この魔力使いに祝福を!   作:珈琲@微糖

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第十話 - この素晴らしい結末に祝福を!

「それにしても、本当にあのデストロイヤーを倒すとはなぁ。」

 

デストロイヤーを討伐した翌日、実感の薄い俺は沁々と語る。

今日は、以前魔王軍の幹部を討伐した時のように、ギルドの酒場で祝勝会が行われていた。

 

「そうですね。一時はどうなるかと思いましたが、無事町を守ることが出来ました。 …まさか、日に二度も爆裂魔法を放てるなんて…」

 

隣のめぐみんが、恍惚とした表情でそう言う。

何を言っても無駄だろう、そう思った俺は水でも取ってこようと立ち上がろうとし……

 

 

 

 

 

 

「おっとアキラ、いけませんよ。 アクアから絶対安静って言われてるんですから。」

 

 

 

 

 

 

そう言って、めぐみんは力ずくで俺の事をベッドに寝かせる。

 

「…はぁ、もう動けるってのにどうして…」

「まぁ、あんな無茶をやらかしたんだから当然ですよ。」

 

目線だけで抗議しようとするが、そうめぐみんに跳ね除けられる。

 

と言うのも、デストロイヤーの討伐に成功した後、アクアから支援魔法を解除してもらったのだが、弾頭を打ち出すのに使用した魔力量が予想以上に大きく、解除した瞬間魔力不足でぶっ倒れてしまったのだ。

加えて、元々魔力のステータスは優れていない俺は、回復までに時間を要するらしく、アクアから回復しきるまで絶対安静を言い渡された。

 

「…それにしても、めぐみんは祝勝会の方に行かなくて良かったのか? 別に俺一人でもどうとでもなるし、今からでも行ってきていいんだぞ。」

「自分から言い出した手前、やっぱり来たくなったので来ました。なんて言えませんよ。 それに、居ない間にアキラが無茶したら咎める人が居なくなるではありませんか。」

 

彼女の言う通り、めぐみんは今朝、自分から安静にするように監視すると名乗り出て、この屋敷に残った。

祝勝会を蹴ってまで俺の面倒を見てくれてることに関しては感謝をしているが、その時こちらを見ながらニヤニヤしていたカズマ達には、何かしらのお仕置きをしようと思う。

 

「…否定出来ないから何とも言えねぇ……」

 

そう言って俺は再びベッドに横になる。

…一つあることを思い出した俺は、めぐみんにその事を尋ねる。

 

「…そういやさ、昼飯どうすんの? 何か作る位の材料ならあると思うけど。」

 

その言葉に、めぐみんはこっちの方を見る。

 

「…マジですか?」

「マジですよ。」

 

屋敷の中に沈黙が流れる。

 

「…ギルドに行って、何か買ってきます。」

 

そう言って、めぐみんが立ち上がる。

 

「…あれ、そこは何か食べたいところがあるか聞くものじゃないの? …もしかして、料理できない…?」

 

そう言って、煽るように口を押さえながら言う。

…その仕草には、負けず嫌いなめぐみんもカチンと来たようだった。

 

「…言ってくれますね…出来ますよ、料理くらい出来ますよ!紅魔族随一の天才である私に掛かれば、料理くらい余裕ですよ!」

 

そう言って部屋を出ていくめぐみん。

 

「…さて、何が出てくることやら。」

 

その後出てきた料理は普通に美味しかったとだけ記しておく。

 

 

 

 

 

 

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めぐみんの作った昼食を食べた後、少し横になって昼寝をしていると、突如布団の中にもぞもぞとした謎の感触に気付き目を覚ました。

何事かと思い、静かに布団の中の覗くと、そこにはめぐみんの頭があった。

もぞもぞと動くそれは、段々と俺の正面へと近付いて………

唐突な出来事に驚いた俺は、何故か狸寝入りをしていた。

 

「…えへへ…忍び込んじゃいました。」

 

妙に嬉しそうなめぐみんの声が聞こえる。

 

「全く、どうして私を放って先に寝ちゃうんですか…退屈なんですよ…?」

 

ご立腹な様子で、そう言うめぐみん。

その言葉に、少し申し訳なく思う。

 

「まぁ、そのお陰でこうやって勝手に布団に忍び込めたので役得ですけどね…」

 

そう言うと、何かが体に抱きついてくる。

 

「…えへへ…こんなこと、アキラが起きてる時には出来ませんからね…」

 

…いや、割と最近腕に抱きついてきたりしてるじゃないか。

つい、そう口走りそうになるが、ぐっと堪える。

 

「(そうだ、今の俺は石像だ。石像だからどんな言葉にも動揺しない…!)」

 

