人と光の“絆”   作:フルセイバー上手くなりたい

60 / 150
さあ、始まるぜ!


Episode55 亡国機業-ファントム・タスク-

「かーくん!私休憩時間になったから学園祭回ろ!」

「…お前、アレ見てそれ言うの?」

一樹が指差す方向を見ると、一夏の休憩時間のローテーションの話し合いが行われており、一夏の休憩時間も近くなったのが分かる。つまりは…

「俺は護衛役として、一夏から目を離さない様にしなきゃならないから友達と回ってきな」

護衛役である一樹も遠くからついていかなければならないのだ。

「えーーー⁉︎何それつまんない!」

「…俺だって出来るならアイツのデート?を尾けるみたいな真似したくねえよ」

頭を抱えながら話す一樹。一夏のデート?といえば大体トラブルが起きるのだからしょうがないとも言える。

「何もなきゃ良いんだけど…」

 

結論を言おう。何も起こらない筈が無かった。専用機持ちとのデートを終えた一夏とそれを待っていた弾は学園祭を回っていた。それについて行ってる一樹だが、既にその顔は疲労気味だ。

「…一樹、飯奢るよ」

流石の弾も今の一樹を相手にふざける気力は無かった。

「……めし、より……あまいもの、くいたい……」

「相当重症だコレ!分かったから!」

すぐさま近くの露店で何か買おうとする弾。それを駆け寄ってきた雪恵が止める。

「待って五反田君!かーくんに一番効く食べ物持ってる人連れてきたから!」

「へ?連れてきたって…あ、お久しぶりです。高橋さん」

呼ばれて後ろを見た弾の目には、雪恵に腕を引っ張られてきた舞がいた。

「え、ええ。お久しぶりです五反田君。さて、挨拶はコレくらいにして…義兄さん、頼まれてたゼリーです。どうぞ」

弾への挨拶もそこそこに、舞は持っていた小型クーラーバックからゼリー飲料入れを取り出し、一樹に渡す。軽くふらつきながらそれを受け取った一樹。ゼリーを飲んで一息つく。

「あ"あ"あ"しんどかった…ナイスタイミングだ舞」

「いえ…本当なら毎日お弁当をつくりたいのですが…」

「気持ちだけ受け取っておくよ。ありがとうな。雪も、よく舞を見つけれたな。今日は来れるか微妙だったのに」

舞の頭を撫でながら不思議そうに雪恵に聞く一樹。

「いやぁ、実は私もたまたまなんだ。かーくんに何か甘い物買おうかと思って露店を回ってたら、丁度舞ちゃんが受付にいてさ。すぐに連れてきたって訳」

「私は五反田君と違って当日受付が出来ましたから…」

IS学園は元々女子校である。そのため弾は一夏の持つ招待券が無いと入れない(ちなみに一樹は生徒では無いという理由で招待券を渡されていない)のだが、比較的女性は入りやすい様だ。

「まあ、とにかく助かったよ舞。また欲しい物が出来たら連絡するわ」

「欲しい物が出来たら、ですか?」

少し悲しげに顔を俯かせる義妹に、一樹は苦笑しながら続ける。

「俺の言う『連絡』ってのは基本メールだからな。舞達とはなるべくリアルタイムで話したいから基本電話しようと思ってたん「お願いします!いつでもどこでも電話大歓迎です!なんなら今夜にでも」えぇい落ち着け!分かった、分かったから!なるべく頻繁に電話する様にするよ」

「はい!義兄さん!」

先ほどの暗い表情が嘘だったかのように明るい表情に舞に苦笑しながらクーラーバックを受け取る一樹。弾のほうを見ながら…弾は静かに頷いた。

 

