この魔力使いに祝福を!   作:珈琲@微糖

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第八話 - この貴族の娘に縁談を!

「…つまり、この間カズマ達が潜ったダンジョンから謎のモンスターが湧き出していて、何か知らないか聞きに来たってことですね。こんな夜遅くに報告ありがとうございます。」

「いえいえ、こちらこそこんな遅くにすみません。 …しかし、本人が不在とは…」

 

そう言って俺が屋敷に訪れたセナに対してお辞儀をすると、向こうも律儀にお辞儀で返してきた。

 

「それにしても、変なモンスターか…見た目とかって分かってます?」

「そうですね、目撃した冒険者によると『黒と白の仮面を被った手のひらサイズの人形のような姿』と言っていました。 …自分も実物を確認した訳ではありませんので、具体的な姿形は分かりません。 …何か覚えはありますか?」

 

セナの言葉に俺は思考を巡らせるが、その条件に当てはまるようなものは、一つも出てこなかった。

 

「うーん、ちょっと分からないですね…めぐみん、お前あの時カズマ達について行ったろ。 なにか思い当たることはないか?」

「…いえ。 第一、私はダンジョンの入口で、ちょむすけとカズマ達を待っていましたので…少なくとも、その時周りにはそんなモンスターは居ませんでしたよ。」

 

隣にいるめぐみんにそう聞くが、結果は著しいものではなかった。

 

「となると、やはりカズマさん達に聞くしかなさそうですね…どこに行ったのかは分かりますか?」

「それでしたら、カズマ達はお見合いを断る為にダクネスの実家に向かっている筈です。 私達も、明日の朝一番で向かう予定なので、良ければ一緒に来ますか?」

 

めぐみんの言葉にえっ。と声をあげようとすると、足をぐっと踏まれめぐみんがこちらを睨んでくる。 …話を合わせろってことか。

 

「そうですか。それでは明日の朝、再度こちらにお伺いします。」

 

再びお辞儀をしたセナがそう言って屋敷を後にする。

 

扉が閉まると、踏んでいた足が退けられた。

 

「…あいたたた…割と本気で踏んできたな…」

「すみません。釘を刺さないと、失言しそうでしたので。」

 

否定が出来ないので、抗議をせずにため息をついた。

 

「…ところで、ダクネスの見合いだとか、縁談だとか言ってたけど、あいつに何があったんだ?」

「…そう言えば、説明してた時には部屋に引きこもってましたから知らないですよね。 …一から説明しますと………」

 

 

めぐみんが言うには、ダクネスはダスティネス家と言う、相当地位の高い貴族の令嬢で、カズマの裁判を先延ばしにする為にその権威を振るったそうで、それを借りとしてアルダープは自分の息子との縁談を取り付けたそうな。

何故ダクネスが屋敷に戻ってこなかったかと言うと、その縁談を何としても阻止しようと奔走してたから、だそうな。

 

「……へぇ、でもさ。 あんな悪名高い領主の息子なら、ダクネスの親父さんも流石に止めるんじゃないか?」

「それが、ダクネスが言うには、息子の方はあの領主とは似ても似つかないような好青年らしくて……むしろ縁談を推進してる側らしいんです。」

「…それってやばくないか? と言うか、ダクネスは大丈夫なのか!?」

 

めぐみんの言葉に、俺はハッとする。

 

「大丈夫ですよ、カズマは変なところで知恵が回りますから。 どうにかしてくれる筈です。」

「…そうだといいけど…」

「とにかく、今ああだこうだ言ってもどうしようもありません。 ですから、あちらはカズマ達に任せて、さっき言った通り明日の朝一番でダクネスの実家に向かいましょう。」

 

そのめぐみんの言葉に一先ず同意し、明日に備えて再び自分の部屋に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

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「……これが本物の屋敷ってやつかぁ……」

「流石、国王の懐刀と言われてる名家なだけありますね…」

 

