人と光の“絆”   作:フルセイバー上手くなりたい

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やっと…やっとあの子の名前が出せる…


Episode53 対面-ファースト・コンタクト-

「さて、お前らにひとつ聞く。楽器の経験はあるか?ぶっちゃけ、雪以外期待してないが」

一樹の質問に、それぞれ反論しようとする4人(ラウラは黙って聞いていた)に、雪恵が補足説明する。

「この場合の楽器っていうのはバンドによく使われているエレキギター、エレキベース、キーボード、ドラムかな。リコーダー、バイオリンとかじゃないよ?それでもかーくんに文句ある?」

「「「「すいません何でもありません」」」」

雪恵の目のハイライトが消えた瞬間、4人は直角に腰を折った。

 

「じゃあ大丈夫だと思うが、バンドがどんなものか見てもらうか。一夏、弾、準備は?」

「「いつでも!」」

「よっしゃ」

2人の準備が完了している事が分かると、一樹はドラムの椅子に座る。そして、弾はエレキギターを、一夏はエレキベースをそれぞれアンプに繋いだ。

「3、2、1、0!」

一樹の合図に、一夏と弾もそれぞれ楽器を弾く。曲はドラマの主題歌にもなった『虹』だ。ボーカルの一夏は、メロディに合わせて歌う。一番のサビまで歌い切ると、聞いていた女子6人の(主に一夏へ)惜しみのない拍手が送られた。

「ありがとう!」

「「(視線をあれだけ感じながら気づかないのか…末期だな)」」

一樹と弾が呆れるが、いつもの事なので、すぐに気持ちを切り替える。

「さて、じゃあそれぞれやりたいのを言ってみてくれ。それでやってみてセンスの良い奴を選ぶ。悪いが今回は絶対勝たなきゃならないからな。実力主義で進めさせてもらう」

 

結果…

ボーカル→田中雪恵

ギター→凰鈴音

ベース→ラウラ・ボーデヴィッヒ

キーボード→シャルロット・デュノア

ドラム→篠ノ之箒

楽器調達係→セシリア・オルコット

 

