東方新記伝   作:黒鉄球

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 黒鉄球がぁ、十五話を投稿してぇ…………来たぁ!!と、言うわけで十五話です!

 10000文字超えちゃいました笑笑

 何か変な点がございましたら突っ込んでも構いませんよ?修正いたします。評価やお気に入り登録もお待ちしております。
 
 それでは死秋異変本編をどうぞ!




第十五話 死秋異変最終話 : 人の温もり

 

 

 

 

 

 

 

 

 ユグド「………さて。パチュリーよ、我の術の糧となれ。」

 

 私はその時意識を失いかけた。自分の中にある生命力、魔力が一気に消え去った。

 

 このまま死ぬのだろうか?レミィに助けてもらった命、彼に救ってもらった命。もっと………彼らと関わっていたかった……。私の……[家族]と………。

 

 ユグド「これでようやく我は不老不死になれる!!」

 

 お祖父様の声………。お母様もこんな気持ちだったのかしら。お祖父様に利用の延命に利用された時、こんな気持ちだったのかしら………。

 

 嫌よ、死にたくない。もっとみんなと笑っていたい、咲夜、コア、美鈴、フラン、レミィ………。私の……家族………。巻き込んでしまったまま、何も出来ずに私は…………。

 

 意識が朦朧とし、死を待つだけの私の体に衝撃が走った。誰かに持ち上げられる浮遊感。そして、暖かな温もり。前にもこんな事があった気がする。でも、いつだっただろう。そして、だれが………。

 

 その時私はまた地面に倒れた。でも、痛みはなく、優しく寝かせねくれた感覚だった。そして何があったかわからなかったけど魔力と意識が徐々にはっきりしてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 皐月「………あと5秒、それで決着だ………!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 この姿になったのはいつ以来だろうか?俺の記憶が正しければ[あいつ]を救ったときくらいだろうか?まだ俺が中学二年生の時の出来事以来………かな?そういやあん時も女の子達を助けたんだったかな?逃げてるだかなんだかで手を貸した記憶がある。アイツら元気にしてっかな………ってもう死んでるか……。

 

 まぁそんなことは今はいいか。目の前にいる不老不死の野郎を地獄にさえ落とせれば……………。

 

 俺は珍しくキレていた。だがこの怒りは分かりきっていた。あの男が俺の[友達]に手を出した、殺そうとした。理由はそれだけで十分だった。

 

 皐月「………終わらせてやるよ。テメェの幻想も、テメェの現実も、俺がぶっ壊してやる。」

 

 ユグドは目を丸くしていたがそんなん知らん。質問してきたが聞く耳を持つ理由もねぇ。俺の発動した[コイツ]はもう持たねぇ。だから俺は瞬時に奴の懐に飛び込んで右手を奴の腹部に当てた。

 

 ユグド「な…!?」

 

 皐月「[雷神の拳撃:トールハンマー]!!」

 

 俺の右手から雷があり得ないほどの雷が放出され、そしてそれは殴ったと同時に相手の全身に雷を巡らせ、内蔵を破壊していった。それもそうだろう。俺の速度は今や雷と同じなのだから。

 

 ユグドは何が起きたかも上手く理解出来ないまま壁に打ち付けられた。壁にクレーターを作ってしまったがまぁあとだ怒られればいいだけの話だし別にいいか。

 

 ユグド「ごほっ!ぐ、ぐぁぁぁぁぁぁぁ!!!?わ、我の内臓が!!肉体が!!たった一撃で……!!」

 

 そんなことを気に留めてる暇なんてねぇよ?あと4秒しかねぇんだ。

 

 俺は奴の頭を掴み、思いっきり電撃を流してやった。

 

 ユグド「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 これでヤツの体の自由は効かなくなった。それに加えて回し蹴り、そして地面にぶつける様に殴った。

 

 ユグドは何も抵抗出来ず、ただ俺の攻撃を受けていた。

 

 皐月「……はぁ………はぁ。………あと………3秒………。オラァ!!!」

 

 俺のこの[雷神]のリスクは体力の消費が半端ないのと、たった5秒しか維持できないって事だ。そしてなにより体に相当の負荷をかけ、能力に[呑まれる]可能性があるという事だ。言うなれば[力の暴走]だ。暴走すりゃ手を止めることなく、敵味方関係なく攻撃しちまう。最短10秒、最長5分間暴走する。時間が来たら自爆し、俺は元に戻る。

