後半がメイン。
メインの方が少ないのはご愛嬌ってことで…だめですかね?
「そ、そろそろ飯にしないか?」
まもなく正午という時間帯になったところで、一夏が言う。その隣ではグロッキーになった一樹とセリーがいた。
「うーん、そうだね。時間も時間だし、どこかに入ろうか」
シャルロットも一夏に同意し、店を探し始める。
「あ、なら解散になるかな。私たちお弁当あるし」
「え?」
雪恵の言葉に驚くシャルロット。
「あ、そっか…じゃあさ、俺たちはどこかでテイクアウトを取ろうぜ。な?シャル…シャル?」
「あ、うん…そうしよっか」
力なく頷くシャルロット。一樹は呆れのため息をつく。そんな一樹にセリーが耳打ちする。
「…ずっとコレなの?」
「…ああ」
「…大変だね」
「ありがとう、セリー」
そんな会話がされている事はつゆ知らず、どこか適当な店を探し始める一夏だった。
「ゆ、雪恵ちゃん…料理、出来たの?」
一夏が適当な店を探してるうちに、シャルロットは雪恵に聞く。
「うん。料理だけじゃなくて、家事全般出来るよ?舞ちゃんに教わってるしね」
シャルロットは祈る。雪恵がライバルにならないことを。ただでさえ箒と鈴という幼馴染ライバルがいるのに、雪恵まで出てきてしまったらシャルロット達欧米組みに勝ち目はない。しかも今までの幼馴染2人にそれぞれシャルロットが勝っている部分は…
箒
・気配り(箒が気が利かないというわけでなく、照れが勝って行動しない分シャルロットの方が上)
鈴
・スタイル(少なくとも鈴よりはシャルロットの方が上だと自負している)
それぞれになんとか勝っている部分があるのに、雪恵が出てしまったらその部分を大差をつけられて負けてしまう…なにせ
雪恵
・さりげない気配り(一夏の訓練に付き合った一樹に、タオルを渡すタイミングが適格だ)
・スタイル(シャルロット以上に出るとこは出てて、引っ込むとこは引っ込んでいる)
・家事(一度しか見たこと無いが、舞の尋常ではない家事能力を見ているため、その彼女から教わってる時点でかなりの能力を持っているとして間違いない)
・素直(一夏の周りにいる女子陣の中で最も素直。これが一番ライバルになってほしくない理由)
「(だ、駄目…勝てる部分が見つからない…)」
仮定しただけでがっくしと肩を落とすシャルロット。雪恵が一夏に惚れない事を祈るしかない。
「ん?どうしたんだシャル。急に肩を落として」
「な、なんでもないよ…あはは」
考えれば考える程その考えが頭に浮かんでしまう。正直、シャルロットから見たら、一樹の取り柄はウルトラマンである部分しか思いつかないのだ。それこそ、一樹に失礼なのは重々承知だが。
「…デュノア、お前の考えてる事が男子皆分からないと思ったら大間違いだぞコラ」
考えてる内容に気づいたのか、一樹から殺気が放たれる。
「ごごごごごごごめんなさい‼︎」
ガタガタ震えながら謝るシャルロット。
「まあ気持ちは分からないでも無いがな。
「ううっ…」
自覚があるだけに言い返せないシャルロット。そんなシャルロットの耳元に雪恵が近づく。
「…大丈夫だよシャルロットちゃん。私にとって、織斑君はあくまで親友だから」
「…それだっていつ変わるか分からないじゃん。今は雪恵ちゃんが一夏と同室だし、いつ一夏に堕とされるか僕たちは気が気じゃないんだよ…」
女子たちが話しやすくなるように、一樹は一夏とセリーを連れて早歩きをする。
「な、なんだよ一樹?」
「お前は黙って進め。でないと俺とセリーがお前を焼く」
「了解です!!!!」
すぐさま一夏は前を向いて進み始めた。一夏の背中では、セリーが手を鉄砲の様に構えて一夏に向けていた。相変わらず一樹に忠実なセリーだった。
