我が友霖之助と無縁塚に行って早四ヶ月が経過しようとしていた。つまり5月である。あの地獄のように寒かった冬を超え、ようやく春となった。外からは暖かな風が入ってきて、小鳥の囀りさえ聞こえてくる、そんな季節のはずだ。
皐月「なのにどうしてまだ雪が降ってんだ。あれか?季節もとうとう変わるのが面倒になって怠惰になっちゃったのか?魔女教の人に言われちまうぞ。「あなた……怠惰ですねぇ。」って。」
霊夢「何言ってんのかわからないけど早く襖締めて。」
皐月「んなこと言ってないでどうにかしようぜ。これはどう考えても[異変]なんだからよ。」
5月まで雪が降るなんてことは滅多にない。と言うかほぼあり得ない。北アメリカとかアイスランドとかならまだわかるけどここは日本だ。5月まで桜は咲かないうえに雪が振り続けている。普通なら3月頃に雪は止み、桜が咲き始める。なのにそれが無いというのは冬が続いていると言う事だ。
皐月「なんというか………はた迷惑だな。」
霊夢「全くね、でも寒さ以外外はないしこのままでもいいと思うわ。」
炬燵内でグデっとしながら答える霊夢。こいつ炬燵から出たくないだけだろと思わざるを得ない。実はこいつが異変を起こしてんじゃね?炬燵から出たくないからって理由で……ないな。
皐月「紅魔館や魔法の森組は大丈夫かな?寒さにやられてなけりゃいいけど。」
霊夢「そんなに心配なら見てくればいいじゃない。私はここで寝てるから。」
こいつホントにブレないよな。ある意味凄いけど無性に腹が立つ。つーか異変なの分かってんだから解決の為に動いてくれよ。紫さんにどやされるの俺なんだから。
皐月「………気が向いたら情報集めてくる。」
霊夢「よろしくねー………ふにゃぁ………。」
何それ可愛いんですけど。「ふにゃぁ」って言ったよこいつ。どんだけ居心地いいんだよ炬燵。てか軽く甘やかしてる辺り俺も甘いな。まぁいざとなったらやってくれるしいいけどさ。
皐月「んじゃ行ってくるわ。」
そう言って俺はまず魔法の森に向けて飛んでいった。黒いマフラーをつけて寒さを少し防ぎながら。まぁ寒いことには変わりないんだけどね。別に能力使って防いでもいいけどもしもの時のために温存しておきたいから敢えて使わない。っと言ったそばから来やがったよ。
???「あら人間?悪いけど私の力の餌食になってもらうわ。どれだけ力が高まったか試させてね?」
白いナイトキャップのようなものを被り、青いメイド服のようなものを着た髪にウェーブのかかった女の子が目の前に現れた。これ絶対戦う流れじゃん。某幻想殺しの気持ちが少し理解できた。
皐月「悪いんだけど俺先を急いでんだよ。そこどいてくれよ妖怪さん。」
???「レティよ。レティ・ホワイトロック。さぁ戦いましょ?早く戦いたくてウズウズしてるの。」
レティは右手を前に出し、冷気で俺に攻撃をしだした。
皐月「うおっ!?な、なんだこれ、冷気?チルノみたいな事するなお前。」
レティ「あんなのと一緒にしないで。私の力の方が上なの、心外だわ!」
更に冷気を強め、氷槍を生成し、放った。かなりのスピードだ。だが所詮は氷の槍だ。俺の能力の敵ではないかな?
皐月「炎符 : 紅蓮玉」
右手を前に出し、炎の玉を生成して放つ技。俺の炎技でシンプルかつ速射できる技である。
レティ「え?………きゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
溶けた。うん、それ以外言いようがない。苦戦することはなく、あっけなく終わった。なんか………ゴメン。
皐月「…………行くか。」
罪悪感漂う中、俺は魔法の森へ向けて再び速度を上げた。
―――――――――――――
レティとの大激闘(嘘)から数分後に魔理沙宅へ着いた。西洋風の家で世界観が壊れた気がしたが紅魔館という例もあるのでその考えは一瞬で消えた。ん?何故わかったかって?堂々と屋根に看板があるんだよ、「霧雨魔法店」って。とりあえずノックするべさ。
皐月「おーい魔理沙ー、死んでないかぁ?」
ドタドタと足音が聞こえた瞬間ドアが勢い良く開けられた。そんな急がなくてもいいのに。怪我したらどうすんねん、俺が。
魔理沙「なんで生きてる確認じゃねぇんだよ!」
皐月「ツッコミのために急いだのね、ご苦労様。まぁその様子だと大丈夫そうだな。」
と、思ったのだが肩が震えていた。寒かったのね。致し方あるまい、博麗神社に行くよう促そう。俺が温めるの面倒だし。
皐月「取り敢えず今から博麗神社にいけ。炬燵で暖まってこい。」
魔理沙「マジでか!?お前いつでも火があるんだな!」
皐月「炬燵は火じゃなくて電気で動いてんだよ。んでその電気は俺が生成して使えるようにしてるから俺が補充する限りは稼働する。さぁ行け。」
