切り時が分からなかったんです!
今回は色々な要素をぶっ込みました!
だから長い!一万文字以上あるよ!
お楽しみ下さい!
あれ…俺、どうしたんだっけ…?
ああそうだ。タイラントに負けたんだ…
それで川に倒れて…ん?おかしいぞ。
俺は確かに川で倒れたんだ。
なのに…なんでこんな温かいんだ?
「かーくん…」
雪恵は、病院のベッドで眠る一樹の手を握っていた。
「また…無茶してたんだね…」
セリーから聞かされた、一樹の過酷な特訓。実際、智希と和哉の手で病院着に着替えさせられてる一樹の体は、真新しい火傷があった…
「……バカ」
小川をどんどん流れていくエボルトラスター。
それは、魚を取ろうと網を張っていた少年に拾われる。
「…?何だこれ?」
「サトル兄ちゃん、どうしたの?」
「あ、ミナ…なんか、川をこれが流れてきたんだ」
エボルトラスターを不思議そうに眺めるサトル。
「ねえねえサトル兄ちゃん!この部分とかウルトラマンのに似てない?」
エボルトラスターの中心部の宝石を指すミナ。
「あ、本当だ…じゃあ、これはウルトラマンの大切な物なのかな…?」
「…ウッ…グッ…」
「かーくん…」
魘されている一樹の顔は、汗だらけだ。
雪恵は、ただ側でその汗を拭うことしか出来ない。
「……ゆ……き……」
「?」
「そっちは……危ない、ぞ……」
「……」
一樹が見てるのは、あの時の悪夢…
「大丈夫…私は、ここにいるから」
『ふむ…苦し紛れに放った技が、まさか腹部を使えなくしていたとはな。相変わらず楽しませてくれる』
シャドウは、タイラントが受けた傷を調べていた。
『まあ良い。これくらいなら、簡単に直せる。タイラントはまだまだ体力がある事だしな』
「……ん?ここ、は……」
一樹が目を覚ますと、そこは病院だった。
「…誰かが、見つけてくれたのかな?」
ゆっくり起き上がろうとすると、左手を握られてることに気づく。
「…ん?」
ふと横を見ると、雪恵が寝ていた。その顔に、涙の跡が…
「…また、泣かせちゃったか…」
空いていた右手で、ゆっくりと雪恵の頭を撫でる一樹。
「う、ううん…」
パチッ、と擬音が付くのではないかと思う程、勢いよく雪恵の目が開いた。
「…かーくん?」
「おはよう、雪」
「かーくん!」
凄い勢いで抱きついてくる雪恵。
ズキッ…
「(ッ…今回は、随分派手にやられたみたいだな…)」
雪恵に抱きつかれ、全身の傷が痛む。
だが、そんなことはおくびにも出さず、雪恵の頭を撫で続ける一樹。
「なあ、雪。お前が俺をここまで運んでくれたのか?」
気になっていたことを聞く一樹。
雪恵はその問いに首を振った。
「ううん、私じゃないよ」
「じゃあ誰が…」
「看護師さんの話だと、
「…あー、とりあえず誰かは分かった」
一樹の知り合いに、その特徴が当てはまるのは1人しかいない。
「…という訳で、一樹君を病院に連れて行きました」
「そうか。やはり彼の体はボロボロだったか…」
ダンの店に、一樹を病院まで運んだ男がいた。その男の名は、【北斗星司】
ダンや光太郎と同じ、『マント持ち』だ。
「タイラントは、僕達が戦った時よりも、強力でした」
「アレは恐らく、
「というと…?」
「以前我々が戦ったタイラントは、『ウルトラ戦士達に対する怪獣達の怨念』が集まって生まれた…これは分かるな」
「え、ええ…」
ダンの説明に、戸惑いながらも耳を傾ける北斗。
「対して今回のタイラントは、『一樹君に対する怨念』が集まって生まれたのだろう…」
「なっ!!?一樹君が誰かの怨念を受ける筈が…」
「私だってそう思いたい!だが…彼には怨念を受けるような事があったという事だ」
