この魔力使いに祝福を!   作:珈琲@微糖

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第九話 - この借金生活に終止符を!

「…うぐ…ひっぐ…私は悪くないのに……」

「全く…お前は毎度、活躍をマイナスにする病気にでも掛かっているのか?」

 

アクアとカズマがこんな会話をしながら、俺達はキールのダンジョンへと向かっていた。

 

「それにしても、モンスターの異常発生なんてそんな都合よく起こるもんかねぇ…」

「普通はそうそう起こることではありませんよ。 …恐らく、何者かが召喚してるのだと思いますが…」

 

この世界の生態系に疎い俺は、隣に居ためぐみんに尋ねるが、回答はほぼ予想通りだった。

 

暫く歩くと、ダンジョンの入口らしき場所まで辿り着く。

そしてその入口からは、話に聞いていた白と黒の仮面を被った小さな人形のようなモンスターが次々に湧き出していた。

 

「サトウさん。 ご協力、感謝致します。 恐らく、何者かがあのモンスターを召喚していると思われます。 ですので術者を倒し、この封印の札を召喚陣に貼り付けてください。」

 

そう言ってセナがカズマに小さな紙を渡していた。

 

そんな様子を横目に、俺はダンジョンから湧き出す謎のモンスターを見る。

 

「ああ見るとそんなに危険なモンスターには見えないんだがなぁ…」

「そうかしら? ……私、あの仮面を見てたら無性にイライラしてくるんですけど……」

 

そう言ってアクアが手元にあった石をつかみ、謎のモンスターに向かって投げようとするが、それに気づいたモンスターの一匹がトコトコとアクアに向かって歩く。

 

「な、なに!? …何かしら、もしかしてこの子、甘えているのかしら。」

 

モンスターが足にピョコっとしがみついてきたのを見て、少し空気が和らぐ。

 

 

 

その直後、モンスターは急に体から光を発して、くっ付いていたアクア諸共爆発した。

 

「…ご覧の通り、あのモンスターは敵に飛びつき、自爆すると言う習性を持っています。」

「なるほどな。」

「なんで貴方達はそんなに冷静なのよー!」

 

攻撃されたにも関わらず、冷静に特徴のやり取りをするセナやカズマを見て不満げにアクアが言う。

 

そんな彼らを横目に、ダクネスは魔物の群れの方に向かっていく。

 

「ちょ、ダクネスッ、何してんだ!」

 

俺がダクネスを止めようと声を上げるが、予想通りモンスターがダクネスへ向かって飛びつき、自爆をする。

 

「…ふむ、私ならばそこまでダメージはないようだな…カズマ、私が露払いをしよう。」

 

爆発に巻き込まれても無傷だったダクネスがカズマにそう言う。

…防御スキル極振りってすげぇ…

 

「カズマカズマ。 私は足手まといになりそうですので、ダンジョンの外で待っています。」

「そうだな。 …お前達はどうする?」

 

そう言ってカズマは俺達に目を向ける。

 

「嫌よ……もうダンジョンは嫌……」

「俺はこの表に出てるモンスターの清掃に回るわ。 ダンジョンに潜ったことのない俺が行っても、足手まといになるだろうし。」

 

カエルやワニに加えて、新たなトラウマを抱えたアクアが震えながら蹲る。

…カズマのやつ、ダンジョンに潜った時何をしたんだろうか。

そんなことを考えていたら、俺達の答えに納得したのだろうか、ダクネスやセナが連れてきた町の冒険者達と共にダンジョンに潜っていった。

 

「さてと、じゃあこっちの方も始めますか!」

 

そう言ってローブの下から魔力で作り出したナイフを取り出す。

 

「なぁ、セナ。 あいつらは近づかなければ爆発しないんだよな?」

「え、ええ。 そうですが…あのように小さいと、相当運が高くなければ当たりませんよ?」

「いや、今回のに関して言えば当たらなくてもいいんだ。 …こうやってナイフを投げれば…ッ!」

 

モンスターの群れの中心に投げられた、()()()()()()()()()()()()()を敵と認識したモンスターは、次々とナイフに飛びつき自ら自爆をする。

 

