この魔力使いに祝福を!   作:珈琲@微糖

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第八話 - この授かりものの能力に正体を!

「えっと、エリス様…その話の前に聞きたいんですが…あの後カズマ達はどうなりましたか?」

 

いつか冬将軍に殺された時に見たような空間を見回す。

あの時と変わらず、まるで空の上に居るかのような風景。そんな中、目の前のエリス様にそう尋ねる。

 

「カズマさん達でしたら無事ですよ。アキラさんの体も消化され切った訳ではないので、恐らくアクア先輩に蘇生魔法を掛けさせすればあちらへ戻れると思いますよ。」

「あっ、良かった、生き返れるんですね。前回だけが特例かと思ってました。」

 

俺がそう言うと、エリス様は一瞬遠い目をして答える。

 

「…今回も特例ですよ。 蘇生しないと、アクア先輩に私の秘密がバラされそうですから……」

「……なんか、すみませんでした……」

 

その言葉の後、一度コホンと咳払いをして元の様子に戻るエリス様。

 

「…それで、最初に言ったお話のことなのですか…アキラさん。ここ数日、こちらに来る時に貰った"特典"に何か変化はありましたか?」

 

そう言われて、俺はここ最近のことを思い出す。

 

「変化…って言うと…まぁ色々ありましたけど…」

 

具体的に言うと、王都に向かってた時の夜やついさっきだろうか。

前者の時には頭の中に言葉が浮かんできて、その言葉を発すると今までとは違う感覚が走った。

後者の時にはカズマの体に炎の様な何かが見え、それに手を伸ばすとその炎はカズマの体を覆いカズマ自身も無事だったらしい。

 

その様に"特典"に起きた変化を思い出して居ると、目の前のエリス様は改めて口を開く。

 

「確認ですが、アキラさんが元々こちらに来る際、アクア先輩に希望したのは"魔力をモノへと変換する"能力ですよね?」

 

俺は何も言わずに頷く。

 

「…単刀直入に言います。 アキラさん、貴方の"特典"はアクア様に希望したものから大きく変化をしています。」

 

その言葉に、俺は固まった。

 

「…エリス様、今なんて仰いましたか?」

「ですから、アキラさんの"特典"は大きく変化していますと。」

 

再び告げられた事実に、俺は耳を疑う。

 

「…えっと、因みにエリス様。 過去にこんな例ってあるんですか?」

 

俺がエリス様にそう尋ねるが、エリス様は静かに首を横に振る。

 

「いえ、今までそのようなことは一度も起きていません。 基本的に"特典"はあのカタログから選ばれるので、アキラさんの様に自分がで"特典"を考える人自体ほぼ稀なんです。」

「あっ、そうなんだ…それで、その変化とは?」

 

俺がそう言うと、少し言いづらそうに答える。

 

「変化、と言っても少し説明し辛いんですよね。」

 

エリス様がそう言うが、俺は首を傾げた。

 

「説明し辛い…って言うと原因がハッキリ分かっていないとかですかね…?」

「いえ! 原因は分かっているんですが…どこから説明していいものかが…」

「…別に、初めからでも構いませんよ?」

 

頬を掻きながら言うエリス様にそう答えると、分かりましたと一言言ってから話し始めた。

 

 

「…まず初めに申し上げますと、アキラさんの"特典"の変化と言うのは元はこちらの世界へと送られる際に起きていました。」

「元から…調整ミスとかですか?」

 

俺の問いかけを否定する様に、エリス様は首を横に振る。

 

「いいえ。むしろアクア様は、貴方が望んだ"特典"を完璧に作り上げて貴方をこちらへと送り出した…筈でした。」

 

そこまで言うと、まるでここから先は告げさせまいとする様に急に空気が重々しくなる。

俺はゴクリと息を飲み、エリス様の答えを待つ。

 

 

 

 

「貴方がこちらの世界へと来られる直前、貴方の"特典"に一柱の神が介入しました。 恐らく、それが"特典"が変化した原因と思われます。」

 

エリス様は、そう答えた。

 

 

 

 

「…えっと、エリス様?流石にこんな空気の中で冗談言うのは止めてもらえませんか?」

 

俺がそう言うが、エリス様は何も言わずにこちらを見続ける。

その瞳は、まるで今言った事は全て事実であると言っているようだった。

 

「……マジですか…」

 

俺がポツリと呟くと、エリス様はこくりと頷いた。

 

「…えっと…神が介入して常識的に考えて大丈夫なんですかね?自我が乗っ取られたりしません?って言うかその介入してきた神って何なんですかね?」

「ちょ、ちょっと待ってください!そんなに一度に聞かないでくださいって!ちゃんと説明しますから!」

 

俺がエリス様に詰め寄りながら尋ねると、グッと俺の体を離してそう言った。

 

