人と光の“絆”   作:フルセイバー上手くなりたい

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前編後編の後編ですので、連続投稿です。


Episode38 邪悪宇宙人-ワロガ-

「櫻井君、気付いてるのでしょうか…」

IS学園の保健室では、レニを診察した保険医2人が話していた。

「何を?」

「あの宇宙生命体が万が一にも倒されたら、レニの命も消えてしまうって事を…」

 

レニは一樹に頼み、レニが通っていた専門学校に来ていた。一樹が飲み物を買いに行ってる間に、レニは新聞を読んでいた。

「宇宙ステーション、完成してたんだ…」

私はここで学び、宇宙ステーション開発スタッフに選ばれて。そして…あの宇宙生命体に…

「(何もかも思い出した…けど、何のために?まだ…私を生かしておくの?)」

レニはそこで視線を感じた。辺りを見回すと黒服サングラスの男が数人程確認出来た。レニは走ってその場を去る。黒服達はレニを追う。レニが立っていた場所には、レニが大切にしていたペンダントが落とされていた…

「おーいレニ。遅くなってごめん。自販機が混んでて…あれ?」

一樹はレニがいない事に気づく。足元を見ると、ペンダントが落ちていた。それを拾い上げると強く握りしめる。

「クソッ!俺の感覚も鈍ってるってか⁉︎」

一樹は猛ダッシュでレニを探し始めた。

 

レニは黒服達から逃げ続けていた。しかし、幾ら逃げても追いかけてくる。まるで蛇の様な執念さだ。距離を測るために回りを見たレニの視界に一樹が入った。

「(ウルトラマン…)」

小声でその言葉を口にするレニ。一樹もレニを見つける。次に後ろの黒服達を見ると、レニの手を取って走り出した。2人の前に一台の車が止まり、黒服の1人が掴みかかろうとするが…

「レニ!走り抜けろ‼︎」

投げ技で黒服の1人を後ろの仲間達のとこへ吹き飛ばす一樹。そのまま黒服が乗ってきた車に飛び乗り、アクセルを全開にして逃げ切った。

 

車のGPS、隠し発信機を壊し、5キロ走った小屋で2人は休んでいた。

「ねえ、学園には戻らないつもりなの?」

レニの問いに、一樹はしばらく黙る。そして…

「俺の考えてた事は…ただの、ガキが見る夢物語みたいな物だったのかもな。女尊男卑を失くす。その為に女尊男卑の象徴とされている所にいて、ISが使える男子をサポートしようとした、なんてな…」

いつに無く弱い口調の一樹。そんな一樹を見て、レニは優しく話しかけた。

「100年前までは…宇宙ステーションの建設だって夢物語だったんだよ?」

レニはポッケから写真を取り出した。一樹に見せ、話を続ける。

「これ、私でしょ…」

「そ、それは…」

「良いの。私、後悔してない。宇宙ステーション開発スタッフになった事を…聞いて。500年前までは、地球が丸いなんて、誰も考えた事も無かったんだよ?だから…誰もが船乗り達の、大陸を探すというのを、誰もが無理だ、夢物語だなんて言ってたんだよ。100年前にライト兄弟が初めて空を飛ぼうとしたのも、初めて宇宙に行こうとしたのも、誰もが夢物語だと言った。実現するまで全部、夢物語だったんだよ…それでも、多くの名もない人達が夢物語に憧れ、命を落とし、夢を継いできた。私達が宇宙ステーションを『時の娘』って名付けたのは、自分達が、夢を継いで行く1人だって、誇りがあったなんだよ。一樹…あなたの考えも、革命家達の夢と、少し似てるでしょ?だから、あなたも夢を継いでいる1人だよ…」

「……」

ドックン。

一樹の懐でエボルトラスターが鼓動を打つと同時に、例の光の玉が地面を攻撃、地面からびっくりした様子で『ガルバス』が現れた。

《きゅい⁉︎》

キョロキョロと回りを見るガルバス。光の玉は、そんなガルバスに紫の波動を放った。

《きゅい⁉︎きゅうううう…》

波動を受けたガルバスはしばらく苦しんだが、目の色が変わり、都市部に向かって進み始めた。

 

学園ではガルバスが突如暴れ出した理由を探っていた。

「さっきの動作から見て、人に危害を加えるとは考え難い…つまり原因はあの紫の波動にあるはずだ…」

訂正、ほぼ一夏が1人で調べていた。

「…クソッ!あの怪獣の脳波が乱れてる!原因は…あの宇宙人か!!!!」

「恐らく町のタービンに向かったのだろう…近くにオルコットと凰がいた筈だ!現場に急行させろ!タービンを止めるんだ‼︎」

 

