「おい、何そんな物騒なもん作ってんだよ!相手は止まってんだし、ハンマーでもなんでもやり様はあるだろうが!」
カズマがそう俺に訴える。
「馬鹿野郎、そんなん使ってたら普通に乗り込んだ方が早いだろうが! 手っ取り早く道を開けるにはこの手に限る!」
俺達が言い合いをしていると、後ろから声を掛けられる。
「いいから早くしろー!もう時間が残ってないぞー!」
その冒険者達の言葉に、俺はグッと握った腕を上げて応える。
…そんな空気に、流石のカズマも諦めたようだ。
「さぁ、皆下がってな! 俺が用意したこれは魔法とは一味違うぜ!」
その俺の言葉に、全員が俺から離れる。
『魔力を推進力へ変換。圧力強化、圧縮。』
『我が操るは、力無き人間の知恵の結晶。』
『我が呼び起こすは、力無き人間のもたらす災厄。』
『いでよ、人類が手にした究極の武器の最高傑作!』
『エクスプロージョンッ!!』
(全く必要の無い)詠唱を終えると、筒から打ち出された弾丸は一直線にデストロイヤーへと向かっていく。
着弾した瞬間、中に込められたポーションによって巨大な爆発が引き起こされる。
「…く…クハハハ…ッ! ここからだ…アキラ式連続爆破を見るがいい!!」
俺がそう叫ぶと、爆発したポーションの水分によって、新たなポーションが誘爆を起こす。
「…確かに、こいつの装甲は固い。 だが、総数十数発にも及ぶ誘爆に耐え切れるかなぁ!?」
そう叫んだ直後、爆発によって高温になったポーションが誘爆を起こす。
「……なんだあいつ…頭がイカれてやがる
……」
冒険者の誰かが、爆発を見て甲高い笑い声をあげるアキラを見てそう言う。
そう言っている間にも、誘爆は更なる誘爆を起こし、全てが止んだ頃にはデストロイヤーには宣言通り、大穴が空いていた。
「へへっ…どうだ、見たものか…! 皆、今だ!乗り込んでくれ!」
俺が声を上げると、一番デストロイヤーの近くに居たダクネスが先陣を切ってデストロイヤーに向かって駆け出す。
それを見てハッとした冒険者達も次々にデストロイヤーに乗り込む。
「あー、やべ。魔力使いすぎた……」
いくらアクアから支援を受けていたとは言え、使える魔力には限りがある。
その場に倒れそうになる肩を、不意に誰かに支えられる。
「…よくあんなのが思いついたな、お疲れさん。」
「初級魔法をえげつない組み合わせをするお前には敵わないさ。…大体ウィズのポーションとアクアの支援魔法のお陰だ。俺はただ、それを合わせただけに過ぎない。」
魔力が残り少なく、立っているのが限界な俺はカズマにめぐみんと同じ木陰に運ばれる。
「じゃあ俺達もあの中に乗り込んでくるから、お前達はここで大人しくしていてくれ。」
そう言ってカズマ達もデストロイヤーの中へと入っていく。
取り残された俺達二人の間に、静寂が流れる。
その静寂を破ったのはめぐみんだった。
「…アキラ、さっきの攻撃…凄かったですよ。 ただ、あの程度の爆発で爆裂魔法を名乗るなど百年早いです。」
「それは分かっているさ、言ってみたかっただけ。 それに、まだまだ俺の魔力じゃあ爆裂魔法なんて夢のまた夢だからな…」
そう言って俺が苦笑すると、めぐみんがこっちの方を見て言ってくる。
「…アキラ。 一つ、お願いしたいことがあります。」
「…どうした?」
めぐみんの真剣な表情を前に、俺の背筋が自然と伸びた。
「…これから先、私と共に爆裂道を歩みませんか? 私の爆裂道には、アキラが必要なんです…!」
そう言ってめぐみんは、俺の手をぎゅっと握る。
「…はぁ、そんなこと言われて、断れるわけないだろ…。」
そっぽを向きながら、俺はそう答える。
その言葉を聞いてめぐみんはパァっと笑顔になり、腕に抱きついてきた、その時だった。
凄まじい轟音と共に、デストロイヤーが再び震え出す。