「…予想通り、って言ったところかな。」

 

そう言ってある程度モンスターが居なくなったところで、地面に刺さったナイフを回収する。

 

「…えっと、アキラ。 今何をしたんですか…?」

 

何故あのモンスターがナイフに吸い寄せられたか疑問に思っためぐみんがそう聞いてきた。

 

「ああ、今のアレか。 ナイフに魔力を纏わせて、あのモンスターが敵と認識するようにした…って感じかな。」

「…どうして魔力で認識してると分かったんですか?」

 

その俺の回答にセナが少し疑いを持つ顔で尋ねる。

 

「まぁ予想だったんだが…動くもので敵と認識してるんだったら、そこら辺の草木にも飛びつく筈なのに、あいつらは真っ直ぐアクアやダクネスを狙っただろ? だから、魔力か何かで敵を判断してるんじゃないかなぁって思って、ナイフを投げたんだ。」

 

手先でナイフをクルクル回しながらそう答えると、その答えに一応納得したセナが食い下がる。

 

「ああ言ったモンスターには直接攻撃は出来ないし、カズマ達が戻ってくるのを待ちながらここら辺のモンスターでも討伐してようか。」

 

そう言って再び、魔力を纏わせたナイフを別の群れの中心に向かって投げる。

 

 

 

 

 

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「アキラー、ダンジョンに潜っていった冒険者達が戻ってきましたよー!」

 

あの後、少し離れたところでモンスターの討伐を行っていると、めぐみんが呼びに来た。

 

「おー、ありがとうなー。 ってことは、カズマ達も戻ってきたのか?」

「それが…戻ってきた冒険者達曰く、中でモンスター達の襲撃に遭いカズマ達とははぐれてしまってらしく…」

「…ってことは、あいつらはまだ戻って来てないのか…よし、とりあえずアクア達と合流しようか。」

 

そう言ってナイフを魔力に戻すと、めぐみんの隣を歩いて再びキールのダンジョンへと戻っていく。

 

「そう言えば、アキラがナイフを使うのは久し振りですね。」

「…そう言われたら、確かにそうだな。 …と言うか、ここ最近はああ言ったのが通じる奴らが少なかったしな。」

 

ベルディアといい、デストロイヤーといい。振り返ってみると、こう言った小手先の武器が通用する相手は殆ど居なかった。

 

「それに、今はこいつもあるからなぁ…」

 

そう言って、背中に背負っている柄のみの鎌を見る。

この間のカエル討伐の時には出番はなかったが、これから先はこう言った武器を主軸にしていこうと考えているので、やはりナイフの出番は少なくなるだろう。

 

「その鎌を見て思い出したんですけど、アキラはそのスキルに名前は付けないのですか? 初めて見た時の詠唱は中々良かったのに、スキルの名前が無いと何かしっくり来ないと言いますか。」

「…必要なのか、それ。」

 

少し考えてそう言ったが、こっちを見るめぐみんの目線からして恐らく必要なのだろう。

 

「…まぁ、考えておくよ。」

 

そう言って再びキールのダンジョンへと歩みを進めた。

 

 

 

 

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「…臭うわ、ダンジョンの奥からクソ悪魔の臭いがするわ!」

 

キールのダンジョンの前まで行くと、アクアが急にそんなことを言っていた。

一応は女神と言うだけあって、そう言った嗅覚は鋭いのだろうか、直後、ダンジョンの中から二つの走る音が聞こえてくる。

 

「乗っ取られた仲間の体を前にどう出るのか! とくと…」

「『セイクリッド・エクソシズム』ッッ!!!」

 

武器を構えて、モンスター達と同じ仮面を付けて出てきたダクネスに、なんの躊躇もなくアクアは魔法攻撃を仕掛けた。

 

「だ、ダクネスーッ! おいこら、いきなり魔法をぶちかますなよ!」

「何か邪悪な気配が近付いてきたから打ち込んでみたんだけど…」

 

ダクネスの後を追って出てきたカズマがそう叫ぶ。

 

「ダクネスは今、魔王軍の幹部に体を乗っ取られているんだ!」

 