「ま、まさか…」
「そうだ。彼にとって最も大切な人…田中雪恵の脳死事件だ」
「……ッ⁉︎」
何気なく自分の荷物入れを見た一樹は、体に走る痛みを無視して棚を漁る。
「…かーくん?」
背中に雪恵の声が聞こえるが、一樹はそれどころではない。
「無い…無い…どこにも無い!」
「か、かーくん?ミオちゃんならここに」
ミオの待機形態である首飾りを見せる雪恵。
「あ、ありがとう…って違う!確かにそれが無くなっても困るけど違う!」
『ちょっとマスター⁉︎違うってどういう事⁉︎』
「アレが無えんだ…エボルトラスターが無えんだよ!!!!」
『「!!?」』
それがどれだけ大事なものか、理解してる2人は事の重大さに気づく。
「雪にミオ!悪いけど一緒に探してくれ!!!!」
「う、うん!」
『分かったよマスター!』
雪恵と実体化したミオも、一緒に探すが、病室のどこにもエボルトラスターは見つからなかった。
「…ミオ、一旦戻れ」
『うん…』
ミオが首飾りの中に戻ると、一樹は病院着から私服に着替え始める。
「ちょ、かーくんダメだよ行っちゃ!」
「何としてもアレは見つけなきゃなんねえ…まずはダンさんの店に行かなきゃ」
扉を開ける一樹。
「駄目だよ一樹君、まだ寝てなきゃ」
一樹が抜け出すことを予想していた遥香に立ち塞がれた。その近くには宗介に智希までいる。
「そうだそうだ、寝てろ寝てろ」
「心配しなくたって、仕事は終わらせてやるからさ」
「今はそんな呑気なこと言ってらんねえんだ!どいてくれ!」
「「やなこった」」
一樹は内心舌打ちする。これが一夏や弾だったら、今の体でも気絶させるくらいは出来た。だが、目の前にいるのはS.M.Sでもトップクラスの宗介に智希なのだ。この体では、押し通る事は出来ない…
「かーくん、戻って…?」
「……なら、宗介に智希。ひとつ頼みがある」
後ろから聞こえる雪恵の声に、一樹は折れた。ただ、物が物なだけに宗介たちに探してもらうことにした。
「ここを通せ、とかじゃなければ聞いてやるぜ?」
「右に同じく」
「分かってるよ…頼みってのは、この写真のやつを探してくれ」
「「ん?」」
一樹がスマホで、エボルトラスターの写真を見せる。
「「!!?」」
「分かってくれたか?」
「分かった!すぐに探し始める!」
「お前はそこで寝てろ!」
宗介と智希が走り出す。
「ちょ、2人とも!病院は走らない!」
遥香のツッコミをスルーして、2人は病院を飛び出していった。
「…さて、一樹君?」
「わあってるよ。ここで大人しくしてればいいんだろ」
「よろしい。監視役は雪恵ちゃんにセリーちゃんだからね。気絶させようとも思わないでしょ?」
「…お前、いつの間にそんな黒くなったんだ?」
「知恵がついたって言って欲しいな…ま、動かなければ特に制限は無いから。ごゆっくり」
「ねえ、仮にも医者が『ごゆっくり』なんて言っちゃダメだと思うんだ」
一樹のツッコミをスルーして、遥香は病室を出て行った。
「シャドウに、お前らの中の悪感情エネルギーを利用された、か…」
「信じてくれるの?」
学園の医務室で、俺は比較的軽症なシャルとラウラから話を聞いていた。
「…ああいった奴に常識は通用しないのは、身をもって知ってるからな」
「…そうだな」
自嘲気味に笑う俺に、ラウラも笑ってくれた。
「とにかく、そんな訳だから私たちはしばらく動けない…櫻井が助けてくれなかったら、死んでたくらいには」
「……」
「あの時、縄は切れてた。けど、僕たちは腰が抜けて動けなかったんだ」
「…それを、一樹が助けてくれたのか?」
「ああ」
