「よーっす、どうしたんだ?このギルドの騒ぎ様は。」
ベルディアを倒した翌日、アキラが冒険者ギルドに着くと、そこに広がっていたのは冒険者たちの馬鹿騒ぎだった。そんな中、カズマたちはルナの前でなにやら集まって話し合っている。
「あぁ、アキラですか。今日は早いんですね。」
「なんか目が覚めてな。二度寝するのもあれだし、ギルドに顔出そうかなと思って。 …それで、この騒ぎはどうしたんだ?」
声を掛けてきためぐみんにそう言うと、周囲を見ながら言う。
「あぁ、それか。 なんせ魔王軍の幹部を倒したんだ。この位の騒ぎはいいだろう。」
「そんなことよりも報酬よ!特別報酬が3億エリスも出たのよ! まぁ?私の活躍があったからこそだしー?9対1位で分けても罰は当たらないわよね!」
「うるさい駄女神! この金で今度こそ馬小屋生活を脱出するからな!」
その後、カズマとアクアが何かを言い合っていたようだが、アキラは3億エリスと言う膨大な金額を前に思考が停止していた。
「あのー…カズマさん。 これを…」
少しすると、ルナがどこか申し訳なさそうに一枚の紙を差し出した。
「ん? なんだ、これは。」
「なになに、小切手でしょ!ちょっと見せなさいよ。」
そう言ってカズマとアクアは、手元にある紙を見る。
…直後、二人は文字通り真っ白になった。
「…デュラハン撃退の際、アクアさんが召喚した大量の水が外壁を破壊してしまい、その付近にあった住宅なども被害を受けてしまいまして…。 魔王軍幹部の討伐と言う功績もあるので、全額とまでは言いませんが…その、一部だけでもお支払いをお願いしたいのですが…」
カズマが手渡された紙には、『外壁の修繕費 3億4000万エリス』と書かれていた。 報酬を差し引いて、4000万エリスの借金となる。
「報酬3億、そして弁償金額が3億4000万か。」
「血で血を洗う魔道の旅は、まだ始まったばかりですね」
「ね、ねぇカズマさん…私達、パーティよね? …借金は等分でいいわよ…?」
「…カズマ…明日からまた、クエスト頑張ろう?」
紙を見つめながら、段々と目が死んでいくカズマ。そのカズマを全員で慰める。
…暫くして、現実を受け入れたカズマの飲みっぷりは、それはそれは良かったものだった。と後に他のパーティメンバーは語った。
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「…それにしても…なんかあっという間だったなぁ…」
「そうですね。なんだかんだ言って、このパーティを組んだのってつい最近ですし。」
お祭り騒ぎになっている酒場の中心部から少し外れたところで、アキラとめぐみんは食事をとっていた。
「今思い出すと、パーティ組んでからまともに受けたクエストなんて片手で数えられるくらいしかないからなぁ。」
「ふっ、そのような浅い経験でも魔王軍幹部の討伐に成功したのは、我の爆裂魔法があったからこそ…!」
染々と語るアキラを余所に、食事中なのに右手を左目に添えてポーズを取る。
…どこかイラッと来たアキラは、皿に置いたフォークを取り上げた。
普段の調子に戻り、フォークを返してください!と懇願され、渋々フォークを返す。
「…まぁ、今回に関しては半分位合ってるから何とも言えないんだがな…」
小さくため息をつきながら、注文していたシュワシュワを飲む。
その様子を恨めしそうに見ていためぐみんが、何かを思い出したかのように話し出した。
「…そう言えば、アキラ。 …どうして約束を破って、攻撃したのですか?」
「…アキラさん、急に耳が悪くなったみたいだなぁ…めぐみんが何を言ってるのかさっぱり…」
誤魔化そうとするが、めぐみんがジト目でこちらをひたすら見つめてくる。
…それに観念したアキラは、渋々口を開いた。