その言葉に、冒険者達やセナは驚きの声をあげる。

 

「う…っ…くっさ、なにこれクッサ! 間違いないわ、これは悪魔から漂う臭いよ! ダクネスったらえんがちょね!」

 

おいそこの女神さんや、どうしてそんな古い言葉を知っている。

若干アクアの本当の年齢が気になったところで、ダクネス…?が再び立ち上がる。

 

「……ふ、フハハハハッ! まずは初めましてだ。 我が名は 『お、おいアクアッ! 私自身は臭わないと思うのだがっ!』 我が名はバニ『カズマも嗅いでみてくれっ! 臭くはない筈だっ!』喧しいわっ!……我が名はバニル! 出会い頭に退魔魔法とは、これだから悪名高いアクシズ教徒は…ッ! 礼儀と言うものを知らんのかっ!」

 

一人の人物から、男女別の声が出てくると言う、世にも奇妙な状況を目撃した。

そんなダクネス(バニル)を、アクアは煽ると再びダクネス(バニル)に向かって退魔魔法を放つ。

 

「ちょっとダクネス! どうして避けるの?じっとしてて頂戴!」

「『そ、そんなことを言われても…』」

 

そんな二人(三人)のやり取りを見ていると、急に腕がグイッと引っ張られる。

 

「ちょっとアキラ!何ですかあの仮面は! 私も欲しいです、紅魔族の琴線に激しく響きます!」

「うん、どうみても今言う空気じゃないよね。 と言うか多分あれが乗っ取ってる本体だよね? 町に戻ったら何か好きなもの買ってあげるから、ちょっと黙ってよっか。」

 

そう言って再びダクネス(バニル)の方に目を向ける。

丁度、冒険者達がダクネス(バニル)へと襲いかかっていた。

 

「…くっ…あのダクネスがこんなに手強いなんて…っ!」

「当たらねぇ…簡単に剣で弾き返されちまう…っ!」

 

その冒険者達の言葉の通り、バニルはダクネスの体を使いこなし、傷の一つすら付けずに居た。

 

「…全く…おいカズマ、どうにかして対処法を考えといてくれ!」

 

ダンジョンの入口からこちらにやってきたカズマにそう言うと、俺は背中に背負っていた柄のみの鎌を取り出す。

 

目の前では、四人の冒険者達がダクネス(バニル)を取り囲んで襲い掛かる。

だが、元々筋力や耐久性にステータスを極振りしているダクネス(バニル)に傷をつけることは容易いことではなく、一人、また一人と倒されて行く。

 

「…ほう、次は貴様か。 …その刃のない武器で、一体何をするつもりだ?」

 

四人の冒険者達を倒したダクネス(バニル)がこちらに目を向ける。

 

「ああ、と言ってもどうせすぐ倒されるだろうけどな。 …それと、こいつは…こうするのさっ!」

 

俺はそう言うと、体の後ろで柄のみの鎌を半月状に回す。

そうすると、柄の先に軌道と同じ形の刃が出来上がり、その逆方向には槍の先の部分のようなものが現れる。

 

「ほう、この見通す悪魔に勝てないと分かっていても立ち向かうと言うのか。 …それにその術、少なくともこの世のものではないな?」

「さぁ、どうだろうな。 …ただ、勝てないとは言え負けるつもりはないから…油断するなよ…ッ!」

 

大鎌を構え、ダクネス(バニル)との距離を詰める。

 

──恐らく、いやほぼ確実に普通に戦ったとしても、俺はダクネス(バニル)には勝てないだろう。

 

だからこそ、柄の先の部分を持ってダクネスの剣が届かない範囲から攻撃を仕掛ける。

 

「…ふん、我輩の届かない位置から攻撃しようと言うことか…だが甘いッ!」

 

ダクネス(バニル)は軽くバックステップをすると、グッと踏み込んで一気に距離を詰め、剣をこちらに突き刺してくる。

 

俺は、振り切った鎌の遠心力を利用し、逆の先に付いた刃で剣先をずらす。

 

「…ふむ、いい筋をしている…が、相手が悪かったようだなッ!」

 

