薄暗い回廊に肉を引き裂く音が響く。
ブチブチと相手の肉を喰らうのは額に巨大な角を持つ魔獣である。
襲われているのはコインビートル。ジメジメした下水道や薄暗い洞窟にすむ魔獣であり
群れを作って生活している。
そのコインビートルを喰らっている魔獣のあたりには甲殻を一撃で刺し貫かれた魔獣の
死体が散乱している。
あたりには、魔獣から出たであろう青黒い血によって池が出来ており巨大な角を持つ魔獣の脚はどす黒く変色している。
魔獣を粗方食べ終えた緑の甲殻を持つ魔獣に変化が起こる。
緑の甲殻に包まれた背中が割れ、そこから薄黄色の羽が二対生えてくる。
巨大な角を持つ魔獣は新たに生えた羽で新たなる獲物を探すために耳障りな音を流しながら飛んでゆく―――。
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:クリス視点
黒髪の青年の頬に手が向かう。
鋭いスナップを聞かせたその手のひらは黒髪の青年の頬を反応させずに叩いた。
パァンと自分たちが落ちてきた空間に響く。
【おお。クリティカルヒット!】
(確かにいい具合に入っていたがな)
アリサの平手打ちをくらったリィンは衝撃にふら付きエリオットに心配されていた。
「リィン。大丈夫?」
「あぁ…。厄日だ…」
【いや、そこは厄日だと言っちゃダメでしょ……。】
(ああ。確――――)
【そこは、ありがとうございます! でしょ!?】
(お前は女子に叩かれたいのかっ!?)
どうやらリィンはアリサを助けようとして自分がクッションになって助けたが、助け方が悪くアリサの谷間に顔を突っ込んでいたようでリィンはすぐさま謝ったがアリサは羞恥に耐え切れずリィンの頬を叩くに至ったようだ。
まぁ、普通の男子からしたらご褒美に映るの……か?
皆が自分たちが落ちてきたこの空間に戸惑っていると、自分たちが腰に身に着けていた戦術オーブメントから音が鳴った。
そして各々が戦術オーブメントのカバーを開けると全員にサラ教官の声が聞こえてきた。
『それは、特注の戦術オーブメントよ。』
「―――この機械からか?」
「つ、通信機能を搭載しているのか?」
ガイウスとマキアスがつぶやくとアリサが何かに気づいたかのように声を挙げる。
「もしかして、これって…」
『ええ。これはエプスタイン財団とラインフォルト社が共同して開発した次世代の戦術オーブメントのうちの一つ――――』
『第五世代型戦術オーブメント。
≪ARCUS≫よ。』
「ARCUS…」
「
『そう。回路に七耀石からできたクオーツを嵌めこむことで導力魔法が使えるようになるわ。』
『―――というわけで、受け取りなさい。』
サラ教官の言葉とともに薄暗かった広間に光がともり、ここがさっきまで自分たちがいた場所と同じぐらいの広さの大部屋であることが分かった。
『君たちから預かっていた武具と特別なクオーツを用意したわ。
それぞれ確認したうえでクオーツをARCUSにセットしなさい。』
それで、サラ教官からの通信は途切れた。
「まぁ、とにかくやってみるか。」
というラウラの声と共に彼らは自分の武具があるところへ向かっていく。
【あれ?僕に届いたARCUSにはマスタークオーツ嵌ってたんだけどなぁ】
(そうなのか?)
【もしかすると、餞別でサカキ博士が嵌めたのかもしれないけど、博士たまーにとんでもない物作るから…】
(…………あの博士、ここでもマッドなのか。)
【うん?まぁ、そうだね一度支部内をジュースで大混乱に陥れたし。】
この世界でもあのマッド博士は初恋ジュース作ったのか…
俺とクリスはアタッシュケースが置いてある台座へ向かう途中そんなことを話していた。
俺がアタッシュケースを開けると黒と黄金色の混ざった1.5mほどの剣と赤黒い盾、全体的にやや黄土色の銃身にピンクの小さなパーツ。
俺が前世のゲーム内で愛用していた神機が収められていた。