魔理沙はすぐに箒を持ち出して文字通り飛び出した。なんか「ヒャッホー!」とか聞こえたけど気にしないでおこうと。さて、次はアリスだな。確か魔理沙の家より北西……だったよな。ん?なんで知ってるかって?それは死秋異変の時に一度行っているからである。さて、行きますかな。
そして5分もかからずアリス邸へとついた。青い屋根、白い外壁、そして無数の人形の罠。疑う余地もなくアリス邸だ。そして今俺はその罠にかかっている。完全に忘れてましたテヘペロ✩………俺がやるとキモいな。
皐月「…………アリスヘルプ………。」
俺の発言の後ドアがガチャリと開いた。中から青をコンセプトとしたドレスを着て、頭には赤いカチューシャをつけたアリスが呆れ顔をして出てきた。すみませんね引っかかって。
アリス「全く久しぶりに来たと思ったら罠に引っかかってんじゃないわよ……。貴方本当に強いのか疑問に思うわよ。」
皐月「そう言うなよアリス。誰だって忘れる事あるだろ。俺は罠があることを忘れてたんだよ。5000万貰った事も経費をいくら使ったかも精神異常の結果を示した診断書も忘れたんだよ。」
アリス「後半何言ってるか分からないけど忘れたって事だけは分かったわ。」
こめかみを抑えるアリス。そんな呆れなくてもいいじゃないですか。呆れるならせめて会見のときに馬鹿丸出ししまくった議員に呆れてくれよ。文字通り全世界が呆れたから。
アリス「まぁ立ち話もなんだし中に入ったら?暖炉に火をつけてあげるわ。」
暖炉なんかあんのか。魔理沙に見習ってもらいたいわ。あいつヒャッホーって言って博麗神社に飛んでいったからな。
皐月「いや、その逆だ。うちに来い。火なんか使わずに暖まる物があるから。ついでに家にいる愚巫女をどうにかしてやってほしい。」
アリスの頭にハテナが浮かんでいたがすぐに理解してくれたようだ。本当この子いい子やわ、理解が早くて助かるわ。全俺が泣いたわ。
アリス「すぐに準備するわね。ちょっと待っててね。」
そう言って二分程度で戻ってきた。本当に助かるわ。んじゃあ行きますか。
皐月「ん。」
アリス「え、どうしたの手なんか差し出して。」
皐月「俺が呼んだんだしせめて飛んでる最中も暖めてやろうかと思ってな。だから俺に触れてろ。」
そう言ってアリスの手を引いて強引に飛んだ。きゃっとか聞こえたけど無視。むしろご馳走さま。
アリス「ちょっといきなり飛ばないでよ………ってあれ?寒くない。なんで?」
疑問を抱かれたのでアリスに懇切丁寧に説明する。反応は魔理沙同様「貴方の能力って便利なのね。」である。もうちょい反応あっても良くない?
アリス「そういえばどうして私達を博麗神社に?放っておいても良かったと思うんだけど。」
それについても懇切丁寧に説明する。霊夢が怠惰になり過ぎていること、異変だと気づいていること、そしてその霊夢をどうにかして欲しいことも。反応は「あなたも大変なのね………。ほんと魔理沙もね……。」と愚痴を聞かされた。お前も大変なんだなアリス、同情するぜ。
そんなこんなであっという間に神社に着いたのだが………。
皐月「なんでお前らはそうやってグデグデになるんだよ!お前ら早く異変解決行ってこいよ!お前らの仕事だろ!?」
アリス「皐月落ち着いて。こうなったら梃子でも動かないわよ……。」
皐月「………アリス、任せていい?俺これから………。」
アリス「紅魔館に行かなきゃなんでしょ?この二人は私が説得するから行ってきなさい。」
落胆する俺にこの優しい声。アリスたんマジ天使。全俺が涙したわ。
皐月「じゃあ任せる………。行ってきます………。」
魔理沙&霊夢「いってらっしゃ〜い……ふへぇ……。」
あれどうしよう無性に腹が立ってきたぞ。帰ったら拳骨食らわしてやる。畜生冬が長引いてるせいでこんなことに………不幸だぁぁぁぁぁぁ!!!って叫びたくなる上条さんの気持ちが痛いほどわかった5月10日の昼頃でしたとさ。………主犯はボコしてやる………。
???「ふふふ、早く咲かないかしら♪」
皐月「ほんと冬って人を駄目にするよな。炬燵とかストーブとかさ。」
霊夢「でもそれを言ったら扇風機?ってやつも似たようなものなんでしょ?」
皐月「まぁな……。ほんと人間って罪深いことしてるよねぇ………。」
レミリア「ならこの私が罪深い人間を統率して………。」
皐月「あ、そういうのいいんで。」
レミリア「(´・ω・`)」
次回 : 第二十二話 春雪異変第二話 レミリアの家の紅魔館事情
霊夢「というか紫は何してるの?」
藍「冬眠しておられるがそれがどうしたんだ?」
霊夢「(#^ω^)」
皐月「いやお前も似たようなもんだろうが愚巫女が。」