この魔力使いに祝福を!   作:珈琲@微糖

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第九話 - この爆裂魔法をあの城に!

「…まぁそんなところだろうね、知ってた」

 

「どうかしましたのですか、アキラ。」

 

「…いや、何でもない。」

 

そんなことを言いながら、俺とめぐみんは町を出て林道を歩いていた。

 

「それで、どうしてこんな遠くまで来てんだ?魔法の特訓なら、もう少し近くでもいいんじゃないか?」

 

「…あんまり町の近くでやると、門番さんに怒られちゃうので…」

 

「おぉ、ちゃんとそこまで考えてるのか、偉い偉い。」

 

「そ、そうじゃなくてですね!…前にやって怒られちゃいまして…」

 

頭のおかしい爆裂娘が、節度を弁えまえた爆裂娘になったのかと思い褒めたのだが、そうではなかったらしい。

 

「まぁ近くで打ったらそうなるだろうさ。…所で、どこに向かって打ちたいとかって言うのはあるのか?」

 

「それなんですけど…以前は何も無い平地や、ただの岩に向かってでも満足出来たんですが…最近、それだと満足出来なくて…」

 

「お、おう…そりゃ大変なこった。とりあえず、散歩でもしながらいい場所探すか。」

 

「そうですね、もう少し歩けば眺めのいい丘がありますのでそこまで行ってから考えましょう!」

 

そう言うと、めぐみんは元気に走り出す。それについて行くように駆け出した。

 

 

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「なぁ、めぐみん。」

 

「何でしょうか、アキラ。」

 

「確かにここの眺め凄く良いんだけどさ、あの景観ぶち壊しな城はなんた?」

 

「いや、分かりませんよ!前に来た時はあんな城ありませんでしたし!」

 

めぐみんの後を追って少し走ると、一面に森が広がる美しい丘に出た。…しかし、その中で一つだけ、全く雰囲気の合わない古城があったのだ。

 

「全く、誰だよあんな城建てたやつ…あっ…めぐみん、いい事を思いついたんだが、興味はないか?」

 

「…一体どんなことを思いついたんですか、物凄く悪い顔してますよ?」

 

「あの城に向かって爆裂魔法を打つめぐみんが見たいなー!」

 

そう、俺が提案するとめぐみんはポンっと手を打ち、いい笑顔で爆裂魔法の詠唱を始める。

詠唱が進んでいくと共に、杖の先に魔力が集まる。…改めて見ると物凄い魔力量だなぁ。

 

そんなことを考えていると、めぐみんは詠唱を終える。

 

「《エクスプロージョン》ッッ!!!」

 

その声と共に魔法が放たれ、巨大な魔力の塊はそのまま古城へと激突する。

 

「うーわ、やっぱすげぇなぁ。」

 

「ただ…今日の爆裂魔法は少し物足りなかったですね。」

 

そう言って倒れかかるめぐみんを抱き抱えて支える。…その後、木陰に胡坐をかいて座ると、足の間にめぐみんを座らせた。

 

「あのー、どうして座らされているのですか…?」

 

「いや、折角こんな所まで来て、ただ爆裂魔法打って帰るだけなんて勿体ないなって思ったから、景色もいいしちょっと休もうかなって思って。」

 

「それならいいのですが…この格好は少し恥ずかしいのですが。」

 

帽子で隠れてはいるが、少し頬を赤らめながら俯くめぐみん。…そんな様子に気が付かずに、持ってきた荷物から幾つか何かが入っている包み紙。取り出した。

 

「それは何ですか…?」

 

「そろそろお昼時だなってと思ってな…ちょっとしたお昼ご飯を用意しました!」

 

そう言って包み紙を開くと、半分に切られたパンに野菜や肉を挟んだもの…所謂、ハンバーガーが入っていた。

それを見ためぐみんは目を輝かせ

 

「あ、あの!これ食べてもいいんですか!」

 

と言った。元よりそのつもりだったので、頷くと俺が持っていたハンバーガーにかぶりついて来た。…魔力が空で、動けないことを忘れていた。

 

「(さぁて、俺はどうやって食べようか。)」

 

そんなことを思いながら、静かに時間は過ぎていった…。

 

 

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魔力がなくなり、動けなくなっためぐみんを背負いながら元来た道を辿っていく。

 

「ありがとうございます…帰りに背負ってもらうのに加え、お昼まで用意してもらって。」

 

「いいってことよ、元々お昼も用意したはいいが食べ切れるか分からなかったしな。」

 

「それならいいのですが…お昼ご飯、とても美味しかったですよ。」

 

「それなら良かった。」

 

そんなどうでもいい話をしながら、林道を歩く。

そんな時、不意にめぐみんが小さな声で言ってきた。

 

「どうしてアキラはこんなに優しくしてくれるんですか?自分で言うのもあれですが、一日一発しか打てないような魔法使いなんて、使いにくいと…思いますし。」

 

元々小さい声で言ってきたのだが、その声すら段々と小さくなっていく。

 

「どうして…って言われると難しいなぁ。俺としては至極当然な事をしているだけだし。」

 

えっ…っとめぐみんの声が漏れた。が、俺は続けて言う。

 

「多分、俺じゃなくてカズマでも同じことを言うと思うぞ?あいつもなんだかんだ言って、根は優しいしな。」

 

「そう…ですか?」

 

「そりゃそうさ、嫌なら、パーティに入る時無理矢理にでも断っていただろうしな。」

 

「………」

 

「それに、俺達はもう仲間なんだ。何かあれば頼って、助け合う。だから、どうして優しいとか、そんなことは考えなくていいんだぞ?」

 

「…ふふ、そんな真面目なこと、数時間前には変な格好で現れたアキラから聞けるとは思っていませんでした。」

 

「何おぅ!?あれはれっきとした厨房に立つ者の正装であり、決して変な格好では…「貴方が立つのは厨房ではなく、戦場ですよ?」はい、重々承知しております。」

 

「でも、ありがとうございました。お陰様で、元気が出ましたよ。」

 

「おう、それなら良かった。…で、明日以降はどうするんだ?」

 

「…出来れば、依頼がいつも通りに戻るまではお願いします…。」

 

「畏まりました、お嬢様。」

 

そんな会話をしながら、俺の日々の日課が一つ増えたのだった。

 

 




連続投稿続いてるけど、暇なのかなって思った貴方、割と日常生活に余裕が出来てきました、珈琲@微糖です。

さて、城焼き回なのですが、付き添いをカズマさんからアキラさんに変更しました。
と言うのも、原作とは違って背負う役回りをアキラさんがやっていたのでアキラさんに頼んだだけなのですが。

そして、最後の部分ですが、見て分かる通り完全にオリジナルで考えました。
めぐみん自身、必死だったとはいえかずまを脅してパーティ加入したと言うのを少し気にしていて欲しい、と言う願望から生まれてしまいました。

と言うことで、漸く次回からベルディア戦に入れます。ナガカッタ…

というところで、次回以降もまた見て頂ければ幸いです。

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