「すいません、織斑一夏さん、ですよね?」

「はい、そうですが…どなたですか?」

一樹達から少し離れた所では、一夏が露店の焼きそばの列に並んでいた。無事焼きそばを購入出来たので、一樹の元へ戻ろうとすると、後ろから声をかけられた。

「私、倉持技研の倉田と申します。今回私が声をかけたのは、倉持技研で新しく「あ、そういうのいらないぜ」…どういう事でしょうか?」

話を途中で遮られたからか、若干苛立ち気味になった倉田と名乗る女。だが、一夏は動じる事も無く、淡々と続けた。

「らしくねえ演技はしなくて良いって事だよ。亡国機業(ファントム・タスク)所属のシーマさんよ!」

「チッ!!!!」

正体がバレてたと知ったシーマの行動は早かった。懐から拳銃を抜こうとするが、一夏の方が素早かった。懐に入れようとした腕を掴み、関節を極めながら地面に押し付けた。

「ガッ⁉︎」

肺から空気が一気に漏れ、シーマの意識が一瞬無くなる。

「(このガキ…ただのガキじゃねえ⁉︎情報では平和ボケした国のただの一般人だった筈だ!)」

「今のお前に、思考してる暇があんのか?」

ドスを効かせた声を出しながら、一夏はさらに関節にダメージを与える。

「クッ…」

「お前が生きる方法は一つ。知ってる事を全部話す事だ」

「誰が…話す、かよ…」

「あっそ」

一夏は容赦なくシーマの関節を極め続ける。

「ガァァァッ⁉︎」

「このままだと関節外れるな〜どうすんのかな〜シーマさん?」

「しつけえんだよクソガキ!話さねえつってんだろ‼︎」

一夏は表情を変えた。()()()両腕で押さえていたシーマの腕を、左手一本で更に締め付ける。開いた右手は、麒麟のビームサーベルを部分展開した。

「…⁉︎」

「…死にたくないなら早く答えろ。今この学園にいるテメエの仲間は何人だ?」

ビームサーベルを見て、流石のシーマも表情に恐怖が浮かび上がる。

「…アタシが知ってるのは、アタシの他に亡国機業から1人、PMCから4人だ…」

「ッ⁉︎」

PMCと聞いた一夏の顔が歪む。一樹が束ね、一夏も所属しているS.M.Sが白だとするならば、シーマの言ったPMCは真っ黒な『戦争屋』だ。戦いだけが生き甲斐の戦闘狂達が集まる場所…それがPMCだ。

「…他には?」

「…下っ端のアタシが知ってるのはこれくらいだ」

「使えねえなあ。じゃあ寝てろ」

麒麟からシーマへ電流を流すと、シーマはショックで気絶した。すると、ずっと近くで見ていた一樹が結束バンドでシーマの両親指を縛って無力化させた。

「…結束バンドにこういう使い方があるんだな」

「変に縄で結ぶよりお手軽だしな。解くつもりがないなら結束バンドで両親指を縛るだけで人間はほとんど動けなくなる」

「…縄のイメージが強いのはやっぱり漫画とかが原因かな?」

「戦国時代とかはたしかに縄で縛っていただろうが、アレは押さえつける役、縛る役と最低でも2人は必要だぞ?」

「あーなるほど」

「今回はお前がコイツを気絶させてくれたから楽な内に動けなくしておくためにも結束バンドを使っただけだ。さてと、後はコイツを…」

話しながら一樹はシーマを肩で担ぐと、ある場所に向かって投げた。

「ッ⁉︎」

その方向にいたのは、楯無だった。

「ソイツの仲間?が全部で5人いるってさ。後はお前の仕事だ」

「ふざけないで!敵を見つけるのも始末するのもあなたの仕事でしょ⁉︎」

憤慨して一樹に食ってかかる楯無。

「は?お前、何か勘違いしてねえか?」

ため息をつく一樹。渋々説明を始めた。

「俺が受けた依頼はあくまで『織斑一夏の護衛』だ。『IS学園』じゃねえんだよ。極論を言えば学園内で一夏以外が死のうが俺には関係無いんだよ」

まあ雪は例外だがなと、一樹は心の中で補足する。

「な…あなた、人の命をなんだと「それをテメエら女尊派が言えた話か?」ッ⁉︎」

「お前ら女尊派はな、表に出されてないだけでISが発明される前の男よりよっぽど非道な事やってんだよ。一般人ならともかく、『更識楯無』であるお前が知らない筈はねえよな?」

「…」

「確かに、ISが発明される以前は、常識の『じょ』の字も無いクソ野郎どもに襲われた女性はたくさんいる。それは認めるよ。けどな、ISが発明されてからは何だ?全ての女性がそうじゃないのは分かるが、植物状態にしてからトドメを刺す卑劣なやり方や、両腕両脚をISで折って何の抵抗も出来ない状態の男の脳髄を撃ち抜く…そんな事をしてるのもいるんだ。エグいよな?残酷だよな?なのにメディアは一切それを流さない。そらぁ内容が内容だから全部を言えとは言わないけど、『全く』言わないのは…どういう事なんだろうな」

「…」

「…ま、話をそらしちまって悪かった。とにかく、俺は『仕事で』一夏を、『個人的に』雪を護る。他はお前ら学園の仕事。それだけ理解してくれや」

楯無にそれだけ告げると、一樹は一夏を_______

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突き飛ばして離れた。

刹那______

 

ガッシャアァァァァン!!!!

 

______一夏のいた所の窓が、撃ち抜かれた…

「伏せろ‼︎」

一樹の言葉に、すぐさま伏せる一夏と楯無。

バビュン!!!!

