人と光の“絆”   作:フルセイバー上手くなりたい

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敵は、ビーストや溝呂木とは限らない…


Episode44 受難-サクリファイス-

彼の孤独、彼の苦悩、彼の痛み、俺はそれを、まだ半分も理解出来てなかった…なのに____

「一樹…」

 

「フゥゥゥ…アッ…グォォ…」

何とか立ち上がろうとするウルトラマン。だが、力が入らず、中々立ち上がれない。そんな時、箒が気づいた。

「外の世界が⁉︎」

ウルトラマンがメタ・フィールドを維持出来なくなってきたのか、メタ・フィールドが破れ始め、外の世界が見えてきた。しかも、よりによって街のすぐ前に…

《ギシャアァァァ‼︎》

ゴルゴレムはメタ・フィールドの破れに気づき、外に向かおうとする。

「フッ⁉︎シュアァァァァ…アァッ」

ゴルゴレムが外に向かおうとしてるのに気づいたウルトラマンだが、体が言うことを聞かず、立ち上がれない。メタ・フィールドはなんとかゴルゴレムの進行を食い止めているが、ゴルゴレムがぶつかる度にメタ・フィールドの破れが広がっていく。

『ウルトラマンのバトルアビリティが著しく低下している⁉︎多分そのせいでメタ・フィールドの維持能力が落ちてるんだよ一夏‼︎』

『じゃあシャルロット!この空間もいつまで維持出来るか分からない訳⁉︎』

「みんな!メタ・フィールドが残ってる内に俺達でゴルゴレムを倒すぞ‼︎俺が奴の気を引くから、セシリアがバニッシャーで倒してくれ‼︎」

『わ、分かりましたわ‼︎』

一夏はクアドラブラスターを撃ち、ゴルゴレムの気を引き、ストライクチェスターとウルトラマンから離した。その隙に、フルパワーのストライクバニッシャーを放つセシリア。しかし…

《ギシャアァァァ‼︎》

ゴルゴレムは無傷だった。

『そんな!今度は確かに直撃したのに⁉︎』

『ストライクバニッシャーじゃ威力が足りないって事⁉︎』

つまり、ウルトラマンでなければゴルゴレムは倒せない…そうこう言ってる内に、再びメタ・フィールドの壁にぶつかり始めるゴルゴレム。

「ちくしょう‼︎」

 

壁に突進を続けるゴルゴレム。どんどんメタ・フィールドの破れが広がり、あと少しで完全に破れてしまう…

「フゥゥゥ…アァッ」

尚も必死に立ち上がろうとするウルトラマンだが、体が言うことを聞かない。

 

「ちくしょぉぉぉぉ‼︎」

δ機に乗る一夏はひたすらクアドラブラスターやミサイルでゴルゴレムを攻撃する。ストライクチェスターも一夏に続いて猛攻撃を開始する。が、やはりゴルゴレムは怯むだけだ。一夏達の猛攻撃に慣れたのか、ゴルゴレムは攻撃を無視して外に向かおうとする。

 

「シュ!ヘェアッ‼︎」

何とか起き上がったウルトラマンはセービングビュートでゴルゴレムを拘束。

「フゥゥゥ…」

《ギシャアァァァ⁉︎》

ゴルゴレムを引っ張るウルトラマン。ゴルゴレムは何とか耐えようとするが…

「シェアァァ‼︎‼︎」

ウルトラマンは渾身の力でゴルゴレムを引き寄せる。ゴルゴレムは大きく弧を描き、メタ・フィールドの大地に叩きつけられた。

《ギシャアァァァ⁉︎》

「フッ、フッ、フゥ…」

ふらふらながらも、何とか立ち上がったウルトラマン。ゴルゴレムは起き上がり、再度外に向かおうとする。

《ギシャアァァァ‼︎》

ウルトラマンはそれを阻止するために、両腕にエネルギーを貯める。

「フッ!シュウゥ‼︎フアァァァァ…フンッ‼︎デェアァァァァ‼︎‼︎」

残った力を全て振り絞って放ったオーバーレイ・シュトロームを受けたゴルゴレムは水色の粒子となり消滅した。ウルトラマンは一夏達に頷くとメタ・フィールドを解除しながら消えていった…

