人と光の“絆”   作:フルセイバー上手くなりたい

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ネクサス編に戻って来ました。


Episode40 闇-ダークネス-

ある夜中の森…

「ハァ、ハァ、ハァ!」

大学生くらいの女性が恐怖に顔を歪ませて走っていた。

「やだ…来ないで‼︎何よ…何なのよ⁉︎キャアァァァァァ‼︎」

 

「エリア11、ポイント4-3-4にビースト振動波を確認したよ!クロムチェスター隊は出撃して‼︎」

束の開放回線からの連絡を聞いた面々は急ぎ機体に乗り込み出撃した。

 

「現場部隊、作戦ポイントに到着しました」

『オッケーいっくん。ターゲットは見える?』

「いえ、まだ確認出来てません」

『気をつけてね。さっき……から……そ…エリ……』

「束さん?応答して下さい。束さん!…ダメだ。電波障害か…」

一夏と束の通信が切れただけではなく…

「一夏さん、ハイパーセンサーにも影響が出ていますわ」

「これじゃあ補足出来ないわよ…」

セシリアに鈴の報告を聞き、一同に緊張が走る。

「前にもあったよね?こんなこと」

シャルロットが言った事にラウラ以外が頷いた。

「…皆、静かに。何か聞こえるぞ」

ラウラの言葉に全員が黙ると、まるで獣の唸り声の様なものが聞こえた。

「(ビースト…)」

麒麟のマグナムを構え、警戒する一夏。唸り声が近づいてくる…すると

「ウワァァ⁉︎」

「「「「一夏⁉︎」」」」

何かが一夏を掴んで専用機持ち達から離す。専用機持ち達は直ぐに追おうとするが…

 

「このやろ…離せ‼︎」

不意打ちで専用機持ち達から離された一夏だが、直ぐに麒麟を完全に展開し、掴んできたモノを引き剥がした。それを視認した一夏は驚く。

「人間⁉︎」

そう、大学生くらいの女性だったのだ。しかし、唸り声を挙げる上に目の色が不気味に光っている。一夏は直ぐにハクに調べさせる。

「(ハク、目の前の人を調べてくれ…)」

『了解です、マスター』

数秒後、ハクからの報告に一夏は驚愕する。

『…マスター。目の前の女性は、既に生きてはいません…』

「…生きていない、だと…」

彼女の心臓は、もう動いていなかった…

「……御免なさい」

一夏はビームマグナムの弾を麻酔弾に切り替えて撃った。神経は意図的に生きていたらしく、女性は動きを止め、倒れた。

「一夏!大丈夫か⁉︎」

箒達も襲われはしたが、ラウラのおかげで何とかなったらしい。

「…何だってこの人達は、こんな目に…」

一夏が呟いてすぐ、地震が起きた。いや、この揺れは…

「一夏!アレ‼︎」

シャルロットが指差した方向には、6年前一樹が倒した筈のガルベロスが歩いていた。

《ギャオォォォン‼︎》

 

ガルベロスの背中を見つけた一樹。

「あのビーストは…確か…」

初めてウルトラマンに変身した時に戦ったビースト。一樹がそこまで思い出した時、崖の下から声が聞こえた。

「そう…お前が幻想世界で初めて戦った記念すべき相手さ…だろ?ウルトラマン」

 

「喰らえ‼︎」

一夏を筆頭に、IS学園組みがそれぞれの射撃兵装で攻撃する。

《ギャオォォォン…》

射撃の爆煙が収まった時、その場にガルベロスはいなかった。

「消えた…のか?」

「違うわよ一夏。木っ端微塵よ」

鈴が笑顔で言う。が、爆煙の左にガルベロスが再び現れた時、その笑顔は崩れた。

《ギャオォォォン‼︎》

「嘘…」

 

「奴は不死身だ。何度倒しても地獄から蘇る…」

一樹に背を向けたまま溝呂木は言う。しかし、一樹はすぐにそれを否定する。

「まやかしだ」

「…何?」

「あのビーストは人間を催眠状態に落とし、自在に操る…アイツ等はただ、幻影と戦ってるに過ぎない」

そこで一樹は一旦言葉を止めると、溝呂木を睨みながら言う。

「人の心に恐怖を植え付け弄ぶ…卑劣で薄汚い、いつものお前のやり口だ」

一樹の睨みを受けながらも溝呂木はその不遜な態度を崩さない。

「フッ、中々言ってくれるじゃねえか」

溝呂木は一樹の方を向くとダークエボルバーから波動弾を撃つ。一樹はそれを突き出したエボルトラスターのバリアで受け止める。両者の間に、不穏な風が吹いた…

「どうする?もっと俺と遊ぶか?それともあの連中に加勢するか」

一樹はすぐに答えた。

「お前と決着(ケリ)をつけるのはまたにしてやる。今はお前なんかより優先することがある」

溝呂木はダークエボルバーを下ろすと満足げに笑う。

「じゃあ行けよ。正義の味方さんよ」

一樹は溝呂木の言葉を無視。エボルトラスターを引き抜き、天空へ掲げた。

「だぁっ‼︎」

 

