真剣で神槍に恋しなさい!   作:むこうぶち

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第十五話:武神と神槍

「『川神流・無双正拳突き』ぃ!!」

「『重撃・藤牡丹』!」

 

奥義にまで昇華された正拳突きと前蹴りの激突、ガキィン、とか肉体同士の衝突じゃありえない音が鳴ってるのは気のせいだと俺は思いたい。ってかいい加減俺だって疲れるぜ、技と技がぶつかり合う事十七回、技では無いが拳を交える事(俺は半分以上蹴りだが)数えきれず。

 

ってかこっちの脚が限界だよ。パワーは四年前の比じゃねぇな、拮抗しているように見せかけてこっちが反動で押し返されてるし。スピードも直線だと完全に負けるな、その代わり小回りは効かないみたいだが。耐久度はこっちが余裕で勝ってるな、二、三発ぐらい迎撃しそこねて直撃もらったけどほぼノーダメだし。まぁもっとも・・・・

 

「強いなお前!『瞬間回復』っ!!」

 

こっちがどれだけ掻い潜ってぶち込んでも、それを全回復してしまうようなチートに昇格してしまったようだ。ただ打ち合い始めてから感じていた、奇妙なまでのガードの甘さの理由がこれで分かった。どれだけのダメージを負っても回復出来る、そんな『慢心』が生んだガードの甘さだ。今の俺じゃあまだ無理だが、本気のヒュームさんや総代なら、回復させる暇を与えずに一撃で気絶、戦闘不能に追い込む事も可能だろう。

 

「全く、呆れる程のバケモノスペックだ」

 

んで、少なくとも今の俺じゃあその攻略法は使えない。トップクラスレベルの攻撃力は無いし、なんやかんやで俺と百代の総合力はどっこいどっこいだ。パワー対テクニック、スピード対防御力、一撃の重さは百代が、当てる手数は俺が、まったくもって真逆な状況と来たもんだ。

 

「『飛槍三十本・五畳槍衾』!!」

 

とは言えこのままじゃジリ貧だ、勝つには攻めなけりゃならない。『飛槍』の耐久度は普通の槍よりやや強いぐらいだ、百代なら苦も無く全弾を打ち落とすか防ぎきるかするはずだ。俺に必要なのは百代がそうする『時間』だ。

 

「っ!?面白い技だな・・・・『無双正拳突き・乱れ打ち』ぃっ!!!」

 

いやいやいや、あんだけ威力がある一撃を連打するってどんだけだよオメー。俺の連撃がマシンガンだとしたらコイツのはガトリングか?ったく、パワーがあるのに回転数もあるって卑怯だよなァ。

 

「『煉獄発勁』」

 

俺の右手を包む気の焔、色は「白」。相当な高熱だが、今のコイツにダメージを与えるならこれぐらいしなけりゃ通らないと見た。だからこそ、この一撃に関しては加減も無用。槍無しで放てる、最大の一撃を叩き込む。

 

「テメーも武神ならよ、真っ向からコイツに打ち勝ってみやがれぇっ!!!」

「!?」

 

距離を詰めるべく駆け出しながら、俺はそう叫ぶ。口調が素に戻るが構うものか、どうせこれで通じなけりゃ降参するだけだ。そう思っていれば、百代もさらに笑みを浮かべる。

 

「良いだろう!来い!!」

 

受けた、なら俺は・・・・

 

「『飛穿・白煌(びゃっこう)』!!」

 

本来なら槍の技だが、『ここまでは』素手でも再現出来る。川神流で言う『無双正拳突き』に『遠当て』の要素を組み込んだ技だ。とは言え、放たれた拳圧にも焔の気は付加されるのでダメージは大きく、拳圧を作り出す拳そのものが直撃すればその威力は相当なものになる。俺の打撃技で最速にして最強、文字通りの『最高火力』だ。

 

「ハハハッ!!良いぞ、こう言う戦いを私は待っていたんだ!!」

 

百代もそう叫び、『真っ直ぐに』突っ込んできた。・・・・まさかとは思うけどさぁ、本気で真っ向から受けきった上で『瞬間回復』でリカバリーして殴る、とかそんな事考えてねぇよな?