 

 出来れば使いたくない力だけど相手は[不老不死]だ。人の犠牲にしたのだからその分の代償は背負ってもらわねばならない。痛みと永遠の苦しみをな。

 

 ユグド「貴様………我が不老不死だということを忘れているのではないのか?いくら攻撃しても…「[雷神の逆鱗]!!」」

 

 俺はやつの懐に拳を何発も撃ち込んだ。

 

 気にしてられねぇんだよそんなの。ユグドはまたしても吹き飛ばされ、そして残り2秒………。これで終わらせるしかねぇんだよ………。

 

 雷を地面に円上に展開し、右手を上げ、雷の玉を作り出した。俺の雷の能力で今撃てる最強の技[雷皇]を。

 

 皐月「テメェが[生き物]である限り、こいつの力には勝てねぇよ!!」

 

 ユグド「に、人間風情がァァァァァァ!!!」

 

 ユグドが魔法陣を展開しようとした瞬間に奴の目の前に移動し、[雷皇]を当てた。ユグドは俺の攻撃をまともに食らい、空高く舞い上がった。雷皇と共に。

 

 皐月「…はぁ…………。はぁ…………。…………はぁ。ど、どんなもんだこの野郎が…………。…………はぁ………はぁ………。」

 

 体力の限界だな。今日は多分もう能力は発動しねぇだろうな。出来れば[電光]だけで終わらせたかったんだけどあのジジィの魔法陣の展開速度は速い。だから速度勝負するしかなかったんだよなぁ………。

 

 空では俺の[雷皇]が轟き、その中央には影があった。ユグドのものだろうがこれでチリになろうがならなかろうがやつは終わりだな。………ドラゴンボールじゃないんだから頼むから起き上がるなよ。

 

 雷の轟が鳴り止むとユグドは地面に落ちた。原型はガッツリ残っていたけど恐らくもう動けないだろうな。伏線も引いたしな。

 

 ユグド「………わ、我が…………。不老不死になった我が………脆弱な人間如きに………ま…け……た?………ふ、ふふふふふ、だが我は不死者となったのだ………。この程度…………!?」

 

 皐月「………動かせねぇだろ?テメェの脳の電気信号を壊させてもらった………。これでてめぇは永遠を生き続ける[植物人間]だ…………。」

 

 二度目の攻撃で俺はヤツの頭に電撃を流した。脳に異常をきたすレベルの高電力を。脳に異常を発生させ、動けないところに追い撃ち、攻撃が止んでも生きる屍にさせる算段を俺はつけていた。

 

 ユグド「な!?我が………生き永らえる屍に………だと………!?」

 

 皐月「そうだ………。お前はゾンビを使い、人を犠牲にして不老不死を手に入れた。何人犠牲にしたのかは正直俺にとってはどうでもいいんだよ。だがな………。」

 

 俺はユグドを見おろし、そして告げた。全てを終わらせ、そしてやつを後悔させるように。

 

 皐月「霊夢達に手を出した事だけは絶対に許さん。それは金を盗まれることよりも、俺の右腕を破壊される事よりも重い罪だ。

 そのまま地獄へ落ちろ、その不自由な体を抱えてな。」

 

 外の世界の人は言った。「生きているこの世界こそが地獄」だと。俺自身でさえそう思ってしまうほど説得力があった。俺だからこそ分かることだった。苦しくても死ねず、勝手に肉体が再生を始める[超自然現象]。常識に囚われない俺の能力は俺自身を不死者にし、永遠を生きさせる。そして俺はある時考えた。「不死身の状態で植物人間になりたくないな」と。それはつまり永遠に生きる屍になると言う事だ。誰であろうとなりたくはないだろう。だがやつは願った。[永遠が欲しい]と。

 

 皐月「お前は永遠が欲しかったんだろ?………なら良かったじゃねぇか。これでお前は自分の[永遠]が実感出来るだろ?死にたくても死ねない苦しみを味わえ。この俺のようにな。」

 

