どうもお久しぶりです。黒鉄球です。投稿遅れて申し訳ございませんでした。危うく失踪しかけるとこでしたよ。え?別にネタが思い浮かばなかったとかそんなんじゃないですからね!ほんとですよ!
11月15日、俺達は異変に遭遇した。俺の二度目の異変にしては随分と色濃いものとなった。そしてその二週間後に異変解決祝いでドンチャン騒ぎ。そして更にその一週間後、つまりもう12月である。早いもので俺が幻想郷に来てから4、5ヶ月経ったのだ。あの頃はまだ真夏だったというのに今は立派な冬。
人里の人々は厚着に着替え、普段と変わりなく働き、いつもの様に暮らしていた。俺も普段と変わりなく朝は早起きをし、境内を掃除していた。
皐月「ふぅ………。めちゃんこ寒ぃんだけど。雪降るんじゃねぇのこれ?」
朝起きた時は異常現象じゃねぇのこれ?って思うくらい寒くて布団から出れなかった。でもやらないと霊夢が駄々をこねて俺がやらされる未来が見えたから率先してやっている。因みに箒を使わずに風を操って落ち葉を纏めている。
皐月「つかよく毎日こんなに落ち葉があるもんだな。妖精達がイタズラで持ってきてんじゃねぇのこれ?ってレベルであるんだけど。」
博麗神社には毎日の様に落ち葉を見かける。と言うがドサッとある。毎日掃除してるのにだぞ?可笑しくね?今度徹夜して犯人見つけてみよっかな?
皐月「あぁ……、さ〜みぃ〜↑↑!!なんでこんな寒いんだよここ。俺結構着込んでるぞ。」
俺は今は某UNIQLO社で買った黄土色のズボン、上はシンプルに白のトレーナーと適当なインナーを着ている。マフラーも一応あるけど今は着けてない。結ぶのめんどいから。
皐月「………にしてもこんな時にあいつよく寝てられるよな………。寒すぎて逆に起きるだろこれ。つか俺起きたし。…………ちょっと覗いてこようかな?」
と、言うわけで霊夢がどんな状態で寝てるかのコーナーでぇす!では早速霊夢の部屋へGO!!!
皐月「………開けるぞ霊夢。」
ふすまを開けると霊夢の頭が見えた。しかめっ面をしてるかと思ったらめっちゃ穏やかだった。寒さで逝ったんじゃないかと思ったので全開で開けた。そしたら驚くべき物がそこにはあった。
皐月「……………この野郎炬燵で寝てやがる。しかもマフラーしてるし。俺の心配返せ。」
心底腹が立った。俺はタオルケットと厚い布団のツーペアなのにコイツときたら炬燵にマフラーによく見りゃ奥側に布団あるし。だが俺は知っている。炬燵に入ったまま寝ると風邪を引きやすいということに。ソースは俺。二年前やってインフルに感染りました。能力でふっ飛ばしたけど。
皐月「……………全くこの駄目巫女は色々残念だな。てか俺が来てからこうなったのか。そうなると任せっきりってのもどうなんよ……。」
ちゃんと働いてほしいものだ。せめて飯は作らせようと思ったので再び掃除に戻った。
皐月「ふぁわぁ………。終わった……。10分ちょっとかな?終わったし寝よう。」
外に背を向け部屋に戻ろうとした時誰かが来る気配がした。起きなきゃ誰も相手しないじゃん。結局俺かよ。
皐月「…………あの特徴的な帽子は……慧音か。」
カツカツと足音を立ててやって来たのはいつもの水色の服を長袖にしたような服を着た人里の先生こと上白沢慧音だった。
慧音「ん?皐月か。おはよう。」
ふむ、相変わらず礼儀正しい人だ。霊夢や魔理沙に見習わせたいくらい礼儀正しい。
慧音の手元には箱があった。その中には野菜やらなんやら食材があった。
皐月「それどうしたん?」
慧音「これか?野菜だよ。この前の手伝いと異変解決のお礼品と思ってくれ。」
どうやら異変の件で霊夢に依頼をしていたらしい。この事は知ってたけどお礼に食材を渡しに来るとは思わなかった。
皐月「わりぃよ、財布に打撃だっただろうしそんな気にすんなよ。」
ありきたりではあるが断っておく。いやほんとに申し訳ないし。
