに先程の黒い物体が俺の周りを螺旋状に駆け巡っていった。黒い物体には電磁波が流れ、一つ一つが振動を起こし、まるでチェーンソーの様に動いていた。
???「なんですかそれ?そんなもの見たことありませんよ。」
目の前の少女は得体の知れないものを前に鋭かった眼光を更に鋭くし、質問してきた。そうか、この時代っつーかこの世界には磁力なんて発想や概念はないのか。
皐月「こいつは砂鉄って言ってな。地面や土の中にある極細の鉄、いわば砂見てぇなものでね。俺の能力でそれを何万粒と集めてこうやって鞭みたいに形成してるんだよ。まぁ鞭というより刀だけどな。」
説明をしながら鞭状に形成されていた砂鉄を刀の形に変え、俺の手に収めた。その様子に疑問を抱いたのか少し眉間にシワを寄せていた。
???「どういうつもりですか?態々刀にするなんて……まさか同じ土俵で私に勝てるとでも?」
皐月「勝てる勝てないじゃなくて戦ってみたいと思ったんだよ。純粋に能力抜きで戦えるやつなんて幻想郷では少ないからな。まぁこの刀は能力で作ったものだけどな。」
刀が手元にないのだから仕方が無い。勘弁してちょ。そういやこんなの使ってた奴いたな。電撃姫だったっけかな?
???「なるほど……。ではお望み通り剣術のみでの戦いといたしましょう。……私は魂魄妖夢。ここ冥界にある白玉楼の主、西行寺幽々子様の従者で庭師です。あなたはの名前は?」
どうやら戦う前に名乗るのが彼女の礼儀らしい。ならその作法に則り俺も名乗るとしよう。彼女のように細かくな。
皐月「俺の名前は神条皐月。元は外の世界の住人だったが訳あって此処に居残りしている家出少年だ。今は博麗神社に居候させてもらっている。よろしく妖夢。」
挨拶が終わったところで俺は右手に砂鉄剣を構え、妖夢は両手で長剣を構えた。どうやら短剣はまだ使わないみたいだな。ま、どっちでもいいけどな。俺の目的は勝つことじゃないし。
妖夢「それでは参ります。この[桜観剣]に切れぬものなど………あんまりない!」
皐月「いやそこは無いって断言しろよ!」
ツッコミから始める俺達の戦いだった………。
――――――――――――――――
皐月が私達を先に進ませてから2、3分は経ったかしら?あいつの事だし大丈夫だとは思うけどあの白髪、相当な刀使いっぽかったし魔理沙だけでも残しておくべきだったかしら?………いや、皐月が私たちに行けと言ったんだから大丈夫よね。私たちは私達のやるべき事をやるだけよ。
魔理沙「おい霊夢。どうやら本拠地の入り口、門があるぜ。」
目の前には大きな門と屋敷があった。その中に入ると庭に桜が咲き乱れていた。まさか冥界にこんなとこがあったとはね。というか冥界を目にする事になるとはね。
霊夢「魔理沙、油断はしないでよね。あの奥の大木、あそこから妖力を感じるわ。それと……霊力。どうやら春度も飛んでるみたいね。あれが本丸よ。」
一番奥には枯れている大木があり、春度はそこに向かって飛んでいた。そしてその根本には人が一人で立っていた。あれが主犯ね……。とっとと終わらせたいわね。嫌な予感しかしないから。
???「あら?妖夢はどうしたのかしら?あの子が貴方達を迎え撃ちに行った筈なんだけど……?」
その人物は少しくらい水色のナイトキャップに白い三角巾、そして同じ色で作られた和服っぽいようなドレスを着ていた。髪は桃色で短く、肌は色白。まるで死人のようだった。
霊夢「その子なら皐月が足止めしてるわ。その間にあんたを退治すればそれで終わりよ。それよりあんたは何者?」
私の質問にふふっと笑い扇子を開いて口元に当てた。その仕草、どうも紫と被るわね。まさかとは思うけどあのBBAと知り合いなのかしら?……何故か寒気が。
???「私は西行寺幽々子。ここ白玉楼の当主で冥界の管理人よ。異変を起こした理由はこの木に桜を咲かせたかったから。ただそれだけよ?博麗の巫女さん?」
理由が稚拙ね。あの妖力の塊に桜を咲かせる。どんな意味があるのかは分からないけど放っておく訳にも行かないわね。……私の勘はよく当たるから。
霊夢「どうやら私を知っているみたいね。でもそんな事はどうでもいいわ。あんたが何者で、目的がなんであっても私が退治するだけだから。」
私もだぜ!と被せてくる魔理沙。まったくコイツは……。足だけは引っ張らないでほしいわね。
幽々子「貴方は?見たところただの人間っぽいけど?」
魔理沙「心外だぜ!私は霧雨魔理沙!ただの魔法使いだぜ!お前はこの魔理沙様が退治してこの異変を終わらせてやる!霊夢!足引っ張るなよ?」
挑発してるのかしらこの子は。私より弱いのにどこからそんな自信が出るのやら……。ま、共闘って事でやりますか。
霊夢「あんたこそ足引っ張らないでよね。手柄云々は別としてこいつを倒して異変を解決する事だけを考えるわよ。」
私はお祓い棒と霊符を構えて、魔理沙はミニ八卦炉を、主犯は扇子をパタパタさせていた。どうしよう……すっごくムカつく!
幽々子「さぁ始めましょう?お互いの目的の為に……ね?」
こうして私達の戦いの火蓋は切って落とされた。死なないでね、皐月。私はまだあんたに………謝れてないから。
皐月「さて、どっちを先にやるんだ?」
作者「次回予告を見りゃ分かる。」
霊夢「毎回適当すぎよあんた。」
次回 : 第二十五話 春雪異変第五話 : 妖夢VS皐月【前編】
皐月「後編まであるのか……。」
作者「ちょっと長めに書きたいからね。」
霊夢「中編ってオチも………。」
皐月「無いよね!?」