 

「ゴフッ…」

変身を解いた一樹だが、既にその体に限界が来ていた。ストーンフリューゲルを呼ぼうとブラストショットに手を伸ばすが、天に撃つ前に気絶した。そんな一樹を、一夏が見つける。

「一樹‼︎」

気絶してるのを確認すると、δ機の後部座席にそっと乗せ、IS学園に向かって飛んだ。

 

翌日…IS学園保健室で、身体中に包帯が巻かれた一樹がいた。保健医の話では、生きてる方が不思議と言うほど身体中に傷があるらしいが、一樹にとっては今更なことだ。

「一樹…大丈夫か?」

見舞いに来た一夏、シャルロット、ラウラ。ウルトラマンの正体が一樹だと知っている者達は、一樹の体が限界だと言うことを悟っていた。

「さあ…どこから大丈夫って言えば良いのか分からねえけど、何とか生きてるよ…ウグッ⁉︎」

皮肉げに笑いながら話す一樹だが、話すのですら、傷口が開くのか、脂汗が止まらない。無理も無い。ストーンフリューゲルで直しきれない傷が人間の手で完治するなら苦労はしないのだ。そこに、新たに人が入る。

「櫻井…」

「かずくん…」

千冬に束だ。2人とも、悲痛な表情を浮かべている。

「束さん、このデータを使ってください」

一樹は震える手で束にUSBメモリを渡す。

「…これは?」

「俺の…いや、ウルトラマンの必殺光線のデータです。昨晩の戦闘を見れば分かる通り、俺の体はそろそろ…そうなる前に、一応人類を守る手は打っとこうかと…まあ、簡単にやられるつもりも無いですけど」

力なく笑う一樹に、束は悲しげな顔で礼を言う。確かに、束の頭脳だけではビーストに対抗出来ないので、専門家である一樹のデータはとても重宝する…が、そんな考えしか出来ない自分を束は嫌悪した。

「…ごめんね」

ただ一言残して、束は保健室を出て行った。束が出ると同時に、一樹も傍に置いてあったエボルトラスターとブラストショットを手に取ると、ジャケットを羽織って出ようとする。

「お、おい一樹!どこに行くんだよ‼︎」

「…あの四足歩行型を倒したからって安心は出来ない。いざと言う時に対応出来る様に外に出る」

「待て櫻井!お前の体はもう限界なんだぞ⁉︎」

「だが千冬。現段階で俺以上にビーストに対抗出来る奴がいるか?」

「くっ…」

思わず黙る千冬。確かに一樹の言う通り、ISの攻撃が通用せず、唯一戦えるクロムチェスターですら、ビーストを倒す事が出来ない…

「で、でも櫻井君!君がいなくなったら悲しむ人だって「いねえよ‼︎」ッ⁉︎」

「何の罪も無い、皆のアイドルだった女の子を実質的に殺した俺がいなくなって悲しむ人だぁ?いる訳ねえよ‼︎俺が死んだら呪いが解ける様にアイツが起きるってなったら皆俺が死ぬ事を望むだろうよ‼︎ハッピーエンドなんざ絵空事だ‼︎皆が笑って終わる素敵なハッピーエンドなんざ起こらねえんだよこのくそったれな現実は‼︎」

「だ、だが、櫻井!現に一夏はお前に協力してるだろう⁉︎」

ラウラが必死に一樹を説得する。今の一樹を行かせてはならないと、本能が告げていた。

「…ああそうだな。訂正しよう。確かに全くいない訳じゃねえな」

「なら「なあ、ラウラ」…なんだ?」

「仮に、とても優しく、誰でも救おうとするヒーローがいたとしよう」

「…ああ」

「ソイツの前にはあと少しで助けられ、光の道を歩けるヒロインがいる。だが、それを邪魔しようとする敵がいる。そうなったらヒーローはどうする?」

「…敵を倒して、ヒロインを助ける」

一樹の例に出した人物に、実際に助けられたラウラはそう答えるしかなかった。

「ああ、それで良い。その選択は間違っちゃいねえよ」

一樹は、そう答えると保健室を出て、扉を閉めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうね。アンタは今ここで死んだ方が人の為ね」