「…シャルロットちゃん?私もそろそろ怒るよ?シャルロットちゃんは確かに織斑君が好きかもしれない。織斑君に惚れてる女の子は多いかもしれない。けど、私が好きなのは『櫻井 一樹』っていう人間なの。これはかーくんがウルトラマンだからじゃない。私のずっと昔からの想いなの。かーくんの事を
「そ、そんなことは!」
「でも今シャルロットちゃんが言ってるのはそういうことだよ?この世界には織斑君以外の男の人もいるし、その人の事が好きな人もいるの。織斑君は好き。それ以外の人は何言っても良いなんて、そんな事は無いんだよ?あまり言わないようにしてたけど、学園の人たちはそれが出過ぎだよ。織斑君以上に、望まないところに入らされて、嫌悪しか向けられないなんて、シャルロットちゃんがその立場だったら耐えられる?」
「そ、それは…」
「かーくんはシャルロットちゃんの事を認めてたよ?恋愛じゃなくて、友人として付き合ってたよ?ウルトラマンの正体を知られた時に、織斑君と一緒に『彼は味方だ』って言ってくれた事を、かーくんは感謝してたんだよ?」
「……」
確かにシャルロットは、ラウラに撃たれそうになった一樹を一度庇った事があった。一夏と雪恵を除いた専用機持ちの中では、唯一シャルロットだけが一樹に危害を加えてなかった。
「…織斑君を除いたら、シャルロットちゃんだけがかーくんを最初から認めた人なんだよ?そのシャルロットちゃんが、そんな事を言うなんて、かーくんは悲しむと思うな」
「…うん、ごめんね。どうかしてた」
目に涙を浮かべながら、雪恵に謝るシャルロット。
「いいよ。それが【恋】だから。それ以外の事が頭から抜けがちになるのは分かるよ。けど、お願いだから…」
今度は雪恵が泣きそうになった。いや、泣いていた…
「かーくんの存在を、認めてあげて…」
「うん…」
「…なあ一樹」
「あん?」
雪恵がシャルロットと話している間、一夏が何気なく一樹に話しかけてきた。
「…お前さ、俺を恨んだ事はあるか?」
「また唐突な質問だな…何でその質問を?」
「だってさ、俺がISを動かしたばっかりに、お前はあの学園に来させられて、まともな生活すら送らせてもらえないんだぞ?俺がお前の立ち位置だったら、その原因を恨むね」
「…恨んでほしいのか?」
一樹の質問に、一夏は遠くを見つめながら答える。
「さあ…最近になって、少し思うんだ。何故俺がISを使えるんだ?俺以上に、ISを使って世界を変えたいって思う人は一杯にいるのに、何故俺なんだ?って…」
「…前者は今、世界中の研究者が解明しようとしてる。後者は…お前のISにでも聞け。案外人間より、ISの方が答えを持ってるかもな。それと…」
一樹は一夏に、ずっと思っていた事を伝えた。とても、優しい笑顔で…
「お前を本当の意味で恨んだ事は一度もねえよ。冗談交じりに言ったことはあるけど、ずっと一緒に過ごしてきた
「一樹…」
「雪が倒れてから、俺に居場所は無かった。学校に行けば他の生徒から『何でお前が生き残ったんだ?何でお前が死ななかったんだ⁉︎』と言われ続け、教師には『君が田中さんを殺したんだ。この人殺しが』と怒鳴られ、どこに行こうとも【人殺し】と言われてた俺と、お前は一緒に行動してくれた。それがどれだけ救われたことか。どれだけありがたかったことか」
「…」
そして、一樹は一夏に向けて、深く頭を下げた。
「お、おい一樹?」
「こんなに汚れた俺を、庇ってくれてありがとう。救ってくれてありがとう。俺を…幼馴染と認めてくれてありがとう」
居場所をくれてありがとう。心を保たせてくれてありがとう。あげだしたらきりがない。一樹の一夏に対する感謝は、あげだしたらキリがない。なにより…
