「アストレイ・ゼロの性能は理解出来たか?雪」
「うん!最高だね、この機体」
「換装すれば地球上で活動出来ない所はほぼ無いからな。まあとりあえず…」
アストレイ・ゼロに繋げられているパソコンを操作。アストレイ・ゼロのバックパックをM1ブースターにした。
「基本はコレで良いだろ。アストレイ・ゼロの性能とのバランスも良いし」
さらに標準装備であるビームライフル、ビームサーベル、シールドも忘れない。
「あれ?かーくん、シールドは要らないんじゃない?」
「悪いな。コレ付けとかないと安心出来ないんだわ」
IS戦闘歴よりMS戦闘歴の方が長い一樹にとって、シールドエネルギーで身を守るISであっても物理シールドは外せないのだ。
「…一応ISにはビームシールドが標準装備されてるよ?」
「アレはエネルギー喰うから多用出来ないぞ。物理シールドとビームシールドの両方持ちしとけば防御分のエネルギーが減るのは間違いないし。それに雪は右利きだろ?」
「え?うん、そうだけど?」
「両利きでもない限り、両手に武器を持って同じ様に扱うのはかなり訓練が必要だ。シールドならそこまで細かい作業を考えないで済むから持っとけ」
「かーくんがそこまで言うならそうなんだね。分かった。メインはこれでいくね」
アストレイ・ゼロの細かい設定を終え、雪恵と社長室に行く一樹。一夏は格納庫でマードック達と麒麟の整備に行っている。雪恵はノックもせずに扉を開ける一樹に驚く。
「ちょ、かーくん!ノックしないと!!」
「……え?何で?」
本気で分からなそうな顔をする一樹に、雪恵は叫ぶ。
「いやだって社長室だよ!?普通そんな風に入ったらクビだよ!?」
「……なあ雪。
「してないよ!!
「…つまりウルトラマン関係のみに制約されてるんだな」
「そういうこと…って話を逸らさないで!!」
「いや、逸らしてねえよ。じゃ、改めて自己紹介だ」
「…え?」
呆然とする雪恵を置いといて、一樹は社長席の前で立ち…
「S.M.S『社長』の櫻井一樹だ。世間には学生が社長やってるって知られたら面倒だから2人いる副社長の内、年齢も上の『ジェフリー・ワイルダー』が社長って事になってる。ちなみにもう1人は…」
一樹は雪恵の後ろを指差す。雪恵が後ろを向くと、爽やかな笑顔を浮かべたイケメン青年が立っていた。
「S.M.S『副社長』の櫻井宗介。苗字が一緒なのは従兄弟だから。これからよろしく___ぐべらしゃ!?」
自己紹介中の宗介の頭にプラスチック製のハンマーが落とされた。
「バカ兄貴!また女の子口説いてんのか!!いい加減にしろ!!理香子さんがどれだけ悲しむか分かってんのか!?」
「ちょ、柚希ちゃん!宗介は口説いてないよ!!」
宗介の頭にハンマーを落とした張本人の茶髪で小柄な美少女と、その少女をなだめている黒髪ロングのこれまた美少女が雪恵の前に現れた。
「…雪、こういう光景はS.M.Sではよく見るから早めに慣れる様に」
「無理だよ!!IS学園より数多いんでしょ!?」
「心配すんな。IS学園よりずっと平和だ」
「どこが!?」
「…じゃれてる装備がピコピコハンマーとかだから」
「「「「……ごめん(なさい)」」」」
一樹の遠い目に、その場にいた全員がすぐさま頭を下げたのだった。
「き、気を取り直して!俺を呼ぶ時は一樹と混合…はしないか雪恵さんの場合。まあ、好きに呼んでくれ」
気を取り直した宗介が自己紹介を締めると、すぐに少女達も自己紹介を始めた。
「さ、櫻井柚希です。このバカ兄貴とは悲しいことに実の兄妹です」
「柚希さん?お兄ちゃんそろそろ泣いちゃうよ?」
「たはは…」
目の前で行われる兄妹のじゃれ合いに苦笑する雪恵。
「なんか…かーくんと舞ちゃんみたいだね」
一樹とその義妹のノリを思い出す雪恵。
「いや、俺と舞はこうじゃなくね?…話が逸れたな。理香子、自己紹介してやってくれ」
「う、うん。瀬川理香子です。S.M.Sでは主に事務や料理を担当しています。よろしくね」
「ちなみに俺の彼女」
宗介が宣言すると、理香子は恥ずかしそうに顔を赤らめた。
「…平和だなぁ」
「平和だねぇ…」
熟年夫婦の様にお茶を飲む一樹と雪恵。タイミングまでぴったしだ。
「柚希も飲むか?」
「はい!!」
後ろのイチャつきカップルをスルーしてお茶を飲む3人。終わりの雰囲気が出てるが…
「ちょっと待って下さい!まだ私が出てませんよ!!」
「あ、舞」
「「舞ちゃん(さん)!?」」
「ここで出てこなかったら、今後出番が無いじゃ無いですか!」
「「舞(ちゃん)、メタい」」
「私は義兄さんの1番近い人間ですよ⁉︎出ないと義兄さんが動きにくいじゃないですか⁉︎」
「「だからメタいって!!」」
軽く暴走をしかけてる少女、一樹と同じ孤児院で生活する高橋舞だ。
「で、一樹。一夏の学園生活はどんな感じよ?」
自己紹介を終え、宗介が気になっていた事を聞く。
「…大方予想してんだろ?」
「「「あ、やっぱり?」」」
「「ハーレム築いてるよ」」
誰がハーレム野郎だ!!!!