慧音「霊夢がそう言ってくれたらどれだけ良かったか………。」
皐月「ん?霊夢?あいつなんか言ったのか?」
慧音「あ、あぁ。食料が足りなくなったからお礼としてよこせと言ってきてな。あの貧乏巫女にも困ったものだ……。何せお金がないって四六時中言っているからな……。」
皐月「そ、そんな事が……。買いに行く手間が省けたのは良かったけど金は払うよ。幾ら?」
流石に申し訳無さすぎる。金が無いのってあいつのせいだし食料は俺がなんとかしてるし。てかあいつほんと何で金ないんだよ……。
慧音「いやでもお礼だし………。」
皐月「はぁ………。じゃあこうしよう。俺の代わりに買いに行った、お金は俺が払う。それでいい?」
確かに俺たちは異変を解決したけど別に見返りが目的じゃないし断っておきたい。あと霊夢はしばく。
慧音「……皐月がそれでいいなら私は構わないがその………。」
何かを言いかけて止めたな。何言おうとしてるかはなんとなく分かるけど間違ってたら嫌だし一応聞いてみよう。
皐月「どしたの?」
慧音「……お、お金は大丈夫なのか?こう言ってはなんだがかなりの額だぞ……?」
でしょうね。だって箱結構大きいし中身もかなり詰めてある。
皐月「いくらしたん?」
慧音「………一万円が飛んだ。」
皐月「…………ご愁傷様です。」
霊夢のやつとんでもない事を報酬にしたもんだな。まぁ今の俺はもっとお金持ってるけど。
外の世界で俺は家出をした。その時の所持金は20万円だった。そして幻想郷のお金に換算した時に俺の20万円は幻想郷で言う2000万円になった。まさか100倍になるとは思わなかった。俺の日本円はドルか!
俺はポケットから財布を取り出し、一万円札を出して慧音に渡した。
皐月「とりあえず受け取れよ。俺達のせいで家計に響くとか寝覚めが悪すぎる。だから受け取れ。俺なら平気だから。」
慧音「え?あ、いや!私は別に…………。」
皐月「そう言いながら手を伸ばしてんのな。ほら、受け取れよ。」
慧音「…………すまない。」
皐月「気にすんなよ。俺の金だけだったらまだあるから。」
慧音「…………ちなみに幾らあるんだ?」
申し訳なさそうに聞く慧音に耳打ちで約2000万円だと告げた。
慧音「な!?おま、よくそれで霊夢にバレてないな………。」
皐月「バレてるよ?でも金庫に入れてんだよ。しかも俺の能力で不自然に開けられなくしてるから霊夢じゃ絶対開けられない。」
慧音「そ、そんな使い方もあるのか。お前の能力は……。」
実はこっちに来て初めて知った。色々な応用が効くことが知れてよかったわ。
皐月「まぁそんな訳で金のことは気にすんな。一応要は終わりってことなんだろうけどこのまま帰すのもあれだからお茶でも飲んでくか?」
まぁこれは詫び的なのも入ってるんだけどな。こんな寒い中重いもの運んでたんだし、それさせたの家の宿主だし。
慧音「申し出は嬉しいのだがこの後妹紅と約束があるんだ。また別の機会に。」
皐月「そっか。んじゃまたな。野菜、ありがとう。」
慧音は人里へと帰っていった。心なしか足取りが良かった気がしたが気のせいだということにしておこう。決してお金が戻ってきたからではないということにしておこう。
皐月「さて、食料庫に運び入れるか。」
野菜の入った木箱を持ち上げようとした。その直前後ろから違和感が………。誰かに見られている、そんな感覚があった。
皐月「………紫さん?」
紫「あら?良くわかったわね。あなた後ろに目でもついてるのかしら?」
やはり紫さんだった。相変わらず神出鬼没な人だ。小便が出そうな時に来られたらチビるレベル。
皐月「何のようっすか?冬は冬眠するって聞いてたんですけど?」
紫さんは妖怪だ。それもかなり強い部類の妖怪らしい。なのにこの人は野生動物と同様に冬眠をするらしい。情報源は霊夢。この人実は動物じゃね?
