人と光の“絆”   作:フルセイバー上手くなりたい

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昨日はすみませんでした!

切り時が分からなかったんです!

今回は色々な要素をぶっ込みました!

だから長い!一万文字以上あるよ!

お楽しみ下さい!




Episode86 協力-コウポレーション-

あれ…俺、どうしたんだっけ…?

ああそうだ。タイラントに負けたんだ…

それで川に倒れて…ん?おかしいぞ。

俺は確かに川で倒れたんだ。

なのに…なんでこんな温かいんだ?

 

 

「かーくん…」

雪恵は、病院のベッドで眠る一樹の手を握っていた。

「また…無茶してたんだね…」

セリーから聞かされた、一樹の過酷な特訓。実際、智希と和哉の手で病院着に着替えさせられてる一樹の体は、真新しい火傷があった…

「……バカ」

 

 

小川をどんどん流れていくエボルトラスター。

それは、魚を取ろうと網を張っていた少年に拾われる。

「…?何だこれ?」

「サトル兄ちゃん、どうしたの?」

「あ、ミナ…なんか、川をこれが流れてきたんだ」

エボルトラスターを不思議そうに眺めるサトル。

「ねえねえサトル兄ちゃん!この部分とかウルトラマンのに似てない?」

エボルトラスターの中心部の宝石を指すミナ。

「あ、本当だ…じゃあ、これはウルトラマンの大切な物なのかな…?」

 

 

「…ウッ…グッ…」

「かーくん…」

魘されている一樹の顔は、汗だらけだ。

雪恵は、ただ側でその汗を拭うことしか出来ない。

「……ゆ……き……」

「?」

「そっちは……危ない、ぞ……」

「……」

一樹が見てるのは、あの時の悪夢…

「大丈夫…私は、ここにいるから」

 

 

『ふむ…苦し紛れに放った技が、まさか腹部を使えなくしていたとはな。相変わらず楽しませてくれる』

シャドウは、タイラントが受けた傷を調べていた。

『まあ良い。これくらいなら、簡単に直せる。タイラントはまだまだ体力がある事だしな』

 

 

「……ん?ここ、は……」

一樹が目を覚ますと、そこは病院だった。

「…誰かが、見つけてくれたのかな?」

ゆっくり起き上がろうとすると、左手を握られてることに気づく。

「…ん?」

ふと横を見ると、雪恵が寝ていた。その顔に、涙の跡が…

「…また、泣かせちゃったか…」

空いていた右手で、ゆっくりと雪恵の頭を撫でる一樹。

「う、ううん…」

パチッ、と擬音が付くのではないかと思う程、勢いよく雪恵の目が開いた。

「…かーくん?」

「おはよう、雪」

「かーくん!」

凄い勢いで抱きついてくる雪恵。

 

ズキッ…

 

「(ッ…今回は、随分派手にやられたみたいだな…)」

雪恵に抱きつかれ、全身の傷が痛む。

だが、そんなことはおくびにも出さず、雪恵の頭を撫で続ける一樹。

「なあ、雪。お前が俺をここまで運んでくれたのか?」

気になっていたことを聞く一樹。

雪恵はその問いに首を振った。

「ううん、私じゃないよ」

「じゃあ誰が…」

「看護師さんの話だと、()()()()()()()()()()()()()()()らしいよ」

「…あー、とりあえず誰かは分かった」

一樹の知り合いに、その特徴が当てはまるのは1人しかいない。

 

 

「…という訳で、一樹君を病院に連れて行きました」

「そうか。やはり彼の体はボロボロだったか…」

ダンの店に、一樹を病院まで運んだ男がいた。その男の名は、【北斗星司】

ダンや光太郎と同じ、『マント持ち』だ。

「タイラントは、僕達が戦った時よりも、強力でした」

「アレは恐らく、()()()()()()()絶大な力を持っている」

「というと…?」

「以前我々が戦ったタイラントは、『ウルトラ戦士達に対する怪獣達の怨念』が集まって生まれた…これは分かるな」

「え、ええ…」

ダンの説明に、戸惑いながらも耳を傾ける北斗。

「対して今回のタイラントは、『一樹君に対する怨念』が集まって生まれたのだろう…」

「なっ!!?一樹君が誰かの怨念を受ける筈が…」

「私だってそう思いたい!だが…彼には怨念を受けるような事があったという事だ」

「ま、まさか…」

「そうだ。彼にとって最も大切な人…田中雪恵の脳死事件だ」

 