「俺…【櫻井 一樹】という存在を、認めてくれてありがとう」
「カズキカズキ、そこに美味しそうなアイス屋さんがあった」
興奮気味のセリーを宥める一樹。
「おいおい、まだ昼飯食って無いんだぞ?デザートは飯を食べてからな」
「うぅ〜…分かった」
「よしよし。偉いぞセリー」
「うにゃ〜♪」
まるで親子のような会話に、一夏が微笑ましく見ていると、雪恵達も合流した。
「お待たせかーくん。どこかいい店見つけた?」
「男子目線なら見つけた」
「え?どゆこと?」
「一夏はそこのマ○クで良いってさ。ただ、ほら…あそこは」
「あー。カロリーか」
「…デュノアは気にするだろうと思ってさ。どうする?」
「僕なら大丈夫だよ。マ○クにもサラダ売ってるし」
「んじゃ、そこで…っと」
早速買いに行こうとする一夏に、誰かがぶつかった。
「す、すいません!前を見てなくて…」
ぶつかったのは、首から紐で吊った青く光る石をぶら下げた女性だった。
「い、いえ大丈夫です。そちらにお怪我は?」
「いえ、あなたが受け止めてくれたおかげで私はなんとも…」
「それは良かったです…ところで、その青い石は?サファイアとは違うようですが…?」
「そんな上等なものじゃないですよ。我が家のお守りというところです。随分昔からあるみたいで…」
たった今知り合った女性と仲良く話す一夏。さっきまでのシリアスな空気を返して欲しい。
「「「「(またか…)」」」」
一樹達が呆れているのを余所に、一夏と女性は話し込んでいた。
「へえ!その石にそんな歴史が?」
「あくまで伝承ですけどね。こんなちっちゃい石が
怪獣を封印した、の言葉に反応したのは一樹だ。
「お話中失礼!その封印された怪獣の名前って、分かります?」
突然入ってきた一樹に驚きながら、女性は教えてくれた。
「え、えと…文献では【アントラー】と書かれていましたけど…」
「アントラー…」
女性が告げた名に、嫌な予感がする一樹。そして、それを裏付けるかの様に…
ドックン
懐のエボルトラスターが反応した。それと同じタイミングで…
ドドドドドドドドドドドドドッ!!!!
体の芯まで響く大きな音と、振動がショッピングモールを襲った。
「「「ッ!!?」」」
「「「「キャアァァァァ!!?」」」」
セリーを除いて、悲鳴をあげる女性陣。振動の中、一樹はセリーと雪恵の手を掴み叫ぶ。
「みんなセリーの周りに集まれ!!!!でなきゃ大怪我するぞ!!!!」
一樹の叫びに、我に帰った4人がセリーの周りに集まった。
「セリー!頼む!!」
一樹の叫びに、セリーは頷くと、自身の周りに【ゼットンバリア】を貼る。それにより、次々と落ちてくるガラスはバリアーに弾かれた。
外では巨大なアリジゴクが発生、次々と車が飲み込まれていった…そのアリジゴクの中央から、巨大な顎が現れる。
《キシャアァァァァ!》
揺れがひと段落したところで、セリーはバリアを解除した。
「…サンキュー、セリー」
「セリーちゃん、ありがとう」
「…これくらい、任せて」
セリーの頼もしい言葉に、一樹は安心する。そして、次の指示を出す。
「セリーは3人を連れて安全な場所まで避難してくれ。俺と一夏は、避難し損ねた人がいないか確認してくる」
「2人だけじゃ危ないよ!僕たちも」
シャルロットが進言するが、一樹はそれを否定する。
「いや、お前たちはセリーと一緒にいるべきだ」
「どうして⁉︎僕たちはISを持ってるのに!」
「なら聞くが!お前のISの稼働時間は無限なのか⁉︎」
「ッ…」
「違うよな?さらに言うならこの中で一番火力が低いのもデュノア、お前だ。ISの中では一夏が火力が最も高い。そして、俺は一夏より火力も高くて、稼働時間もほぼ無限だ。お前は、避難した先で人々を守れ。ただ前線に立つだけが戦いじゃないんだ!」
