「「ばっくれっつ、ばっくれっつ、らんらんらん!」」
あの日から、俺の日常と言うのは大きく変わった。
依頼もないので、普段よりもゆっくり起きて、昼前にギルドでめぐみんと合流し、古城に爆裂魔法を放つ。その後、昼食をとってからギルドに戻って解散する。
そんな日常を送っていると、いつしか音だけで爆裂魔法の完成度が分かるようになっていた。
「《エクスプロージョン》ッッッ!!!」
「おっ、今日の爆裂魔法は結構良かったじゃないか。耳に来る音の重さが今までで一番良かったぞ。」
「ふふん…アキラも漸く爆裂道が分かってきましたね…どうです?アキラも、本当に爆裂魔法を覚えてみませんか?」
「それはいいんだけどさ…確か爆裂魔法って覚えるのが相当難しいって、アクアが言ってなかったっけ?」
「ふっふっふっ。ただの"アークウィザード"ならまだしも、紅魔族随一の天才であるこの我が教えるんですよ?そんなこと、些細な問題に決まってるじゃないですか!」
そう言って自信満々に答えるめぐみん。しかし、倒れながら言ってもあまりかっこよくはないと思う。
ぐっと言葉を堪え、めぐみんを抱き抱えて膝の上に座らせる。
「まぁ、まだレベルもポイントも足りないから、大分先になると思うけどな。」
「そう言えば、アキラの冒険者カードって一度も見たことないですね。…出来ればでいいのですが、見せてもらってもいいですか?少し興味があるので。」
「別にいいけど…はい。」
そう言って、めぐみんに冒険者カードを渡す。
「ふむふむ…レベルは4でこのステータスですか…割と魔力が高いんですね?」
「…えっ、最初にもらった時は、筋力と知力が高いって言われてたんだけど…そんな変わってる?」
そう言いながら、冒険者カードを覗き込む。 筋力等のステータスも上がってはいたが、言われた通り魔力の値の成長が著しかった。
「まっ、能力的には魔力が高い方が嬉しいからいいんだけどな。」
そう言って昼食を食べ始める。 その後、めぐみんも見終わったカードを返すと昼食を食べ始めた。
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数日後、いつも通りギルドでめぐみんと落ち合うと、突如放送が入った。
「緊急警報!冒険者各員は装備を整え、正門前に至急集合してください!」
緊急警報を聞き、ギルドに居た冒険者達が次々に正門へと向かう。 その途中でカズマやアクア、ダクネスと合流した。
正門に着くと、正面の小高い丘に黒い馬に乗る、鎧の騎士が居た。
「俺は先日、この町の近くに引っ越してきた者だが……毎日毎日、俺の城に爆裂魔法を打ってくる、頭のおかしいのはどこのどいつだぁ!」
その言葉を聞くと、カズマが俺とめぐみんの方をじっと見てくる。…冷や汗をかきながら、目をそらした。
「初心者の町だと思って甘く見てりゃ、毎日毎日打ってきて…どうしてそんな陰湿な嫌がらせばっかりするの!?」
段々と叫び声が哀愁の漂ったものに変わっていく。
「爆裂魔法…?」「爆裂魔法って言ったら…」「この町にも一人居るな…」
周囲の冒険者たちが、爆裂魔法。と言う単語から徐々に視線をめぐみんに集める。
…近くに居る、魔法使いらしき人に罪を擦り付けようとしやがった。
「オイ」
「…冗談ですよ」
カズマがそう言うと、目をそらしながら冗談だ、と言うめぐみん。
…恐らく冗談ではなかったのだろう。
やれやれ、と言った様子で前に出ていく。
「貴様かぁ!いっつもいっつも俺の城に爆裂魔法を打ってくる、頭のおかしい爆裂娘はぁ!」
「っ!…我が名はめぐみん!紅魔族随一の天才にして、爆裂魔法を操りし者!」
「あ?なんだその名前は、バカにしているのか?」
「ち、違うわい!れっきとした名前です!」
そうめぐみんが言い返すと、暫くして鎧の騎士は
「…成程。貴様、紅魔族の娘か。」
と納得していた。
「ふっふっふ…私が爆裂魔法を放っていたのも、貴様をここに誘き出すため。」まんまと罠に掛かりましたね!」
この言葉には、俺達の周りにいた冒険者からも「おぉ…!」と言う声が上がっていた。
…そう、俺とカズマを除いて。
「…なぁ、アキラ。めぐみんの奴、本当にあんなこと言ってたのか?」
「…いいや、と言うより、景観ぶち壊しで見栄え悪かったから、逆に俺が提案した側だ。」
「オイ」
胸を張り、ふふん。といった表情をする俺を、カズマは疑惑の眼差しで見ていた。
と言った様子でカズマと話していると、向こうの方でも何やら進展…と言うよりも、アクアが俺と同じ様子でめぐみん達の前に立つ。
「ほう。貴様、"プリースト"ではなく"アークプリースト"か。面白い!多少はやり応えがあるのだろうなぁ!」
そう言うと、鎧の騎士の手には、ひと目でわかるような嫌な魔力が溜まっていく。
…あれはマズい。
そう思った瞬間に体は動いていた。
──魔力変換。全体の50%を足の"筋力"へ。
──魔力変換。全体の40%を体の"推進力"へ。
───間に合えっ!
「汝に死の宣告を!貴様は一週間後、死ぬであろう!」
その瞬間、俺の体は光に包まれた。