「恐らく、今の一樹君はまともに動けない。いざという時のために、待機しててくれ」
「はい、分かってます」
北斗が店を出ようと席を立った時、店の扉が開いた。
カランカラン
「いらっしゃい…ん?君達か」
ダンが接客しようと出入り口に向かうが、そこにいたのは、一馬と和哉だった。
「ハア、ハア、ハア!すみません、北斗さんはいますか⁉︎」
先に息を整えた和哉が聞く。ダンは頷くと、北斗のところへと案内する。
「お、星野一馬君に倉野和哉君だったかな?僕に何の用だい?」
「実は…」
かくかくしかじか
「何!!?一樹君のアレが無くなっただと!!?」
「そうなんです。流石にあの体で動かす訳にもいかないんで、俺たちが探してるんですけど…北斗さん、何か知りません?」
説明したあと、和哉が北斗に聞いてみるが、北斗は首を横に振った。
「…すまない。僕は見ていないんだ…」
「ああいえ、気にしないで下さい。一樹を助けてくれたのが北斗さんなので、1番に話を聞きに来ただけなので」
頭を下げる北斗に、慌てて一馬が言う。
「となれば…北斗さん、一樹を見つけた川を教えてくれませんか?」
「あそこは…町外れの小川だ」
「それだけでも充分な収穫です!ありがとうございます!」
再び店を飛び出そうとする2人を、ダンが止めた。
「君達、これを持って行きなさい」
ダンが渡したのは、クラブサンドだった。
「その調子だとまともに昼も食べてないのだろう?他の人の分もあるから、持って行きなさい」
「ありがとうございますダンさん!お会計は…」
財布を取り出す一馬を、北斗が制する。
「ここは僕が払うよ。だから君達は行くんだ」
「「すみません!」」
2人に礼を言うと、一馬に和哉は店を飛び出した。
「…なあ雪」
病室では、一樹がベッドに寝そべった状態で、林檎の皮を剥く雪恵に話しかけた。
「何かな?」
「お前…怒ってるのか?」
雪恵の手が止まる。そして、一樹の方を向く。
「…怒ってて欲しいの?」
逆に問い返すと、一樹は肩をすくめる。
「分かんない、ってのが本音だ」
「そう…怒ってるよ、勿論」
「……」
声音はいつも通りに、雪恵は告げた。
「私に黙ってあんな修行をしてたことも、入院してなきゃいけないのに無茶したことも」
だけど、と雪恵は一旦言葉を止めた。
「…?」
「1番怒ってるのは、そんなかーくんを止められなかった自分自身にかな」
「……」
「それは多分、セリーちゃんにミオちゃんもそうなんじゃないかな?だって…あの子たちにとって、かーくんは唯一のお兄ちゃんだもん」
『聞き捨てなりません雪恵さん、私はマスターならいつだって「ミオちゃん?」イエイエナンデモアリマセンシツレイシマス』
一瞬、わざわざ首飾りから声を発したミオだったが、雪恵からの圧に負けた。それで良いのか最強のコアよ。
「……」
「はあ…かーくんがウルトラマンとして頑張ってるのは分かってるよ?けどさ…全部自分だけで背負ってるのは、やっぱり嫌だな」
「……」
一樹は答えない。雪恵も気持ちも分かるが、こればっかりは譲れない。たとえ…雪恵が自分から離れることになっても。
「ねえかーくん。私たちって…そんなに頼りない?」
「お兄ちゃん、それどうする?」
エボルトラスターを家に持ち帰っていたサトルとミナ兄妹。
エボルトラスターを今後どうするか兄妹会議中だ。
「ううん…1番はウルトラマンに届けることなんだけど」
「どうやって?」
「それなんだよな…」
怪獣が現れたらいつの間にか現れ、怪獣を倒した途端に消えるのだ。
どこにいるのか、検討もつかない。
「普通に考えたら、警察だけど…」
「警察がウルトラマンに届けられると思うの?」
「んにゃ全く」