「納得いきませんわ!何故わたくしは出られませんの⁉︎」

「何故私がお前から教わらなきゃならないんだ‼︎」

「なんでアタシのコーチが弾なのよ‼︎」

と、一樹の発表したポジションに納得のいかない面々が文句を言いはじめる。箒に関しては雪恵が“笑顔”を向けたら黙ったが。

「まあ焦るな。ちゃんと説明するから」

文句を言われるのは慣れてるため、一樹は特に気にせず話し始める。

「まずオルコットが調達係にされた一番の理由。それは、財力だ」

「なんですって⁉︎」

「誤解の無いよう言っとくが、別に俺が貰おうとかそういう訳じゃないし、スタジオ代を頼んでる訳でも無い。ここまでは良いか?」

「…はい」

一樹が静かに話し始めると、落ち着いてきたのかセシリアも冷静に聞く。

「オルコットは知ってると思うが、楽器ってのは中々高い。みんな代表候補生(篠ノ之除く)として稼ぎはあるだろうけど、多分足りない」

「そんな!代表候補生の給料はそんな少なくは…」

「これは雪から聞いたんだがな。女子ってのは色々と買う物も多いそうだな?」

「…そうですわね」

「代表候補生の給料といえど、その買い物+楽器代はかなり無理があると思うんだが…ちなみに楽器の値段はこれくらいだ」

一樹が参考までにエレキギターの値段(ワザと高めのが多い物)を見せる。それを横から見たシャルロットは叫ぶ。

「無理無理無理!こんな値段するならその月他に何も買えなくなっちゃう!」

「これで本体だけの値段だからな。さらに弾くためのピックって道具や運ぶためのバックなんか入れるともっと高くなる」

「た、確かにこのお値段は代表候補生のお給料では手に余りますわね…」

セシリアもカタログを見て、調達係に納得しかけている。

「(たたむなら今だな)」

「(一夏、オルコットさんに…)」

「(え?…はぁ、よく分からんが了解だ)なあセシリア」

「は、はい!何でしょう一夏さん」

「これはセシリアにしか出来ない事なんだ。頼む!やってくれ!」

「分かりました!このセシリア・オルコット、最高の楽器を手に入れてさしあげますわ‼︎」

「「(チョロい。流石オルコットさんチョロい)」」

一夏の懇願がトドメとなり、セシリアが調達係に決定。一樹と弾もここまで上手くいくとは思ってなかったが…そして、次は…

「篠ノ之、安心しろ。お前に教えるのは俺じゃない」

「何⁉︎では一夏か⁉︎」

「いや、俺でも無いぜ。箒とシャルに教えるのは雪恵だ」

「「え?」」

意外そうな声を出す2人に、雪恵は頬を膨らませる。

「もう!私だってちゃんと教えられるんだからね!」

「いや、そこを疑ってるわけじゃ無いんだ…」

「雪恵さん、2人も受け持って大丈夫なの?」

シャルロットの疑問に、雪恵は笑顔で答える。

「うん!大丈夫だよ。キーボードは元々得意だし、ドラムもかーくんに教わったからバッチリだよ!」

サムズアップまでしてみせる雪恵。一樹が試しにドラムを叩かせると、一樹レベルではないが十分上手いと言えるレベルだった。箒達が納得したところで一樹は鈴とラウラに聞く。

「…流れは分かるな?」

「…少なくともアタシのコーチは弾なのは分かった」

「私のコーチは一夏か?」

「…いや、2人とも弾だ。一夏に誰かのコーチさせたら、残ったお前ら絶対暴れるだろ?」

「「…」」フイッ

露骨に目を逸らす鈴とラウラ。一樹はため息をつくと、弾に指示を出して、一夏と曲選びを始めるのだった。

 

それから数日後、元々隠れ蓑として一夏が入部していた軽音楽部とは別の軽音楽部に5人は入部。雪恵が全員の面倒を見る形で猛練習を続けていた。

「箒ちゃん!ドラムはただ力強く叩けば良いって事じゃないの‼︎鈴ちゃん!ピックの持ち方はこうだって何度教えれば分かるの⁉︎ラウラちゃんはラウラちゃんでそもそもベースの持ち方が違うし‼︎シャルロットちゃん!メトロームとタイミング合ってないよ‼︎」

一樹に頼まれたからか、雪恵の鬼気迫るオーラに…

「「「「いっそ殺してぇぇぇぇ‼︎」」」」

千冬以上に恐怖を感じる5人だった。

 

「麒麟の調整も済んだし、整備室にで、も…」

一夏が第4整備室の前で見たのは、どこかで見た覚えのある水色の髪の少女が整備室に入っていく所だった。

「(今は一樹がいるはず…まさか!)」

普段から制服に隠し持っている拳銃を取り出し、整備室に近づく一夏だが…

「学園でそんな物騒なモンだしてんじゃねえ馬鹿」

ゴチンッッッ‼︎

「イッテェェェェ⁉︎」

一樹の拳骨が脳天に落ちた。一瞬目の前に星が見えたが、流石は一樹、すぐに痛みは引いた。一夏は素早く拳銃をしまいながら一樹に聞く。

「なあ一樹。さっき入って行った子って…」

「お前のせいで専用機を与えられなかった子だ」

「いや、俺のせいって言われても…俺だって入りたくてここに来た訳じゃないし」

「弾が聞いたら大泣きするセリフだな…」

呆れた顔の一樹は、肩掛けバックを抱え直し、整備室に入ろうとする。

コンコン

『…誰?』

「櫻井一樹だ」

『…どうぞ』

許可が下りたので整備室に入る一樹。その後ろで申し訳なさそうに入る一夏。一夏の顔を見た少女は厳しい表情になった。

「…何しに来たの?」

「いや、俺は一樹に…」

助けを求める様に一樹を見ると、呆れた顔で一樹が話す。

「更識さん、コイツの噂聞いてる?」

「噂って…学校内での事?」

「そうそう、それそれ」

「…代表候補生を全員倒したって事ぐらいだけど…」

少女の言葉を聞くと、一樹は携帯を取り出し、ある所へ電話をかける。相手は…

「あ、黛さん。学園内の一夏関係の記事を全部集めたスクラップブックあります?それを食堂まで持ってきてくれませんか?」

 