「…わかった」
ようやく納得したシャルロット。そして、一樹は今度は雪恵を見る。
「雪は避難した先で怪我人の手当てだ。瓦礫はセリーがぶっ壊せるけど、怪我人の治療は出来ないしな。救急隊員が来るまでに、応急処置はしといてくれ」
「うん!分かった!気をつけてね‼︎」
「「お互いにな‼︎」」
お互いの動きを確認すると、一樹と一夏はそれぞれ機体を展開し、上空へ飛ぶ。
「一夏!今回はエネルギーを気にしてる暇は無い!最初っから
「了解だ!(ハク、デストロイモード起動!小型核動力炉に直結しろ‼︎)」
『了解です、マスター。デストロイモード起動、小型核動力炉を直結』
麒麟をデストロイモードに変え、ほぼ無限となったシールドエネルギーに物を言わせた連続瞬時加速でショッピングモールから飛び出す。
《キシャアァァァァ!》
ついに全身を表した磁力怪獣・アントラー。そこに、ストライクチェスターが駆けつけた。
「ストライクバニッシャーで一気に決めるぞ‼︎」
『『『了解‼︎』』』
ラウラの指示に従い、すぐさまストライクバニッシャーを撃とうとするが…
《キュアァァァァ‼︎》
アントラーは口から磁力光線をストライクチェスターに向かって撃った。
バンバンバンバンッ!!
ストライクチェスターの各部から火花が散る。
『ッ⁉︎コントロールシステムをやられたわ‼︎』
『機体の制御が、出来ません‼︎』
「不時着する!全員衝撃に備えろ‼︎」
なんとか操縦桿を握り、不時着させようとするが、操縦桿のシステムも逝ってしまい、垂直降下していく。
『『『「ッ⁉︎」』』』
ショッピングモールの外で着陸と同時に機体を解除し、人々の避難誘導をしていた一樹と一夏。
「一樹!アレ‼︎」
一夏が指差す方向には、垂直降下していくストライクチェスターがあった。
「クソッ!一夏後は頼んだ‼︎」
「分かった‼︎」
一夏に後のことを任せると、一樹はエボルトラスターを引き抜いた。
『『『「うわぁぁぁぁぁぁ⁉︎」』』』
目の前に迫る地面に、4人が硬く目を瞑る…
ドォンッ!!
間一髪、ウルトラマンがストライクチェスターをキャッチ。そっと地面に置いた。
「あ!ウルトラマンだ!!」
どこかの子供がそう言うと、人々の顔に希望が映る。
「頼む!ウルトラマン!」
「シェアッ!」
《キシャアァァァァ‼︎》
アントラーに向かって構えるウルトラマン。アントラーもその大顎を開閉して、威嚇する。
「ハッ!」
アントラーに向かって駆け出し、ジャンプ。急降下キックでアントラーの体制を崩す。
「デェア!」
《キュアァァァァ⁉︎》
アントラーに突進し、人々から離させようとする。だが、アントラーも持ち前の怪力でウルトラマンを転ばせる。
《キシャアァァァァ!》
「グアッ⁉︎」
そして、アントラーは目の前の建物に向かって進み始める。そこには…
「病院が⁉︎」
病院にはまだ避難が終わってない人がたくさんいる。一夏は病院に向かって駆け出す。そして、仲間たちに解放回線で連絡する。
「来れる人は病院に来てくれ!あそこにはまだ人がいいるんだ‼︎」
『『『『なっ⁉︎』』』』
「フッ⁉︎」
アントラーの進行方向に病院があることに気づいたウルトラマン。
「テェアッ‼︎」
《キシャアァァァァ⁉︎》
アントラーに飛びかかり、地面を転がる。
「フゥゥゥゥ…デェアァァ‼︎」
なんとかアントラーを持ち上げ、病院とは逆方向に投げ飛ばす。
《ギシャァァァ⁉︎》
ウルトラマンがアントラーを抑えている間に、一夏達は合流。病院の人々を避難させ、重病人はISを使って機材ごと運んだ。
「フッ!シェアッ‼︎」