一樹と雪恵の言葉に、どこからか反論の声が聞こえた。
「…何か聞こえたけど?」
「気にすんな。ただの幻聴だ」
「「「気にするよ(します)!!」」」
「…ここでは割と日常茶飯事だぞ」
「そうね…よくここにはいないはずの誰かが話してるわね」
宗介と理香子が遠い目で話す。そこに一樹が具体例を挙げた。
「ある『世界』の最狂とか最凶とかムッツリー二とか性別『秀吉』とかな」
あァ!?喧嘩売ってンのかァ!?
根性入れてやるからかかってこい!!
…ムッツリーニと呼ぶな!!
ワシは男じゃ!!
「「「…」」」
「な?だから慣れろ」
「「「はい…」」」
「さて、そろそろ時間だな。行くぞ雪、一夏」
「うん!」
「おう」
弾達との約束の時間が近づいたため、S.M.S本社から出ようとする3人。そこでS.M.Sの上着を脱ぐ一夏を見て、雪恵は不思議そうな顔をする。
「なんで織斑君は上着脱いでるの?コレ快適じゃん」
「…アイツがS.M.S隊員だって知られないためだよ。知られたら色々面倒な事になるしな」
「…あ~、納得。それじゃ私もコレ脱いだ方が良い?」
「ああ。俺もコレ脱がなきゃな」
一樹はそう言って上着を脱ぐと、嫌々IS学園冬服を羽織る。例の如く前のボタンは全開けだが…
「さて、行くか」
3人は正面玄関に向かった。
FBスタジオには弾以外の全員が揃っていた。
「ようみんな」
「「「「一夏!雪恵(さん)と何してたか教えなさい!!!」」」」
合流して早々修羅場る一夏。泣きそうな顔を一樹に向ける一夏だが…
『ISを使うor危険な場合以外止めん』
と、アイコンタクトで告げられてしまった。
『そんな殺生な!?』
『文句あんならとっとと潰すか誰か決めろ』
『…え?ちょっと待って。決めろって何を?』
『………』
とうとう無視を始めた一樹。数分間、一夏の修羅場は続いた。
「おーい一樹!お待たせ!!」
あ、初めまして。俺、五反田弾って言います。なんか追憶編以来出番無かったんですけど、一応ザ・ワン事件の後、一夏と一緒にS.M.Sに入隊してたんですよ?で、今俺は待ち合わせの30分前に待ち合わせ場所に着いたんですけど、そしたらもう一樹と一夏がいるんすよ!?やば、コレ遅刻になっちまうのかな!?
「心配すんな弾。まだ待ち合わせの30分前だ。IS学園のモノレールの都合上、この時間に来ただけだ」
俺の表情を読んだのか、一樹が説明してくれた。良かった~ん?
「げっ!?鈴!?」
「げげっ!?弾!?」
「「うわぁ…息ぴったし」」
弾と鈴の顔合わせの反応の見た一樹と雪恵の反応がコレだった。
「「「「(あなた達の方が息ぴったしだけど!?)」」」」
一樹と雪恵以外の全員の心がひとつになった瞬間だった。
「ま、何でも良いや。とにかく入ろうぜ」
FBスタジオに入り、受付に声をかける一樹。
「すみません、予約していた櫻井ですが…」
「櫻井様ですね。会員カードはお持ちですか?」
「はい」
一樹が会員カードを渡すと、店員の顔色が変わった。営業スマイルから、驚愕へと…
「こ、このカードは!?あの企業にしか使用できない筈の…すいません、店長を呼んできますね」
「ええ、お願いします」
苦笑いを浮かべながら促す一樹。一夏と弾もバレない程度に苦笑いを浮かべていた。すぐに店員に連れられて店長が来た。店長は一樹と一夏と弾の顔を見ると、すぐに笑顔を浮かべて近づいてきた。
「これはこれは、お久しぶりです一樹さん」
「お久しぶりです店長。今日あの部屋使えますか?」
話しながら紙に『一夏と弾が隊員なのは言わないでください』と書く一樹。店長もそれを確認するとすぐに紙を懐に入れた。
「ええ。あの部屋はS.M.S専用ですから。鍵はこちらになります」
「ありがとうございます」
こうして、軽音部としての活動が始まる!!
では、また次回。