紫「あなた今失礼なこと考えてない?」
皐月「んなわけないじゃないですか。それでどうしたんすか?霊夢なら寝てますよ?」
紫「そう、でも残念ね。今日はあなたに用があるのよ。」
あ、察したわ。またお礼とかそんなだろ。
皐月「………もう諦めましたよ。有無を言わさず連れてくつもりでしょ?その[スキマ]を使って。」
紫「理解が早くて助かるわ♪じゃあ「でもその前に。」何かしら?」
皐月「野菜だけでも運んでいいっすか?ここに置いてくわけにも行かないので。」
いくら冬でも外には置きたくない。いや、食料庫に入れても対して変わらない気もするけどなんとなく気分的に。
紫「もう移動させたわよ。さ、いきましょ?」
仕事が早すぎるだろ。ホント便利な能力だなそれ。普通に欲しいわ。[境界を操る程度の能力]。
皐月「じゃ、行きましょうか。ってうわ!?」
足元から落ちた。この人俺の足元にスキマを開けやがったぜ。………ふっ、俺の肉体が半壊するな。
―――――――――――――――――
皐月「あっぶねぇ………。俺にかかる重力を操ってなかったら地面に叩きつけられてたわ……。」
足元から落とされた俺は瞬時に重力のことに気付き俺にかかる重力を操作した。いや本当に危なかったわ。危うく某吸血鬼みたいに内蔵を飛び散らせるとこだった。ちなみに丸太は持ってませんよ?
紫「ごめんなさいね♪私ったらついうっかり♪」
この人絶対反省してねぇよ。まぁ怒っても仕方ないし取り敢えず行くか。
皐月「ちなみにどこ行くんすか?てかここ何処?」
紫さんはニコッと笑った。ちょっと可愛いなと思ったことは言わないでおこう。
紫「八雲家よ。」
皐月「……………は?」
え?八雲家?確か紫さんの名字って「八雲」だよな?て事は俺この人の家に連行されんの?話急すぎません?
紫「嫌かしら?」
皐月「嫌ってわけじゃないですけどなんつーか、なんで?」
紫「貴方には幻想郷を守ってもらった恩があるわ。だから八雲邸でおもてなしをしようと思ったの。あなたが居なかったら幻想郷は崩壊していた可能性があったもの。あの男はそれほどに厄介だったの。」
どうやらユグドは相当手を焼く男だったらしい。まぁ不老不死でしかも「敵」だったからな。俺と違って意識を失わずに復活するんだから厄介だよな。実際「雷神」を使ってなかったら勝てたかどうか怪しいし。
皐月「でもそれで言ったら紫さんは俺の暴走を止めてくれたじゃないですか。お礼ならそれで俺は…「それじゃ私の気が済まないの。」デスヨネー。」
どうやらここの人はかなり強情で強引らしい。まぁ別にいいけど。
皐月「じゃあ少しお邪魔します。」
紫「ええ。ようこそ八雲邸へ。」
――――――――――――――――
藍「こんにちは。初めまして。私は紫様の式神の八雲藍と申します。貴方のことは紫様から聞いております。どうぞ邸内へ。」
八雲亭に入ってすぐ藍って人が出迎えてくれた。短めの金髪に少し改造したであろう中国を彷彿とさせる白い服装、動物の耳と九本の尾、そして鋭い獣のような目。連想するならば九尾の狐だな。
皐月「一応自己紹介しときます。俺は神条皐月。藍さんは………狐なんすか?」
藍「えぇ。………あまり驚かれないのですね。幾ら半年経ったからと言ってもそこまで妖怪に慣れてるとは思えないのですが?」
いやだって半年だぞ?そんだけここにいればいやでも非常識的なものにも慣れるだろ。てか俺が非常識そのものだし。
皐月「まぁいきなり背後に現れる人や吸血鬼に魔法使いといった奴らと関わってるんだから反応すんのもアホらしいかなって。」
