つまり、あまり進んでないという事ですはい。
すみません…
楯無さんからの依頼を受ける事にした俺は、昼休みに4組に行くことにした。
「さて、行きますか」
「一夏、一緒に食堂行こう?」
いつもの優しい笑顔で話しかけてくれたシャルには申し訳ない。俺は手を合わせて謝る。
「悪いシャル。今日はちょっと用事があるんだ」
「そ、そう?じゃあどうしようかな…」
「でゅっちー、私たちと行こうよ〜。ゆっきーも一緒だよ〜」
シャルを誘ったのは意外や意外、のほほんさんたちのグループだった。
相変わらず、長すぎる袖をだらりとたらしたまま、その腕をぶんぶんと振っている。あ、雪恵が袖を避けた。やっぱり危ないよな…
「でゅ、でゅっちー?」
「本音ちゃん流のあだ名らしいよ…」
雪恵が苦笑いしてる。一樹がいなくなってから、あまり雪恵がちゃんと笑ってるのを見てない気がする。
まあ、仕方ないか…
「行こうよー。えへへ〜」
無茶苦茶遅い動きで、のほほんさんはシャルの腕に腕を回す。
それを避けないのに、シャルはやっぱり良いやつなんだと思う。この間の雪恵の問いに答えられなかったのは、きっと戸惑ってたからだ。そうに違いない、そうであってくれ…やばい、だんだん自信なくなってきた。
「と、そろそろ行かないと昼休みなくなるな」
楯無さんからの情報だと、妹の簪さんは教室でパン食らしい。なので、俺も今日はパン食だ。
「(早く行かないと、他の専用機持ちと組むことになっちゃうからな…)」
俺が教室を出ると…
「待ってたわよ一夏!」
鈴に会ってしまった。ちくしょお…ついてないぜ…
「アンタ、あたしと組みなさい」
「悪いな鈴。先約があるんだ」
「は?先約?まさか雪恵⁉︎やめときなさいアンタ!櫻井に消されるわよ‼︎」
お前は俺と一樹をどう思ってるんだ…
まあ、同じ部屋だし、頼みやすいのは確かだな。結構俺たち、男の考え分かってくれるし。
「いや、雪恵じゃない」
「じゃあ…シャルロットじゃないでしょうね!!?」
…は?何故シャルが出て来るんだ?
「くぅ〜。前も組んだからって程度で先越されてたまるもんですか…」
「ん?なんだって?」
「な、なんでもない!で、先約って誰よ?代わってもらうから、言いなさい」
うわぁ…相変わらず無茶苦茶な理論だな…こういう時は…
「す」
「す?」
「すまん!」
三十六計、逃げるにしかず。
「あ、待ちなさいよ!」
鈴も代表候補生として鍛えてるんだろうけど、こちとらジープから全力で逃げさせられた事もあるんだ。そう簡単に捕まってたまるか。
捕まったら重しを付けて俺と模擬戦だ。
今なんか師匠の恐ろしい声が聞こえた気がする!絶対に逃げ切らなければ死ぬ!死んでしまう‼︎
「待なさーい!」
「断固断る!」
わざと遠回りをして鈴を振り切ると、
目的の4組にたどり着いた。
「あ、1組の織斑君だ!」
「な、何ですと⁉︎」
「生きてて良かった!」
「あ、あの!4組に何かご用でしょうか⁉︎」
熱烈歓迎されてしまった。何故…?
「あの、更識さんいる?」
「え?更識さんって…」
「
4組の子達が気まずそうに、クラスの窓側の1番後ろの席に彼女はいた。
「……」
カタカタ、と購買で買ったであろうパンを端に置いて、ひたすらキーボードを叩いていた。
「その、久しぶり?更識さん」
「…前にも言った。私には、あなたを殴る権利がある。けど、疲れるからやらないって」
ウグッ、それを言われると弱い…思わず白式はS.M.Sが開発したんだと言いかけたが、今更言ったところで彼女の専用機が完成するわけではないんだよな…
「…で、要件は?」
「えーっと、今度の専用機持ちタッグマッチに一緒に出てくれないかと…」
「イヤ」
うわ、即答だ。
「…お姉ちゃんに何言われたか知らないけど、私には関わらないで。手伝ってくれる人もいる…」
あれ?既にバレてる?
