一樹がIS学園に帰って来た。ということもあってその晩は食堂で【櫻井一樹・田中セリー おかえりなさいパーティ】が行われていた。その中心で行われているのは…
「ウノ!」
「「「「早ッ!!?」」」」
ご存知、テーブルカードゲームである。
メンバーは一樹、雪恵、セリー、一夏、本音、薫子、清香である。
そして平均所持枚数が4枚な時点で、ウノ発言したのは一樹である。相変わらず勝負事は尋常じゃないほど強い。
え?何故専用機持ちが参加してないのかって?
それは…
「5のツーペアだ!」
「でしたら7のペアですわ!」
「ちょ、7はアタシが出そうと思ってたのに!パスよパス!」
「僕はJのペア」
「私はKのペアだ」
一夏のマッサージ権をかけた大貧民を行なっているためだ。
「はい上がり!」
「嘘でしょかーくん!!?」
「いんちきだ〜!いんちきだ〜!」
「「そうだそうだ!」」
雪恵が驚き、本音が言いがかりをつけてくる。それに便乗する黛に清香。
「ほう…布仏に相川、変な言いがかりつけてくるなら今度の実技の時間、覚悟しろよ」
とんでもなく良い笑顔で告げると、慌てて訂正する本音と清香。
「人を疑うのは良くないよね本音」
「そうだね〜」
一樹が実技の相手をする=地獄。
それを理解してる2人はすぐに引いた。
「ふふん、私には何も出来ないでしょう?勝った」
そこそこな胸を張る黛。しかし、甘い。
「ふーん…なら今後新聞部のカメラの整備はやらない方向で」
「ごめんなさい私が悪かったからそれはやめてぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
「…最近、一樹がIS学園を制圧してるのではないかと思う俺」
一樹の勝負事の尋常じゃない強さを昔から知ってる一夏は、そう言うことしか出来なかった。
「カズキ、一緒にやろ?」
今現在、最も手札の多いセリーが一樹の膝に座る。一夏にとって、久々に見る光景だ。
「あ、ズルイよセリーちゃん!かーくんの膝たまには譲ってよ!」
雪恵が見当違いなところに闘志を燃やしていた。
「ユキエ、ここは私の特等席」
「違うもん!私のだもん!」
『違うよ!私のだよ!』
セリー、雪恵、ミオが口論してると、一樹から冷たいオーラが出る。
「…お前ら、俺が黙ってるからっていい気になってるんじゃねえだろうな?」
「ユキエ、早い者勝ちってことでどう?」
「仕方ないからそれで良いよ」
冷や汗を流しながらすぐにルールを決める雪恵とセリー。だが…
『ふふん、それなら私はいつでもオッケーだね。なにせいつでも実体化出来るし』
「「な!!?」」
ミオの発言に、雪恵とセリーが憤慨する。
それも、一樹の一言で収まる。
「心配すんな。ミオは勝手に実体化出来ないから」
「かーくん、ミオちゃんは1年くらい実体化させなくて良いと思う」
『雪恵さん!!?それは酷すぎない!!?』
「そうだよユキエ」
『そうだそうだ!セリーちゃんもっと言ってやって!』
セリーから助け舟が出たと思ったミオが、セリーに同調するが…
「1年じゃ短すぎるよ。そこは10年くらい実体化しなくて良いと思う」
『もっと酷かった!!?』
雪恵以上にセリーは厳しかった。
「あ、あのさ一樹…」
「あん?何だよ」
俺は、今日1日ずっと気になってた事を一樹に聞くことにした。
「ミオって……誰?」
「「「…あ」」」
「説明すっかり忘れてたわ…ミオ、出てこい」
『あいあい。今回の格好はなんと!鈴ちゃんと同じ…』
「それはやめてやれ。凰のメンタル的な意味で」
「ちょ!どう言う意味よ櫻井!」
「ごめん鈴ちゃん、私もそう思う」
「だから何で!!?」
鈴が聞き捨てならないとばかりに突っかかってくる。
「とにかく、普通の格好でな」
『普通って何ですか〜?』
ふて腐れたミオが投げやり気味に反論してくる。
ブチッ
『…ブチッ?』