警察は対人間の組織だ。対人外のウルトラマンが、警察の誰かと知り合いとは思えない。
「じゃあ…IS学園かS.M.S!」
「そのどっちかだよね…」
サトル少年とミナは頭を悩ませていた…
「カズキ、これ」
「…んぅ」
熱っぽくなった一樹は、大人しく寝ていた。時折、セリーがスポーツドリンクを飲ませてくれるのがありがたい。
雪恵も水で濡らしたタオルを頭の上に置いてくれる。
そんな時だった。
一樹に、タイラントが暴れるのが『視えた』のは。
「ッ!!?」
「…かーくん?」
「カズキ?」
『マスター?』
ガバッと起き上がった一樹を訝しげに見る雪恵たち。
「来る…奴が、また!!」
『もう傷も塞がった頃だろう…行け、タイラント!!』
ブラックエボルトラスターを振るい、タイラントを呼び出すシャドウ。
《ギャオォォォォ!!!!》
「来たか!」
IS学園でも、タイラントの出現を察知した。
「タイラントは正面から攻撃してもダメだ。背後に回り、確実に仕留めるぞ!」
「「「「了解!!」」」」
回復した一夏、シャルロット、ラウラに簪がそれぞれ機体に乗り込み、出撃した。
タイラントが暴れているのを、遠くで北斗は見ていた。
「まだだ…まだ僕が出るわけにはいかない…!」
自分はあくまで最後の切り札。この世界を守るのは、あくまでこの世界の人物であるべきなのだ。今の北斗に出来るのは、住民の避難を誘導するぐらいだった…
「お兄ちゃん!早く逃げなきゃ!!」
「分かってる!」
サトルとミナは避難しようと走っていた。だが、サトルはいきなり立ち止まる。
「…お兄ちゃん?」
「ミナ、お前は先に逃げるんだ」
「え⁉︎お兄ちゃんは!!?」
「今、あそこに行けばIS学園かS.M.Sの人がいる筈だ!その人に、これを渡せば…!」
「でも危ないよ!一緒に逃げよう!」
ミナがサトルの手を引こうとするが、サトルはそれを振り払った。
「行け!ミナ!!」
「お兄ちゃぁぁぁぁぁぁん!!!!」
慌ててサトルの後を追うミナ。
一樹は、サトルとミナがタイラントに向かって走るのを『視た』
「そっちは危ねえぞ!」
もう体の痛みなど気にしてられない。病院着を脱ぎ捨て、素早くS.M.Sスタイルに着替えると、唯一残ったブラストショットを持って駆け出そうとする。
「かーくん…」
「止まって、カズキ」
だが、出入り口に雪恵とセリーが立ち塞がった。
「…頼む、どいてくれ。お前らに、手荒な事はしたくない」
一樹の目は、決して引かないと告げていた。
「……なら、約束して」
「……何だ?」
雪恵は、小指を伸ばして一樹に言う。
「
ただそれだけ、一樹に言う雪恵。その顔は、今にも泣きそうだ。
「…ああ、
雪恵の小指に、自身の傷だらけの小指を絡めて、約束する一樹。
「……ユキエは私が守るから、カズキは、
セリーの力強い言葉に、一樹は頷く。
「じゃあ、行って来る…」
「うん…」
雪恵とセリーが扉から退くと、一樹は走り出した。
「クソッ!背後に回れねえ!!」
火力的に合体せざるを得ないチェスターでは、タイラントの背後から攻撃出来ない。
『一夏!一旦分離して…』
「ダメだ!それじゃ攻撃を加える事は出来ても、倒す前にこっちが負ける!」
『しかし、このままでは…』
ラウラの言う通りだ。このままでは、どっちにしても負ける…
そんな時だった。
『昔、贅沢三昧の王妃様は言いました。【パンが無いなら、ケーキを食べれば良いじゃない】と。だから…』
『火力が足りないなら…』
『機体の数を増やせば良いんです』
新たな機体が2機、援護に来た。その機体は、ついさっき宇宙から届いたS.M.Sの翼…VF25シリーズ(トルネードパック装備)だった。
