シャドウの予告から数日、恐れていた事が起ころうとしていた。
ドックン
「ッ…来る」
エボルトラスターの反応に、一樹は全速力で格納庫を目指す。途中で、一夏達と合流する。
「場所は!!?」
「学園と協力してる研究所のひとつ!」
「ちくしょうが!!」
それぞれの機体に乗り込み、出撃する…
『さて…そろそろか』
シャドウは遠くからチェスター達が近づいて来るのを視認すると、ブラックエボルトラスターを引き抜いた。
「見つけた…!」
変身したシャドウを見つけ、一樹はすぐにエボルトラスターを取り出す…
『待ってくれ一樹!』
だが、一夏に止められた。
「何で!!?」
『そんなすぐに
一夏の言う事は正しい…そんなすぐに変身したら、折角バルキリーで出撃しても意味がない…
『出てこないのか?なら…出て来る理由を作ってやろう』
シャドウはそう言うと、ダークフラッシャーをチェスターに向けて連発した。
「「「「ッ!!?」」」」
それぞれが操縦桿を動かして、シャドウの攻撃を避ける。
だが、ここ最近一夏やラウラに操縦を依存していたために、α機とβ機が被弾してしまう…
「「「「あぁぁぁ!!?」」」」
「やめろ!やめろやめろやめろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
一樹と一夏がそれぞれシャドウに向かって攻撃するが、シャドウは左手からバリアを張ってその攻撃を受け止める。
更にはその攻撃を利用、ワープさせて残りの3機も堕とした。
「「くそッ!!?」」
『まだ来ないのか?なら、ここを破壊するまでだ』
シャドウはゆっくりと、研究所に近付く…
「…かーくん」
「大丈夫か雪!篠ノ之!」
「ああ…すまない…」
墜落されたα機から、雪恵と箒を救出する一樹。少し離れた所では、一夏にラウラ、シャルロットがセシリアと鈴を救出していた。
「…良かった。全員無事だ」
一夏がホッとしている。一樹もそれには同意だが、今はホッとしてる場合ではない。
「…一夏。研究所の中にいる人達を避難させろ」
「…お前はどうすんだよ?」
「決まってるだろ…アイツの、相手をしてくんだよ」
「かーくん…」
悲しげに一樹を見る雪恵。そんな雪恵に、一樹は笑顔で話す。
「心配すんな。アレは使わないから」
「…うん」
雪恵が頷くと、一樹はシャドウに向かって駆け出す。
「…みんな、俺達は研究所の人達を避難させるぞ!それから一樹の援護だ!!」
「ああ!」
「ええ!」
「分かってるわよ!」
「うん!」
「分かった!」
5人がそれぞれ頷く、最後に雪恵が…
「…行こう。かーくんの頑張りを、無駄にしないためにも!」
シャドウの背中に向けてブラストショットを撃つ一樹。
『…?』
無論大したダメージは与えられない。だが、シャドウの意識をこちらに向けるのは成功した。
「…お前の目的は俺だろ?こっちに来い」
ゆっくりと研究所から離れるように動く一樹。シャドウもゆっくり歩き出す。だが、遂に痺れを切らし…
『いつまでその姿でいるつもりだ!』
ダークレイフェザーを連発してくる。
「ッ!!?」
なんとかその攻撃から逃れる一樹。
しばらくそれを避け続けたが、とうとう崖に追い込まれる。
「チッ!!」
そんな一樹に向けて、ダークフラッシャーを放つシャドウ。
『フンッ!!』
ダークフラッシャーにより、崖に爆発が起こる…
ドォォォォォンッ!!!!
「シェアッ!!」
爆発の中から現れるウルトラマン。
シャドウの背後に着地すると素早くジュネッスにチェンジする。
「フゥッ!シュアッ‼︎」
そんなウルトラマンを見て、シャドウは愉しそうに笑う。
『ハッハッハ…それで良い。愉しませてくれ』
「ハッ!」
『デュッ!』
2人の巨人が、今またぶつかろうとしていた。
「ああまどろっこしい!!!!」
ひしゃげた扉を慎重に開けようとしていたが、研究員達に端に寄ってもらうと、麒麟で扉を蹴飛ばす一夏。
バァァァァンッ!!!!