「!?」

一樹が声の聞こえた方を向くと、強力な空気の塊が飛んで来て、一樹を吹っ飛ばした。

「ッ!!!?」

空気の塊…衝撃砲を最大出力で撃った鈴は甲龍を完全展開、2門の衝撃砲を連続で放つ。

「ガアァァァァ⁉︎」

空気の流れを察知出来る一樹だが、今の体ではろくに回避も出来ない。されるがままの一樹を鈴は掴み、窓に向かって投げる。ISと同じ素材で出来た窓は割れはしないが、ただでさえ重症の一樹の内蔵にかなりダメージを与える。

「グゥッ⁉︎」

さらに鈴は瞬時加速を利用した両足蹴りを放つ。ISと同じ素材の窓が割れ、一樹は4階から蹴り落とされる。

「ゴッ…」

「まだまだ終わらないわよ‼︎」

空中でただでさえ動きが取れない一樹に鈴は衝撃砲を連射する。

「ガアァァァァ⁉︎」

4階から落とされる+衝撃砲2門の連続攻撃と普通の人間なら即死級の攻撃を受けても一樹は何とか生きている。だが…

「あらあら、思ったより頑丈ですわね」

動けない一樹に向かって容赦なくミサイル型ブルーティアーズを撃つセシリア。一樹は震える手でブラストショットを撃ち、ミサイルを迎撃するが…

「ブルーティアーズは全部で6機ございますのよ‼︎」

残った4機のブルーティアーズを射出、一樹を囲んで一斉射撃。重い体でなんとか致命傷は避ける一樹だが、四肢に…特に未だ完治していない左腕にビームが掠った。

「…ッ!!?!!?」

声にならない悲鳴をあげ、前に倒れこみかける一樹。だが、紅椿を纏った箒の膝蹴りが容赦なく入った。

「ガハッ⁉︎」

恐らく瞬時加速で近づいてきてきたのだろう。ISのアシストだけでは無いその威力に一樹の体はグラウンドを横断した。

「ゴホッ、ゴホッ、ガハッ…」

口元を手で抑えると、吐血してるのが分かる。

「…貴様は一夏の護衛役としてこの学園に来たはずだ」

箒が話してる間も休む暇無く一樹をビットで攻撃し続けるセシリア。しかも一樹の挙動から左腕を庇ってるのが分かると、そこを集中的に狙う。

「ッ!!?!!?」

何とか左腕はくっ付いているが、これではいつまで耐えられるか分からない。

「しかし現状は何だ?」

雨月に空裂を構え、一樹に過去最高濃度の殺気を放つ箒。

「ビーストが現れても、第一線で戦っているのは一夏を筆頭に私達とウルトラマンだ。貴様は何をしてる⁉︎」

そのウルトラマンが一樹なのだが、一樹にそれを説明する気はない。それ以前に気を失わない様に必死で、箒が何を話してるのか分からない。

「ゴフッ…」

「何か言ったらどうだ⁉︎」

雨月を勢いよく振り下ろす箒。エネルギー波が一樹に迫る…




ボロボロの彼を襲うのは、今まで自分たちを救ってくれていたのが『ウルトラマン』だから。

自分たちの想い人である一夏を前線に立たせて、自分は高みの見物を決め込んでいると思ってるから。

知らないとはいえ、彼女たちのやっていることは兵器で生身の…更に生きてるのが不思議なほど大怪我してる青年を『消す』こと。
今まで一夏に向けて何度もISで襲いかかっている彼女たち。一夏は白式が自動で絶対防御を発動していたから死ななかっただけ。ISを装備出来ない彼がそんな攻撃を受け続けていたら…

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