 

「っ!!熱いなぁ・・・・『瞬間回復』っ!!」

 

本当にやりやがった、気の焔の熱量は擬似的なもので本物の半分以下の熱量しかない、とは言え白色の焔だ。体感温度は300°Cを越えている筈、俺としては焼ける痛みからの気絶か、或いは動きが鈍る事を期待したというのに。俺の『白煌』を受けきる間中、常時瞬間回復を使い続けた上で痛みにも耐えて突撃して来やがった。・・・・まぁ確かに、傷を治せても痛みまで消せるわけじゃねぇだろう。痛みそのものに耐える訓練ってのも、併用しなけりゃ意味がねぇわな。

 

「はぁあああああああっ!!!」

 

振り上げられる拳、こりゃマズイね。

 

だから俺は・・・・

 

「何のつもりだ?」

 

俺の顔面から僅か数ミリで止められる拳、俺は両手をバンザイの状態。つまり。

 

「降参だよ降参、ったく・・・・ここまでゴリ押しされるとは思いもよらねぇよ」

 

やっぱ槍無しだと俺はこんなもんか。ヒュームさんとニコライさんに鍛えられ、それなりに出来るようになったつもりではいたが本職(打撃屋)にはかなわねぇか。

 

「お前・・・・まさか」

「気づくのが遅ぇんだよ、バカ野郎」

 

百代が拳を下ろす、と俺はマスクを取り外し、フードを外す。

 

「ただいま」

「・・・・お帰り」

 

思わず、どちらからでもなく拳を突き出しぶつけ合う。

 

 

―――――――――

 

「いいなー!いいな!!ーいいなー!!!」

「テメェ他人事だと思って好き勝手言ってんじゃねぇよ」

 

あの後、百代と共に皆と合流。帰還の挨拶を済ませ、九鬼での従者生活と言う土産話をしていたら、色んな連中と戦った話になった瞬間に百代がメッチャクチャ食いついてきた。

 

「こちとら死ぬかと思ったんだぞ!?」

「良いじゃんかよー!九鬼の零、五、六番の辺りなんて壁越えとして有名だろ!しかも伝説の傭兵集団梁山泊と曹一族とかー!ずるいずるいずるい!!」

 

勘弁してくれよ。さっきまで冒険だらけでズルい、と騒いでいた翔一と綺麗どころに囲まれてズルい、と騒いでいた岳人を(物理で)宥めたばっかりなんだぞ?

 

「しかしアレだな、一子はかなり強くなったんじゃねぇか?」

「え?本当!?」

「ああ、発せられる気を見りゃ直ぐ分かる」

 

褒めながら頭を撫でていると、犬耳と尻尾を幻視してしまった。仕草がより犬っぽくなってる気がする、そう思って周りを見渡せば大和と京が揃って眼を背けた。犯人はキサマらか、まぁ犬っぽい妹も可愛いから許すが。

 

「岳人は・・・・アレだな、思った以上に筋肉つけてきたな」

「おぅ!軍師のアドバイスを聞いて鍛え続けたんだぜ!」

 

一つだけでいい、『これだけは負けない』と言う長所を持て。流石は大和、的確で分かり易いアドバイスだな。少なくともパワーだけならかなりなモンだな、負けてやるつもりはねーけど。

 

「忠勝、苦労かけたな」

「いや、兄貴が無事に戻ってきたんならそれで良い」

 

忠勝も鍛えてんのか?雰囲気からしてかなり喧嘩慣れしている気もする。それとオカンオーラが四年前より増加してる、ほら今も空いた茶碗に直ぐお茶注いでるし。

 

「大和もご苦労さん」

「リンが戻ってくるんならだいぶ楽になるだろうし」

 

大和は・・・・なんでだろうな、テンションちょい高め?具体的には翔一にちょっと近しい気もするが。だが俺たちと会話しながらちょいちょいケータイを弄っている、人脈を大事にしている、とは百代からのメールで聞いていたがそれ関係かな。

 

「で?何でお前は女装してんだ?」

「聞かないで・・・・」

 

卓也は気が付けば女子の制服を着させられていた。うん、普通に可愛いなオイ。金取れるぞ、いや良い意味で。

 

「お前も割と元気そうだな」

「うん」

 