 

「……ッ⁉︎」

何気なく自分の荷物入れを見た一樹は、体に走る痛みを無視して棚を漁る。

「…かーくん?」

背中に雪恵の声が聞こえるが、一樹はそれどころではない。

「無い…無い…どこにも無い!」

「か、かーくん?ミオちゃんならここに」

ミオの待機形態である首飾りを見せる雪恵。

「あ、ありがとう…って違う!確かにそれが無くなっても困るけど違う!」

『ちょっとマスター⁉︎違うってどういう事⁉︎』

「アレが無えんだ…エボルトラスターが無えんだよ!!!!」

『「!!?」』

それがどれだけ大事なものか、理解してる2人は事の重大さに気づく。

「雪にミオ!悪いけど一緒に探してくれ!!!!」

「う、うん!」

『分かったよマスター!』

雪恵と実体化したミオも、一緒に探すが、病室のどこにもエボルトラスターは見つからなかった。

「…ミオ、一旦戻れ」

『うん…』

ミオが首飾りの中に戻ると、一樹は病院着から私服に着替え始める。

「ちょ、かーくんダメだよ行っちゃ!」

「何としてもアレは見つけなきゃなんねえ…まずはダンさんの店に行かなきゃ」

扉を開ける一樹。

「駄目だよ一樹君、まだ寝てなきゃ」

一樹が抜け出すことを予想していた遥香に立ち塞がれた。その近くには宗介に智希までいる。

「そうだそうだ、寝てろ寝てろ」

「心配しなくたって、仕事は終わらせてやるからさ」

「今はそんな呑気なこと言ってらんねえんだ!どいてくれ!」

「「やなこった」」

一樹は内心舌打ちする。これが一夏や弾だったら、今の体でも気絶させるくらいは出来た。だが、目の前にいるのはS.M.Sでもトップクラスの宗介に智希なのだ。この体では、押し通る事は出来ない…

「かーくん、戻って…?」

「……なら、宗介に智希。ひとつ頼みがある」

後ろから聞こえる雪恵の声に、一樹は折れた。ただ、物が物なだけに宗介たちに探してもらうことにした。

「ここを通せ、とかじゃなければ聞いてやるぜ?」

「右に同じく」

「分かってるよ…頼みってのは、この写真のやつを探してくれ」

「「ん?」」

一樹がスマホで、エボルトラスターの写真を見せる。

「「!!?」」

「分かってくれたか?」

「分かった!すぐに探し始める!」

「お前はそこで寝てろ!」

宗介と智希が走り出す。

「ちょ、2人とも!病院は走らない!」

遥香のツッコミをスルーして、2人は病院を飛び出していった。

「…さて、一樹君?」

「わあってるよ。ここで大人しくしてればいいんだろ」

「よろしい。監視役は雪恵ちゃんにセリーちゃんだからね。気絶させようとも思わないでしょ?」

「…お前、いつの間にそんな黒くなったんだ?」

「知恵がついたって言って欲しいな…ま、動かなければ特に制限は無いから。ごゆっくり」

「ねえ、仮にも医者が『ごゆっくり』なんて言っちゃダメだと思うんだ」

一樹のツッコミをスルーして、遥香は病室を出て行った。

 

 

「シャドウに、お前らの中の悪感情エネルギーを利用された、か…」

「信じてくれるの?」

学園の医務室で、俺は比較的軽症なシャルとラウラから話を聞いていた。

「…ああいった奴に常識は通用しないのは、身をもって知ってるからな」

「…そうだな」

自嘲気味に笑う俺に、ラウラも笑ってくれた。

「とにかく、そんな訳だから私たちはしばらく動けない…櫻井が助けてくれなかったら、死んでたくらいには」

「……」

「あの時、縄は切れてた。けど、僕たちは腰が抜けて動けなかったんだ」

「…それを、一樹が助けてくれたのか?」

「ああ」

 