翌日、ダクネスの実家に訪れた俺達は屋敷を見ながらそんなことを呟く。

屋敷の方への事情説明等は、王国検察官と言う立場があるセナに任せ、俺達はその結果が出るまで屋敷の外で待っていた。

その後、帽子の中に居たちょむすけと戯れて居たら、屋敷の中からセナが出てきた。

 

「あ、セナさん。 入っても大丈夫ですか?」

「はい。 カズマさん達は丁度縁談を終え、客間の方にいらっしゃるみたいなので、そちらの方に向かいましょう。」

 

そう言って、セナの後に続き屋敷の中へ入っていく。

少しすると、セナは扉の前に止まる。恐らくそこがカズマ達の居る客間だろう。

そう思っていると、セナが扉に手を掛け深呼吸をする。 そして……

 

 

「サトウカズマ、サトウカズマは居るかぁぁぁ!!!」

 

 

先程とは違った強い口調で、扉を開きながらそう叫ぶ。

部屋の中では、執事服を来たカズマとメイド服を着たアクア、普段と違った服を着ているダクネスと恐らくその父親と思われる男性がこちらを見ていた。

 

「…えっと、何のようだ? セナ。」

 

状況を掴めていないカズマがセナにそう尋ねる。

 

「貴様らが潜入したキールダンジョンから謎のモンスターが溢れ出し、それらが町の周囲にまで溢れ出している! この事について、貴様らの関係性を聞こうじゃないか!」

「…謎のモンスターって、俺達は何も関係ねぇよ。 …念のために聞くけど、心当たりはあるか?」

 

セナの言葉に、カズマがこちら側を見て尋ねる。

 

「爆裂魔法絡みでないなら、私は関係ありませんよ。」

「右に同じく。 それにカズマ達が潜ってた時は、俺は町で情報収集してたしな。」

 

初めに目を向けられた俺達はそう答えた。

 

「まぁそうだよな。 ダクネスは?」

「私も心当たりはないな。 日頃から問題は起こしていないし、ここ数日は基本的にこの家に居たからな。」

 

そうダクネスが答えると、後ろで父親らしき男性も頷いていた。

 

「…それで、お前は?」

「勿論無いわよ! 幾ら何でも私を疑い過ぎでしょ。 あのダンジョンに関しては、むしろ私のお陰でモンスターは寄り付かない筈よ!」

 

そう自信満々で言うアクア。 その言葉に何か引っかかったのか、疑惑の目をしたカズマがアクアとひそひそ話をする。

 

 

「…そう言えば、縁談の方はどうなったんだ!?」

 

ハッとした俺は、ダクネスにそう問う。

 

「あぁ、その事ならばもう心配はないさ。 領主の息子の方から、私との見合いは断ったとアルダープに伝わる筈だ。」

「…と言うことは、これからも冒険者を続けられるのですね!」

 

その言葉を聞き、俺とめぐみんは安堵する。

 

「と言っても、向こうの方も元々見合いを断る予定だったらしいんだがな。 …それに、アキラの方も無事立ち直ったみたいだな。」

「あの、出来ればその事はもう掘り返さないで頂けると有難いのですが。」

 

そこまで年が離れてないとは言え、ここまで年下の女の子に弱みを握られる男ってどうなんだろうか。

そんなことを思っていると、不意にカズマの叫び声が部屋の中を響き渡る。

 

 

「…こんの……バカがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

 

 

ああ、また何かやっちゃったのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうも、私です。珈琲@微糖です。
この完全に自己満足で書いている小説も先日総UA2万を突破しました。ありがとうございます。

ダクネスの縁談周りは時系列等、少し改変させて頂きました。読み辛い等あればすみません。

さて、次回はバニルさん回なのですが、恐らく投稿が遅れると思います。
それ以降も、恐らくこれまでよりかは投稿ペースが落ちるとは思いますが、失踪だけはしないようにしますので、こんな自己満足な小説でよろしければ次回以降も見て頂ければ幸いです。

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