食堂で黛から一夏関係のスクラップブックを借りた一樹。

「すみません、ありがとうございます」

「これくらい全然平気だよ。何せ櫻井君には2度も命を助けられてるんだから…」

「おっと、それはオフレコですよ」

冗談を交えて制止する一樹。苦笑しながらスクラップブックを受け取る。

「じゃあ、30分程借りますね」

「それは良いんだけど、誰に見せるの?流石に学園外の人はやめて欲しいんだけど…」

「心配いりませんよ。見せるのはこの学園の1年生ですから」

 

「……」

第4整備室で、更識は一樹から渡されたスクラップブックを見ていた。その内容は主に【織斑一夏を落とすのは誰か⁉︎】だ。しかも裏では賭けも行っているらしく、1学期末の時点では____

本命 篠ノ之箒 1.26倍

2番人気 セシリア・オルコット 1.95倍

3番人気 ラウラ・ボーデヴィッヒ 2.05倍

4番人気 シャルロット・デュノア 2.75倍

大穴 凰鈴音 5.89倍

となっていた。今までの戦いの記事を読んだ更識は一樹に一言。

「…苦労してるね」

「分かってくれるか?」

苦笑いを浮かべながら聞く一樹。

「…これからも頑張ってね」

「応援ありがとう…」

一方、何の話をしているのか全く分からない一夏。

「なあ一樹。さっきから何の話してるんだ?そしてそのスクラップブックは何だ?」

「今のお前じゃあ一生分かんねえよこの中途半端ニュータイプ」

「いきなり罵られたとな⁉︎」

その一樹と一夏の漫才?を見た水色の髪の少女は、小さく笑っていた。

 

『私には、あなたを殴る資格がある。でも、疲れるからやらない』

「…」

あの後、水色の髪の少女に言われた事を寝転びながら一夏は考えていた。

「ねえ織斑君、何か悩み事?」

ルームメイトである雪恵が一夏に聞く。どうやらいつの間にか顔を険しくさせていた様だ。

「なあ雪恵、もし、自分の専用機が誰かに割り込まれたらどう思う?」

「うーん…やっぱり、悲しいかな。しばらくは自棄になってるかも。でも、しょうがないって事で納得するかな」

雪恵の答えを聞き、やはり自分の専用機、“白式”が彼女の専用機製作に割り込んだのだろう。一樹から聞いた話では、彼女は日本の代表候補生らしい。努力してとった候補生の座なのに、たかが動かせれるだけの男(発覚当時)に、割り込まれれば、そりゃ怒るだろう。

「(だけど、白式の開発は初期も初期でS.M.Sが製作することになった。倉持技研はISを、すぐにとは言わないが1学期中には作れた筈だ。何か裏がありそうだな…調べて)」

『余計な事をするなら俺はお前を許さない』

突如一夏の脳裏に響く声。一樹が整備室からプライベートチャネルを飛ばして来たのだ。

『でも一樹!白式が彼女のIS完成を邪魔したとしても、1学期中には出来てる筈だ!白式は結局S.M.Sが製作したんだから!』

一夏もコアネットワークで口に出さずに一樹に反論する。だが、一樹には通じない。

『それ以上踏み込む権限はお前には無い。ほぼ上下関係の無いS.M.S内でも、“TOP7”があるのはお前でも知ってる筈だ』

基本的にS.M.S内の上下関係は適当だ。だが、事情報に関しては部門毎に分けられ、全てを知っているのは創設者である一樹と創設メンバーの5人の青年、そして、世間一般に発表されているトップである翁を合わせた7人だけが、全ての情報を統括している。世界各国に支社を持っていて、上下関係も適当なS.M.Sで唯一強固にされている“ルール”だ。

『嫌な言い方をすればお前はまだまだその域に達していない。お前独自の判断で外の情報を調べる事は出来ないんだよ。“防衛科”の織斑一夏』

『……』

『“情報科”ですら俺の指示、もしくは他のTOP7の内の3人の許可が無ければ外の情報を探しに行く事は出来ないんだ。防衛科のお前なら俺以外のパターンならTOP7の内5人のサインと書類がいるな。それを忘れたとは言わせねえ』

S.M.Sの情報収集方法を簡単に纏めるなら、出版社や新聞社が挙げられるだろうか。それぞれの担当する部門の記事を書き、それを編集長であるTOP7が纏める…S.M.Sの扱う情報はとてもデリケートなものが多い。実際はそう簡単なものでは無いが、大雑把に言えばこんな感じだ。そして、一夏は言うなれば情報を細かく知る必要のない“印刷係”でしかないのだ。