 

「恐らく、今の一樹君はまともに動けない。いざという時のために、待機しててくれ」

「はい、分かってます」

北斗が店を出ようと席を立った時、店の扉が開いた。

 

カランカラン

 

「いらっしゃい…ん?君達か」

ダンが接客しようと出入り口に向かうが、そこにいたのは、一馬と和哉だった。

「ハア、ハア、ハア!すみません、北斗さんはいますか⁉︎」

先に息を整えた和哉が聞く。ダンは頷くと、北斗のところへと案内する。

「お、星野一馬君に倉野和哉君だったかな?僕に何の用だい?」

「実は…」

かくかくしかじか

「何!!?一樹君のアレが無くなっただと!!?」

「そうなんです。流石にあの体で動かす訳にもいかないんで、俺たちが探してるんですけど…北斗さん、何か知りません?」

説明したあと、和哉が北斗に聞いてみるが、北斗は首を横に振った。

「…すまない。僕は見ていないんだ…」

「ああいえ、気にしないで下さい。一樹を助けてくれたのが北斗さんなので、1番に話を聞きに来ただけなので」

頭を下げる北斗に、慌てて一馬が言う。

「となれば…北斗さん、一樹を見つけた川を教えてくれませんか?」

「あそこは…町外れの小川だ」

「それだけでも充分な収穫です!ありがとうございます!」

再び店を飛び出そうとする2人を、ダンが止めた。

「君達、これを持って行きなさい」

ダンが渡したのは、クラブサンドだった。

「その調子だとまともに昼も食べてないのだろう?他の人の分もあるから、持って行きなさい」

「ありがとうございますダンさん!お会計は…」

財布を取り出す一馬を、北斗が制する。

「ここは僕が払うよ。だから君達は行くんだ」

「「すみません!」」

2人に礼を言うと、一馬に和哉は店を飛び出した。

 

 

「…なあ雪」

病室では、一樹がベッドに寝そべった状態で、林檎の皮を剥く雪恵に話しかけた。

「何かな?」

「お前…怒ってるのか?」

雪恵の手が止まる。そして、一樹の方を向く。

「…怒ってて欲しいの?」

逆に問い返すと、一樹は肩をすくめる。

「分かんない、ってのが本音だ」

「そう…怒ってるよ、勿論」

「……」

声音はいつも通りに、雪恵は告げた。

「私に黙ってあんな修行をしてたことも、入院してなきゃいけないのに無茶したことも」

だけど、と雪恵は一旦言葉を止めた。

「…?」

「1番怒ってるのは、そんなかーくんを止められなかった自分自身にかな」

「……」

「それは多分、セリーちゃんにミオちゃんもそうなんじゃないかな?だって…あの子たちにとって、かーくんは唯一のお兄ちゃんだもん」

『聞き捨てなりません雪恵さん、私はマスターならいつだって「ミオちゃん?」イエイエナンデモアリマセンシツレイシマス』

一瞬、わざわざ首飾りから声を発したミオだったが、雪恵からの圧に負けた。それで良いのか最強のコアよ。

「……」

「はあ…かーくんがウルトラマンとして頑張ってるのは分かってるよ?けどさ…全部自分だけで背負ってるのは、やっぱり嫌だな」

「……」

一樹は答えない。雪恵も気持ちも分かるが、こればっかりは譲れない。たとえ…雪恵が自分から離れることになっても。

「ねえかーくん。私たちって…そんなに頼りない?」

 

 

「お兄ちゃん、それどうする?」

エボルトラスターを家に持ち帰っていたサトルとミナ兄妹。

エボルトラスターを今後どうするか兄妹会議中だ。

「ううん…1番はウルトラマンに届けることなんだけど」

「どうやって?」

「それなんだよな…」

怪獣が現れたらいつの間にか現れ、怪獣を倒した途端に消えるのだ。

どこにいるのか、検討もつかない。

「普通に考えたら、警察だけど…」

「警察がウルトラマンに届けられると思うの?」

「んにゃ全く」

警察は対人間の組織だ。対人外のウルトラマンが、警察の誰かと知り合いとは思えない。

「じゃあ…IS学園かS.M.S!」

「そのどっちかだよね…」

サトル少年とミナは頭を悩ませていた…

 