「な、なんですか! もしかして動力源をどうにも出来なかったんですか!?」
「馬鹿野郎!それだったら今頃俺達も吹っ飛ばされてるはずだ! …とりあえず俺達もあっちに向かうぞ、背中に乗れっ!」
そう言うと俺はロケットランチャーもどきの筒の部分を魔力に戻し、めぐみんを背負う。
デストロイヤーの元に着くと、何やらカズマ達が言い争っていた。
「嫌よ!なんで私の魔力をアンデッドなんかにあげなきゃいけないの! それに、私の神聖な魔力をウィズに大量注入したら、あの子きっと消えちゃうわよ!」
「その…以前カズマさんに《ドレインタッチ》を教える際に、アクア様から少しだけ魔力を頂いた後、物凄く体の具合が悪くなって……」
アクアとウィズがカズマに対してそう言っていた。
「なぁカズマ、動力源はどうなったんだ?」
「あぁ、アキラか! 動力源自体はどうにかなったんだが、中で溜まっていた熱が爆発しそうになっているらしいんだ!」
俺の質問にカズマが焦り気味にそう言う。
「…それってどうしたらいいんだ? もう逃げるしかないのか…?」
「まだだ、あの塊を吹き飛ばせればどうにかなるはず…!」
そのカズマの言葉に反応して、背中から声が聞こえた。
「真打ち登場」
立ち上がれる程度まで魔力が回復したのか、俺の背中からめぐみんが降り立った。
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「ね、ねぇカズマ、分かってるとは思うけど吸いすぎないでね?吸いすぎないでね!?」
「分かってる分かってる、宴会芸の神様の前振りだろ?」
「違うわよ! 芸人みたいなノリで言ってるんじゃないわよ!」
そんな某トリオ漫才師のようなやり取りをするカズマとアクアを少し遠目で見る。
ウィズからスキルのコツを教えてもらったカズマは、めぐみんの背中に手を突っ込む。
急に手を突っ込まれためぐみんは変な声をあげていた。
その後、ナチュラルなセクハラ発言をしながら背中に手を入れようとするカズマと、それを阻止しようとするめぐみん。
「ちょ、や、やめてください! 私にはアキラが居ますから…!」
…変な言葉が聞こえた気がするが、気にしないでおく。
「おーい、お前らー! 流石にもう時間が無いし、後ろでウィズが涙目になってんぞー!」
そのまま間に合わず皆仲良く土に…となるのは嫌なので、そう叫ぶ。
少しして、二人の首根っこを掴むことで合意したようで、アクアからめぐみんへの魔力の受け渡しが始まる。
「ヤバイです、これはヤバイです!アクアの魔力はヤバイです! これは過去最大級の爆裂魔法が放てそうです!」
「ねえめぐみんまだかしら! もう結構な量を吸われてると思うんですけど!」
その言葉の通り、結構な時間魔力を吸い続けるめぐみん。 …と言うか、カズマのやつあんなスキルを教わってたのか。後で教えてもらおうかな。
そんなことを思っていると魔力の吸収を終えためぐみんが眼帯を外し、杖を構える。
『光に覆われし漆黒よ。闇を纏いし爆炎よ。』
『他はともかく、爆裂魔法の事に関しては誰にも負けたくないのです! 我が究極の破壊魔法、行きます!』
『《エクスプロージョン》ッッッ!!!!』
めぐみんの杖から放たれた魔力の奔流は、今にも熱暴走をしようとするデストロイヤーに向かって放たれる。
直後、ウィズのものに勝るとも劣らない爆裂魔法がデストロイヤーを飲み込む。
爆裂魔法による土煙が収まった頃には、デストロイヤーは塵一つ残さずに消滅していた…。
デストロイヤー戦、完! どうも、珈琲@微糖です。
漸くデストロイヤー戦が終わりました。なんだかんだ、ここまでで一番長くなりました。
一度、この章のエピローグを挟んで次の章に入っていきたいと思います。
と言うことで、この辺りで失礼させていただきます。また次回以降も見て頂ければ幸いです。