「宗介、和哉、智希!!?」
F型に乗る宗介、A型に乗る和哉と智希の名を叫ぶ一夏。
『S.M.Sの櫻井宗介に倉野和哉、長峰智希。内閣防衛府からの要請により、この戦闘に参加する』
代表して宗介が、IS学園に通信を入れた。
『サポート、感謝する!』
千冬の歓喜の声が、それぞれの機体に響いた。
『俺たちが気を引くから、そちらで奴の背後を攻撃してくれ』
「了解!!!!」
ハイパーストライクチェスターが上昇し、場所を譲る。
『んじゃ、行くぜ!』
『『おう!!!!』』
牽制のガトリングガンを撃つバルキリー2機。タイラントがバルキリーに向かって熱戦を撃とうとするが…
「そこだ!!!!」
ガラ空きのタイラントの背中を、ウルティメイトバニッシャーで攻撃する。
《ギャオォォォォ!!?》
「よっしゃあ!!」
漸く、タイラントに攻撃が当たった瞬間だった。
「急がなきゃ!」
「待ってよお兄ちゃん!」
誰か必ずいる筈…と人を探すサトルとミナ。その2人を、一樹が止める。
「君達!こっから先は危険だ!」
サトルとミナは、一樹の着てる上着を見て、目的の人物だと分かった。
「S.M.Sだよお兄ちゃん!」
「そうだなミナ!やっと見つけた!」
「見つけた…?」
訝しげに2人を見る一樹。サトルはそんな一樹に、ポケットから出したエボルトラスターを渡す。
「⁉︎」
「あの、これをウルトラマンに渡してくれませんか?きっと大切な物なんです」
サトルからエボルトラスターを受け取った一樹は、それを力強く握りしめる。
「…分かった。これは兄ちゃんが絶対ウルトラマンに渡す」
「本当にお願いしますよ、お兄さん」
確認するようにミナが言ってくるのを、一樹は笑顔で頷く。
「約束するよ。だから君達は早く安全な場所へ行くんだ」
「はい!行こうミナ」
「うん!」
その兄妹は、仲良く手を繋いで走っていった。
「ありがとな、確かに受け取ったよ」
そんな兄妹の背中に、
「放熱が追いつかねえ!簪頼む!」
『任せて…!』
γ機に乗る簪が、タイラントの背中を次々視線ロックオン、スパイダーミサイルでタイラントの背中を攻撃した。
《ギャオォォォォ!!?》
一樹は周りに人がいないのを確認すると、エボルトラスターを引き抜く。一旦胸元に引き寄せると、天空へと掲げた。
「はっ!」
エボルトラスターが眩い光が溢れ、一樹をウルトラマンへと変身させた。
「デェアァァァァッ!!!!」
《ギャオォォォォ!!?》
ウルトラマンの跳び蹴りに、タイラントは吹き飛ぶ。その隙にウルトラマンは着地し、力強く構える。
「シェアッ!!」
「あ!ウルトラマンだ!」
「やったねお兄ちゃん!」
サトルとミナ兄妹の目に、力強くウルトラマンが映った。
「来たか!一樹君!」
北斗もまた、ウルトラマンの登場を喜んだ。
「見つけられたのか、アレを!」
宗介が何気なく呟くと、智希から通信が入る。
『じゃあさっさと終わらせようぜ!アイツがまた寝込む前に!』
「ああ!そうだな!」
「フッ!」
《ギャオォォォォ!!》
ウルトラマンはタイラントに向かって駆け出す。タイラントは左手の鉄球で殴りかかるが、それはウルトラマンの右腕によって捌かれ、逆に胴に回し蹴りを喰らう。
「デェアッ!」
《ギャオッ!!?》
だが、タイラントも負けていない。右手の鎌で、ウルトラマンの腹部を殴りつける。
「グアッ!?」
思わず蹲るウルトラマンに向かって突進するタイラント。ウルトラマンはタイラントの背中を転がるようにしてそれを回避。振り向いたタイラントの頭を掴むとニーキックに2連発し、投げ飛ばした。
「シェアッ!!」
