人と光の“絆”   作:フルセイバー上手くなりたい

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8巻と言えば…
白式の整備でしょ!!!!




え?違うの?


Episode94 整備-メンテナンス-

「なあ一夏。今度の休みに、S.M.Sに来てくれないか?勿論1人か俺たちとで」

「え?それは別に良いけど、何で?」

一夏の肩を借りながら、セリーとの共同部屋(一夏達と同じ設備で、未だに一樹は落ち着かない)に帰って来た一樹。

「いや、麒麟の整備を一度しっかりやってほしいからさ。前やったのは雪のついでみたいなとこあったから」

「…なるほど」

「悪いな、折角の休日なのに」

「いや、大丈夫だ。みんなにはISのメンテナンスだって言えば良いからさ」

そう言いながら、一夏は部屋に兼ね備えられている簡易キッチンに向かう。

シャドウとの戦いの後、一樹の食事を用意するのは、一夏と雪恵(&セリー)が交代でやっている。無論専用機持ちはそれを知ってるので、昼間教室で一樹を見ると、何とも言えない表情をされる。

「…本当、手間掛けて悪いな」

「気にすんな。たまには料理しないと、感覚を忘れる」

忘れた方が彼女たちには良いのではないか、一樹はそう思った。

 

 

「あの…みんな顔が凄い事になってるよ?」

「ユキエ、今更じゃない?」

所変わって食堂。最近、一夏と食事が取れないことに理性では納得しても、感情が納得出来ていない雪恵と簪以外の専用機持ち。

「さ、櫻井君の今の怪我は尋常じゃないから、しょうがないと思うよ?」

「アンタは強いわね…簪」

鈴は生気の飛んでいる顔で簪を賞賛する。

「怪我の治療が必要なのは…昔から叩き込まれてるから」

更識家で育った簪は、人一倍怪我の治療の重要さが分かっているのだ。

「カンザシ…で良い?」

普段一夏の周りにいる者には話しかけないセリーが、珍しく簪に話しかけた。

「な、何…?」

「カンザシは、カズキの事をどう思ってるの?」

セリーの瞳からは、何も読み取れない。しかし、彼女にとって重要な事を聞いてるのは確かだ。

「櫻井君は…恩人かな?」

「恩人?」

「うん。私、この間のタッグマッチの頃まで専用機が完成してなかったの」

簪はセリーに語った。春の終わりに初めて整備室で出会い、打鉄弐式の製作を手伝ってもらったことを…

「だから、私にとって櫻井君は恩人だよ…コレで良い?」

「ん。カンザシは敵じゃないって事が分かった」

「敵って…この学園を守ってくれてるのに、敵とは思わないよ」

「カンザシはね…なあお前ら」

後半はドスの効いた声で専用機持ちに言うセリー。凄い速さで顔を逸らす面々。

「い、今は違うぞ!?」

「そ、そうですわ!彼には感謝してます!」

「こ、この間も助けられたしね!」

「さ、櫻井君は僕にとっても恩人だよ!」

「うむ!櫻井は大切な仲間だ!」

もの凄い速さでまくし立てる5人。セリーのジト目に、しばらく怯えてるのだった。

 

 

「一夏、悪いけど背中拭いてくれね?」

一夏作の夕食を食べ終わった後、一樹は一夏に背中を拭く事を依頼した。

「あいよ」

お湯で濡らしたタオルで、一樹の背中を拭く一夏。

「…コレ、雪恵とセリーにも頼んでるのか?」

「な訳無いだろ…こんなの、あの2人には見せられないっての」

「…そうだな」

一樹は、真夏でも薄手の長袖長ズボンを必ず着る。病院着であってもだ。その理由が、体中に残っている火傷等を人々に見せないためだ。一夏もS.M.Sの大浴場で、初めてそれを見た時は気絶した程だ。

「この背中は、お前が人間を守ってきた証なんだよな…」

「…そんな大層なモンじゃねえよ。そろそろセリーが帰ってくる。ちとペース上げてくれ」

「了解」

一樹の背中を拭き終わり、服を着終わった所でセリーが帰ってきた。

「ただいま、カズキ」

「おう、おかえりセリー」

「じゃあ、セリーも帰ってきた事だし、俺も帰るわ」

「…ありがとな、一夏」

「お大事に。じゃあなセリー」

「……それじゃ」

最近、セリーは少しずつだが一夏を認め始めた。一樹の世話を、自分から進んでやっている事が、セリーの中で評価を上げたのだろう。

「カズキ、調子はどう?」

「…ぼちぼち?」

「何故疑問形?」

「歩こうと思えば歩けるけど、すぐ転ぶし…けど痛みはそれほどでも無いし…」

「…それ、神経がやられてるんじゃ」

「いや、多分俺が痛みに慣れすぎてるからだな。動かす事はできるし」

「カズキのバカ…」

最近、セリーのジト目が雪恵に似てきてることを知った一樹は、苦笑するしかなかった。

 