藍「ふふ、順応が早いのですね。まぁ立ち話もなんですから中へ。」
中へ上がることを促されたので言われるがままに家に上がらせてもらおう。
皐月「お邪魔しまーす………?なんかいい匂いがするんですけど?」
藍「いまお食事を作っておりますので。もう少しお待ちください。」
まさかお礼って飯のことか?まぁお礼そのものはいらないんだけどどうせ向こうの気が済まないんだろうからおとなしくしておこう。
紫「分かったわ。藍は戻っていいわよ。皐月は私が居間に連れて行くから。」
藍「かしこまりました。では私は戻りますね。」
そう言って台所があるであろう方向へと消えていった。さて、紫さんのあとについていこうかな。
居間に着いたのだが誰か寝てる。獣耳に短い茶髪、そして二本の尻尾。これ絶対化け猫だわ。
紫「起きなさい橙?お客様が来たわよ?」
紫さんの声で「うぅ……、ん。」と声を漏らしたが起きる気配がない。見た目もそうだが行動も子供そのものだな。
皐月「紫さんこの娘は?」
紫「この娘は橙(チェン)っていうの。見ての通り[二又]よ。藍の式神で私の家族よ。」
なるほど家族か。いやにしても大妖怪の式神が九尾の狐でその式神が化け猫って八雲家では獣を式にする事を義務付けているのだろうか。したらこの子の式神は窮鼠かな?家族食べちゃだめ絶対。
橙「こ、こんにちは!橙っていいます!えーっと……紫様ごめんなさい………。」
この子は一体どっちに話してんだろう?やはり子供そのものだな。てかなんで謝った?
紫「いいわよ。やる事はやってたみたいだし少し疲れたのよね?なら責めないわよ。」
優しく微笑みながら橙の頭を撫でる紫さんマジ母性の塊だわ。お母さんになってほしいレベル。うんキモイねこれ。
紫「………あなたも挨拶しなさい?」
皐月「あ、忘れてたわ。俺は神条皐月だ。よろしくな橙………ふふ。」
紫「なんで笑ってるのよ。」
おっと笑いがこぼれてしまった。何故かって?紫さんが橙の母親にしか見えないからだ。こんなん無意識でも頬が緩む。
皐月「すみません。紫さんが橙の母親に見えましたので微笑ましいなと。悪気はないんですよ?」
紫「母親………ふふっ、当然だわ。私達は[家族]ですもの。」
全くこの人は恥ずかしげもなく言うんだから。俺なら言った後で恥ずかしくなって枕に顔を埋めて悶絶するレベル。いや、これが普通なのだろう。俺が特殊な環境にいるだけで紫さんにとっては当たり前なのだろう。橙が少し羨ましく思える。もし俺の母親がこんな人だったらもしかしたら…………。
紫「皐月?どうしたの?………どうしてそんな悲しい顔をしているのかしら?」
皐月「………なんでもないっすよ。」
どうやら無意識の内に昔を思い出してしまっていたらしい。親から、俺の能力を知った者から受けた視線を、扱いを、言葉を、痛みを。今こんな事を思い出しては申し訳ない。すぐに記憶の奥底に放り込もう。
紫「…………そう。それより座ったらどうかしら?ずっと立ってるのもなんだし。と言うか座りなさい。」
皐月「口調キッツいなぁ。まぁお言葉に甘えて座りますよっと。」
そう言って俺は胡座をかいて座った。うむ、博麗神社と同じ感じの作りだからか知らんが落ち着くな。畳の匂いがしたり奥からいい匂いがしたり………隣からいい匂いがしたり。
皐月「…………。」
紫「…………。」
いやなんでこの人俺が座った途端に俺の隣に来たの?落ち着くどころか心臓バックバクなんすけど?