《ギャオォォォォ!!?》
以前より明らかに強くなってるウルトラマン。
タイラントはそんなウルトラマンに向けて熱戦を放つ。
「フッ!ハッ!」
それを華麗に舞うように避けるウルトラマン。
連続で放たれる熱戦を避けきると、飛び上がり、タイラントの背後に回る。
「シェアッ!」
素早くパーティクルフェザーを放つが、タイラントの腹部に吸収される。
『『『「隙ありゃァァ!!!!」』』』
戦闘機に乗る男子が、タイラントのガラ空きの背中にそれぞれの光線を撃つ。
《ギャオォォォォ!!?》
背中に強力な熱光線を受けたタイラントが、大きく仰け反る。
「フッ⁉︎シェアッ!!」
その隙を逃さず、クロスレイ・シュトロームを放つウルトラマン。
《ギャオォォォォ!!?》
見事にタイラントの腹部に直撃。もうタイラントは光線の吸収が出来ない。
《ギャオォォォォ!!!!》
タイラント怒りの熱戦。ウルトラマンはそれを気にせずに突っ込む。熱戦は、ウルトラマンが回避するのを前提としていたのか、中々当たらない。
《ギャオォォォォ!!!!》
業を煮やしたタイラントは、ウルトラマンへ直撃させるコースへ熱戦を吐いた。
「シュアッ!」
それを飛び込み前転で避けるウルトラマンだが、起き上がりに熱戦を喰らった。
「グアァァァァァァァ!!?」
後ろに吹き飛ばされるウルトラマン。
しかし、今度はバルキリー2機とハイパーストライクチェスターの攻撃がタイラントに命中した。
《ギャオォォォォ!!?》
タイラントは3機に向けて熱戦を吐く。
3機はそれを散開することで避けた。
「フッ!シェア!」
起き上がったウルトラマンは素早くジャンプ。かかと落としをタイラントの頭部に決めた。
《ギャオォォォォ!!?》
「フッ!?」
着地したウルトラマンを、タイラントの長い尾が捕らえた。
「グアァァァァァァァ!!?」
捕らえたウルトラマンに、鉄球で殴りかかるタイラント。かろうじてそれを避けるが、尾の鋭い先端がウルトラマンのエナジーコアに突き刺さり、エネルギーを吸い取ろうとしてくる。
「グアァァァァァァァ!!?」
ピコン、ピコン、ピコン
「離しやがれ!!!!」
一夏たちのハイパーストライクチェスター、宗介たちのバルキリーがそれぞれタイラントを攻撃しようとするが、タイラントは口から熱戦を吐き、それを許さない。
「くそッ!!!」
そんなウルトラマンと一夏たちのピンチを見た北斗は、ついに動くことにした。
「待ってろ…今行くぞ!!!!」
両腕を大きく回した後、胸の前で両中指の【ウルトラリング】を合わせた。
「フンッ!!!!」
ウルトラリングから光が溢れ、北斗を【ウルトラマンエース】へと変身させた。
「ハッ!」
着地したエースは、得意技の【ウルトラギロチン】で、ウルトラマンを捕らえるタイラントの尾を切断した。
「フンッ!!」
《ギャオォォォォ!!?》
尾から解放されたウルトラマンは、切断された尾でタイラントを思いっきり打ちのめした。
「デェアッ!!」
《ギャオッ!!?》
ドロップキックで距離を取ると、ジュネッスにチェンジする。
「フッ!シェア!!」
ウルトラマンがジュネッスにチェンジしている間に、エースがタイラントに肉薄。飛び込みチョップを放つ。
「ハァッ!」
《ギャオッ!!?》
流れるように放たれた後ろ回し蹴りに、タイラントは数歩下がる。そこに、ウルトラマンの跳び蹴りがタイラントの頭部に命中する。
「シェアッ!」
大きく仰け反るタイラントの腹部に、2人のウルトラマンの回し蹴りが放たれる。
「シェアッ!」
「ハァッ!」
《ギャオォォォォ!!?》
蹲るタイラントの頭部を掴み、投げ飛ばすエース。
