真剣で神槍に恋しなさい!   作:むこうぶち

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第二十話:騒がしくなる日常

俺の川神学園生活二週目は『波乱』の一言に尽きる。

 

「待ってくれ兄貴!!俺に、俺に『飛槍』の秘奥を教えてくれ!!」

「待てよ竜胆!!わっちともう一辺勝負しろって!!」

 

那須与一。東西交流戦最終日に出会った乱入者、義経と同じ『武士道プラン』のクローン。顔はイケメン、中身は大和の古傷を抉るような厨二病。どうやら九鬼の従者連中から俺の話を聞かされていたらしく、また俺の使う『飛槍』が大いに好奇心を刺激し、アイツの求める『何か』に触れてしまったらしく。転入初日から俺を『兄貴』と呼び慕い、『飛槍』を教わりたいと詰め寄られる日々である。・・・・一部女子から妙な視線が増えた気がするのは気のせいだろう、京が「竜胆×与一・・・・ハァハァ///」とか言ってたのは絶対気のせいだ。

 

史進。何故か転入してきた梁山泊メンバーの一人。九鬼時代に仕事で組む事はあったが、それも数える程。どうやら百代と同レベルのバトルマニアらしく、学園内の九鬼、川神院関係以外の実力者たちをひたすら打倒した末に対戦相手に困って俺のところまでたどり着いた。今の俺は九鬼でも川神院でも無く、命令に抵触しないと言うことで挑んできたようだ。林冲と武松から頭を下げられたので断るに断れず、派手な爆炎をバラ撒く『飛槍・焔天』で目くらまししてからアッパー一閃。で、それ以降もの凄い勢いで付き纏われ始めた。

 

「与一が自ら話しかけるなんて・・・・竜胆君は凄いんだな!」

「その代わり特殊な趣味の子たちからの視線が増量中だけどね」

「でも与一君と仲良くしてくれそうだし、一安心かな?」

 

源義経。一子とクリスと林冲を足して三で割ったような純粋で、真面目で、涙もろい子。だが真面目さが過ぎるのか、それとも『源義経のクローン』と言うプレッシャーに気負っているのか。『源義経』であろうとして必要以上に自分を精神的に追い詰めている感が否めない。そこらへんも周りの連中と協力してフォローしてやるべきなんだろう、ってかヒュームさんとゾズマさんとミス・マープルに囲まれて「可能な範囲で矯正を試みろ」って言われたし。

 

武蔵坊弁慶。一応、主従としての立ち位置は弁え義経を立てるべき時は立てるが普段は義経()を弄り倒し、与一(同僚)をパシらせるただの飲兵衛。常に学年総合三位以内をキープするという条件を付けてまで、川神水の携帯許可をもらうと言う生粋の飲兵衛。壁越え確定であるが、ヘタをすれば腕力だけなら百代を上回る可能性すらある。

 

葉桜清楚。クローン組の一人ではあるのだが、唯一正体を公表されていない。ミス・マープルが隠す、と言う事は相応の理由があるんだろうが・・・・。清楚という名の通り、今まで川神学園にはいなかった大和撫子と言うことで人気急上昇中。中庭にある総代の花壇の世話をしていたり、図書室でさまざまな書籍を黙々と読む様を見ていると文人系の偉人が元になった可能性は高い・・・・んだろうが。違和感があるんだよな、微妙な違和感なんだけどさ。

 

「うぅ・・・・すまない竜胆、史進が迷惑をかけてしまって・・・・」

「最近はアイツも盧俊義の才能があるのではないか、と思っている」

「あー、ありそうだねぇ」

 

林冲。今回転入してきた梁山泊組のリーダー。リーダーなのにイマイチ日常での統率力が無く、史進や公孫勝の行動に一喜一憂し、楊志に下着を獲られると言う立場は変わらないようだ。だが身のこなし、技術に関しては以前と比べ格段に上がっているだろう。

 

武松。梁山泊組、公孫勝の保護者。身内に激甘、他はビジネスライク、クールビューティーな外面で既にファンクラブが出来ている。同じ炎系の気の使い手、って事で時間が合う時は九鬼時代から引き続き一緒に鍛錬をしている。まぁその中で俺は『熱量』、アイツは『自在性』にそれぞれ方向性を確立していったワケだが。梁山泊組で最も距離感が近しいのは間違いなくコイツだ。そうそう、コイツは甘味で釣れる、マジで。

 

楊志。梁山泊組である意味一番の問題児。女子のパンツをコレクションする事に最早命までをも賭けており、またその道の半ばで散るならば本望、と声を大にして宣言する程。そのクセ実力は壁越え中堅クラス、なんでもかんでもコピーする異能で百代の瞬間回復、由紀江ちゃんの剣撃、ルー師範代のバーストハリケーンなどさまざまな技を習得済みとのこと。俺の技?使いどころが難しいから無理、って・・・・ちょっと泣きそうになったのは内緒だぜ。