ダクネス(バニル)がそう叫ぶと、フッと足から力が抜け、視線がグッと横になる。

留守だった足元を引っ掛けられて転ばされたと気が付いた時には、俺の腹を思い切り蹴られていた。

 

「…ゴフッ…!?」

「アキラッ!?」

 

俺は丁度後ろにいたカズマやめぐみん達のいる方に蹴り飛ばされていた。

 

「アキラッ、大丈夫か!?」

「アキラッ!しっかりしてください!」

 

カズマやめぐみんがこちらに駆け寄り、体を揺さぶる。

…待って、そんなに揺さぶらないで。ただでさえ意識が朦朧としてるんだから。

 

「安心しろ。 我輩は人を殺す趣味などない。」

 

朦朧とする意識の中、最後に聞こえたのはそんなダクネス(バニル)の声だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「うぅ…ん…」

 

あれからどれくらい経ったのだろうか。

空は今だに暗く、それ程時間は経っていないのだろうか。

だが、一つだけ決定的に違うところがある。

先程まであった周囲の喧騒が一切なく、まるでいつもの森に戻ったようだった。

 

「…やっと起きましたか、寝坊助さん。」

 

周囲を見渡すと、すぐ近くでめぐみんがちょむすけと戯れていた。

 

「……なんだ、めぐみんか。 と言うか、ダクネスや皆はどうしたんだ? それにバニルは…」

「バニルなら無事討伐出来ました。 …ただ、討伐する時に爆裂魔法を放ちましたので……」

 

こちらに近づいてきためぐみんの顔はどこか曇っている。

爆裂魔法を放ったと言うことは、ダクネスにも大きな被害が出たのだろう。

 

「…それで、他の皆は?」

「ダクネスを町に連れ帰ったり、魔王軍の幹部討伐の報告に行ってしまいました。 ただ、気絶してるアキラを放っておくわけにも行かないので、私がここに残ってました。 …そろそろ、カズマ達も戻ってくると思いますよ。」

 

そうか。 と呟くと再び空を見上げる。

ぼんやりと空を眺めていると、めぐみんが心配そうに声を掛けてくる。

 

「…えっと、アキラ。 大丈夫ですか…?まだお腹が痛みますか?」

「…ん、いや、それは大丈夫。 まだ少し痛むけど、無茶した罰と受け取っておくさ。」

 

そう言って俺は笑みを浮かべて、心配そうに覗き込むめぐみんの頭をなでる。

 

「まぁ、あの悪魔も本気で殺すつもりはなかっただろうし、ちょっと休めば元通りになるだろうしな。」

「…前にも言った気がしますが、もうあんな無茶はやらかさないでくださいよ?」

 

めぐみんの言葉に頷くと、俺は痛みを堪えながら立ち上がる。

 

「さてと、そろそろカズマ達が来るだろうし、すぐに動ける準備をしとけよ!」

 

そう言ってめぐみんの頭から手を離す。

 

「準備が必要な程でもありませんよ。 …それよりも、そんな急に動いて大丈夫なのですか?」

「あぁ、痛むって言ってももう殆ど無いのも同然だからな!」

 

そんなことを言っていると、木陰から聞き慣れた声が聞こえてくる。

 

「おーい、めぐみんー!アキラは起きたかー?」

「何言ってるの?起きてて当たり前じゃない! この私が手当をしてあげたんだから! これで起きてなかったら、ゴッドブローでも食らわせてやるわ!」

 

木陰から聞こえてきたやり取りはどこか懐かしく、無事に日常に帰ってきたのだと実感出来るようなやり取りだった。

 

「アキラはついさっき起きましたよー! それよりも、ダクネスは大丈夫でしたか?」

 

木陰から姿を現したカズマ達に、めぐみんがそう声を掛ける。

 

「ダクネスの方なら大丈夫だ。 重症だったが、こいつが本気で回復魔法を掛け続けたんだ。」

「すぐ…とは無理だったけど、数日後には目を覚ますと思うわ!」

 

そう言ってふふんとしながら胸を張るアクア。

普段の行動はあれだが、プリーストとしての腕前は超一流と言っても過言ではないので、恐らくダクネスは無事だろう。

 