 長ったらしく話しているが正直もう体力が持たない。俺はその場に座り込んだ。その時ふと視線を感じたため後ろを振り向いた。そこには黒い羽を生やした女の子が歩いてきていた。

 

 

 

 

 

 

 フラン「ふわぁ…………。お昼寝してのに外が騒がしいから起きちゃったよ…………。」

 

 …………空気を読め。俺の義妹よ……………。

 

 フラン「あ!お兄様だ!お〜に〜い〜さ〜………ま!」

 

 皐月「うがっ??!?!!!」

 

 見た目でわかるだろ俺が負傷してんの!?なのにタックルかますか普通!?か、体超いてぇ………。

 

 フラン「そういえばみんな寝っ転がってたけどみんなでお昼寝?」

 

 皐月「えーっと……そう!みんなでお昼寝だ!たまには外でもいいんじゃないかってこと………。んでその時丁度敵さん来ちゃったみたいで俺がたった今倒したとこだ!うん、だからちょっとわりぃんだけどみんなを部屋に連れてってやってくれるか?ちょっと敵さんに用があるから!さぁ行けすぐ行け。」

 

 理由なんて知られたらフランの力が暴走しかねない………。誤魔化すしかないんだけどもうちょいマシなものがあったろ俺が………。

 

 フラン「うんわかった!お兄様がそう言うならみんな連れて行くね!」

 

 そう言ってフランはみんなを連れて館に戻っていった。…………すまんフラン。お兄ちゃん嘘付いた。

 その後俺はまた何かの気配を感じた。もう読めたけど。

 

 皐月「………紫さん来るの遅いぜ。」

 

 紫「ごめんなさいね。ちょっと用事があったから遅れちゃったわ。」

 

 そう言って空間の裂け目から現れた紫さん。ほんと何やってたんだかこの人は………。

 

 紫「貴方が侵入者ね?人里を荒らし、霊夢に手をかけようとした………。万死に値するわ。」

 

 皐月「でもそいつ不老不死っすよ?殺したくとも殺せねぇよ。」

 

 紫「ふぇ?そ、そうなの?」

 

 あまり紫さんと会わないし、関わらないからよく知らんけど敢えて言おう。こんな間の抜けた顔をした紫さんは見たことがない。いつもはなにか裏がある、何か企んでいる胡散臭い表情してんのに今は最近の噂話を聞いた女子高生的な顔をしてる。なんというか、表情が柔らかい……かな?いつもその顔ならみんなから好感もあるだろうに。美人なんだし。

 おっと話が逸れた。

 

 皐月「だからコイツどうしようかと。生き埋めにします?幸い俺の能力で体の自由は永遠に封じましたし。」

 

 紫「さらっと怖いこと言うのねあなたは。でもそうね、決断は彼女に委ねたら?」

 

 そう言って後を振り向く紫さん。つられて振り向くとそこにはパチュリーが居た。そして歩み寄ってきた。………決着を付けるために。

 

 パチュリー「………無様ねお祖父様。」

 

 ユグド「………………。」

 

 パチュリー「自分の為だけに人を殺め、手に入れた者がこれだなんて滑稽よ?同情しそうになるわ。でもそれがお祖父様の負うべき罰よ。甘んじて受け入れなさい[ユグド・ノーレッジ]。」

 

 パチュリーの眼はしっかりとユグドを捉えていた。俺と紫さんはただそれを見ているだけだった。

 

 皐月「なぁ紫さん。」

 

 紫「なにかしら皐月?」

 

 皐月「俺も………下手をしたら家族を手にかけてたのかな?」

 

 紫「それは私には分からないわ。あなたの過去は知ってる。けれども貴方には支えてくれた人が少なからず居たでしょ?だから貴方は自分を保てた。自分自身の力を暴走させずにいる事ができた。そうでしょ?」

 

 皐月「………ほんとあんたにゃ敵わねぇや。」

 

 紫さんは恐らく俺の過去を能力で見て知っているのだろう。俺の受けた苦しみ、痛み、そして優しさ。親から受けられなかったものを代わりに与えてくれたあいつ等の事を。もうとうの昔に死んでいるのだろうがそれでも俺にとってはかけがえのない人達だった。まぁ別れた後も地獄だったから家出してんだけどね。笑笑

 