そう、自分の頭の中で繰り返す。

 

「…昨日、カズマから指摘されてやっと分かったんです。 …私、アキラの事が…!」

 

そう、自分に言い聞かせていた瞬間、それは聞こえてきた。

同時に、静かな息遣いが段々と近付く。

我慢出来なくなった俺は、ほんの少しだけ目を開く。

 

 

「「あっ…」」

 

 

開いた先には、めぐみんの真っ赤な目しか見えなかった。

何とも気まずい空気になってしまい、ゆっくりとめぐみんは顔を離す。

 

「…いつから、起きてたんですか…?」

「…その、『忍び込んじゃいました』って辺りから……」

 

そう言うと、めぐみんは顔を真っ赤にしながらプルプルと震える。

 

「…く……黒より黒く…闇より暗き漆黒にぃぃ…「爆発オチはやめろぉぉぉ!!!!」

 

爆裂魔法の詠唱を始めようとするめぐみんの口を押さえようと手を伸ばす。

 

「止めないでください! あんなのを聞かれるくらいなら一層の事アキラごと纏めて…!」

「いや、そんなことしようと思う位なら、あんなことするなよ!」

 

そう言って取っ組み合いをしていると、いつしか俺が、めぐみんの上に覆いかぶさるような体勢になる。

 

「…だって、寝てるアキラを見てたら…抑えきれなくなっちゃったんですから……」

 

顔を真っ赤にしながら目を逸らすめぐみんに、ついドキッとしてしまう。

 

「ですから、我が爆裂魔法と共に、どうかその記憶を消してください!《エクスプロー「言わせねぇからな!?」

 

そう言って、油断していためぐみんの口を無理やり押さえる。

むぐぐー、と声を発せないめぐみんが抗議の声をあげようとする。

 

「……その、なんだ。 …驚いただけで、一緒に寝たり、抱きつかれるのは……嫌いじゃない、からさ…。」

 

そう、段々と小さくなる声で言う。

言ってる最中、顔が耳まで熱くなるのを感じた。

 

「…それに、さっき言われた言葉も、実は凄い嬉しかった…。 だから、爆裂魔法とか忘れさせるとか、そう言うのはやめてくれ…忘れる前に、俺が木っ端微塵になりそう。」

 

恥ずかしさで声が出ないので、めぐみんの耳元でそう囁く。

その言葉と同時に、目の前のめぐみんの顔も真っ赤になった。

 

「……お、俺はこれから寝直すけど、めぐみんはどうする…?」

「…私も御一緒していいですか…? さっき言った通り、一人だとやることがありませんので。」

 

そうめぐみんが言うと、めぐみんの隣に横になり、胸元にめぐみんの顔を抱き寄せる。

 

「ふぇ…あ、アキラ!? いきなりなにするんですか!」

「…うるさい、寝るんだから静かにして…勝手に布団に忍び込んだ罰。 めぐみんには、俺の抱き枕になってもらいます。」

 

そう言って俺は目を閉じ、眠ろうとする。

 

「こ…こんなこと、罰と言うより御褒美になってます…と言うかこれヤバイです、アキラの匂いがこんなに直接…!」

 

胸元に顔を埋めためぐみんからそんな声が聞こえてくるが、気のせいだと信じたい。

 

 

……その日の夜から、毎晩めぐみんが布団の中に侵入してくるようになったのは、また別のお話。

 

 

 

 

 

 

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デストロイヤーを討伐してから数日後、俺達はギルドに集まっていた。

これだけ聞くと普通だと思うだろうが、今日は訳が違う。

横一列で並ぶ俺達の前には王都から来たであろう騎士達と、一人の女性が居た。

 

「…な、なぁ、この空気はなんだ…?」

「さぁ、分からないけど、私達はあのデストロイヤーを倒したのよ。国王から直々に感謝状が送られても不思議じゃないわ!」

 

俺の問に自信満々に答えるアクア。

目の前の女性と騎士を見るが、どう見ても感謝状と言う空気ではない。

そう思った瞬間、女性は口を開いた。

 

「冒険者、サトウカズマ! 貴様には現在、国家転覆罪の容疑が掛けられている! 自分と共に来てもらおうか!」

 

あぁ、神様。どうして貴方達は、私達に休息すら与えて頂けないのでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




第二章終わり!どうも、珈琲@微糖です。
前半については色々と暴走して書いてしまった、反省はしていない。

さて、例の如く次回以降は構想が出来次第になりますし、四月以降は私事が忙しくなりますので、いつになるかなどはわかりません。

それでもよろしければ、次回以降も見て頂ければ幸いです。

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