この魔力使いに祝福を!   作:珈琲@微糖

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第三話 - この新人冒険者達にパーティーメンバーを!

「なぁ、アキラさんや。なんだかこれ、違くないか?」

 

「えっ?何が」

 

カズマ達が仕事を初めて早1週間。いつも通り仕事終わりの銭湯でカズマと共に汗を流して居るとカズマの方から話かけてきた。

 

「いや、だからさ。俺は異世界って言うとさー、こんな労働じゃなくてな、モンスターと戦ったり、可愛い女の子と冒険したりさー、そういうことを考えてたんだけどなぁ」

 

「…可愛い女性ならお前と一緒に居るアクアさんが居るだろ?」

 

「…あぁ、お前は何も知らないからな…」

 

そういうカズマの回りには何故だか暗い雰囲気が漂っていた。

いや、確かにちょっと頭が弱そうだなって思う時はあるよ?ただそれ以上に可愛いじゃない、あの人。

 

「まぁ、そういう訳でさ。漸く纏まった資金が集まってきたし、明日は久し振りにギルドの方に行こうと思うんだが。…アキラはどうする?」

 

「俺かぁ…まだ主任に何も言ってないし、装備とかの準備もしていないから明日1日だけ準備させてくれないか?それで明後日パーティーに合流…って感じでいいなら。」

 

「あぁ、それで構わないさ。とりあえず、俺とアクアは明日ギルドに行って俺達でも出来そうなクエストに行ってみるわ。」

 

「了解、それじゃあ先に主任に相談に行くから先に上がるな。」

 

「おう!お疲れさん。」

 

そう言って俺は銭湯を後にする。…とりあえず俺は装備でも買いに行くか。

 

 

================

 

 

「えーっと、それで、君らはどうしてそんなに目に見えて落ち込んでいるんだい?」

 

「…あぁ、アキラさんか…いやぁね、カエルが…な。」

 

翌日、落ち合う予定をしていたギルド内の酒場のある席の所に行くと、明らかに落ち込んでいる見知った二人の姿があった。

 

「カエル…?まぁいい、昨日は結局どうだったんだ?」

 

…聞いた話を纏めると、"ジャイアントトード"というカエルを3日以内で5体倒すクエストを受けたものの、思った以上に巨大で大苦戦、結果アクアさんの捨て身の壁役でなんとか2体は倒したものの、これは無理だと思いパーティーメンバーを募集しているところらしい。

 

「なるほどなぁ…って、お前転生の特典って何だったんだ?それを使えばそんなカエルくらいすぐ倒せると思うが…」

 

そう言うとカズマは無言で(絶賛死んだ目をしている)アクアさんを指差す。

 

「あぁ、だからアクアさんがこんなところに居るわけね。納得」

 

「ただなぁ…ついカッとなって連れてきたはいいが思った以上にポンコツで…「ちょっと!誰がポンコツよ!」お前のことだよ、自称女神様が。」

 

「その自称女神って言うのやめなさいよー!自称じゃなくて本当に女神だって言ってるでしょ!!」

 

「じゃあその女神の力でカエル5匹の討伐なんてあっという間に終わらせてくれよな!これじゃあなんの特典も貰ってないのと一緒だよ!!」

 

「だーかーらー!私はプリーストだから、前で戦うよりも後ろでヒールとかしてるのが役目でしょ!戦うならカズマが戦いなさいよ!」

 

「まぁまぁまぁ、お二人とも落ち着いて…」

 

言い合いをしている二人を何とか宥めようとするが、思いの外ヒートアップしてしまったようだ。…原因が俺にある分、少し罪悪感がある。と言うよりも、周りの視線を集めているからとりあえず落ち着いてもらいたい。

 

暫くして落ち着いた後、カズマがふとなにかに気づいたようで、俺に声を掛けてきた。

 

「そう言えば、特典って言えばアキラは何を貰ったんだ?」

 

「あぁ、俺は…「あの、上級職の冒険者募集を見て来たのですが、ここで良いのでしょうか?」クエスト言った時にこっそり教えるわ。…ええ、ここで合ってますよ。」

 

そうカズマに告げた後、声がした方を向くと…女の子が居た。背は俺やカズマよりも小さく、帽子や杖などの装飾品から、ウィザード系列の職業だと思われる。

ただ、彼女が言った事に1つ、疑問を持ったのでアクアさんに聞いてみることにした。

 

「アクアさん、アクアさん。上級職の募集って?」

 

「そりゃ勿論、手っ取り早く魔王を討伐する為よ!」

 

「は、はぁ…」

 

うん、それじゃあメンバーが集まらないよね!王都みたいな都会ならまだしも、ここは駆け出し冒険者の街だ。そんな街に上級職がポロポロと居るわけがない。

 

そう思っていると、カズマが名前を聞いたのか、先ほど話しかけていた少女は突如、バサッとマントを翻した。

 

「我が名はめぐみん!アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操る者………!」

 