『今回のケースは特に個人情報が関わる。万が一の事があったら遅いんだ。お前がS.M.Sに所属してる事がバレるだけじゃない。S.M.S独自の技術が流れちまう危険性もある、何より最悪なのは…あの子の個人情報が外に出る事だ』

一樹の声はいつも以上に冷たい。だが、それだけ彼は心配なのだ。一夏の能力が、機体とのシンクロ率が外に漏れるのを…束ですら、一樹達のかけたプロテクトを破れない。だが、搭乗者本人である一夏がそのプロテクトを破ったら、何の意味も無いのだ…

 

「だから…余計な事はすんじゃねえぞ」

最後にそう言うと、一樹はプライベートチャネルを切った。

「…くそッ‼︎」

ガァァァァンッ!!!!!

壁を思いっきり殴る一樹。こんな言い方しか出来ない自分が情けない…だが、一樹には譲れない理由があった。

「…お前は、暗部の『闇』には関わらせない」

 

一樹にあれだけ強く言われた以上、S.M.Sで情報を見る事は出来ない。だが、それでもある程度は知る事が出来る。自室に元々置かれているパソコンを開き、普通にネット検索を始める。

「検索キーワードは、『今年度の日本代表候補生』…うわ、ヒット数少なッ⁉︎」

まあそのおかげで楽に検索出来るけどさ、と一夏は小声で呟く。日本政府が公表している候補生の中に、あの水色の髪の少女がいた。

「“更識 簪”、か…更識家って事は下手に下の名前を呼ばない方が良いな」

先代の更識楯無にはよく情報提供をするのにS.M.Sはコンタクトを取っており、その時祐人から____

『更識家の女性は本人の許しが無い限り、下の名前で呼んじゃいけないらしいぜ。詳しくは俺も知らねえが、由緒正しい家だとやっぱ色々あんのな』

____とざっくり説明された事があった。

「専用機名は“打鉄弐式(製作途中)”って表記されてるけど…何処で作ってるんだ?」

だが、いくら探しても製作してるのはどこなのか分からなかった。他の代表候補生の専用機の製作先はきちんと明記されている点から、いくら日本の『暗部』の家系であるとはいえ、製作先を隠すことは出来ない筈だ。これ以上調べられない事が分かると、パソコンを閉じ、塾考するための装備(質のいい煎茶が一夏のジャスティス)を準備すると、一口飲んでから思考モードに入っていった。

 

数日後、一夏が廊下を歩いていると、簪が前からこちらに歩いてきた。一夏は軽く会釈するも、少女はガン無視だった。

「何もそこまで嫌わなくても…」

「おぉ?少年、この花園でとうとうナンパを始めるおつもりかな?」

「いくら俺が気に入らないからって、会釈くらい返してくれても良いじゃん…」

「あれ?先輩を無視とはいただけないなぁ〜。今ならまだ許してあげるから返事しよっか」

「ハァ、一樹でも誘って食堂でやけ食いするか…今度こそアイツには飯食わせないと…」

「あの、織斑君?そろそろ反応してくれないとお姉さん、困るんだけど…」

「えっと、電話電話っと」

「泣くわよ?年甲斐もなく泣くわよ?こんな所で私が泣け叫んだら女尊男卑な今時、あなたが負けるわよ?それでも良いの?」

「…ハァ」

さっきから必死で無視していた対象に、漸く視線を向ける一夏。

「…何の用ですか」

「君、あの子の事調べてるみたいだね。女の子のプライベートを覗くなんて、良くないゾ?」

「…(プライベートは覗いてねえだろうが)」

表情にこそ出さないが、一夏の内心はイライラがとっくに最高潮に達していた。それでも目の前の迷惑極まりない動物は一応…一応!先輩なので仕方なく相手をする。

「…んで、そろそろ本題に入ってくれませんかこのクソアマ。これから食堂に行きたいので手早くお願いしますねこのクソアマ」

「語尾と圧が隠しきれてないわよ〜先輩にそんな態度で良いのかな〜社会に出た時大変よ?」

扇子には『無礼』の二文字があるが、先に無礼な事をしたのはどちらだろうか。

「…あの子に嫌われてる事に関しては仕方ないにしても、アンタに礼節を説かれる謂れはねえな…」

「あら?意外に短気なのかしら?短気な男の子はモテないわよ?」

「生憎、短気じゃなくてもモテない男を俺は知ってるので。ソイツ曰く、『結局必要なのは顔なんだよな…整形でもしねえ限り俺には彼女出来ないのかよチクショー‼︎』だそうですけど?」