 

「カズキ、これ」

「…んぅ」

熱っぽくなった一樹は、大人しく寝ていた。時折、セリーがスポーツドリンクを飲ませてくれるのがありがたい。

雪恵も水で濡らしたタオルを頭の上に置いてくれる。

そんな時だった。

一樹に、タイラントが暴れるのが『視えた』のは。

「ッ!!?」

「…かーくん?」

「カズキ?」

『マスター?』

ガバッと起き上がった一樹を訝しげに見る雪恵たち。

「来る…奴が、また!!」

 

 

『もう傷も塞がった頃だろう…行け、タイラント!!』

ブラックエボルトラスターを振るい、タイラントを呼び出すシャドウ。

《ギャオォォォォ!!!!》

 

 

「来たか!」

IS学園でも、タイラントの出現を察知した。

「タイラントは正面から攻撃してもダメだ。背後に回り、確実に仕留めるぞ!」

「「「「了解!!」」」」

回復した一夏、シャルロット、ラウラに簪がそれぞれ機体に乗り込み、出撃した。

 

 

タイラントが暴れているのを、遠くで北斗は見ていた。

「まだだ…まだ僕が出るわけにはいかない…!」

自分はあくまで最後の切り札。この世界を守るのは、あくまでこの世界の人物であるべきなのだ。今の北斗に出来るのは、住民の避難を誘導するぐらいだった…

 

 

「お兄ちゃん!早く逃げなきゃ!!」

「分かってる!」

サトルとミナは避難しようと走っていた。だが、サトルはいきなり立ち止まる。

「…お兄ちゃん?」

「ミナ、お前は先に逃げるんだ」

「え⁉︎お兄ちゃんは!!?」

「今、あそこに行けばIS学園かS.M.Sの人がいる筈だ!その人に、これを渡せば…!」

「でも危ないよ!一緒に逃げよう!」

ミナがサトルの手を引こうとするが、サトルはそれを振り払った。

「行け!ミナ!!」

「お兄ちゃぁぁぁぁぁぁん!!!!」

慌ててサトルの後を追うミナ。

 

 

一樹は、サトルとミナがタイラントに向かって走るのを『視た』

「そっちは危ねえぞ!」

もう体の痛みなど気にしてられない。病院着を脱ぎ捨て、素早くS.M.Sスタイルに着替えると、唯一残ったブラストショットを持って駆け出そうとする。

「かーくん…」

「止まって、カズキ」

だが、出入り口に雪恵とセリーが立ち塞がった。

「…頼む、どいてくれ。お前らに、手荒な事はしたくない」

一樹の目は、決して引かないと告げていた。

「……なら、約束して」

「……何だ?」

雪恵は、小指を伸ばして一樹に言う。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()って」

ただそれだけ、一樹に言う雪恵。その顔は、今にも泣きそうだ。

「…ああ、()()だ」

雪恵の小指に、自身の傷だらけの小指を絡めて、約束する一樹。

「……ユキエは私が守るから、カズキは、()()を守って」

セリーの力強い言葉に、一樹は頷く。

「じゃあ、行って来る…」

「うん…」

雪恵とセリーが扉から退くと、一樹は走り出した。

 

 