 パチュリー「………さよならよ[ユグド・ノーレッジ]。あなたの罪はそこにいる賢者に裁かせるわ。私の魔法でだってあなたに触れたくないもの。………あとはお願い。」

 

 紫「ならそこに倒れている人の罪は彼岸にいる閻魔に任せるわ。会いたくないけど仕方ないわ。あなた達はゆっくり休んでなさい。それと皐月、ちょっといいかしら?」

 

 皐月「なに?俺に何か……「動かないでね?」はい?」

 

 そう言うと俺は数秒間ただじっと佇んだ。

 

 紫「………これでよしっと。」

 

 皐月「?何したんすか?」

 

 紫「あなたの力の境界を弄ったのよ。とりあえず今日はこれであなたが暴走する事は無くなったわ。ゆっくり寝なさい。」

 

 皐月「!!………あんたほんとどこまで知ってんだよ………。」

 

 紫さんは手を振り、ユグドと共に境界の中へと消えていった。

 そんで俺はと言うと…………もう無理です。

 

 皐月「」バタンキュ~

 

 パチュリー「皐月!?ちょっと!!」

 

 こうして俺の意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 「いってぇ…………。ここは………ん?向こうがなんか騒がしいな。」

 

 「正気も正気よ!私はこの子の………!」

 

 「助けてやっから後で手助けしてくれよ?」

 

 「貴方は………?」

 

 「………逃げてきたのよ。あそこから…………。」

 

 「私はもうあそこには戻らない。あそこは窮屈だもの…………。」

 

 「お前らが寄ってたかって襲いに来るから俺は立ち向かわざるを得ねぇだろぉが!今の俺は……!!!」

 

 「ありがとう、そして…………さようなら、皐月。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 皐月「……………見覚えのある天井だな。」

 

 開口一番がこれだった。全く俺ってやつは何改変が起きるたびにここで寝ないといけないんじゃないかと思えてくるレベルでここで怪我を負うな。

 さて、今回はどうかな?

 

 皐月「……………あるな。そりゃそっか。飛ばされた記憶ねぇもんな。今回目立った傷はないわけだな。良かった良かった。………にしても。」

 

 俺は先程の夢のことを思い出していた。正確に言えば夢ではなく俺の記憶だが。過去に俺が経験した常識外れな経験。村みたいなところに居た長い黒髪の女の子と銀髪の女性を助け、安静の地を見つけ出すまでの俺の物語。やっぱり[雷神]を使ったからかな、思い出しちまったな。懐かしいぜ。

 

 パチュリー「…………皐月………。」ムニャムニャ

 

 皐月「?………なんだパチュリーか。珍しいな、コイツがここにいるなんて。」

 

 俺の横で物音がしたと思ったらパチュリーが寝ていたようだ。齢百を超えるらしいけどこうしてみてみると俺と同い年にしか見えねぇんだよなぁ。寧ろ幼いまである。なんつーか童顔なんだよなぁ。普段は仏頂面してるけど話してて笑うと可愛いし慌てると子供っぽい。どこからどう見てもただの女の子。それなのに…………。

 

 俺は無意識の内にベッドに顔を乗せているパチュリーの頭を撫でていた。なぜなのだろうか?単に可哀相だったから?肉親を亡くしたから?違うな。多分俺自身がホッとしたからだろうな。ちゃんと守れたって言う安心感のもとこういう行動を取っているんだろうな。某捻くれ系主人公の気持ちがなんとなくわかった気がするわ。

 

 パチュリー「………ん。…………さ、さつ………き………?」

 

 皐月「あぁ、おはようパチュリー。元気してっか?」

 

 パチュリー「あなたいつから……!?」

 

 皐月「ついさっきだよ。んなことより俺はどれくらい寝てた?三日?」

 

 この前の紅霧の時は確かそんくらいだった筈だ。だから多分そんくらいだろう。なんて思ってたんだがさっきからパチュリーの肩がプルプル震えてんのはなぜ?

 

 パチュリー「3日ならマシだったわね………。貴方は一週間近く目が覚めなかったのよ………。」

 

 …………約一週間か。なるほどね、だから少し身体が重いのか。過去に[雷神]を使ったけどそん時は確か気絶せずに動けないまま運んでもらったんだよなぁ。て事はあの時よりさらに強い力を放出したのか俺は。Lv.2ってとこかな?