「…………冷やかしに来たのか?」

 

「ち、違うわい!」

 

「…その赤い瞳に黒い髪…もしかして、貴女紅魔族?」

 

はい、と少女──めぐみんは頷き、アクアさんに冒険者カードを手渡す。

 

「いかにも!我は紅魔族随一の魔法の使い手、めぐみん!我が必殺の魔法は山をも崩し、岩をも砕く!…ということで、優秀な魔法使いは要りませんか?…それと、図々しいのですが、もう3日も何も食べていないのです。出来れば、面接の時にでも何か食べさせては頂けませんか?」

 

「…とりあえず、座って好きなもの頼みなさいな。お兄さんがお金は出して上げるから…」

 

…ギルドに来て初日の事を思い出してしまった。…泣いてなんかないやい。

 

「ところで、その眼帯は何なんだ?怪我でもしてるなら、アクア…そこの青髪の女の人に治してもらったらどうだ?」

 

「ふっ…これは我が強大な魔力を抑える為のマジックアイテム…もし、これが外されることがあれば、この世が大いなる災厄に覆われることに…」

 

カズマが眼帯の事に触れてしまった。…このような時期があった身からすると、この手のものは触れないのが吉。なのだが…

 

「まぁ嘘ですが。単におしゃれで着けてるだけ…あっ、あっ、止めてください!引っ張らないで下さい!」

 

それ見たことか。やっぱりこの子…いや、何でもない。これ以上は俺の傷を抉ることになる。

それとカズマさん、眼帯を引っ張るのは辞めて差し上げなさい。それを思いっ切り離すと大変なことになるのです。

 

そんなことをしていると、アクアさんが紅魔族について俺達に説明をしてくれた。

 

曰く、彼女達紅魔族は生まれつき高い知性と魔力を持つらしい。

曰く、大体が魔法使いのエキスパートとなる才能を持つらしい。

曰く、その紅魔族という名前は赤い目という特徴から来るらしい。

曰く、ネーミングセンスが壊滅的…らしい。

 

そんな説明をしていると、カズマの手から眼帯が離され、めぐみんが素っ頓狂な声を上げる。

…うんうん、やった事あるから分かるよ、痛いよね。

痛みを知っている俺は、めぐみんにとりあえず大丈夫か?と声を掛けた。

ちょっと涙声で「大丈夫です…ありがとうございます」と返ってきた。話してみると割と素直な子かもしれない。…変な名前だけど。

 

「…いつつ…変な名前とは失敬な。私の方からすれば、街の人の方が変な名前をしていると思うのですよ。」

 

「失礼ですが、ご両親のお名前は?」

 

「?母がゆいゆい、父がひょいさぶろーですが。」

 

「「「…………………」」」

 

思わず、俺達3人は絶句した。

 

「と、とりあえず、その紅魔族は魔法使いとして優秀…ってことでいいんだな?それなら仲間にしてもいいか?二人とも。」

 

「おい、私の両親の名前について言いたいことがあるなら聞こうじゃないか。」

 

「まぁ、俺は賛成だな。少なくとも、現状なら仲間を増やすことが先決だろう。」

 

「いーんじゃない?。冒険者カードは偽造出来ないし、冒険者カードには高い魔力が書かれていたもの。それに、彼女の言っていることが本当なら凄いことよ?爆裂魔法は、取得が極めて難しい爆発系統の最上級魔法…本当にそれが扱えるのなら、相当な戦力になるわ。」

 

「あの、彼女ではなく私の事はちゃんと名前で呼んで欲しいんですが。」

 

抗議をしてくるめぐみんに、カズマがメニューを渡す。

 

「とりあえずなんか頼め、俺がカズマで、こっちのがアクア。それで今、お前の隣に居るのがアキラだ。」

 

「ちょっとー、こいつって何よ…よろしくね、めぐみん!」

 

「はい、よろしくお願いします。」

 

紹介されたアクアさんが挨拶をする。挨拶における第一印象というのもは大切だろう。とりあえず俺も挨拶をしておこう。

 

「よろしく、めぐみん。と言っても、俺も今日カズマ達と合流したばっかりだから、同期ってことで気軽に声を掛けてもらえると助かる。」

 

「ええ、よろしくお願いしますね、アキラ。」

 

 

この時、俺達はまさかあんなことになるとは知る由もなかった…。




ここまでご覧頂きありがとうございます、珈琲@微糖です。
漸くめぐみん登場回…長かった。
ここで本文の補足?的なことですが、主人公はまだアクアの女神としての側面しか知らないのでさん付けで呼んでいます。
さて、次回は恒例のカエル回ですが、恐らくそこでやっと主人公の特典等が初お披露目出来ると思います。

何が言いたいか、と言うと主人公くんが女神以外のアクアを知ることになります。

ということで、軽い次回予告もしたところで今回は終わりにしたいと思います。
繰り返しとなりますが、ここまでご覧頂きありがとうございました。次回以降も見て頂けると幸いです。それでは。

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