 

「ふむ、竜胆には人を惹き付ける何かがある、と言うことだな」

「なにあれ、どこのエロゲの主人公?」

 

九鬼紋白。英雄の妹、未だに『紋様』の呼び方が抜けない、ってか抜いたら串刺しにされる。公孫勝とは仲が良いようで、ちょいちょい公孫勝に連れられてゲーセン巡りをしているのに遭遇するようになった。最近は数日前に行われた転入生歓迎会での大和の手腕を非常に気に入ったようで、大和の案内で川神市内の人材紹介ツアーを行っているらしい。

 

公孫勝。梁山泊組最年少で相当希少な異能持ちだ、としか聞かされてない。あとニート。元々末っ子体質とでもいうべき甘えんぼだったらしいが、それに輪をかけて武松がもの凄い甘やかしているため拍車が掛かっているらしく、林冲あたりは将来引きこもりにならないだろうか、と心配していた。なので紋様と言う友達ができた時には武松共々本当の姉のように喜んでいたのが記憶に残っている。

 

「ほぉほぉ、あれが結城竜胆君か・・・・」

「おや、燕姉さんも彼が気になりますか?」

 

松永燕。関西から転校、『納豆小町』として目下売り出し中のアイドル。壁越えクラスの実力を持っていて、手合わせ、と言う名目で百代と戦った時はありとあらゆる武器を駆使し互角の戦いを繰り広げた。正直、何を考えているか分からないところがあるので苦手だ。商魂逞しく、既に学食に松永納豆を卸し、更には休み時間、放課後問わずに納豆の行商をしている姿が目撃されている。

 

明石夕凪。天神館からの転校生で、松永先輩の従妹と言う事が発覚。コイツも正直何を考えているか分からないが、松永先輩に付き合わされて行商の手伝いをしている姿も目撃されている。ルックスが良いもんだから、最近では松永先輩と二人セットでファンクラブが結成されており、また松永先輩もグループ活動を視野に入れるために勧誘しようとしているらしい。

 

これにヒュームさんを入れて都合十三人の転校生、と言う訳だ。

 

 

―――――――――

 

で、放課後。俺はヒュームさんに呼び出されたんだよ、体育館裏に。これがそこらのヤンキー程度ならどうとでもするがヒュームさんとか恐怖だよ、恐怖。

 

「俺も暇では無いから単刀直入に話をする・・・・紋様のことだ」

「紋様の?」

「ああ、通常・・・・紋様の護衛には俺かクラウディオのどちらかが必ず付く、そうでなくても一桁代の誰かが代理を務める」

 

だろうな。英雄のように戦闘力が高いあずみさんみたいなのを専属にするか、揚羽様みたいに当人の戦闘力が高いならばあまりそのへんの心配はいらないわけだ。しかし紋様は自らの研鑽と、若手従者たちの育成を兼ねて専属を決めず、その時その時で手が空いている者が一時的に専属としての仕事をしている。つまり一桁代でローテーションを組むことによるカバーにも限界があるわけで・・・・

 

「それでも一桁代が護衛につけない場合は貴様が登下校、就学中の護衛を努めろ。貴様なら・・・・俺の期待を裏切らない、と確信してのことだ」

「過分な期待、とも思いますがね。まぁ、やるだけの事はやります・・・・が」

「分かっている、だが貴様のように純粋な戦闘力で一桁代に追従出来る者が殆どいないと言うのも事実だ」

「エルじゃダメなんですかね?」

 

エルは壁越えとまではいかない、だが三郎レベルと互角以上にやりあえるぐらいの実力はあるはずだ。

 

「ヤツは武士道プランに伴う川神市内の警備強化の責任者になっている、紋様の専属には駆り出せん」

「成る程ね・・・・」

 

タイミングが悪ぃね、ホント。

 

「そういうことだ」

 

スッ、と姿を消すヒュームさん。

 

「エルが市内の警備強化責任者・・・・ねぇ?」

 

武士道プランはミス・マープルの管轄だ。十中八九、桐山がそう言う責任者とかに出張ってくると思っていたんだが・・・・。何かに感づいてエルの自由を奪いに行ったか?そうするとそのうちニコライさんも動きを封じられる可能性も出て来る、となると・・・・

 

「ったく・・・・嫌な性分だ、疑い始めたらキリがねぇってのによ」

 

それでもやらなけりゃならねぇ。一応、九鬼の人間だしよ。

 

「出たトコ勝負はのぞむところだ」




第二十話でした。

与一に懐かれ、史進に付きまとわれるのは改訂前と変わらず。紋様とまさるは既に仲良し、燕さんと夕凪が従妹と。

人間関係がごっちゃになりつつある、でもまだ恋愛パートには入らない。

次回から数話日常回でも挟んでから項羽覚醒とかやろうかなーとか考えてます。

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