「「「「おぉ〜」」」」
こんな状況だというのも一旦忘れ、あまりに綺麗に扉のみを壊した一夏に拍手を送る6人。
「さあ!早く逃げましょう!」
「あ、ありがとう!」
「ま、待って!せめてデータとアレだけは持っていかないと…」
データ書類を持ち出そうとする研究員の1人に、一夏が怒鳴る。
「命とデータ、どっちが大切なんだ!!?言うまでも無いだろうが!!」
この間16歳になったばかりとは思えない一夏の迫力に、研究員の呼吸が一瞬止まる。
「そ、そうね…で、でも、お願いだから…アレだけは…【ソアッグ鉱石】だけは回収させて…」
「ソアッグ鉱石?」
聞き慣れない鉱石の名に、ラウラが訝し気な目を向ける。
「月でしか取れない特殊な鉱石よ。篠ノ之博士曰く、『ウルトラマンの手助けになるかもしれない』鉱石だそうよ」
「「「「ッ!!?」」」」
『デュアッ!!』
「シュッ!!」
シャドウの上段回し蹴りを受け止め、急接近。エルボーを喰らわせるウルトラマン。
『グゥッ!?』
腹部を抑えて蹲るシャドウの頭を掴み、研究所とは反対の方向へと投げ飛ばす。
「シュアッ!」
その勢いをシャドウは側転で殺すと、ウルトラマンに向かって跳び蹴りを放つ。
『フンッ!』
「グアッ!?」
ウルトラマンは蹴り飛ばされた勢いを前転で何とか殺す。起き上がったウルトラマンに向かって、シャドウはダークレイフェザーを放ってきた。
『フンッ、トゥオッ!!』
ウルトラマンはそれを両手で受け止めると、逆にシャドウに向けて投げ返した。
「フッ!ハッ!」
『グッ!?』
「…分かりました。ソアッグ鉱石だけは持っていきましょう」
「ありがとう織斑君!」
「ただ、取りに行くのは自分1人で行きます。場所を教えてください」
「…分かったわ」
研究員からソアッグ鉱石の場所を聞いた一夏は、研究員達の事を他の専用機持ちに任せて走り出した。
「ハッ!」
『デュッ!』
ウルトラマンとシャドウは同時に飛び上がり、空中で激しくぶつかり合う。
シャドウの拳を横に回り込んで避けると、ガラ空きの背中に回し蹴りを叩き込むウルトラマン。
「デェアッ!」
『グッ!?』
蹴り飛ばされながらも、シャドウはウルトラマンに向けてダーククラスターを打ち出した。
『デュアッ!!』
ウルトラマンはその弾丸の隙間を縫うように飛んで避け、シャドウに急接近していく。だが、弾丸の1発に当たり、スピードが落ちてしまう。
「グアッ!?」
その隙を逃すシャドウでは無い。ウルトラマンに全体重を加えた跳び蹴りを喰らわせた。
『デュッ!!』
「グオッ!?」
跳び蹴りの威力にウルトラマンは急速に下降していくが、セービングビュートをシャドウの腰に巻きつけ、大地に叩きつける。
「デェアァァァァッ!!」
『グアァァァァァッ!!?』
そんなシャドウを追い、ウルトラマンも着地し、構える。
「シェアッ!」
「…あった!コレだ!」
蒼く輝くソアッグ鉱石を無事見つけた一夏。慎重にケースに仕舞ってから持ち上げ、研究所を脱出する。
「一夏!こっちだ!」
箒たちと研究員も無事に避難出来たようだ。
「(よし!こっちは大丈夫だ!後はお前だけだぜ、一樹!!!!)」
『ハアァァァァ!!!!』
「フッ!?」
シャドウは両手を頭上に向けて伸ばし、巨大な闇のエネルギー球を作る。
充分な大きさになったところで、ウルトラマンに向かって投げ飛ばした。
『デュアァァァァァァァァ!!!!』
ウルトラマンは、全身に力を入れてその攻撃を受け止めようとする。
「シュアァァァァァァァァ!!!!」
かなり後ろにさがりながらも何とか受け止め、シャドウに向かって投げ返した。
「デェアァァァァァァァァ!!!!」
『グゥッ!!?』
自らの破壊エネルギーに、シャドウは苦しむ。
その隙に、両手にエネルギーを溜めるウルトラマン。
「フッ!シュウッ‼︎ハアァァァァァァ…フンッ!!デェアァァァァ!!!!!」
必殺のオーバーレイ・シュトロームをシャドウに決めた。
「よしっ!」
「ウルトラマンの勝ちだ!!」
ウルトラマンの勝利を確信する一夏達は、気付かなかった。
「フッ!!?」
シャドウの消滅を待っていたウルトラマンが、その影に気付いた。だが、もう遅かった。
その影が、シャドウとぶつかる。消えかかっていたシャドウが、禍々しく光る。その光が晴れたそこには…
『ハァァァァ…』
進化したシャドウがいた。
先の姿がウルトラマンのアンファンスの対になる姿だとしたら、今のシャドウの姿はジュネッスと対になると姿だ。その胸元では黒縁のコアゲージが黄色く光り、全体的な模様もジュネッスとよく似ている。ただ…ウルトラマンのジュネッスが力強さを感じる赤なのに対し、シャドウのそれは血をイメージさせる禍々しい赤…名を、【シャドウ・デビル】…
文字通り、悪魔の様な存在だ…
『ハッハッハ!!』
溢れてくる力に、高笑いを上げるシャドウに向かって、ウルトラマンは構える。だが…
ピコン、ピコン、ピコン…
「フッ!?」
ウルトラマンのコアゲージが鳴り響く。
もう長くは戦えない…
「ハッ!」
『デュッ!』
2人の巨人がぶつかり合う。
果たして、この戦いの勝者は…
強化されたシャドウ。
ウルトラマンは果たして勝てるのか!!?