 

 皐月「………俺が寝てる間誰もくたばってねぇよな?そっちのほうが気がかりだ。」

 

 パチュリー「…………はぁ。全員無事よ、あなたのお陰でね。」

 

 皐月「そっか、なら良かった。」

 

 一安心した。俺の意識が途絶えたあとどうなったか気になっていたのだ。杞憂に終わって良かったぜぃ。あと一つ気になるのだがこれは聞いていいのだろうか。いや聞いてしまえ。

 

 皐月「なぁパチュリー?」

 

 パチュリー「…………なに?」

 

 皐月「なんでさっきから俺のと目を合わせないんだ?」

 

 パチュリー「…………そんなことないでしょ?」

 

 ………絶対目線そらしてるわこいつ。だってちゃんと目を合わせたの起きたときだけだもん。俺覚えてるもん。

 

 レミリア「パチュリー、入るわよ?」

 

 ドアの奥からレミリアの声が聞こえたきた。別に困ることねぇし許可した。もちろん俺が。

 

 皐月「入ってきていいぞ蝙蝠お嬢様。」

 

 レミリア「あら?起きてたの?起きてそうそうなんだけど死ぬ?気のせいでなければあなた今私の事コウモリって言ったわね?」

 

 皐月「冗談だ冗談だからそのグングニル先輩をしまっていただきたい。死ぬ、ほんとに死ぬから。」

 

 喉元に紅い槍を立てられれば誰だって降参するわい。相変わらず好戦的だなここの奴らは。

 

 レミリア「どうせ死なないでしょうが………ハァ。」

 

 パチュリー「ため息ついてないでお邪魔した理由を聞きたいのだけど。」

 

 ナイスパチュリー!俺は死なずに済んだぜ!

 

 レミリア「そうだった。皐月と話があるのよ。悪いけどパチェは退出願うわ。」

 

 パチュリー「?……まぁレミィが言うのならいいわ。皐月、またあとでね。」

 

 皐月「お、おぉ。(また後でねってまた来るのかあいつ。体力的に大丈夫か?)」

 

 レミリア「大丈夫よ。今は喘息も安定してるから倒れたりはしないわよ。」

 

 皐月「ナチュラルに見透かすなよビックリしたわ。」

 

 まぁパチュリーへの心配事なんて喘息と今回の件くらいしかないから二択で当たるもんな。当てられないのは俺くらいだな。俺まじ無能だわ。

 

 レミリア「話、いいかしら?」

 

 皐月「そうだったな。んでどしたの?後日談?」

 

 レミリア「まぁそんなとこね。とりあえずユグドについて話すわ。」

 

 俺がレミリアから聞いた限りでの話ではどうやらユグド・ノーレッジは紫さんの図らいで彼岸?ってとこに連れて行かれたらしい。そこには閻魔様がいて地獄行きか天国行きからの審判が下るとかなんとか。どうやらユグドは死んだらしい。

 

 彼岸に一歩でも踏み入れたら神でなければ戻れないそうな。そしてユグドはそこに足を踏み入れ、そのまま地獄行きになったらしい。不老不死って地味とこで死ねるんだなと思った。別に今死にたいわけじゃないし死ねない理由もあるから行きたいとは思わないけど。とにかく奴は地獄の住人となり、罪をそこで償わされるそうな。

 

 皐月「そうか………。なんだか呆気ない結末だな。」

 

 レミリア「そうでもないわ。貴方があそこまで追い込まなければ彼岸に送ることも地獄に送ることも出来なかったのだから。」

 

 皐月「いや霊夢が本気出せばどうにかなったろ。つーかみんなが本気出せば瞬殺だっただろうに。」

 

 レミリア「あなた忘れてるわね?みんな霊力と魔力、それから生命力を奪われてたのよ?それで本気出せって言われても出せると思う?」

 

 皐月「……………言われてみればそうだな。あん時偶然自然治癒で体力ごと回復したから俺は動けたのかなるほどね。」

 

 レミリア「……………そうね………。」

 

 あれ?なんだか暗い。レミリアが暗いなんてなかなか無い………ってこれデジャヴか?