「クソッ!背後に回れねえ!!」

火力的に合体せざるを得ないチェスターでは、タイラントの背後から攻撃出来ない。

『一夏!一旦分離して…』

「ダメだ!それじゃ攻撃を加える事は出来ても、倒す前にこっちが負ける!」

『しかし、このままでは…』

ラウラの言う通りだ。このままでは、どっちにしても負ける…

そんな時だった。

『昔、贅沢三昧の王妃様は言いました。【パンが無いなら、ケーキを食べれば良いじゃない】と。だから…』

『火力が足りないなら…』

『機体の数を増やせば良いんです』

新たな機体が2機、援護に来た。その機体は、ついさっき宇宙から届いたS.M.Sの翼…VF25シリーズ(トルネードパック装備)だった。

「宗介、和哉、智希!!?」

F型に乗る宗介、A型に乗る和哉と智希の名を叫ぶ一夏。

『S.M.Sの櫻井宗介に倉野和哉、長峰智希。内閣防衛府からの要請により、この戦闘に参加する』

代表して宗介が、IS学園に通信を入れた。

『サポート、感謝する!』

千冬の歓喜の声が、それぞれの機体に響いた。

『俺たちが気を引くから、そちらで奴の背後を攻撃してくれ』

「了解!!!!」

ハイパーストライクチェスターが上昇し、場所を譲る。

『んじゃ、行くぜ!』

『『おう!!!!』』

牽制のガトリングガンを撃つバルキリー2機。タイラントがバルキリーに向かって熱戦を撃とうとするが…

「そこだ!!!!」

ガラ空きのタイラントの背中を、ウルティメイトバニッシャーで攻撃する。

《ギャオォォォォ!!?》

「よっしゃあ!!」

漸く、タイラントに攻撃が当たった瞬間だった。

 

 

「急がなきゃ!」

「待ってよお兄ちゃん!」

誰か必ずいる筈…と人を探すサトルとミナ。その2人を、一樹が止める。

「君達!こっから先は危険だ!」

サトルとミナは、一樹の着てる上着を見て、目的の人物だと分かった。

「S.M.Sだよお兄ちゃん!」

「そうだなミナ!やっと見つけた!」

「見つけた…?」

訝しげに2人を見る一樹。サトルはそんな一樹に、ポケットから出したエボルトラスターを渡す。

「⁉︎」

「あの、これをウルトラマンに渡してくれませんか?きっと大切な物なんです」

サトルからエボルトラスターを受け取った一樹は、それを力強く握りしめる。

「…分かった。これは兄ちゃんが絶対ウルトラマンに渡す」

「本当にお願いしますよ、お兄さん」

確認するようにミナが言ってくるのを、一樹は笑顔で頷く。

「約束するよ。だから君達は早く安全な場所へ行くんだ」

「はい!行こうミナ」

「うん!」

その兄妹は、仲良く手を繋いで走っていった。

「ありがとな、確かに受け取ったよ」

そんな兄妹の背中に、ウルトラマン(一樹)は礼を言うのだった。

 

 

「放熱が追いつかねえ!簪頼む!」

『任せて…!』

γ機に乗る簪が、タイラントの背中を次々視線ロックオン、スパイダーミサイルでタイラントの背中を攻撃した。

《ギャオォォォォ!!?》

 

 

一樹は周りに人がいないのを確認すると、エボルトラスターを引き抜く。一旦胸元に引き寄せると、天空へと掲げた。

「はっ!」

エボルトラスターが眩い光が溢れ、一樹をウルトラマンへと変身させた。

 

 

「デェアァァァァッ!!!!」

《ギャオォォォォ!!?》

ウルトラマンの跳び蹴りに、タイラントは吹き飛ぶ。その隙にウルトラマンは着地し、力強く構える。

「シェアッ!!」

 

 

「あ!ウルトラマンだ!」

「やったねお兄ちゃん!」

サトルとミナ兄妹の目に、力強くウルトラマンが映った。

 

 

「来たか!一樹君!」

北斗もまた、ウルトラマンの登場を喜んだ。

 

 

「見つけられたのか、アレを!」

宗介が何気なく呟くと、智希から通信が入る。

『じゃあさっさと終わらせようぜ!アイツがまた寝込む前に!』

「ああ!そうだな!」

 

 

「フッ!」

《ギャオォォォォ!!》

ウルトラマンはタイラントに向かって駆け出す。タイラントは左手の鉄球で殴りかかるが、それはウルトラマンの右腕によって捌かれ、逆に胴に回し蹴りを喰らう。

「デェアッ!」

《ギャオッ!!?》

だが、タイラントも負けていない。右手の鎌で、ウルトラマンの腹部を殴りつける。

「グアッ!?」

思わず蹲るウルトラマンに向かって突進するタイラント。ウルトラマンはタイラントの背中を転がるようにしてそれを回避。振り向いたタイラントの頭を掴むとニーキックに2連発し、投げ飛ばした。