皐月「あの……紫さん?何故俺の隣に?テーブル挟んで座るって手段は?てかなんで橙まで俺の隣に?」
紫「…………いいじゃない別に。それとも私が隣にいるのは嫌かしら?」
皐月「いや決してそんなことはないんだけどなんでかなぁって。」
橙「じゃあ私は?私は嫌なの?」ウルウル
皐月「いやそんなこと言ってないだろ。だから目をウルウルさせないでくれるか?」ナデナデ
橙「皐月のナデナデ気持ちいい………。」
あ、つい頭を撫でてしまった。お兄ちゃんスキルが発動してしまったぜ(下には一人もいないけど)。てか泣き止むの早いなおい。嘘泣きかよ可愛いなおい(ロリコンではない)。
紫「ふふ、仲良くなったようで良かったわ。」
皐月「まぁ俺向こうでは猫育ててましたしなんの問題もないっすよ。」
橙「私猫としてしか見られてない!?」ガーン
皐月「じょーだんだからそんなショック受けんなって。」
どうやら橙はアホの子ポジションを獲得したらしい。良かったね由比ヶ浜さん!仲間だよ!……誰だよ。
藍「失礼いたします。」ヒョコッ
皐月「うおっ!びっくりした!!」
まさかの紫さんのスキマから藍さんがひょっこりひょうたん島した。マジで心臓に悪いわ。
藍「おもてなしのお食事をお持ちしました。」
そうして次々と料理が並べられていく。うわぁめっちゃ日本食やん。豚の生姜焼きに味噌汁、御飯にだし巻き卵、そして大根の甘酢漬け。俺の好物ばっかりだな。
藍「皐月さんのお好きな食べ物が和食と聞きましたので腕によりをかけて作らせていただきました。お口に合うといいのですが。」
おいどこから漏れたその情報。いや漏れてもいい情報だけどプライバシーの保護はしてくれよ霊夢(決めつけ)。
皐月「誰情報っすかそれ。」
紫「霊夢よ。」
やっぱりあいつか。帰ったら頭を撫でてやろう。べ、別に好物が出たからって嬉しくないんだからね!………キモいわ。
藍「それでは。」
全員「いただきます!」
――――――――――――――
結論を言えばめっちゃ美味かった。バランスも取れてて味も濃すぎず薄すぎずで誠素晴らしいお手前でしたはい。それで今は………。
皐月「…………ほんとに良かったんすか?」
紫「別に気にすることでもないでしょ?それとも私の[膝枕]がそんなに嫌だったかしら?」
嫌なわけないじゃないですか。こんな美人さんに膝枕してもらえて幸せですよ?いや、紫さんからいい匂いがするから緊張するんですけどね。てか女の人からしてもらったこと事態幻想郷来てから初めてなんですけどね。
皐月「嫌じゃないですよ。役得ってことでありがたく枕にさせてもらいます。」
紫「ふふふ、存分にどうぞ。これは貴方への[お礼]なのだから。」
お礼……ね。俺は別に礼が欲しくて戦ったわけではなく、俺の大切な人達を守れればと思っただけなんだよなぁ。まぁ結果的に幻想郷を救った訳だからお礼はされるんだろうけど。
紫「…………ありがとうね。」
皐月「え?」
聞こえるか聞こえないかギリギリの声で俺に話しかけてくる紫さん。その表情は少しぎこちなかった。どうしたんだろうか?あ、因みに今は俺と紫さんの二人っきりです。二人?二人は食器洗いですよ?
