取り敢えず、デスサイズ格好いい
本編開始の二年前。
第二回、モンド・グロッソ会場の外れにてーーーー
「なっ、お前！
「春十は俺の弟だ！俺は織斑一夏だ！！」
姉貴の応援に来ていた俺は謎の黒服集団に拐われていた。
目を覚ませば、目の前にはやはり怪しげな集団が。
黒服は俺の名前を聞くと、落胆したかの様に顔を歪める。
「一夏ぁ？あぁ、あの出来損ないの方かよ！」
「お前何間違えて出来損ないを連れてきてんだよ！？」
「慌てんな！政府にはこの事を伝えてあんだろ？」
ざわめきたつ黒服集団。
何となくだが、コイツらの目的が見えてきた気がする。
だが、次に飛び出た一言に俺は何も考えられなくなった。
「おい、大変だ！！織斑千冬が大会に出てやがる！！」
ーーーーえっ？
「はぁ！？どういう事だよ！織斑千冬は弟共を大切にしてるんじゃねーのか！？」
「はっ、結局は出来損ないの弟何か目に掛けないって事かよ！」
「ちぃ、こうなったらコイツだけでも………………って、おい！！」
「ん……って、出来損ないがいないぞ！」
「おい、待ちやがれ！！！」
言い争いを繰り広げてる内に、俺は何とか縄脱けで脱出しようとしたーーーーが、結局見つかってしまった。
「くそっ！」
俺は出口を探して走り回る！
姉貴がどうして俺に構わず大会に出たのかは分からない…………。
分からないけど、今は逃げ切る事が大事だ！！
「この糞餓鬼ぃ！！」
「っ、がっ！！」
だがそんな思いも虚しく、俺は背後から拳銃で撃たれてしまう。
脇腹から血が溢れるのを感じる…………。
「おい、どうする？」
「このままじゃ俺達も破滅だ！こうなったら…………」
「……殺るか」
そう言うと、男達はその場から去っていく。
「くっ、そぉ…………」
朦朧とする意識の中、何やらタイマーの様な音が聞こえてきた。
俺は何とかここから出ようともがく。
けど、数歩歩いただけで倒れてしまう。
「へ、へへっ………………」
俺は自分の血で濡れた手を見つめる。
血って、こんなに赤いんだな………………もうすぐ死にそうなのが、手に取る様に分かるからか、どうでも良いことを思っちまう。
「春十…………姉貴………………ごめん、な…………」
唯一気掛かりなのは、残された姉貴と弟。
姉貴も、弟も……家事得意じゃないからなぁ。
苦労、させちまうなぁ………………。
「へっ………………そろそろ、死ぬか……？」
そう言って閉じた瞼の裏には、黒い死神が見えた。
死神って、いるんだな……………………それが遺言かのように、俺の意識は落ちた。
そしてーーーー耳に入ってきたのは、大きな爆発音だった。
ーーーー
二年後………………
『おりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁッ！！』
某国の研究所にて、無機質なロボット兵を切り裂く黒い影がいた。
エネルギーで形成された刃が装甲ごと心臓部を切り裂いた。
やがて火花を散らして倒れるロボット。
影は物言わぬロボット兵の胸部に手を突っ込む。
その手には、砕け散った宝石が握られている。
『……此方デスサイズ。例の物を回収したぜ』
『ご苦労様』
通信から聞こえてきたのは、綺麗な女性の声。
『やっぱり改造品のコアだったぜ。あっという間に砕けちまった』
『まぁ、純正のコアを作れるのは天災だけだから、気にする必要はないわ。戻ってちょうだい』
『分かった』
影は通信を終えると、蒼い空へと飛び立つ。
デスサイズはTV版です