「シュアッ!」

ウルトラマンは着地するとすぐガルベロスの頭を掴む。

「フッ!」

そして一夏達から離す様に投げ飛ばした。

「シュアァァ‼︎」

《グシャアァァァ⁉︎》

 

「「「「ウルトラマン‼︎」」」」

一夏達はウルトラマンの姿を見ると、安心した声を出す。が、すぐに一夏は表情を変えた。

「(アイツはここ最近、連戦になってる。大丈夫なのか?いや、大丈夫であってくれ…)」

 

《ググググ…》

投げ飛ばされたガルベロスは、立ち上がると同時にウルトラマンに向けて左右の頭から連続で火球を放った。

「シュア!」

ウルトラマンはその火球を両腕でかき消す。

「フアッ!」

最後の火球をかき消すと、左のアームドネクサスをエナジーコアに当て、ジュネッスにチェンジした。

「フゥッ!シェア‼︎」

チェンジが完了すると同時に、メタ・フィールドを展開する。

「フアッ!フオォォォ…シュ!ヘェア‼︎」

 

「異相の終局を確認、メタ・フィールドだよ‼︎」

「…織斑先生」

『ああ、メタ・フィールドに突入してウルトラマンを援護しろ‼︎』

「「「「了解‼︎」」」」

シャルロットの報告後、一夏は千冬に確認を取る。そして千冬の指示で6人はメタ・フィールドに突入しようとする。

「ちーちゃん、それは正しい判断だよ。あの男が何も仕掛けてこなければね」

千冬の指示を後ろで聞きながら、束は呟いた…

 

ウルトラマンとガルベロスはメタ・フィールド内で睨み合う。

《グオォォォォ!》

「フッ!」

ウルトラマンはガルベロスに向かって駆け出すと、ガルベロスの左の頭へストレートキック。

「シェアァ!」

《グオォ⁉︎》

怯んだガルベロスに更に攻撃しようとするが、ガルベロスの頭突きをまともに喰らい、地面を転がる。ガルベロスはそんなウルトラマンを蹴飛ばす。

《ギャオォォォン》

「フゥオッ⁉︎」

追撃しようとするガルベロスだが、ウルトラマンはガルベロスの中央の頭を掴んで、殴り飛ばした。

「フッ!」

《グオォォ!》

 

「Set into strike formation‼︎」

一夏の掛け声を聞き、3機のクロムチェスターは合体、ストライクチェスターになる。

 

「シュアッ‼︎」

ウルトラマンはガルベロスの腕を掴むと、自らの背中を軸にして投げる。

《ギシャアァァァ⁉︎》

背中を地面に強打し、悲痛な声を挙げるガルベロス。起き上がってすぐにウルトラマンを投げようするが、ウルトラマンはガルベロスを軸に回っただけだった。

「フアァァァァ!」

数秒の間ウルトラマンとガルベロスは押し合っていたが、ウルトラマンはガルベロスの力を利用、巴投げを決めた。

「テェアッ‼︎」

《グシャアァァァ⁉︎》

そんなメタ・フィールドにストライクチェスターが突入を完了した。

「異相境界面、突破!」

「オッケーシャル。ラウラ、操縦任せた」

「了解だ」

モニターを睨んでいたシャルロットの報告を聞いた一夏はジェネレーターの状態を確認、問題が無いと判明した瞬間、ガルベロスに向けてストライクバニッシャーを撃つ。

《ギャオォォォン⁉︎》

突然のダメージにガルベロスが悲鳴を挙げる。ガルベロスが痛みで呻いてるうちにラウラはストライクチェスターをガルベロスから離し旋回、再度撃つ為に近付こうとする。

「よし、トドメだ!」

 

「織斑、いい気になるなよ」

メタ・フィールドの外で溝呂木が呟いた。

 

ガルベロスはストライクチェスターの方を向くと、左の頭の目を光らせる。

《グアァァァ!》

 