「えと、俺もこう見えて整備には強いんだ。協力するぜ?」
「櫻井君にほとんどやってもらってたのに…?」
ググッ⁉︎よく見てらっしゃる…
「あ、あれはOSだから…それ以外なら」
「私は、櫻井君になら協力してもらってた。けど、何故か彼はいなくなった。理由は知ってる?」
「い、いや…」
教頭が追い出したって事は知ってるけど、そういう事じゃないんだよな…
「…とにかく、あなたとは組まない。それに、あなたは組む相手に困ってない」
…まあ、普段の俺たち見てたらそうだよな。
「実はみんな…」
決まってて、と言おうとしたところに…
「見つけたわよ一夏!」
ゲェッ!関羽⁉︎
…な訳無いか、鈴でした。
「アンタ、4組で何してんのよ!来るなら2組に来なさいよね!」
「イデデデ⁉︎耳を引っ張るな!更識さん、またね!」
更識さんは無反応で、ひたすらキーボードを叩いていた。グスン。
その頃、一樹は光太郎から教わったコツをミオにまとめてもらっていた。
『えーっと、考え方としては、体全体にバリアを張って、そこから発火するんだって』
ありがたいことに、空中投影ディスプレイに表示して説明してくれている。すごく分かりやすい。
『マスターも、変身時は光線を撃ったりするけど、その熱は感じたりしないでしょ?』
「ああ。多分無意識のうちに、薄っすらとバリアを張ってるのかもな」
すると、首飾りが光って、白衣に黒縁メガネ装備のミオが実体化した。
『えへへ、この格好どう?』
「さて、修行に戻るか」
『ねえマスター、照れなくても良いじゃん♪感想言ってみ?』
「…はあ」
呆れのため息をつき、一樹はミオを見る。ミオはお披露目とばかりに、白衣の裾を持ってクルクル回っている。更にはメガネの縁を持って流し目までしてきた。
『マスター、今ならマスター限定の撮影会もアリだよー♪どうする?どうするどうする?』
「6歳児が背伸びするな」
『バッサリ切った⁉︎男の子はこういう格好が好きだってネットに書いてあったのに⁉︎』
「うーん…似合ってるとは思うんだけど、子供が背伸びしてる様にしか思えない」
『前半だけ言えば良いのに!何で余計な捕捉説明いれちゃうの⁉︎』
今日も一樹に弄られるミオ(セリーはこれを絶好調と呼ぶ)である。
『わ、私は雪恵さんが出来ない格好もマスターのためならやるよ!ほら、リクエストプリーズ!』
「…お前は俺をどう思ってるんだ?」
話の趣旨がズレてきてることに、一樹は頭を抱える…
「ハクイニアッテルヨ、ダカラハナシヲモドソウネ」
滅茶苦茶棒読みで褒めてみると…
『えへへ〜マスターに褒められた〜』
両頬に手を当ててイヤンイヤンしている相棒の姿が…
「(ミオとのコンビを考え直した方が良いかと考える今日この頃)」
『さーて!マスターに褒められたところで、このミオ、張り切っちゃいますよー!』
「モウソレデイイカラ、ハヤクワザノカンセイヲシヨウナ」
『助けてくれ〜雪…』
「かーくんどうしたの⁉︎」
夜の恒例、一樹と雪恵の電話。急に雪恵に助けを求め始めた一樹。何だ何だ?
『実は…』
かくかくしかじか
「…それのどこが嫌なんだ?弾が聞いたら怒るぞ」
『よーし一夏、例え話をしてやろう。お前の周りの専用機持ちが、いきなり黒縁メガネと白衣を着始めたらどうする』
「似合ってたら褒める」
当たり前だろ。
『お前に聞いた俺が馬鹿だった』
「えと…かーくん、今度その格好してあげようか?」
『お願いだから雪は変な知識を持たないでくれ…俺の癒しをなくさないで…』
「えへへ…癒しかあ…」
あ、雪恵が落ちた。一樹の野郎、人にはフラグ乱立者とか言ってるくせに、自分の方が雪恵にセリーにミオ?を落としてるじゃねえか。
『おい一夏、今度対戦しようぜ。逆刃刀と真剣で』
「全力で遠慮させていただきます!」
そんな事をした日にゃ俺の体がボロボロになっちまうわ!
「うん、うん。じゃあね、おやすみ」
一樹との通話をしてる雪恵の顔は、終始笑顔だ。だけど、電話を切った途端、その表情が曇る。早くなんとかしないとな。
「一夏、タッグマッチは私と組むのだろう。これが申請書だ。早くサインをしろ」
「悪いラウラ。先約があるんだ」
「一夏さん!タッグマッチを…」
「悪いセシリア。先約があるんだ」
「い、一夏!タッグマッチの件なんだが…」
「悪い箒。先約があるんだ」
『って感じで断り続けてるの』
「……流石に言葉を無くすんだが」
一夏の断る姿が容易に浮かぶ一樹。しかし、簪が許可しなかったらどうするつもりなのだろうか。
『その時は私が組むよ。それが1番平和だと思うし』
「…どう転がっても一波乱起こると思うけどな」
『しょうがないよ、織斑君だし。ところでかーくん、この前出た星人は大丈夫だったの?』
「ああ、別のウルトラマンが助けてくれたからな。名前は【タロウ】だ」
『ん、分かった。今度会ったらお礼しないと。これで3人目だね。ゲンさんに矢的先生にタロウさん』
「…多分雪が会うことは無いと思うけどな。じゃあ、頑張れよ」
『かーくんもね』
次回…次回こそ展開を進めたい!