「…まぁ…ちょっとここだとあれだから、飯食い終わったら少し外を歩かないか?」
「…そういうことでしたら…分かりました。」
暫くし、めぐみんが食事を終えたのを確認すると、ギルドを出ていく。
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「…ううっ…さむっ…」
「もうすぐ冬ですからね。流石にそんな格好じゃあ風邪引きますよ?」
「…俺には、めぐみんの格好の方が寒そうに見えるが?」
そう言いながら、二人は歩き出す。
「…それで、昨日の事なんですが…」
「…そのことに関しては、大変申し訳なく思っております。」
めぐみんが話し出すと、申し訳なさそうにアキラが言う。
「全く…誰かを助けようとするのは構いませんが、無茶かどうかくらい考えてくださいよ…」
アキラが平謝りをしていると、ため息をつきながらめぐみんは言った。
「…まぁでも、こうして五体満足で生きて帰ってこれたからいいじゃないか。」
「っ…何言ってるんですか! 何かあってからじゃ遅いんですよ!」
「ご、ごめんなさい!」
めぐみんのあまりの気迫に思わず平謝りするアキラ。
「…顔を上げてください。 仲間が傷つくのが嫌なのは、アキラだけじゃないんですからね。」
小さな声でめぐみんはそう呟き、再び歩き出す。 顔を上げたアキラは、慌ててめぐみんについていく。
「…うん、その…本当にごめんなさい。」
「もう済んだことだから構いませんよ。 …ただ、今度同じようなことをしたら…覚悟してくださいね?」
「…分かってるさ。めぐみんは怒らせると怖いからな。 …爆裂魔法とか打たれそうだし。」
アキラはめぐみんの帽子を取り、頭を撫でながら言う。
「おい、アキラの私に対する信用がどの程度なのか、しっかりと話し合おうじゃないか。」
頭を撫でられながらも、めぐみんはジト目でアキラを見る。
「あ、あはは…冗談冗談…」
「全く…アキラにそんなこと、するわけないじゃないですか。」
頬を膨らまし、いじけながらそう言うめぐみん。
その表情に、アキラの彼女を撫でる手が一瞬止まった。
「…あれっ、どうかしたんですか?」
「…可愛いなぁって思って…あっ。」
アキラが自分が何を言ったか気づいた時にはもう遅く、撫でられているめぐみんは顔を真っ赤にしていた。
「なっ…ぁ…いきなりなんてこと言うんですか! って、そろそろ帽子返してください!」
顔を真っ赤にしたままアキラの手から帽子を奪い取り、顔を隠すように深く被る。
「…全く…なんでいきなりあんなことを…」
横を歩くめぐみんが何かボソボソと呟いているが、深く首を突っ込まずに聞き流す。
「…あっそうだ。めぐみんちょっといいか?」
「…はい、なんでしょうか。」
「俺、この町のことあんまり詳しくないからさ、どの辺りで冬服を買えるかとか教えてくれないか? 出来ればさっさと買い揃えておきたいし。」
「それでしたらついてきてください、こっちです。」
そう言って前を歩くめぐみんを追いかける。
アクセルの町は、静かに冬を迎えていく。
むしゃくしゃして書いた、反省はしていない。どうも、珈琲@微糖です。
漸く原作1巻、アニメの6話までが終わりました。
ここまででこの小説では第一章とさせて頂きます。
第二章からも、大まかな構想の方は出来ていますので話が固まり次第、投稿させて頂きます。
唐突にはなりますが、お気に入り登録数100件超えありがとうございます。
上手い文章を書けるという訳でもない私が、ほぼ見切り発車で始めたこのシリーズも、ここまでモチベーションが保てたのは偏に評価、お気に入り、感想を下さった皆様のおかげです。
今後とも、このシリーズは「自分が書きたいものを書く」と言うスタンスで続けていきますが、またお付き合いのほどお願いします。
改めて、第二章以降もまた見ていただければ幸いです。