「な⁉︎コレは…」

一夏の目には、複数のガルベロスとウルトラマンが映り、どれが本物か分からない状態になっていた。

『何をしている一夏!早く撃て‼︎』

「あ、ああ‼︎」

ラウラの声を聞き、慌てて発射ボタンを押す一夏。その弾はガルベロスでは無く、ウルトラマンの足ギリギリのところに当たった。

「フゥッ⁉︎」

 

「ナイスショット」

溝呂木が嬉々とした表情で呟く。

 

「また幻覚か⁉︎」

一夏が外した理由を察した千冬は、怒りのあまり机に拳を叩きつけていた。

 

《グオォォォォ‼︎》

ストライクチェスターが近付いて来ないと分かったガルベロスは未だ呆然としてるウルトラマンを腹部にラリアット。

「フゥッ⁉︎」

怯んだウルトラマンに頭突きの要領で自らの背中に乗せると投げ飛ばした。

「グァッ⁉︎」

そして右腕を振り下ろそうとするが、それはウルトラマンの左腕に受け止められる。

「シュアッ!」

が、左腕も振り下ろし、それを右腕で受け止め、動きが止まったウルトラマンを再度投げ飛ばした。

「フゥアッ⁉︎」

ウルトラマンに突進するガルベロス。ウルトラマンはガルベロスの中央の頭を掴んで抑えると、首と首の間に右エルボー。

「デェアッ‼︎」

《クアァァァッ!》

エルボーを受け、怯んだガルベロスに左回し蹴りを放つ。

「フゥアッ!」

後ろに下がったガルベロスを掴むと、ガルベロスの右の頭がウルトラマンの左腕に噛み付いて来た。

「グァッ⁉︎グアァァァ!?」

 

「一夏、私がギリギリまで接近させる。よく狙って撃つんだ」

「…悪い。頼む‼︎」

「任せろ‼︎」

ラウラはガルベロスに向けてストライクチェスターを急降下させる。すると、今迄沢山見えていたガルベロスが一体のみになった。

「(これなら‼︎)ビースト!ウルトラマンを離せ‼︎」

一夏はガルベロスの頭部に向けてミサイルを撃った。

 

ミサイルは見事ガルベロスに命中。怯んだガルベロスはウルトラマンを離す。

《クアァァァ⁉︎》

ウルトラマンは距離を取るとクロスレイ・シュトロームを放った。

「フッ!ヘェア‼︎」

誰もがガルベロスに命中すると思ったその瞬間、メフィストが現れ、左腕でクロスレイ・シュトロームを受け止めた。

「フッ⁉︎」

ウルトラマンは身構えるが、メフィストはそのままガルベロスと一緒に消えて行く。メフィストが完全に消えると、ウルトラマンも左腕を抑え、片膝をついて消えていった…

 

「…いっくん達を襲った人達の死亡推定時刻は昨夜の22時から23時までの間だよ。さっき鑑識から連絡が来たよ」

「つまり…織斑達が到着した頃には既に…」

「うん、全員死んでたよ」

束の説明を聞いた一夏は、沙織に言われたある一言を思い出した。

『私も、私の家族も…』

「…溝呂木だ」

憎々しげに拳を握り締めながら一夏は言う。

「奴が彼女達を殺し、また操り人形に‼︎」

「だろうな…」

一夏の言葉に、今迄黙っていたラウラが語り出す。

「ただ…全ては1年前に始まっていたんだ」

「1年前?ラウラ、一体何が起こったんだ?」

ラウラは一夏の問いに答えず、司令室を出て行く。

「……」

事情を知っている千冬は、黙ってその背中を見送っていた。

 

「ハァ、ハァ、ハァ…溝呂木、お前は何を考えてやがるんだ?」

メタ・フィールドを解除し、変身も解いた一樹は噛まれた左腕を抑えた状態で膝立ちしていた。一樹が考えているのは、先程でのメフィストの行動だ。いつもなら2対1で襲いかかってきそうなのを、クロスレイ・シュトロームを受け止めただけで消えて行ったのだ。考えるなと言う方が無理だろう。

「…ここで考えても仕方ねえな。誰かに見つかる前に『飛ぶ』か」

ブラストショットを天空に向かって撃ち、ストーンフリューゲルを召喚。高速でその場から離れて行った。

 

IS学園の敷地内にある海岸で、ラウラはあるドックタグを見つめていた。そこに書かれていたのはS()H()I()N()Y()A() ()M()I()Z()O()R()O()G()I()

 

『ラウラ、コレをお前に渡す』

そう言って自分のドックタグを差し出す溝呂木。

『次に会う時まで交換だ』

『…分かった』

ラウラもそう言って、自らのドックタグを差し出した…

 