紫「幻想郷を守ってくれてありがとう皐月。」
皐月「別に意図して守ったわけじゃないっすよ。てかなんで紫さんがそんな神妙な顔するんすか。」
紫さんは表情を変えることなく話す。まるで何かを懺悔するかのように。
紫「それだけじゃないんですもの。私はあの男[ユグド]の侵入に気付いていたにも関わらず無視していたの。」
皐月「無視?なんでそんな真似を?紫さんなら危険分子を即座に排除するイメージだったのですが。」
紫「酷い言い草ね。でもそうね、本来ならユグドに会うべきだった。」
皐月「でもそれをしなかったのは………ユグドに会うことよりも大事な用があったから……ですか?」
やはり紫さんは表情を変えない。
紫「ええ、実はユグドが入ってきた時に博麗大結界に歪みが生じたの。それもかなり複雑に。その修復に時間を取られたのよ。そしてその間にあの異変が起き、紅魔館の面々や貴方には多大な迷惑をかけたわ。これは私の失態だわ。」
皐月「それは違う。」
俺は紫さんの膝の上から起き上がり、紫さんの目を見て言い切った。紫さんは呆気にとられ「え?」と少し驚いた顔をした。
皐月「俺は別に迷惑だなんて思ってない。紫さんが出て来られないほどにユグドの計画が緻密に立てられたものだったってだけだ。俺達はそこの渦中に居ただけで紫さんは何も悪くない。悪いのはユグドの自己中心的な行動と思想だ。紫さんが謝る事なんて何もない。」
こう言うしかなった。俺には誰かを説得出来る語彙力も誰かを勇気付ける言葉も分からないし、言えない。だからこそ俺は自分の気持ちをぶつけるしか出来ない。直感が信じたものを貫く事しかできない。
レミリアの時もそうだった。俺は自分の信じる事をアイツに伝えただけだ。友だからこそ、仲間だからこそ許容し、共有し合える事があると俺の願望を、思想を述べただけだ。だから今回も俺はそれしかできない。
紫「………皐月。」
顔を上げず俯いたまま今にも消えそうな声で呟く紫さん。俺はしっかりと聞いていた。聞かねばならないと思ったから。
皐月「なんだ?」
そして消えそうなか細い声で呟いた。その姿はもう胡散臭い態度など微塵も感じられなかった。
紫「………幻想郷は私が創り出したの。」
皐月「知ってる。」
しっかりと聞く。
紫「だからここは私の子供そのものなの。それほどここを愛してるの。」
皐月「そんなのあった時から気付いてた。」
ちゃんと答えてあげる。
紫「そんな私の愛する幻想郷を貴方は護ってくれた。」
皐月「そんなつもりは無いさ。偶々だよ。」
紫「課程がどうであれ貴方はここを護ったの。だから………。」
紫さんは顔を上げ、俺を真正面に見据えてはっきりと言った。目に僅かながらの涙を溜めて。
紫「ありがとう皐月………。」
皐月「…………おう。」ニッ
そして俺は紫さんに手を伸ばし、頭を撫でた。今だけは俺が年上になろう。揺るがない年の差だけど今だけは紫さんを甘えさせよう。それが今の俺に出来る唯一の事だ。俺を仲間に迎え入れてくれた恩返しとなるのだから。
――――――――――――――――
皐月「……………大丈夫か紫さん?」
紫「……………ええ、ありがとう皐月。」
俺はあれからずっと紫さんの頭を撫で続けている。何も言わず、ただ撫でられ続ける紫さんはなんだか幼く見えた。多分これが素の紫さんなのだろう。つーか………。
皐月「あの、いい加減[俺の上]から降りません?」
紫「……………まだいいじゃない。こうしていたいの。」
実は今俺は紫さんに押し倒されているのだ。そして紫さんに「………撫でて」と言われたのでそのまま撫で続けている次第です。てか色々当たってるんですけど。何がとは言いません。大きなメロンが2つです。
つーかこの人ほんといい匂いするんですけど。メロン+匂いのせいでそろそろ俺のオレがヤバイんですけど。
皐月「でも退かなさそうだしどうすっかなぁ……。」
紫「…………。」ムギュッ
ちょっと紫さん?あなたわざとやってません?今あなたわざと胸押し付けましたよね?勘違いしちゃうでしょ!性の高校生にそんなことするんじゃありません!持ってくれよ俺の理性!!4倍だぁ!!
紫「スゥ………スゥ………。」
皐月「あ、寝やがったこの人。どうすんだよこれ。」
結局俺は紫さんのベッドにされ、五時間ほど身動きが取れず、帰った時には霊夢に怒られたとさ。Amen。
紫「………………どうしましょう。私、皐月のこと本気で…………。」//////
皐月「作者よ、何してやがった。」
作者「なにって……勉強ですよ?いやほんとだよ?ネタが思い浮かばなかったとか違うからね!」
紫「思い浮かばなかったのね。」
霊夢「それで次の話は何よ。」
次回 : 第十七話 お礼。続
皐月「お前やっぱネタ切れ……。」
作者「違います。」