第二射が頭上を通過した。

「チィ!」

一樹は冬服の右袖から拳銃を出すと、狙撃者に向かって撃つ。

バンバンバン‼︎

気配から当たっていないのが分かると、一夏に目で合図し、左袖からもう一つ拳銃を取り出して一夏に投げ渡す。

「持っとけ!」

「ああ!」

そして震えている楯無の腕を掴んで物陰に運ぶ。

「ど、どうして?あなたは織斑一夏以外どうでも良いって…」

「ああ!確かにそう言った!けどな!目の前で逝っちまったら目覚めが悪すぎる‼︎」

そして右耳の無線機のスイッチを入れ…

「束さん!賊の人数は⁉︎」

『今サーチ中!だけど、どう考えても30は下らない!シーマは本当に下っ端みたいだね‼︎』

「クソッタレが!とにかく、人数サーチお願いします!俺は『いつも通り』に動く!」

『了解だよ!任せて‼︎』

周波数を切り替え、弾に繋げる。

「弾、状況は⁉︎」

『教師陣が避難誘導をしてる!勿論ISを装備してな!』

「教師陣の使用ISは⁉︎」

『打鉄‼︎』

打鉄は日本製のISであり、その攻撃力、防御力のバランスは世界トップクラスだ。一般人を護るためには最適な機体といえよう。だが…

「状況に適し切れてねえ!相手はISだけじゃねえんだぞ‼︎」

それはISだけが相手の時だ。打鉄の持つ欠点は学年別トーナメントで一夏も利用した…小回りの悪さだ。

『ッ⁉︎ヤバイ、みんなISを外せ‼︎』

「!?」

弾の焦った口調だけで一樹は察した。

「打鉄に爆弾を仕掛けやがったか‼︎一夏!『制御を奪え』‼︎」

「でもそれは…」

「人命が優先だ‼︎」

「ああ、分かった!(行くぞ、ハク‼︎)」

一樹の指示を受け、一夏は麒麟のシステムを使用した。

 

ガチャンッ

 

「え?打鉄が外れた?」

「早く離れて‼︎」

「ちょ、何する…」

装備していた打鉄が外れ、戸惑っている教員を弾は急いで打鉄から離す。次の瞬間!

 

ドォォォォンッ!!!!

 

打鉄が、爆発した…

 

 

 

「おぉおぉ、勘が鋭いこって」

打鉄の爆弾を『たった今』取り付けた男は、相手の勘の鋭さを素直に賞賛する。

「だが、こっからどうするんだ?S.M.Sさんよ」

 

 

「クソッ!スナイパーを仕留めねえ事にはこっちの戦力が減り続けるぞ‼︎」

「んなこたぁ分かってんだよ‼︎」

冬服の胸ポケットからスコープとロングバレルを取り出し、手に持っている拳銃と合体させる一樹。これにより、簡易的ではあるがスナイパーライフルが完成した。

「狙い撃つ‼︎」

狙撃があまり得意ではない一樹は、仲間内で最も狙撃が得意な友の口癖を借りる。そして放たれた2発の弾丸は…

 

 

 

ガンッ!

 

「チッ!」

 

ドォォォォンッ!!

 

一樹の撃った弾丸は、一発目はライフルの銃口を、2発目は銃身に命中。ライフルに込められていた『超小型時限爆弾』に誘爆するが、男は咄嗟にライフルを投げ捨て、学園に突入する。

「オメエら、行くぞ」

『雑魚ばっかじゃねえと良いがな』

『僕が全滅させてやるよ』

『全部消してやる』

3つの影と共に。

 

「束さん!後で打鉄の修理は頼んだ!」

弾を込めながら一樹は叫ぶ。通信回線は開いてないが、どうせ監視カメラ越しに束は見ている。気にする必要は無い。むしろ今は…

「コイツらを止める!」

正面玄関に投げ込まれた手榴弾。一樹は地面に落ちる前に手榴弾を受け止めると敵側に投げ返す。

 

ドォォォォンッ!