一樹は無言で空中投影キーボードを出すと、ミオのデータを弄ろうとする。
『ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!!許してマスター!!!!』
意識空間の中で土下座しているであろうミオ。実際、一樹の脳裏に土下座しているミオが映っている。
「…普通の格好で来い」
『…あい。雪恵さんと同じで良い?』
「おう、それが妥当だろ」
一樹の許可を得て、ミオが実体化する。それを見た鈴は…
「う……そ……」
両手両膝をついたのだった。無理もない。自分より女性らしい体つきなのだから。
『マスター…櫻井一樹がいつもお世話になってます。私の名はミオ、よろしくお願いします』
「「「「あ、ご丁寧にどうも」」」」
一周回って冷静になった面々。
一樹なら何があっても不思議じゃない、と言ったところか。
『マスターに敵対する人物は、今後コアネットワークを使って社会的に抹殺しますので、よろしくお願いします』
「「「「は、はいぃぃぃぃ!!」」」」
『ふふん、マスター褒めて褒めて♪』
今度は小動物の様に一樹に駆け寄るミオ。そのギャップに、更に恐怖を覚える1組生徒たち。
『マスターマスター♪』
「……」
ちょいちょい、とミオを呼び寄せる一樹。嬉しそうに小走りで一樹に近づくミオ…
ぐーりぐり…
『痛い痛い!!?マスターそれ痛い痛い痛い!!?』
「なぁ〜に皆を怯えさせてくれちゃってんの?お前そんなドMなの?そんな仕置き喰らいたいの?」
『マスター限定だよ♪って圧縮ぅぅぅぅぅ!!?』
地雷を踏み抜くミオに、一樹のぐりぐり攻撃が…
「次余計な事をしてみろ。2度と実体化させねえぞ」
『ごめんなさーーーーい!!!!』
こうして、賑やかにパーティは進むのだった。
「いやあ、盛り上がったな…」
「うん…やっぱり、櫻井君がいると楽しい」
「お、簪もそう言ってくれるのか?」
「私のヒーロー談義についてきてくれる人は、そうそういない」
「…さ、流石だな」
簪、ヒーローの話をする時は目がキラキラしてるんだよな。
「あ、そういえば楯無さんの具合はどうだ?」
「お姉ちゃんは、しばらく医務室で経過観察…」
つまりは入院って事か。何か差し入れ持って行ってやろうかな。
「楯無さんって、趣味は何だ?」
「えっと…将棋、かな?」
「渋いなオイ」
まあ、俺も一樹とたまにやるけど。
十何年間か一緒に過ごしてて、一度も勝ててないんだよな…いつかは勝ちたいぜ。
「き、気になるの?」
心なしか、簪が緊張してる気がする。何でだろ」
「いや、差し入れにどうしよっかな〜って思ってさ」
「あ、そういう…けん玉で良いと思う。お姉ちゃん、昔からそればっかりやってるから」
「なるほど…あれ?両手骨折してなかったか?」
今更ながら、楯無さんの容体を思い出す。
「骨折自体はナノマシンで治したから…今はリハビリがてら、良いと思う」
「…ナノマシンって、すごいな。じゃあ後は編み物セットでも…」
「お姉ちゃん、編み物下手。私よりも」
「…ほほう。それは良い事聞いた」
いつも遊ばれてるお礼に、編み物セットを持って行ってやろう。
「一夏、悪い顔してる」
「簪もな」
お互い、悪い顔で笑っていると、急にもじもじしだした簪。
「い、一夏!これ…」
「ん?コレって…アニメのBlu-ray?」
「私のオススメ…見て?」
「おう!楽しみだ」
相変わらずヒーロー物だな…
そうだ、ちょっと聞いてみよう。
「(ヒーロー物が)好きなのか?」
「ッ!!?……うん、好き、大好き!!!!」
「かーくんとセリーちゃん落ち着いて!今行ったら簪ちゃん恥ずかしさで死んじゃう!」
「離せ雪!今回ばかりはアイツにトドメをさす!」
「離してユキエ!アイツを焼かなきゃいけないの!」
少し離れたところでは、雪恵が必死に2人を止めていたのだった…
頑張れ雪恵!
死者を出さないために!