ちなみに『』の発言は弾が中学時代に言っていた言葉だ。ちなみにこの発言の後、一樹に____

『いい奴として認識されてるだけまだ希望があると思うけど…』

____と悲しげに言われた瞬間、0.2秒の速さで綺麗な土下座を決めていたのは別の話。

「妙にリアルな発言ね…ちょっと同意しそうだから何も言えないわ」

「そうですか、ではまた」

「いや、話はまだ終わってないからね?」

「チッ…」

舌打ちすると、目線だけで楯無をさっさと話せと圧をかける。

「この間の提案、どうだったかな?」

「もう最悪も最悪。こんな人権って言葉も知らないメス猿の下にいなきゃいけないとか苦痛過ぎる」

「…流石の私もそろそろ怒るよ?」

「街に出た事あるか?こんな言葉しょっちゅう聞くぜ。お前ら女が言ってるのはもっと酷いのもあるが、聞きたいか?」

「…女尊男卑の世の中、その程度の言葉で怒るなんて大人気ない」

「…小学校4年からずっと聞かされてても、そんな事言えるか?あまり自分勝手な事してんじゃ…オゴッ⁉︎」

「へ?」

思わず間抜けな声が出る楯無。自分に強烈な怒気を向けていた男子の脳天に、拳が落ちてきたから無理もない。

「…いつまで経っても部屋に戻らねえって雪から連絡があったから探してみたら…何やってんだテメエ?」

一夏の後ろから、見るからに不機嫌そうな一樹が現れた。

「いってえ…気配消してくるのは反則だぞ?」

「…うっさい。早く食堂に行け。こちとら“クソアマ”の“勝手な”判断のせいで忙しいんだ。さっさと飯食って部屋に戻れ」

「は、はい!」

言葉の節々から感じられる一樹の怒りに、一夏は猛スピードで食堂へ向かった。

「…アンタも食堂に行った方が良いんじゃねえか?いくら生徒会長でも門限みてえなのはあんだろ?」

「そういうあなたこそ、いつも何もしてるのかしら?巡回して女子生徒を襲ったりなんかしてないでしょうね?」

あからさまに警戒心を顔に出す楯無。そんな楯無に一樹は呆れながら話す。

「防犯カメラ見てるんだろ?俺が入った事があるのは第4整備室、1-1教室、アリーナ、管制室、屋上、一夏の部屋、この4つ以外では精々男子用トイレと食堂くらいだ。何か言い忘れてる所はあんのか?」

「……」

「この数ヶ月、水のシャワーで体を洗って、クソ暑い中冬服しか着れず、洗濯もこのご時世に手洗いだ。挙げ句の果てには食堂で飯を食おうにも追加料金80%…ほぼ2倍の値段ときた。これ以上まだなんかあんのか?え?人権って言葉を辞書で引いてこいよ。これら全てを教頭と決めたIS学園最強の生徒会長さんよぉ」

憎々しげに楯無を睨むと、整備室へ帰ろうとする一樹。その一樹の背中へ…

「…ッ‼︎」

専用IS、ミステリアス・レイディを完全展開し、水の槍、碧流旋を一樹に突き刺そうと猛スピードで突進。だが________

「…」

一樹は見もしないでジャンプ。バック転で楯無の突進を避けると面倒くさそうな顔でため息をつく。

「ハァ…」

その表情のまま、指を鳴らした。

パチンッ!!!!!

指を鳴らした意味も考えずに楯無は再度突進する。一樹の体が一瞬光る。Ex-アーマー、フリーダムが装備され、背面飛行で楯無の攻撃を避けながら他に人のいないアリーナへ移動する。

「(一夏に言った言葉思い出してくださーい、生徒会長さん…)」

頭に血が上っているのか、ナノマシンは使わずに碧流旋のみで攻撃してくる楯無。アリーナ上空へ着くと、一樹もビームサーベルを抜刀。ビーム刃を出したり引っ込めたりと、あくまで防御に専念する。

「遊んでやるよ。生徒会長さん」




では、また次回お会いしましょう。

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