京。多少は明るくなったな、俺がいなくなる前に比べれば相当明るくなった。そう言えばこの間、百代に「京のコミュ障はどうだ?」って聞いたら「うん、まぁ・・・・大丈夫」って微妙な返事が返って来た。まぁ、大丈夫って言うからには大丈夫なんだろうが。

 

「そうだ、今度仕事で知り合った冒険家紹介してやるよ翔一」

「ホントか!?色んな話が聞けそうだぜ!!」

 

翔一は全くと言っていいほど変わらないな、まぁそれでも百代から聞いた話だとリーダーとしての成長はしているらしい。それと内申総捨てで就職希望に『冒険家』と書いたらしい。意外とイケルんじゃねーかと、思ってしまう。

 

「クッキーも相変わらずだな」

「竜胆も元気そうで何よりだよ」

 

気配で察知出来ないわけだよ、俺も存在を忘れていたこのタマゴ型ロボはクッキー。九鬼財閥が開発し、英雄様が一子に贈ったご奉仕ロボ。とは言え俺の勤勉な妹は日常生活での手助けは必要性皆無、そこで日常生活の必要性大な翔一に移譲されたそうだ。ちなみにテスト運用で俺とあずみさんが担当しているので、製造当時からの顔見知り(?)でもある。

 

「お前らも大変なグループに入ったもんだ、退屈しねぇだろ?」

「あぁ、色々とあったが仲間になれて良かったとハッキリ言えるぞ!」

 

クリスティアーネ・フリードリヒ、通称クリスは最初金曜集会に案内された時に価値観の相違で揉めたらしい。大和が身を呈して解決に導いたらしいが。だがまぁ少し話しただけでもわかるが根は単純で優しい、どちらかといえば一子に近しい性質を持ってるかも知れない。

 

「まさか竜胆さんとお会い出来るとは思いもしませんでした」

「俺だって由紀江ちゃんがこっちに来てるとは思いもしなかったよ」

 

黛由紀江、由紀江ちゃんとは二年前ぐらいに知り合ってた。クラウディオさんの伝手で由紀江ちゃんの父親、『剣聖十一段』黛大成さんと試合をした時に。一週間、その教えを受けると言う事で滞在し、由紀江ちゃんとは再戦の約束もしている。妹の沙也香ちゃんも元気だろうかねぇ?

 

「お前本当に修行してたのかよ~!?まゆまゆみたいな美少女とは知り合いになってるし!!」

「してたよ!?マジで殺されるかと思ったんだぞ、舐めんな!!」

 

百代は何故か女好きになってた。いや、昔から男勝りだし?女子力は最低だが男子力は最高だった、だが百合に走る事もなかろうに。と思ったんだ、本気で。大和と忠勝の愚痴を聞けば借金癖もあるらしいし、そこらへんも矯正してやらにゃあな。

 

「ま・・・・取り敢えず」

 

一つ咳払いをすれば視線が集中し、静まり返る。

 

「こうやってまた戻ってきたんだ、また宜しく頼むぜオメーら」

 

「「「「「お帰り!!!」」」」」

 

また始まるんだ、こいつらとの日常が。




第十五話でした。

主人公補正なんてなかったんや、そう言わざるを得ないような結果。槍を使えば格上とも渡り合えるが槍が無ければギリ壁越えクラス、それが今作の竜胆君。

んでもっていよいよ原作時間軸突入、と言う事でFate/風ステータス更新です。

クラス:ランサー
真名:結城竜胆
性別:男
属性:混沌・中立
身長/体重:180cm、85kg
地域:日本

筋力:A 耐久:A+++ 敏捷:A
気:A+ 幸運:E+ 宝具:B

クラススキル

対魔(気)力:A:星殺しだってへっちゃらさ!(((゚Д゚)))ガタガタ

騎乗:B:無免だけど一通り運転出来る!気がする!

固有スキル

頑健:EX:風邪?なにそれ?

魔(気)力放出『焔』:A:俺の焔はちょっと熱いぜ?(`・ω・´)ドヤァ

専科百般:A:やろうと思えば大体出来る、大体な。

戦闘続行:EX:戦えるうちは負けじゃねぇ、何度でも俺は立ち上がる!

心眼(偽):A:見える、見えるぞっ!!


となりました。あいも変わらず嫌がらせ仕様としか言えない気がする。

次回から原作時間軸に突入していきます!

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