「シェアッ!!」

《ギャオォォォォ!!?》

以前より明らかに強くなってるウルトラマン。

タイラントはそんなウルトラマンに向けて熱戦を放つ。

「フッ!ハッ!」

それを華麗に舞うように避けるウルトラマン。

連続で放たれる熱戦を避けきると、飛び上がり、タイラントの背後に回る。

「シェアッ!」

素早くパーティクルフェザーを放つが、タイラントの腹部に吸収される。

 

 

『『『「隙ありゃァァ!!!!」』』』

戦闘機に乗る男子が、タイラントのガラ空きの背中にそれぞれの光線を撃つ。

 

 

《ギャオォォォォ!!?》

背中に強力な熱光線を受けたタイラントが、大きく仰け反る。

「フッ⁉︎シェアッ!!」

その隙を逃さず、クロスレイ・シュトロームを放つウルトラマン。

《ギャオォォォォ!!?》

見事にタイラントの腹部に直撃。もうタイラントは光線の吸収が出来ない。

《ギャオォォォォ!!!!》

タイラント怒りの熱戦。ウルトラマンはそれを気にせずに突っ込む。熱戦は、ウルトラマンが回避するのを前提としていたのか、中々当たらない。

《ギャオォォォォ!!!!》

業を煮やしたタイラントは、ウルトラマンへ直撃させるコースへ熱戦を吐いた。

「シュアッ!」

それを飛び込み前転で避けるウルトラマンだが、起き上がりに熱戦を喰らった。

「グアァァァァァァァ!!?」

後ろに吹き飛ばされるウルトラマン。

しかし、今度はバルキリー2機とハイパーストライクチェスターの攻撃がタイラントに命中した。

《ギャオォォォォ!!?》

タイラントは3機に向けて熱戦を吐く。

3機はそれを散開することで避けた。

「フッ!シェア!」

起き上がったウルトラマンは素早くジャンプ。かかと落としをタイラントの頭部に決めた。

《ギャオォォォォ!!?》

「フッ!?」

着地したウルトラマンを、タイラントの長い尾が捕らえた。

「グアァァァァァァァ!!?」

捕らえたウルトラマンに、鉄球で殴りかかるタイラント。かろうじてそれを避けるが、尾の鋭い先端がウルトラマンのエナジーコアに突き刺さり、エネルギーを吸い取ろうとしてくる。

「グアァァァァァァァ!!?」

ピコン、ピコン、ピコン

 

 

「離しやがれ!!!!」

一夏たちのハイパーストライクチェスター、宗介たちのバルキリーがそれぞれタイラントを攻撃しようとするが、タイラントは口から熱戦を吐き、それを許さない。

「くそッ!!!」

 

 

そんなウルトラマンと一夏たちのピンチを見た北斗は、ついに動くことにした。

「待ってろ…今行くぞ!!!!」

両腕を大きく回した後、胸の前で両中指の【ウルトラリング】を合わせた。

「フンッ!!!!」

ウルトラリングから光が溢れ、北斗を【ウルトラマンエース】へと変身させた。

 

 