「見た感じアキラも平気そうだし、俺達も帰ろうぜ!」

 

そのカズマの声に俺達は各々返事をし、町へと歩みを進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「冒険者、サトウカズマ殿。 貴殿を表彰し、この町から感謝状を与えると同時に、嫌疑をかけたことに対して、深く謝罪させていただきたい!」

 

ダクネスが目覚めるのを待ってから、俺達は再び冒険者ギルドへと集められていた。

そして、あの時と同じように俺達の前には数人の騎士とセナが立っている。

唯一違うところとすれば、セナの手から渡ったカズマへの感謝状と、ここに居る全員の表情だろうか。

 

「続いて、ダスティネス・フォード・ララティーナ卿。 今回における貴公の献身素晴らしく、ダスティネス家の名に恥じぬ活躍に対し、王室から感謝状並びに、先の戦闘において失った鎧の代わりに、第一級技工士達による鎧を贈ります。」

 

そう言って後ろの騎士達から、今まで愛用していた鎧と同じデザインの新たな鎧が贈られる。

 

…あぁ、そう言えばもう一つ違うところがあるとすれば……

 

「おめでとう、ララティーナ!」

「ララティーナ、よくやった!!」

 

カズマによって、ララティーナと言う名前が冒険者達に広められてるところだろうか。

 

「それにしても、ダクネスってララティーナって名前だったのか…。」

「普段のアレとは違って、案外可愛い名前ですよね。」

 

つい先日、ダクネスの本名を知った俺は不意にそう呟く。

その声を聞いたダクネスは、顔を覆い隠してこう叫んだ。

 

「……こんな…っ…こんな辱めは……私が望むスゴい事ではないぃぃ……っ!」

 

そんなダクネスの横で、『ララティーナ』と言う名前を連呼しながら慰めるアクア。

…むしろ、逆効果になってる気がするのは言ってはいけない。

 

そんな懐かしい喧騒が少し落ち着いた時、再びセナの口が開かれる。

 

「…そして、冒険者"サトウカズマ"一行。 機動要塞デストロイヤーの討伐における多大な貢献に続き、今回の魔王軍幹部"バニル"討伐は、貴方達の活躍無くばなしえませんでした。 …よってここに、貴方の背負っていた借金及び、領主殿の屋敷の弁償金を報奨金から差し引き、借金を完済した残りの分、金四千万エリスを進呈し、ここにその功績を称えますっ!」

 

その言葉を聞き、一瞬全ての音が止まった気がした。

 

 

「…ってことは……」

 

 

恐らく、カズマがそう言ったのだろう。

その言葉で、俺達は実感した。

 

 

「「「「「借金完済だぁぁぁぁぁ!!!!」」」」」

 

 

その言葉と共に、周囲の冒険者達が湧き上がる。

俺達は共に抱き合い、今まで雁字搦めにまとわりついていたものから開放されたことを喜び合う。

漸く借金から開放されたのだ。 今だけは浮かれてもいいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔王軍幹部討伐の祝宴という形で、始まったどんちゃん騒ぎの端で、俺はめぐみんと二人で少しのんびりしていた。

 

「…それにしても、借金完済かぁ……嬉しいけど、実感ないよなぁ…」

「そうですね。 …ただ、漸く追われるものがなくなったんですから、少しだけゆっくりしてもいいんじゃないんですかね。」

 

宴会の中心で宴会芸を披露するアクアを横目に、グダグダしながら喋る。

 

「そう言えば、カズマの姿が見えないけど…あいつどこ行ったんだろうかね。」

「それを言うなら、ダクネスの姿も見えませんね。 どこか別の場所にでも行ってるとかですかね?」

 

そんなことを言って、再びのんびりする。

少しすると、再びめぐみんが口を開く。

 

「…アキラ、ダクネスの実家に向かう前に話した事…覚えてますか?」

「……………あぁ。」

 

そんなめぐみんの言葉に、俺は小さく頷く。

 

それを見ためぐみんは、一度深呼吸をすると、意を決したようで再び口を開く。

 

 

「…アキラ。 夜、時間を少し貰っていいですか? …

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…伝えたいことが、あります。」


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