 

「(このやり口…KPSAの応用か⁉︎)」

爆煙の中で気配に注意しながら一樹は記憶を呼び起こす。

爆弾をつかって一気になぎ払う残忍なやり方はかつてテロ集団のKPSAが良く使っていた手だ。一夏達には話していないが、先日の宅配便に偽装した爆弾のやり口は、まさにKPSAのそれだった。

「ってことは…⁉︎」

 

ドドドドドドッ‼︎

 

爆煙に隠れながら、敵はマシンガンを撃ってきた。マシンガンの攻撃を下駄箱に隠れる事で避ける一樹。

「にゃろぉ!」

簡易スナイパーライフルにしていたパーツを外し、小回りの効く拳銃に戻すと、下駄箱の影から飛び出す。

 

ドドドドドドッ‼︎

 

再びマシンガンで狙われるが、床を蹴り、壁を蹴り、天井を蹴りと、超次元的な動きで回避。更に左袖から拳銃(2丁め)を出し、両手持ちで襲撃者に向かって撃つ。

「喰らえ!!!!」

気配に向かって撃ちまくる。

「グッ⁉︎」

「いつっ⁉︎」

「ちくしょう⁉︎」

声から3人に当たったのは分かったが、気配はまだ残っている_____

「ちぇいさぁ!」

「ッ⁉︎」

爆煙の中から赤髪の男が飛び出し、一樹に大型ブレードを振り下ろしてきた。咄嗟に拳銃の銃身で受け止める。

ガギィィン‼︎

「やっぱり戦いってのは白兵戦じゃねえとな!そうだろ?クソガキィ‼︎」

「相変わらず狂ってやがるな!アリー・アル・サーシェス‼︎」

両者は同時に離れる。サーシェスは左手に持った拳銃を乱発。一樹はそれを空中回転しながら避ける。右手の拳銃を胸ポケットにしまうと、フリーダムを装備している時の様に左腰から抜刀する動作をする。すると、先程まで影も形も無かった逆刃刀が現れた。

「ッ‼︎」

息を短く吐くと、サーシェスに瞬間移動の如く近づき、飛び蹴りを放った。

「ガッ⁉︎」

蹴りの勢いに吹き飛ばされるサーシェスに、一樹は左手に持った拳銃を撃ちまくる。

バンバンバン‼︎

「チィ‼︎」

サーシェスは重力に逆らわずに転がって銃弾を回避。

「これでぇぇ‼︎」

なぎ払う様にブレードを振るサーシェス。一樹はそれを逆刃刀で受け流す。

「その程度!」

 

一樹がサーシェスと激闘を繰り広げている中、一夏と弾は合流して一般人達をシェルターに誘導していた。

「織斑君!かーくんは⁉︎」

「…今、一樹は前線で戦ってる」

「一夏!ここは頼んだぜ!俺は一樹の援護に行く‼︎」

雪恵に一夏が説明し、弾は一樹の援護に向かおうとするが…

 

 

「みぃつけたぁ」

 

「⁉︎」

強烈な殺気を感じた一夏は麒麟のシールドを展開。次の瞬間、一夏に向けて6本の極太ビームが飛んできた。

「グッ⁉︎」

Iフィールドを使ってしまったら周りの人に被害が出るため、展開しない様に細心の注意を払いながら一夏は麒麟を完全に展開。シェルターから離れ、外に出る。

「「「「一夏(さん)⁉︎」」」」

「コイツの狙いは俺なんだ!だから俺が相手をする‼︎」

シェルターの近くでは満足に戦えない…そのため、一夏は敵を誘導する事にした。

「(レーダーに反応?…ッ⁉︎コレは⁉︎)」

 

「オラオラァ!さっきまでの勢いはどうした⁉︎」

「テメエの相手してる暇はねえって事だよ‼︎」

一樹も感じていた。学園に迫っている危機を…それの対処に行きたいところだが、そのためにはサーシェスをどうにかしなければ…

「ハッ!テメエは相変わらず甘えな!たかが『数百発のミサイル』でテメエとは『関係無い女達』が死ぬだけじゃねえか‼︎」

「ッ⁉︎」

鍔迫り合いしながらサーシェスが叫ぶ。それは、心の底から思っているのが感じられる声音であった…

「そうか…そうかよ」

「?」

一樹の雰囲気が変わり、サーシェスは訝しげな顔をする。そして…

「ッ⁉︎」

次一樹が顔を上げた時、サーシェスですらゾッとする目をしていた…

「なら、もうお前に『手加減』はしない」

虚ろになった目でサーシェスを睨むと…

 

ドドドドドドドドドドドドッ‼︎‼︎

 

「がぁぁぁぁぁぁ!!?」

飛天御剣流、九頭龍閃を全力で叩き込み、サーシェスをボコボコにした。動けなくなったサーシェスと、玄関口で倒れている3人の男の両親指を結束バンドで動けなくすると…

「…櫻井一樹、フリーダム、出るぞ‼︎」

激戦を繰り広げる一夏達の援護に向かう!




今まで何とか毎日更新をしてきましたが、とうとう書き溜めが切れてしまいました。
次話からは出来次第投稿とさせていただきます。

暇つぶしに、自分のもう1つの作品もよろしくお願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。