 

 レミリア「今回もその……ありがとう………。私の家族を助けてくれて。そしてゴメンナサイ…………。また貴方に背負わせてしまったわ………。」

 

 やっぱりこれか。俺自身は気にしてないけど向こうが気にしてるし………はてどうしたものか…………。こういう時気の利いたこと言えればいいんだが俺にはその脳がないからなぁ………。思うがままに伝えるか。

 

 皐月「別にお礼はいらん。俺が好きでやった事だし結果的に倒れたのは俺だけ。その俺も目覚めた。それでいいじゃん?」

 

 決まった………。とは全く思えん。何言ってんだ俺。アホなの馬鹿なの死ぬの?って俺死ねないんだった……。

 

 レミリア「良くないわよ。私達の後始末が出来てなかったせいで殆どをあなたに背負わせてしまった、関係の無い貴方にまた頼ってしまった………。貴方が意識を失ったのは私のせいよ、だから……。」

 

 皐月「関係ない………ね。レミリア。お前から見て俺は何だ?」

 

 俺の不意の質問に少し反応が遅れるレミリア。

 

 レミリア「……え?………恩人……かしら?いえ、[友達]?なのかしら………?よくわからないわ。」

 

 皐月「なら俺に対して少しでも[仲間]だとか[友達]だとかの意識はある?」

 

 レミリア「もちろんあるわ!皐月は私の家族の恩人よ!私の友であって欲しいとも……思うもの……。」

 

 皐月「だったら答えは出てるだろ?俺たちゃ[友達]で[仲間]なんだよ。友達が困ってるんなら俺は必ず助ける。それが例え命のやり取りだったとしてもだ。」

 

 レミリア「だからこそ巻き込みたくないのよ………。私一人で終わらせられるなら、私の起こした問題なら尚更巻き込めない………。」

 

 「分かってない」そう思った。確かに友だちだからこそ巻き込みたくないっていう言い分は分かる。過去の俺にもその感情があった。俺は能力者だ。家族を俺と同じ目で見てほしくない。そう思った時期もあったから分かる。だが今は違う。過去の出来事を受けて変わったんだ。仲間ってのはそういうもんじゃないってのを。

 

 皐月「じゃあお前は何のために命かけてんだ?」

 

 レミリア「………それは家族や仲間のために……私一人で済ませられるように……。」

 

 ある漫画家がこんなことを書いていた。熱いセリフを、鳥肌が立つような、こんな仲間が欲しいなと心から思えるセリフを。ならば俺がそうなってやればいい。そうして仲間を作っていって仲間たちの負担を減らしてやればいい、救ってやればいいのだと。だから俺は………。

 

 皐月「そんなちっぽけな手で守り切れるわけ無いだろ。お前一人の命で賭けたりるわけないだろ?」

 

 レミリア「じゃあ私は他に何をかければいいのよ![家族]を守るために!私には賭けられる物なんて……!」

 

 だから俺は言ってやるよ。キザだし周りから見れば「何言ってんだこいつ馬鹿じゃんwww」って笑うかもしれん。でも俺は言ってやる。

 

 皐月「俺達の命をかけろよ。仲間だろ?仲間ってのは一緒にバカやって、傷つけて、仲直りして、手を取り合える仲なんじゃねぇの?遠慮し合うのが友達か?そんなの上辺だけの関係性だ。そんなもんは[本物の友達]でも[家族]でもねぇよ。」

 

 レミリア「!!!」

 

 俺もあの出来事が起きるまでは自分だけでいいと思ってた。自分さえ生きてりゃ後ろにいる奴らを殺めても、見捨ててもいいと思ってた。いつも独りだった俺は仲間も友達もいない家族とも見られないそんな存在だった。でもあの二人と会って、人を信用することを思い出した。幻想郷に来て更にそれを再確認できた。だから俺は言う。

 

 レミリア「………偉そうに言わないでよ…………。貴方は今までずっと孤独だったのでしょう?そんな貴方が……なんでそう言い切れるの………。」

 

 レミリアは目尻に涙を溜め、俺の目をまっすぐ見据えて俺に問いかけてきた。だから俺は率直に言った。

 

 皐月「友達だからだ。」

 

