この魔力使いに祝福を!   作:珈琲@微糖

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第八話 - この素晴らしい爆裂に標的を!

「なんですってぇ!ちょっとあんたどういうことよ、どれだけキャベツ捕まえてきたと思ってるのよ!」

 

「…どうなってんだ、これは。」

 

ダクネスが加入した翌日、キャベツ狩りの報酬を受け取りにギルドに立ち寄るとアクアが受付嬢…ルナさんの胸座をつかみながら抗議していた。

…視界の端に杖に頬擦りしているめぐみんなんて居なかった、いいね?

 

「それが…アクアさんの捕まえてきたのは殆どがレタスでして…」

 

「なんでレタスが混じってんのよぉぉ…」

 

 

「おいっす、朝からアクアはどうしたんだ?」

 

「あぁ、アキラか。キャベツ狩りの報酬が配られているんだが、報酬が思った以上に伸びなかったみたいだぞ。」

 

「確か、レタスの換金率が低いからな。」

 

「成程、それであんな感じになってるのか。」

 

カズマ達に一先ず挨拶をして、この惨状の理由を聞いた。…流石は幸運が低いだけの事はある。だが、少し可哀想に見えてきた。

 

そんなことを思っていると、アクアがこっちの方に近づいてきた。

 

「カーズーマーさん、今回のクエストの報酬は…おいくら万円?」

 

「…100万ちょい」

 

「「「ひゃ、ひゃくまん…!?」」」

 

「すげぇ、大分稼いだな」

 

聞くところによると、カズマが捕まえたキャベツは良質なものが多く、ちょっとした小金持ちレベルまで稼いだらしい。

流石、商売人向きの幸運値というところだろうか。

 

「か、カズマさまぁ…前から思ってたんだけどぉ…貴方って…そこはかとなくいい感じよね!」

 

「特に褒めるところが思い浮かばないなら無理すんな。」

 

100万と言う膨大な数字を前に、アクアがカズマに擦り寄る。

…もしかして、この女神、所持金、ないとか?

 

「かじゅまさぁん…私、今回の報酬が大金になるって踏んで持ってたお金全部使っちゃったんですけどぉ…って言うか、もっと入ってくるって思って、この酒場に10万近いツケがあるんですけどぉ…」

 

「知るか!…というか、今回の報酬は自分たちのものにって言ったのはお前だろ!」

 

「だって!私だけ大儲け出来ると思ったのよぉ…」

 

予想通り、アクアは使い果たしていた…と言うかツケもあったようだ。…せめて、報酬は山分けとでも言っておけばツケ位は返せたと思うのに。

 

「お願いよぉ、お金貸して!ツケ払う分だけでいいからぁ!」

 

「うるさい駄女神!と言うかこの金で、さっさと馬小屋生活を脱出するんだよ!」

 

そう、カズマが言った瞬間にアクアが水を得た魚のように話し出す。

 

「そりゃ、カズマさんも男の子だしぃ?夜中隣で偶にゴソゴソしてるの知ってるからぁ?早くプライベートな空間が欲しいのは分かるけどぉ…」

 

言った瞬間にカズマはアクアの口を抑え、ツケ分貸す事を条件にアクアを黙らせる。

 

…その一連のギャグのような流れを見てため息をついてると、隣のめぐみんが何かを尋ねてきた。

 

「あの、アキラ。どうしてカズマはあんなに焦っているのですか?」

 

「…男としての尊厳を失わないため…かな。」

 

頭の上にはてなを浮かべるめぐみんやダクネスを横目に、俺はキャベツ狩りの報酬を受け取りに行った。

…とりあえず、この金を使って装備品でも揃えようか。

 

 

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翌日、ギルドに行くと同じく装備品を揃えて冒険者らしくなったカズマがいた。

 

「カズマがちゃんとした冒険者みたいに見えるのですが。」

 

「そら、ジャージじゃファンタジー感無いしな。」

 

「ファンタジー感?」

 

俺が発した謎の単語にダクネスが疑問を浮かべるが、説明のしようがないので申し訳ないが聞き流させていただく。

 

「所でアキラ…少し聞きたいんだが。」

 

「なんだ?」

 

「どうしてお前はコックみたいな格好をしているんだ?」

 

「あぁこれ?昨日市場に行ったら安くてさ!」

 

「ちっげーよ!そうじゃねーよ!なんだ、お前は冒険者辞めて料理人にでもなろうとしてるのか!?」

 

「いいなそれ」

 

「いや乗るなよ!」

 

そう、昨日装備を買い揃えに市場に行ったところ、日本の洋食レストランで料理人が来てるような服に一目惚れし、その場で買ってしまった。

…いや、ちゃんと戦闘用の装備も買い揃えたんですよ?

 

「とまぁ冗談は抜きにして、ちゃんとした方も揃えているから安心してくれ。」

 

「…はぁ…唯一アキラがまともだと思った俺が馬鹿だったよ…」

 

「心外な。とりあえず着替えてくるから、どんなクエストに行くか決めておいてくれ。」

 

はーい。と女性3人組の声と、おう。と言うカズマの声が聞こえたのでギルド内のお手洗いに入った。

…一瞬、後ろから全く意見の合わないクエスト希望が聞こえた気がするが、気のせいだろう。

 

 

 

「それで、依頼は見つかったのか?」

 

黒のローブにマフラーといった、暗殺者を意識した格好に着替えた俺は、カズマ達に話を聞く。

ところで、アクアが居ないのだがどうかしたのだろうか。

 

「それが、依頼が高難易度のものしか残ってなくてな。」

 

「それで事情を聞いたら、この街の近くに魔王軍の幹部が住み着いたらしく、弱いモンスター達が姿を隠し、依頼が激減してしまったらしい。…わ、私は高難易度クエストでもいいのだが…」

 

カズマとダクネスが話した通り、依頼板には綺麗に高難易度クエストしか残っていなかった。

 

「成程なー。それで、アクアはどうしたんだ?」

 

「アクアならそれを聞いた直後に仕事を探しに行きましたよ。ツケを払ってしまい、お金がないらしいので。」

 

「納得した。それじゃあ今日は一先ず解散して明日以降詳しいことを決めるってことになるか?」

 

「まぁ、そうなるな。依頼がないんじゃどうしようもないし。」

 

カズマがそう言うと、俺達はギルドを出ようとする…その時、誰かにローブをぎゅっと握られた。…めぐみんだ。

 

「あ、あの…少し付き合ってもらっていいですか?」

 

「喜んで。」

 

父さん、母さん。

俺、大人になります。




私生活に余裕が出来、投稿する時間ができました。珈琲@微糖です。

見返して見ると思った以上に進行がゆっくりですね。長すぎてもあれなので今後もこのペースで行きたいと思いますが。
アニメで言うところの4話中盤、原作ではまだ1巻の途中と先が長いなぁと思いつつ、相変わらずマイペースに書く所存です。

さて、アキラさんの装備ですがイメージとしてはFGOをプレイしている人ならイメージしやすいと思いますがハサン先生の再臨1の様なローブ姿をご想像してください。
ナイフを主戦力として使う以上、そういう格好のイメージしか無かったんや…ローブの下だと能力の使用も隠せますしね。

とまぁ後書きはこの辺りにしておきたいと思います。また次回以降も見て頂ければ幸いです。

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