アントラーが転がっている内にジュネッスへとチェンジ。メタ・フィールドを展開しようとする。
「シュウッ!フアァァァァ…フンッ!デェアァァ‼︎」
水色の光線が天に向かって伸びるが…
《キシャアァァァァ‼︎》
アントラーの磁力光線によって、霧散した。
「フッ⁉︎」
「メタ・フィールドが貼れないだと⁉︎」
《キシャアァァァァ!》
アントラーはアリジゴクの中へと姿を消した。ウルトラマンは全神経を集中させてアントラーを探す…
「フッ⁉︎」
ウルトラマンの足元が崩れ、アリジゴクへと変わってしまった。ウルトラマンの半身が沈み、身動きが取れなくなってしまう。
《キシャアァァァァ!》
「フッ⁉︎」
更にアントラーの巨大な顎がウルトラマンを捕らえようとする。ウルトラマンはアームドネクサスでなんとか大顎を受け止める。
「フアァァァァ…!」
《キシャアァァァァ‼︎》
ウルトラマンのピンチに、ただ見ることしか出来ない一夏。
「…どいて」
その横を、セリーが凄い速さで駆け抜けていった。
「お、おいセリー!そっちは危ないぞ‼︎」
慌てて止めようとする一夏は、セリーは無表情で告げた。
「…私が、ゼットンだって事を忘れた?私なら、カズキを助けられる」
両腕を組んで【変身】しようとするセリーを、雪恵が止めた。
「ダメセリーちゃん!」
「…けど、このままじゃカズキが」
「分かってる!けど、今変身しちゃダメ‼︎
何か、の言葉に、セリーは全神経を探知に使うが、その存在を感知出来ない。
「…分かった」
それでも、セリーは雪恵の言うことを信じる。しかし、このままではウルトラマンが危ないのもまた事実。
「…どうすれば良いの?」
「セリーちゃん、火球を撃った後って動かす事は出来る?」
「…?出来るけど…」
「なら…織斑君にセシリアちゃん!力を貸して‼︎」
「フアァァァ⁉︎」
《キシャアァァァァ‼︎》
ギギギギギギ…
ウルトラマンの両腕から嫌な音が響く。だが、力を抜いたら最後、砂の中へと取り込まれてしまう…
ドォンドォンドォン!!
突如アントラーの口元から連続で火花が散る。それにより、アントラーの力が緩む。その隙を逃すウルトラマンではない。
「シュウッ‼︎」
両手をクロスして、体を高速回転。アリジゴクから抜け出した。
「やった!成功だ‼︎」
麒麟を再度展開していた一夏が喜ぶ。
雪恵の作戦とは、
・セシリアがブルー・ティアーズを放出する。
・一夏が麒麟のシステムでブルー・ティアーズの制御を行う。
・セリーが火球をアントラーの口元に向かって放つ。
・同じところを一夏がブルー・ティアーズで狙う。
だった。火球+ブルー・ティアーズ4機分の攻撃により、流石のアントラーも怯んだのだった。
「アリジゴクからは抜け出せたけど、まだ奴を倒す手がかりが無い…どうしたものか」
《キシャアァァァァ‼︎》
アントラーもアリジゴクから抜け出し、再度ウルトラマンと対峙する。
「フッ!」
《キシャアァァァァ‼︎》
アントラーはウルトラマンに向かって突進。ウルトラマンはそれをなんとか受け止めるが…大顎に挟まれてしまった。
「グッ⁉︎グアッ⁉︎」
《キシャアァァァァ‼︎》
「グアァァァァァァァ!!?」
ピコン、ピコン、ピコン
コアゲージが鳴り響く。その間も、アントラーの大顎はウルトラマンの体に食い込んでいく。
「グアァァァァァァァ!!?」
「クソッ!どうすれば…」
一夏達が打開策を考えていると…
「あの、これを使ってください」
先ほど一夏とぶつかった女性がいた。女性は首からかけていた青い石を一夏に渡す。
「これを使えば、アントラーの能力を使えなくさせる事が出来るはずです」
「どうやってこれを使うんですか?」
「文献通りなら、レンズの様に使うそうですが…」