 俺には一点の曇りもなかった。あるのはただ純粋な想い。[仲間]や[家族]の在り方に対する俺の想いだけだ。

 

 レミリア「……………いいのかしら……?」

 

 皐月「………なにが?」

 

 レミリアが一歩近づく。

 

 レミリア「また……迷惑をかけるかもしれないわよ………?」

 

 皐月「かけていいんだよ。道を間違えれば説得するし、間違ってなければ手助けをする。どんな[迷惑]でもドンと来い。」

 

 一歩近づく。

 

 レミリア「……………死ぬかもしれないのよ……?」

 

 皐月「俺不死身だから死ねないよ。」

 

 一歩近づく。そして皐月の目の前に立つ。

 

 レミリア「…………貴方はそんな私達を………仲間としてみてくれるの?」

 

 皐月「全員対等な存在として受け止めるさ。お前らが俺を受け入れてくれたように、な?」

 

 その瞬間、レミリアは飛び付いてきた。子供のように泣いていた。かなり重く背負っていたのだろう。一度ならず二度も巻き込んだ事を引きずっていたのだろう。気にすんなっつってんのに変に気にしやがるからまったく……。

 だがいまはそんな言葉はいらない。ただ慰めるように俺はレミリアの頭を撫でた。優しく、そして全てを受け入れるように………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 皐月「…………気が済みました?」

 

 レミリア「…………………うん。」グスン

 

 めっちゃ充血してた。死ぬほどに。いや元々紅いけどなんつーか更に紅い。ちなみに体制は起き上がってる俺にレミリアがまたがってる感じ。正直恥ずい。

 

 レミリア「……………こんなの、誰にも見せられないわよ…………。」

 

 ………ごめんレミリア手遅れだわ。だって外にめっちゃ気配するもん。一人明らかに死にかかってる感あるけど………。あ、開いた。

 

 全員「」ドサドサドサドサ

 

 皐月「……………あ。」

 

 レミリア「え?!」

 

 …………やだこの空気スゲェ立ち去りたい。

 

 レミリア「……………もしかして聞こえてた?」

 

 馬鹿それ地雷だ。

 

 霊夢「……………き、聞いてn「謝ってるとこから聞いちゃったぜ………。」魔理沙!?」

 

 魔理沙のアホが言いやがったコノヤロー痛い痛い痛い痛いお願いだから俺の手を思いっきり握らないで爪が食い込んでるから。

 

 レミリア「…………。」(´;ω;`)ブワッ

 

 咲夜「お、お嬢様!?」ブハッ

 

 美鈴「ちょっと咲夜さん!?鼻血出てますって!!!」

 

 コア「あ、いつも通りの紅魔館ですね!」

 

 フラン「お姉様そこ変わってよ!私の特等席だよ!」

 

 いつの間にお前の特等席になったんだ俺は!

 

 パチュリー「………………。」

 

 アリス「?どうしたのパチュリー?」

 

 パチュリー「………なんでもないわ。」

 

 霊夢「ま、とりあえずこれで一見落着ね。一時はどうなることかと思ったわ。」

 

 魔理沙「だな!さ、皐月も起きたし宴の準備をしようぜ!」

 

 霊夢「どうせ神社の前ででしょうが。皐月!準備しに帰るわよ!」

 

 皐月「にゃに!?早すぎやしません!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 宴会中である。今回は紅魔館と人里の主催らしい。紅魔館は身内が迷惑をかけた、人里からは依頼のお礼の一部だと言ってお互いに金を出し合ったらしい。

 みんなワイワイやってる中俺はというと………。

 

 文「なるほどなるほど……。」メモメモ

 

 皐月「あの俺帰っていいっすか?」

 

 文「次にですね………。」

 

 文からの取材を受けていた。本当はすぐにでも書きたかったらしいのだが宴会の時でいいかと霊夢が勝手に許可しやがった。まぁ減るもんじゃないしいいけどね。

 

 文「ありがとうございました!あと体大事にしてくださいね!」ピューン

 

 皐月「…………なんか疲れたわ。なんでだろ?」

 

 パチュリー「ほんとにお疲れね。今にも死にそうな顔してるわよ?」

 

 皐月「…………お前もな。」

 