「フンッ!」
《ギャオォォォォ!!?》
地面に転がるタイラントの腹部に、ウルトラマンの回転かかと落としが決まった。
「シェアッ!」
《ギャオッ…》
その一撃に、タイラントは気絶。ウルトラマンは気絶したタイラントを頭上に持ち上げると、右隣のエース、左のチェスターとバルキリーに頷く。
全員が頷き返すと、大空へと飛び立つ。
「シェアッ!」
「ダァッ!」
その後を追うチェスターとバルキリー2機。
タイラントの内に秘めるエネルギーが爆発した場合、周囲に尋常ではない被害が起こるのは間違いない。その上タイラントの外皮は恐ろしく強固だ。
そのため、ウルトラマンは周りのエース、チェスターとバルキリーに協力を仰いだのだ。
街から充分離れると、ウルトラマンはタイラントを天高く放り投げる。
タイラントが落ちてくるまでに、2人のウルトラマンはエネルギーは溜める。
「シュッ!ハアァァァァァァ…」
「フンッ!」
そして、落下してきたタイラントに、それぞれ攻撃する。
「デェアァァァァ!!!!」
「デュアァァァァ!!!!」
ウルトラマンのコアインパルス、エースのメタリウム光線、チェスターのウルティメイトバニッシャー、バルキリーの強力レーザーの集中攻撃に、タイラントは大爆発を起こした。
「フッ!」
「ダァッ!」
2人のウルトラマンはチェスターとバルキリーにサムズアップ。それぞれに搭乗する人物も、満面の笑み(ヒーロー好きの簪は特に)でサムズアップを返す。
「シェアッ!」
「デュアッ!」
2人のウルトラマンはそれを見ると、大空へと飛び立っていった。
「北斗さん!」
地球を去ろうとする北斗に、一樹は声をかけた。
「ん?なんだい?」
父親が息子に向けるような笑みを見せる北斗に、一樹も笑顔で駆け寄る。
「2度も俺を助けてくれて、ありがとうございます!」
「いや、気にしないでくれ。僕はそういうのが好きだからね。ただ…」
北斗は真剣な顔になり、一樹に
「君の、その優しさを忘れないでくれ。1度仲違いになった人とでも、友達でいようとする気持ちを忘れないでくれ。それが、私が君に望む唯一の事だ」
「…はい!北斗さん!」
「頑張ってくれよ、一樹君」
そう言うと、北斗は大きく手を振りながら、光となって大空へと消えていった。
タイラントを倒してから数日後、ようやく回復した箒、セシリアが教室に戻ってきた。鈴も勿論、2組の教室に戻っている。
「箒ちゃん、セシリアちゃん、体は大丈夫?」
「ああ、大分楽になったよ。少しばかり、体が軽くなった気がする」
「シャドウの粒子が、完全に体から抜けたからでしょうね」
雪恵の問いに、笑顔で答える2人。そんなところに、千冬が入ってきた。
「おい、早く座れ。今日重大な連絡事項があるんだ」
千冬の指示に、1組の生徒達は流れるように自分の席に着く。素晴らしい統率力だ。
「さて、皆元気そうで何よりだ。突然だが、このクラスに
千冬の指示に、その人物達が入ってくる。その人物達に、クラスが一瞬で引き込まれる。何故なら…
「櫻井一樹です。一応また【護衛役】って名目で来ました。
「田中セリー、またよろしく」
このクラスのヒーローの1人、櫻井一樹と皆のマスコットキャラ、田中セリーが入って来たのだから。
「さて、かたっ苦しい挨拶はこれくらいで…な、セリー」
「うん、言おうね」
2人は大きく息を吸い、呆然としてる1組のみんなに向かって叫ぶ。
「「ただいま!!!!!!!!」」
その言葉に、ハッとした1組にいる一樹とセリー以外の
「「「「おかえりなさい!!!!!!!!」」」」
一樹、セリー、おかえりなさい!!!!!!!!