この魔力使いに祝福を!   作:珈琲@微糖

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第二話 - この素晴らしい世界で三度目の生を!

「小関 彰さん。ようこそ、死後の世界へ。 私は貴方に新たな道を案内する女神、エリス。 この世界での貴方の生は終わってしまったのです。」

 

目を開くと、今まで居た雪原とは違う見知らぬ場所に居た。

周囲を見渡すと、どこかの神殿のような作りをしているような、初めてみた場所だった。

しかし、この場所の雰囲気懐かしさを感じた。

 

「(…あぁ、この感覚は…)」

 

その懐かしさは、今の世界に来た時にも経験した過去があったからだ。

 

「(…俺は…死んだ…のか。)」

 

目の前の、エリスと名乗る少女(女神)に告げられた事が事実だと確信する。

しかし、自分の死ぬ直前の記憶が雲谷がかかったように思い出せない。

 

「…エリス…さん? ちょっといいですか?」

 

「はい、何でしょうか。」

 

「俺って、どのように死んだんですか? …死んだ時の記憶だけが、何故か思い出せないんですけど。」

 

そう、目の前のエリスと言う少女(女神)に問いかける。

その言葉にエリスは少し悩み、一つの結論を出す。

 

「それは構いませんが、非常に残酷な死でしたので、思い出さない方がいいかも知れませんよ?」

 

「…構いません。 自分の最後くらい見なければ、後悔が残りそうですから。」

 

分かりました。と言ったエリスが、何やら手を動かす。

直後、頭の中に死んだ時の記憶が流れ込む。

 

 

その時、アキラは叫び声をあげた。

 

 

「…あ…っ…あああっ!」

 

死んだ時の様子を思い出したアキラは、踞りながら嘔吐き、切られた筈の自分の首を掻き毟る。

その背中をエリスは優しく撫でた。

 

 

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「…すいません。いきなり取り乱して…」

 

暫くして、漸く自らの死を受け入れたアキラは再びエリスに向き直る。

 

「恥じることではありませんよ。 大切な命を失ってしまったのですから。」

 

そう言って、アキラを案じるように目を閉じるエリス。

エリスの悲しそうな顔を見ると、切なさを感じてくる。

 

「…二つ聞いてもいいですか? 冬将軍は、あの後どうなったんですか。 そして…先に来た『カズマ』と言う青年はどうなりましたか?」

 

そうエリスに尋ねると、彼女は目と共に口を開く。

 

「…冬将軍は貴方を斬った後に消えていきました。 そしてカズマさんの方なんですが…普通は教えられないのが規則ですが、これは貴方にも関係することですので、伝えておきますね。」

 

そのエリスの言葉に、安堵をすると共に緊張感が走る。

 

「…天界には蘇りの規則があり、通常一人につき一度しか蘇ることが出来ません。 …ですが、日本からの転生者はこちらの世界に『蘇る』と言う形で二度目の生を得ます。」

 

「…って言う事はつまり…」

 

エリスの言葉に、気づいてしまった。

 

「カズマさんも例外なく、私の力で元の世界で裕福な家庭に生まれ、何不自由なく生活できるようにする。 …その予定でした。」

 

そう言い切ったエリスの目は、先ほどとは違って目が段々と死んでいった。

 

「…あの、予定だった。というのは…?」

 

「…あちらの世界に、カズマさんが連れていったアクアさんと言う女神が居ましたよね? …あの人、私の先輩なんです。 …それで、私の秘密をバラされたくなければ、カズマさんとアキラさんを転生させろと…」

 

そう言うエリスは、なにかに怯えるように震えながら話す。

 

「あの…その秘密って、規則をねじ曲げる程大変なものなんですか…?」

 

「大変ですよ! 私の女神としての尊厳がかかっているんですから!」

 

そう言って、涙目になりながら言うエリス。 その姿から、この女神も苦労人なのだと感じた。

 

「まぁそんなに大事な秘密なら聞きませんけど…さっきの話だと、俺も蘇れるんですか?」

 

「…はい、アキラさんも蘇ることができます。 …ですが、カズマさん以上に遺体の損害が激しく、戻れるのは早くても亡くなった日の夜になると思います。」

 

元の調子を取り戻したエリスは、きちんと戻れる旨をアキラに伝える。

その言葉に安堵の息を漏らす。

 

「…それでは、現世に魂を戻してもよろしいですか? 大丈夫です。体が元通りになれば、意識は自然と目覚めますから。」

 

そう言うエリスに一言「お願いします。」と言うと、足元に魔法陣が現れる。

体を浮遊感が襲い、段々と視線が高くなっていく。

その場を去る最後に、エリスはこちらに向かってウィンクをするように片目を閉じ、口の前に人差し指を置いて言った。

 

「皆さんには、内緒ですよ?」

 

その記憶を最後に、天界での意識は途絶えた。

 

 

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どれくらい経ったのだろうか。 背中には冷たい雪の感覚ではなく、固い布団の感覚を感じた。

徐々に覚醒していく意識の中、誰かの声が聞こえてきた。

 

「…早く起きてください。 アキラが居ないと、誰が魔法を打った私を運ぶんですか…。」

 

その声の主はめぐみんだった。

 

「…魔法を打って、アキラに背負われて、どうでもいい話をしながら帰る。 …そんな日常の時間が、一番好きだったんですよ?」

 

彼女の手が、自分の頬を優しく撫でるのを感じる。

 

「…ですから…早く帰ってきてくださいよ…アキラ。」

 

自分の頬に、熱い水滴がポツポツと落ちてくる。

 

───あぁ、俺ってなんて馬鹿なんだろうか。

 

居ても立っても居られずに静かに目を開き、目の前にある頭を撫でる。

 

「…ただいま。また心配かけちゃったな、めぐみん。」

 

目の前で涙を流していた彼女は、ハッと驚き目を見開く。

 

「…本当ですよ、この馬鹿。 …おかえりなさい、アキラ!」

 

そう言って自らの顔を隠すように抱きついてくるめぐみん。

頭を撫で続けると、目を覚まさなかったらどうしようかと思った。本当は死んでしまったんじゃないかと思った。 …そう言った、彼女が心の奥に仕舞っていた不安が溢れ出る。

そんなめぐみんが落ち着くまで、アキラは頭を撫で続けた。

 

 

 

 

 

 

─翌日、様子を見に来ていた他の仲間達から、ロリコンだのさっさと付き合えよだの茶化されるのは、また別のお話。

 

 

 

 

 

 

 




と言うことで、冬将軍戦でした。珈琲@微糖です。
見直してみると、予想外にシリアスな内容になってしまいましたが、恐らく次回からはシリアスがシリアルに変化すると思います。

と言うことで、早いですがこの辺りで御暇させて頂きます。
また次回以降も見ていただければ大変励みになります。

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