 

週末、一夏はモノレールで対岸の岸にいた。

「くぅぅ〜!さて、久しぶりに顔出しに行きますか!」

一樹経由で言われた、麒麟の整備のためにS.M.Sへと向かう一夏。

他の専用機持ちもそれぞれ機体の製作元に戻ったりしてるらしい。シャルロットに雪恵は、別の日に整備士がIS学園に来て終わらせていた。

流石に麒麟の本整備をするための機材は持ち運び出来ないらしく、一夏のみ顔を出せとの事だ。

「しっかし、一樹と一緒に行かないのって本当久しぶりだな」

 

 

「で、一夏は白式のメンテナンスのために出かけたということだな」

わざわざ一夏の所在を聞くために、一樹の部屋を訪れた箒たち。

「おう。ってか一夏から聞いてないのかよ?」

椅子に寄りかかるように座っている一樹と、その側に寄り添うように座る雪恵とセリー。

「織斑君から聞いてはいたよ?ただ、細かい日にちは聞いてなかったの」

「そういうことか…」

 

 

「お、来た来た。お疲れさん」

「一馬、お疲れ」

無事にS.M.Sへとたどり着いた一夏を出迎えたのは、一馬だった。

「じゃあ、知ってると思うけど今日の流れな。白式の本整備をするのがメインで、ついでに()()がやれるかの試し」

「え?()()を採用したの?」

「一応整備要項はクリアしてるからな。試しにやってみる」

「…で、オッケーだったら?」

「ん?オッケーなんだなで終わり」

「何故に!?」

「だって学園内に()()を持ってくの超絶面倒だから。それに、流石に()()を外でやるのは…」

「あ、そっか…俺がS.M.S所属って知られちゃうのか」

納得してくれた様で何よりだ

と一馬が言うと、一夏と共にメンテナンスルームへと移動する。

「…一夏」

「ん?どうした一馬」

「最近、学園内でアイツはどうだ?俺達は防衛府の指示が無いと動けなくてさ…」

「だからか…宗介達があまり来れないのは」

怪獣達と戦うのに、宗介達は防衛府の指示が無いと動けない。それは、S.M.Sが動くと世界のパワーバランスが簡単に崩れると思っているからなのだろうか。

「だから精々、住民の避難くらいしか出来なくてさ…お前と雪恵さんには、苦労かけて悪いな…」

「いや…俺も雪恵も、そこは気にして無いから良いんだけど…問題は」

「一樹、だろ?」

「ああ。3日前まで、一樹は誰かの肩を借りないとまともに移動出来ない状態だったんだ」

「ちょっと待てそれは初耳だぞ!!?」

遥香からも、そこまで酷いとは聞かされていない一馬達。それもそうだ。シャドウ・デビルとの2戦目の後は遥香も来れてないのだから。

「マジか…今度宗介や一馬達のケータイ番号を雪恵に教えた方が良さそうだな」

「ちょっと待ってろ今全員に確認するから」

一馬からのメールの結果、数分後にはその案が採用されることになるのは別の話…

 

 

「…おし。全快とまではいかないけど、自分で動ける程度には治った」

腕をグルグル回し、自分の体の状態を確認する一樹。

「逆立ち出来る?片手で」

「セリーちゃん、いくらかーくんでも片手逆立ちは「よっと!」出来てるぅぅぅぅぅ!!?」

「じゃあ、あまり暴れなければ問題無さそうだね」

「おう、雪もセリーもありがとな。すげえ助かった」

雪恵のリアクションを軽くスルーしながら礼を言う一樹。

「それは良いんだけどさ。かーくん最近怪我多くない?」

「それだけ敵が強くなってるって事だ」

俺の回復力が落ちてるのもあるかもな…

その言葉が口にされる事はなく、ミオだけがその言葉を聞いたのだった。

『…マスター』

 

 

「おい一夏、お前ちゃんと整備してるのか?自動回復に任せっきりだろ?」

「うっ、確かに一樹にばっか頼ってました…」

メンテナンスルームで麒麟を展開した一夏は、整備士たちの説教されていた。

『本当ですよマスター。いつも私の事を放ったらかしにして。女の子はデリケートなんですよ?』

「返す言葉もございません…」

ハクにも怒られ、一夏はうなだれるのだった。

 

 

「……」

『マスターどうしたの?急に黙って』

「悪いミオ、少し静かにしててくれ」

『う、うん…』

雪恵とセリーが昼食を食べに行ってすぐ、一樹は()()を感じていた。

「……」

左手を逆刃刀に添えて、廊下を注意深く進む一樹。

 

ビー!ビー!ビー!

