IS 亡国の死神   作:ふくちか

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Ⅲ.運命の再会

春十と鈴の試合は苛烈を極めていた。

 

鈴が駆るIS『甲龍』が持つ衝撃砲と言う見えない砲撃に苦戦を強いられていた春十だったが、一瞬の隙を付いて瞬間加速を行う。

 

その速さに鈴は反応が追い付かず、春十は専用機、『白式』の単一能力、『零落白夜』を発動する。

そのまま一気に勝負を決めようーーーーとした瞬間、アリーナに轟音が轟いた。

 

「な、何よ!?」

 

訳が分からず鈴が吠える中、煙が晴れていく。

 

 

 

 

 

「IS……?」

 

そこにいたのは、一機のIS。

だがまるで人が乗っている気配を感じず、無機質な機械人形と言う印象を受ける。

 

春十と鈴が訝しむ中、ISは二人に向けてレーザーを放った。

 

「うわっ!?」

 

咄嗟に避ける二人だったが、ISは容赦なく二人に牙を剥くのだった。

 

 

 

 

 

ーーーー

 

 

 

一方、アリーナの観客席では多数の生徒が混乱していた。

何故かと言うと、緊急用のシャッターが何者かによって誤作動を起こし、全員が閉じ込められているのだ。

 

何とか上級生や教師陣がロックを解除しようとする中で、春十と鈴は次第に追い詰められていった。

 

 

このまま死ぬのかーーーーそう不安に打ちひしがれる生徒の目の前で、信じられない事が起こった。

 

 

 

「え?」

「……シャッターが、開いた?」

 

 

何と、固く閉ざされていたシャッターが開いたのだ。

 

いや、正確に言えば、"斬り開かれて"いた。

 

 

誰がやったのか想像もつかないが、扉が開いたと言うことは逃げれる。

そう理解した彼女達は、一斉に駆け出した。

 

「皆落ち着いて!慌てちゃ駄目よ!」

 

駆けつけた上級生達が我先に脱出しようとする生徒達を落ち着かせる。

 

 

 

 

 

 

 

その騒ぎもあってか、アリーナに向けて飛び出す黒い影に、誰も気付く者はいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー

 

 

「もうっ!何なのよアイツ!?」

 

鈴は春十と逃げ回りながら八つ当たり気味に叫ぶ。

 

「くっそ……エネルギーさえあれば…………!」

 

何とか逃げることで時間を稼いでいた二人。

先の試合でエネルギーを殆ど消費していた二人はまともな迎撃も出来ないのだ。

 

「……そうだ。鈴、僕に向かって衝撃砲を撃って!」

「どういうつもりよ?!」

「そのエネルギーを……僕の雪片に回して零落白夜を使う。そして、その勢いであのISを斬る」

「……危険よ。出来るの?」

「やってみせるさ」

 

力強い発言に、鈴は場違いにも顔を赤らめた。

だがそれも次の瞬間には引っ込み、決意の表情となる。

 

 

と、その時だった。

 

 

 

 

『ーーーー春十ォ!!!』

 

 

その場に、金切り音と共に何やら声が響いた。

 

『男なら……男ならその程度の敵に勝てなくて何とする!?』

 

ハイパーセンサーで確認すると、中継室の中に春十の幼馴染の箒がいた。

恐らくは強引に入り込んだのだろうーーーーが、今のタイミングでその声援は不味かった。

 

「っ、春十!アイツ向こうに攻撃するつもりよ!」

「!鈴、急げ!!」

「~!あぁ、もう!どうにでもなれぇぇぇ!!!」

 

鈴はやけくそ気味に春十の背に衝撃砲を放つ。

その勢いに乗り、春十は零落白夜を発動。

 

そのままレーザーを放とうとするIS目掛けて飛び出す。

 

「間に合えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

だが無情にもレーザーが中継室に向けて放たれた。

 

「箒ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」

 

幼馴染の名を叫ぶ春十。

 

 

 

 

 

 

だが、何時まで経っても中継室から爆発音が響かない。

 

 

「え…………?」

 

春十は改めて眼をこらして見詰めると、レーザーは中継室の手前で何かに防がれているらしく、分散されていた。

 

「な、何だ……?」

 

箒本人も、眼を開けて目の前の光景を見る。

 

 

すると、箒の目の前には"黒"がいた。

 

 

その黒が、レーザーを防いでいたのだ。

 

 

 

 

やがて終わるレーザーの奔流。

乱入者は、手に装備されていた盾を下ろすと、箒に向き直った。

 

「あ…………」

『……お前、自殺願望者か?死にてぇなら勝手だが、もうちょいマシな死に方選べよ。こんなレーザーで死のうとしても、死ぬまでが苦しいぜ?』

 

突然の乱入者に驚きを隠せない箒に構わず、乱入者は世間話をするノリで箒に話し掛けた。

 

陽気な感じではあるが、その声は酷くくぐもっている。

その矛盾した存在に、箒は萎縮してしまう。

 

『………………さぁて、お仕事開始だぜ!』

 

そんな箒に構うことなく、乱入者は長い棒を振り回す。

すると、先端にビーム状の湾曲した刃が形成される。

 

 

 

 

その見た目はーーーー死神が持つ大鎌。

 

 

 

 

 

IS学園に、黒い死神ーーーーデスサイズが降臨した瞬間だった。

 

 

 

 

 

 


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