 俺のパチュリーは二人同時に取材をされた。理由は俺達が立役者と首謀者の孫娘だからだ。文から今の気持ちだとか細かい戦闘の事とかめっちゃ聞かれた。ちょーだるかったよ。疲れちゃったよパトラッシュ。

 

 パチュリー「私はたっぷり休んだから全然よ?顔色悪いの元からだし。」

 

 皐月「それは悪うございました………。」

 

 明らかに疲れてる俺。そらそうだろ?あの後すぐに博麗神社に連れてかれるし準備も手伝わされた。実質休んでない。

 

 パチュリー「……………し、しょうが無いわね。ここどうぞ。」

 

 パチュリーが正座を少し崩した状態になりそこをポンポンと叩いている。これってひょっとしなくても…………。

 

 皐月「膝枕っすか………?いいんすか?」

 

 パチュリー「ほら!さっさとして!」

 

 俺の頭はパチュリーに強引に持っていかれそのまま膝の上に行った。

 

 皐月「………………首がゴキって鳴った。」

 

 パチュリー「貴方が来ないからよ。」

 

 皐月「理不尽だぜパチェさんよ。」

 

 パチュリー「…………呼び捨て。」ボソッ

 

 皐月「ん?なんて?」

 

 パチュリー「だから呼び捨てにしてっていったの!その………[パチェ]って…………ううう………。」

 

 何この可愛い生き物………。最後の「ううう………」って何それ反則やろ。くっ、これがギャップ萌えか!あと頬が赤いっすね。はい。

 

 皐月「…………パチェ。」

 

 パチュリー「!!…………なに?」

 

 皐月「このまま寝ていい?パチェが辛かったら止めるけど。」

 

 パチュリー「辛くないわ。寝なさい?このまま寝ていいのよ。あなたはその……私の[親友]……の一人なんだから……。」

 

 皐月「………親友か。悪くないな……それ………スゥ……、スゥ………。」

 

 パチュリー「……寝るの早いのね。よっぽど疲れてたのかしら。全く博麗の巫女ときたら全く………。ふふっ。」

 

 頭を撫でるパチュリー。そして完全に落ちた皐月に小さな声で一言言った。

 

 パチュリー「ありがとう皐月。今は親友だけどいつかは……………ね?私の[初恋の人]?」

 

 暖かな温もりをくれた優しい人。私を自分と対等に見て、助けてくれた。美鈴の気持ちがわかった気がするわ。そして多分咲夜もレミィもフランもこんな気持ちなのかしら。[人に恋する]って気持ちは。

 

 昔から私達の一族は名門の魔法使い一族だった。生まれながらにして魔法使いだった。そのためか疎遠され続けその上お祖父様からの禁術を背中に刻まれた。誰もが私を特別扱いし、そして疎遠してきた。でもレミィはそんな私を普通に見てくれた、美鈴達が迎えてくれた。そして皐月が親身になって私の話を聞いてくれてそれでも尚普通の女の子として見てくれた。

 

 初めてだった。血筋や後継者の事しか見ていなかった男性たちとは違った。皐月だけが私を私としてみてくれた。私の為に戦ってくれた。優しくしてくれた。私を救ってくれた。嬉しかった、そして………私は彼を好きになった。

 

 ふふ、私絶対負けないわよ?美鈴?みんな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ???「全く、貴方は幻想郷の賢者として何をやっているのですか。彼に任せっきりじゃ立つ瀬がないですよ?」

 

 紫さん「分かっていますわ。しかしあの時はわたくしも忙しかった身、彼がいてくれて本当に助かったわ。」

 

 ???「まぁいいです。あの男の身柄は地獄にて拘束しましたので要件は異常ですね?ではお帰りくださいな。」

 

 紫「ええ、また来ないことを願いますわ。………不思議な人ね。人なのに期待していまう…………霊夢みたいな、不思議な子……。今度お礼をしなきゃですわね♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 12月に入り普通に寒くなってきた幻想郷。コタツの中でぬくぬくとしている皐月にとある来訪者が。その人物とは一体………。


 次回 : 第十六話 お礼


 皐月「コタツから出たくない。」

 霊夢「ダメ人間がいるわぁ………。」

 皐月「お前もな。」


 作者「次回をお楽しみにね。」

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