「なら…」
一夏は麒麟の先端に、特殊なアタッチメントを取り付ける。そして、その中に件の青い石を入れる。
「(ハク、石にあった出力にビームマグナムを調整してくれ)」
『お任せ下さい!マスター‼︎』
ビームマグナムを構える一夏。
「ウルトラマン!アントラーを動かさないでくれ‼︎」
一夏が何をしようとしているのか、ウルトラマンは察すると、痛みに耐えてアントラーの体を押さえつける。
「フゥゥゥゥ…‼︎」
《キシャアァァァァ‼︎》
「よし…喰らえぇぇぇぇ‼︎」
一夏は引き金を弾く。その青いエネルギーは、アントラーに直撃した。
《キシャアァァァァ⁉︎キシャアァァァァ!!?》
青いエネルギーが全身に回り、苦しむアントラー。ウルトラマンはその隙に離れると、アントラーの大顎に向かってラムダ・スラッシャーを放った。
「シェアッ‼︎」
エネルギーに苦しむアントラーは磁力光線を撃つ事も、ラムダ・スラッシャーを避ける事もせずに喰らう。アントラーの右の大顎が切断され、落ちた。
「フッ!シュウッ‼︎フアァァァァ…フンッ!!デェアァァァァ!!!!」
必殺のオーバーレイ・シュトロームがアントラーに命中。
《キシャアァァァァ!!?》
断末魔の叫びを上げ、アントラーは爆散した。ウルトラマンはアントラーが爆散したのを確認すると、光に包まれ消えていった。
「痛たた!」
その夜、IS学園の一夏の部屋では一樹が治療を受けていた。
「あーあ、背中にばっちり跡が出来ちゃってるな…」
ただでさえ火傷等がある一樹の背中でも、今回の傷はハッキリと見えてしまうほどのものだった。
「一応軟膏は塗っておくけど、あまり効果を期待しないでくれよ」
「分かってるよ…気休め程度だってのは…ッ‼︎」
「骨まで響いてるかもしれないな。病院行った方が良いぞ」
「病院って言われてもな…俺を受け入れるところは…」
「S.M.Sの病院か…」
「成海にまた怒られるのは勘弁だ。あそこ行くと寝れないんだよ。説教が長くて」
「…ふうん」
突如一樹の背後から冷気を感じる。一樹の正面に座る一夏の顔が物凄く青ざめていく。一樹がゆっくりと後ろを向くと…黒いオーラを纏った雪恵がいた。
「怒られるほどの大怪我をしてるんだぁ…知らなかったなぁ…治療は終わってるのかなかな?」
「どこのホラー映画だっ!!?」
「人を幽霊みたいに言うな‼︎」
「そんなヤンデレ顔されたら誰だってそう言うわ‼︎」
「失礼な!私はヤンデレじゃありませんー‼︎」
「「(素質はあると思うな…)」」
「織斑君にセリーちゃん。後でO☆HA☆NA☆SHIする?」
「全力で遠慮します‼︎」
「カズキ、早く帰ろう」
一樹の手を握って退散しようとするセリー。
「ちょ、セリー置いてかないで‼︎」
一夏の叫びも虚しく、セリーは一樹とともに部屋を退散した。
「う、裏切り者!ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
一夏の断末魔の叫びが、寮中に響いたのだった…
「…カズキ。本当に大丈夫?」
整備室に戻った2人。背中と両腕を気にする一樹に、セリーが話しかける。
「…ちょっとしんどい。セリー、一晩留守にするけど良いか?」
「ん、大丈夫。だから怪我治してきて?」
「あいよ。じゃあまた明日な」
セリーを寝かしつけると、一樹はブラストショットを天空に向けて撃ち、ストーンフリューゲルを呼ぶ。ストーンフリューゲルで怪我の治療をしながら、一晩過ごすのだった。
こんなに長いのは雪恵が起きて以来じゃないですかね?
割と書きやすかった…
地球産怪獣!今後の敵は、地球産もあり得ます。この意味は…分かるかな?
次回はどうなることやら…