 

「やっぱりか!」

IS学園全体に、警報が鳴り響く。

それは、またもや学園が襲撃された事を意味していた。

 

 

IS学園地下にあるオペレーションルームに、男子2人を除く1年専用機持ちとセリー、楯無が集められていた。

「…と、言うわけだ。そのために、電脳ダイブで対応するために、お前達専用機持ちが集められたのだ。質問は?」

「はい」

手を上げたのは、ラウラだった。

「電脳ダイブをするのは良いのですが、その間我々は無防備になります…その問題はどうなるのでしょうか?」

「この場に、ある人物がいないのに気付かないか?」

雪恵とセリー以外が周りを見て、漸く気付く。

「ま、まさか櫻井1人に対応させるつもりですか⁉︎危険すぎます!」

実戦経験のあるラウラが意見するも、千冬にバッサリ切られる。

「かと言って、お前らが行っても櫻井の邪魔だ。何せ、今回の襲撃された場合、ISでは不向きな学園内の戦闘だ。生身の戦闘に貴様らがいたら、人質になるのがオチだ」

「なら私が行きます!私は実戦経験も…」

「それは1対多数の戦闘か?」

「ならばAICを…」

「背後の攻撃に対応出来ないのにか?」

「くっ…」

ラウラ以外は黙っていた。精々訓練を受けた事がある程度で、その世界に身を置く一樹の援護が出来る筈もないのだから。

「…最後の砦として、田中セリーをここに置く。構わないか?雪恵」

セリーの保護者である雪恵に、最終確認を取る千冬。

「…セリーちゃんが良いのなら、私から言う事はありません」

「ん、大丈夫。雪恵と、カンザシのついでにみんな守るから」

ついで、の言葉に身を縮ませる5人。

楯無は苦笑していたが。

「よし、ダイブするのは篠ノ之、オルコット、凰、デュノア、ボーデヴィッヒに田中だ。サポート役として、更識妹と束をつける。束がいる時点で、ダイブ先が危険になったら戻ってこれる安心にはなるだろう?」

「この天災がいる限り、少なくとも死ぬことはないよ〜」

「不安になるような事を言うな馬鹿者」

 

ゴチンッ!!!!!!!!

 

あまりにも鈍い音が、オペレーションルームに響いた。

「痛いよちーちゃん!!?これが私じゃなかったら頭蓋骨割れてるよ!!?」

「更識姉、お前のISなら櫻井の援護も可能だろ?行ってやってくれ」

「はい!勿論です!」

「華麗なスルー!!?」

 

 

「う、撃て!相手は所詮生身のガキだ!これだけの数の銃口を向けられれば…ギャアァァァァ!!?」

一樹は銃口に臆することなく、むしろ加速して襲撃者達を逆刃刀で戦闘不能にしていた。

「…無駄に数が多いな」

『マスター、そこを右に曲がった所に、逃げ遅れた生徒がいるよ』

「了解」

学園全体のマップをインストールしたミオも、一樹をサポートする。

『最優先は敵の殲滅じゃなく、生徒の人命優先っていうのがマスターらしいよね』

「余計なお喋りは今はヤメろ。生徒のサーチに集中するんだ」

『りょーかい♪』

 

 

「よし、麒麟とのリンクも確認したし、少し休憩するか…」

予定されていた事を全て終わらせた一夏は、休憩しようと自販機に向かおうとするが、ハクが学園の危機を感知した。

『マスター、学園が傭兵部隊に襲われているそうです。更にシステムクラックもされてる模様』

「システムクラックは束さんがいるから大丈夫だろ。後傭兵部隊ねえ…傭兵ィ!!?

お約束のノリを見せる一夏に呆れながら、ハクは続けた。

『現在、一樹さんが傭兵部隊の相手を…おや、楯無さんも加わった様ですね。システムクラックの件は、どうやら篠ノ之博士はあくまでサポートで、電脳ダイブで事態に当たっているようです』

「何故に束さんサポート!!?」

『恐らくですが、篠ノ之博士が学園にいるという事が公になることを恐れているのではないかと…』

「何を今更!!?」

本当に今更な話だが、その可能性は高そうだ。

『どうしますマスター?』

「そんなの決まってんだろ?」

一夏はカタパルトに向かって走り出した。

「全速力で学園に戻る!」

走りながら宗介に連絡し、カタパルトのひとつを空けてもらう。

「宗介!かくかくしかじかだからカタパルト空けてくれ!」

『全く説明してないけど、大体分かった。第2カタパルトに向かえ』

「理解が早くて助かる!!ありがとな宗介!!」

 

 

『カタパルトとの接続OK。射出タイミングを、織斑一夏に譲渡します』

オペレーターの理香子の案内に従い、麒麟(ユニコーン)を纏った状態でカタパルトと接続した一夏。

「ありがとう理香子さん!」

『うん、頑張ってね。後一樹君と雪恵ちゃんによろしく』

「ああ!織斑一夏、ユニコーン、行きます!!!!」

S.M.S本部から出撃した一夏。

瞬時加速を駆使して、IS学園に急ぐ…




何気に、一夏のちゃんとした出撃を書いたのはセシリアとの決闘以来じゃないですかね?


懐かしいな…


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