ドックタグを見つめていたラウラ。そこに…

「ラウラ」

声が響いた。

「俺はもうとっくに返したぜ」

ラウラが声が聞こえた方を向くと…

「早く俺のも返しに来いよ」

溝呂木が右の手のひらを向けていた。

「ッ⁉︎」

ラウラがレーゲンのレールカノンを展開した時には、溝呂木は消えていた…

 

ストーンフリューゲルである程度回復した一樹は千冬と一夏に連絡。情報を集めるために学園を離れていた。そんな一樹の目に、オーロラビジョンのニュースが映り、足を止めた。

『昨夜から行方不明となっていた、○○大学の学生グループが今朝、この川の下流で遺体となって発見されました。死亡したのはカヌー部の学生で、何らかの原因で転落したものと思われています』

ニュースのあまりに事実と違った内容に、一樹は驚きを隠せない。

「…もう、とっくに人々は怪獣の事を知ってるってえの」

無意識に左腕を抑えながら、一樹は再び歩き出した。その後ろでは、オーロラビジョンがまだそのニュースを流していた。

 

千冬は1人、司令室でコーヒーを飲んでいた。その表情は何を考えているのか読み取れない。そこに、ノックの音が聞こえた。

「入れ」

入って来たのは一夏だ。

「織斑先生…いや、千冬姉」

「……なんだ?」

いつもと違う雰囲気に、千冬は呼び方の事を受け入れた。

「今朝、ラウラが言ってた事なんだけど…」

「…ああ」

「『全ては1年前に始まっていたんだ』って…一体、どういう意味なんだ?」

「……」

司令室に重い空気が流れる…

「…去年の、丁度今頃、溝呂木がまだドイツの協力軍人だった頃の話だ」

千冬は話しながらコーヒーを入れ、一夏に手渡す。

「…ありがと」

コーヒーの礼を言う一夏。千冬は頷くと、話を続ける。

「深夜、スクランブルを告げるサイレンが鳴った」

 

『未確認生命体がエリア58、ポイント5-9-6に確認された。至急調査へ』

「ラウラ、思う存分暴れてやれ。お前の力ならいける」

「はい!」

 

「奴は生身でありながらISと互角以上に戦えた。だから参謀は奴を調査チームに入れたんだ。無論、その中には私とボーデヴィッヒもいた」

 

「闇の中で何かうごめいてるようだぜ。それもひとつふたつじゃない」

千冬は参謀からそのチームの指揮官として任命されていた。

「生存者の確立は?」

「無いです。この特殊な電波は、人には出せません」

千冬の質問にISレーダーで調べていたドイツ兵が答える。が、そこに…うめき声の様なものが聞こえた…

「ならコレはなんだ⁉︎」

「そ、そんなあり得ない!現にレーダーには人の反応は…」

ドイツ兵が慌てふためく中、溝呂木は違った。

「面白そうじゃねえか。ワクワクするぜ」

言葉通り、楽しそうに笑う溝呂木に千冬は忠告する。

「これはゲームじゃない。緊張感を持て」

「分かってますよ隊長」

 

「その時、溝呂木はボーデヴィッヒと2人で突入すると言った。だが私は許可しなかった。元々の作戦プランと違うからだ」

「けど、奴は千冬姉の命令を無視した…」

「…溝呂木は私に言った。『作戦なんか関係無い』と…」

 

「作戦なんか関係無い。大事なのは、この状況で誰が冷静に行けるかだ」

「…溝呂木、我々が今行っている任務は「織斑」…何だ?」

「ラウラには軍人としての才能がある。いずれチームを引っ張って行くだけの実力がな。それをこの任務で証明したい。頼む、行かせてくれ」

「…ボーデヴィッヒ、お前の意見はどうだ?」

「……やらせて下さい。お願いします」

「…良いだろう」

 

「…何故その時許可したのか、今でも分からない」

本当に何故許可したのか、自分でも分かっていなかった…しかし…

「ただ…私の心も、あの深い闇を覗いていたのかもしれない…」

 

今だ海辺にいたラウラの脳裏には、1年前溝呂木と共に突入した任務の映像が流れていた。操られ、自分達に襲いかかってくる人達。ISで死亡を確認したとはいえ、それを容赦なく撃ち抜く溝呂木…

 

「…突入から数分後、2人と連絡が途絶えた。そして…溝呂木は紅蓮の炎の中に消え、ボーデヴィッヒ1人だけが生還した。それが…1年前の事件だ。その夜、おぞましい悪魔が生まれ落ちた」

「…悪魔…メフィスト」




では、また次回

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