「ハッ!」

着地したエースは、得意技の【ウルトラギロチン】で、ウルトラマンを捕らえるタイラントの尾を切断した。

「フンッ!!」

《ギャオォォォォ!!?》

尾から解放されたウルトラマンは、切断された尾でタイラントを思いっきり打ちのめした。

「デェアッ!!」

《ギャオッ!!?》

ドロップキックで距離を取ると、ジュネッスにチェンジする。

「フッ!シェア!!」

ウルトラマンがジュネッスにチェンジしている間に、エースがタイラントに肉薄。飛び込みチョップを放つ。

「ハァッ!」

《ギャオッ!!?》

流れるように放たれた後ろ回し蹴りに、タイラントは数歩下がる。そこに、ウルトラマンの跳び蹴りがタイラントの頭部に命中する。

「シェアッ!」

大きく仰け反るタイラントの腹部に、2人のウルトラマンの回し蹴りが放たれる。

「シェアッ!」

「ハァッ!」

《ギャオォォォォ!!?》

蹲るタイラントの頭部を掴み、投げ飛ばすエース。

「フンッ!」

《ギャオォォォォ!!?》

地面に転がるタイラントの腹部に、ウルトラマンの回転かかと落としが決まった。

「シェアッ!」

《ギャオッ…》

その一撃に、タイラントは気絶。ウルトラマンは気絶したタイラントを頭上に持ち上げると、右隣のエース、左のチェスターとバルキリーに頷く。

全員が頷き返すと、大空へと飛び立つ。

「シェアッ!」

「ダァッ!」

その後を追うチェスターとバルキリー2機。

タイラントの内に秘めるエネルギーが爆発した場合、周囲に尋常ではない被害が起こるのは間違いない。その上タイラントの外皮は恐ろしく強固だ。

そのため、ウルトラマンは周りのエース、チェスターとバルキリーに協力を仰いだのだ。

街から充分離れると、ウルトラマンはタイラントを天高く放り投げる。

タイラントが落ちてくるまでに、2人のウルトラマンはエネルギーは溜める。

「シュッ!ハアァァァァァァ…」

「フンッ!」

そして、落下してきたタイラントに、それぞれ攻撃する。

「デェアァァァァ!!!!」

「デュアァァァァ!!!!」

ウルトラマンのコアインパルス、エースのメタリウム光線、チェスターのウルティメイトバニッシャー、バルキリーの強力レーザーの集中攻撃に、タイラントは大爆発を起こした。

「フッ!」

「ダァッ!」

2人のウルトラマンはチェスターとバルキリーにサムズアップ。それぞれに搭乗する人物も、満面の笑み(ヒーロー好きの簪は特に)でサムズアップを返す。

「シェアッ!」

「デュアッ!」

2人のウルトラマンはそれを見ると、大空へと飛び立っていった。

 

 

「北斗さん!」

地球を去ろうとする北斗に、一樹は声をかけた。

「ん?なんだい?」

父親が息子に向けるような笑みを見せる北斗に、一樹も笑顔で駆け寄る。

「2度も俺を助けてくれて、ありがとうございます!」

「いや、気にしないでくれ。僕はそういうのが好きだからね。ただ…」

北斗は真剣な顔になり、一樹に()()()()を送る。

「君の、その優しさを忘れないでくれ。1度仲違いになった人とでも、友達でいようとする気持ちを忘れないでくれ。それが、私が君に望む唯一の事だ」

「…はい!北斗さん!」

「頑張ってくれよ、一樹君」

そう言うと、北斗は大きく手を振りながら、光となって大空へと消えていった。

 

 

タイラントを倒してから数日後、ようやく回復した箒、セシリアが教室に戻ってきた。鈴も勿論、2組の教室に戻っている。

「箒ちゃん、セシリアちゃん、体は大丈夫?」

「ああ、大分楽になったよ。少しばかり、体が軽くなった気がする」

「シャドウの粒子が、完全に体から抜けたからでしょうね」

雪恵の問いに、笑顔で答える2人。そんなところに、千冬が入ってきた。

「おい、早く座れ。今日重大な連絡事項があるんだ」

千冬の指示に、1組の生徒達は流れるように自分の席に着く。素晴らしい統率力だ。

「さて、皆元気そうで何よりだ。突然だが、このクラスに()()が出来た。皆、仲良くしろよ。では、入ってくれ」

千冬の指示に、その人物達が入ってくる。その人物達に、クラスが一瞬で引き込まれる。何故なら…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「櫻井一樹です。一応また【護衛役】って名目で来ました。()()()してくださいね」

「田中セリー、またよろしく」

このクラスのヒーローの1人、櫻井一樹と皆のマスコットキャラ、田中セリーが入って来たのだから。

「さて、かたっ苦しい挨拶はこれくらいで…な、セリー」

「うん、言おうね」

2人は大きく息を吸い、呆然としてる1組のみんなに向かって叫ぶ。

「「ただいま!!!!!!!!」」

その言葉に、ハッとした1組にいる一樹とセリー以外の()()が叫び返す。

「「「「おかえりなさい!!!!!!!!」」」」

 




一樹、セリー、おかえりなさい!!!!!!!!

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