「…一先ず、今アキラさんが仰った様な自我が取られたり等はないと思います。それが目的ならば、こちらに来た時点でアキラさんの自我は消滅している筈ですから。」

 

エリス様は息を整えてしれっと怖いことを言ってきた。

俺はじとっとした目でエリス様を見るが、気にしない様子で言葉を続ける。

 

「ですが、今後何かが起こらないとは言いきれません。 今までの様に"特典"に変容が起きたりする可能性が無いとも言いきれませんが…これ以上変化するとしても、能力がその神の方へと近付くだけですので今まで通りの事は出来ると思います。 …そしてその神の名前なのですが…アキラさん、貴方達の世界の『ギリシア神話』はご存知ですか?」

 

一先ず悪影響が無い事にホッとしたのも束の間、エリス様はそう聞いていた。

 

「…一応、なんとなくはですが…」

「成程…それでは、ギリシア神話における眠りの神『ヒュプノス』はご存知ですか?」

 

エリス様の問に、俺は首を縦に振る。

そうすると、エリス様はどこか安心した様子で言葉を続けた。

 

「でしたら、話は早いですね。 …貴方の"特典"に介入した神、それはギリシア神話のヒュプノスの息子、夢の神である『モルペウス』です。」

「……夢の神…モルペウス?」

 

俺は首を傾げながらそう繰り返す。

 

「はい、夢を形作り、夢に宿るものに形を与える神。 それこそがアキラさんに介入してきた神であり、アキラさんの"特典"はモルペウスの力受けて変容したと考えています。」

 

もう何が何だか分からなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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あれから暫く、エリス様によって新たな(?)俺の"特典"の説明を受けた。

 

曰く、能力の大筋は変わらないらしく今まで通りの使い方でいいとのこと。

だがしかし、"夢の神"に強く引っ張られているお陰か創りたい"モノ"を強く望めば望む程、性能が高くなるらしい。

 

それと、今までは自分の魔力で"モノ"を作って居たが、魔力の"核"となる部分さえ掴めればカズマの時の様に自分以外の魔力を使っても能力は使えるらしい。

 

………何このチート能力。と言うより、人の魔力を使えるなら魔王軍幹部だって楽に倒せるんじゃないか?

 

 

「…言い忘れていましたが、魔力の"核"となる部分を掴むのはレベル差が開いてれば開いてる程困難になりますので。 魔王軍の、特に幹部クラスともなればまずは使えないものと思ってください。」

 

 

…そんな事はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「…さて、以上で説明は終わりですが…何か聞きたい事はありますか?」

 

エリス様がそう尋ねてくるが、俺は首を横に振る。

そうですか。と言った瞬間にどこかから聞き慣れた声が聞こえてきた。

 

 

『アキラー! 蘇生掛けたから早く戻ってきなさい! さっきから皆心配してるわよー!』

 

 

突然聞こえてきたアクアの声が合図となり、かつて冬将軍にやられた時の様に大きな扉のようなものが出てくる。

 

「…無事蘇生は出来たようですね。 前にも来たので分かると思いますが、その扉を潜れば地上へと帰れますよ。」

「いや、ほんと何から何までありがとうございます。」

 

俺がそう言ってエリス様にお辞儀をすると、エリス様は微笑みながらどういたしまして。と返してくる。

 

そうして扉を潜ろうとした時、不意に後ろから声を掛けられる。

 

「アキラさん。最後に一つ聞いてもいいですか?」

「…? はい、大丈夫ですよ。」

 

俺は扉に入る直前、後ろを向く。

 

「アキラさんの能力はありとあらゆる事に使えます。 それこそ、使い方次第では人を守ることも、傷付ける事も出来ます。 …アキラさん、貴方はそんな能力を何の為に使いますか?」

 

真剣な目でこちらを見ながらエリス様が尋ねる。

そんなエリス様に、俺は笑いながら答える。

 

「言うまでもないでしょう? …俺は大切なものを守りたい。その為に俺はこの能力を使う。 ……それじゃあダメですかね?」

「……いいえ、むしろアキラさんらしいと思いますよ。」

 

 

エリス様の答えを聞くと、俺は再び扉の方を向いて手を振りながら歩き出す。

 

視界は明るい光に埋め尽くされ、俺は意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




段々と投稿ペースが遅くなっている珈琲@微糖です。ここまで読んで頂きありがとうございます。

割と今年から来年頃まで私事が忙しいので今のような、もしくは今よりも遅い投稿ペースになってしまうかもしれませんがご了承くださいませ。なるべくスキマ時間を見つけて投稿出来るようにします。

さて、漸くハンス戦終了後辺りまで持っていくことが出来そうです。 恐らく次回でアルカンレティア編は終わると思います。
それ以降は原作5巻に入るか、その間に閑話を挟むかは気分次第で決めます。
と言うことで、次回以降もまた見て頂ければ幸いです。

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