指示を受けた2人が現場に到着すると、扉のパスワードを入力しようとしてる一樹とレニがいた。咄嗟にそれぞれの射撃兵装を部分展開した2人。一樹もブラストショットを2人に向けた。

「レニさん…あなたが悪い訳では無いですが、そこを通す訳には行きません‼︎」

「…本当に悪いけど、どいてくれないかしら?」

しかしレニは、銃口を向けられているのにもかかわらず、2人の前に出た。

「私があなた達のどちらかでも、きっと同じ事をした…」

そこに、昼間逃げ切った黒服達が現れた。

「いたぞ!」

「(チッ!『暗部』まで来たか…)」

レニは黒服達を無視して続ける。

「だから…あなた達のどちらかが私でも、きっと同じ事をする筈よ…」

瞬間、セシリアと鈴は同時に攻撃した。レニの背後の扉を…

「早く行って下さい!」

「早く行って‼︎」

レニが先に入り、続いて一樹が入った。

「どういうつもりだ⁉︎」

黒服達が2人に銃を向けてくるが、2人は動じずに銃を向け返す。

「気が変わりましたの」

「気が変わったのよ」

 

タービン室に入った2人。2人とも専門家なので、阿吽の呼吸でタービン停止の動作を始める。

 

ガルバスは着々と都市部に近付く。そんなガルバスに、防衛軍が攻撃を始める。

 

『制御システム、解除しました』

一樹が持ち前のキーボード早打ちで制御システムを解除した。

「もう少し…もう少し…」

レニの方も…

『ラインに、アクセスしました。ラインに、アクセスしました』

「一樹!C2ラインをカットして!」

「ああ!」

 

ガルバスは都市部に入ろうとする。

「やめろ!そこに入ったらダメだ‼︎」

 

「一樹!メインスイッチを落として‼︎」

一樹は直ぐにメインスイッチのレバーを下ろした。

 

《きゅい?きゅい?》

タービンの電波が消えたからか、ガルバスは正気を取り戻した。ガルバスの動きが止まった事により、前に出る防衛軍。ガルバスは怯えて後ろに下がる。

「そうだ…頼む、戻ってくれ」

一夏達学園組が祈る。しかし、ガルバスの背後に光の玉が現れ、ガルバスの足元を攻撃する。まるで、早く行けとでも言う様に…

《きゅい…》

 

レニは一樹の肩を借り、現場近くの公園に移動した。到着と同時に、レニは座りこんでしまう…

「レニ…」

「行って…あの怪獣を助ける為には、あの宇宙生命体を倒すしか無い…」

「…俺には、出来ない…」

先程から、エボルトラスターがかつて無いほど強く鼓動を打っている。しかし、一樹は出来ない。あの宇宙生命体を倒せば、レニが…

「アイツを倒して、私を眠らせて…ウルトラマン…」

「………」

「あなたは優しいから、私が生きていれば、きっとアイツを倒すのを躊躇う…」

「………」

「初めて会った時から、あなたを知ってる様な気がしてた…でもそれはアイツが私に植えつけていた、偽の記憶だったんだ…」

レニの言葉を聞き、宙に浮かんでいる光の玉を見上げる一樹。

「アイツが仕掛けた、罠だったんだ…だけど、それでも私は、あなたに会えて嬉しかった…」

「レニ…」

「あなたの手で、私を人間に戻して…あの宇宙に、『時の娘』を作ろうとしてた、レニに戻して…」

一樹は無言でエボルトラスターを取り出す。その瞳から、涙が落ちた。

「ッ!!!!」

泣きながらエボルトラスターを天空へ掲げ、ウルトラマンに変身した…ウルトラマンはレニの方を向いた。レニは頷く。それを見たウルトラマンはガルバスの元へ走る。光の玉がガルバスを攻撃しようとするが、ウルトラマンはその間に入り、アームドネクサスでその攻撃を受け流した。

「ヘェアッ!」

《きゅい…》

「(ごめんな…怖かったな…もう、大丈夫だよ)」

安心した声を出すガルバスに、テレパシーで伝えるウルトラマン。そして、光の玉へパーティクルフェザーを放った。

「シェア‼︎」

パーティクルフェザーは見事命中。光の玉からワロガが出て来た。それを見て、ウルトラマンはアンファンスからジュネッスにチェンジした。

「フゥッ!シェア‼︎」

メタ・フィールドを展開しようとするが…ワロガはすうっと消えてしまった。

「フッ⁉︎」

そして、ウルトラマンの背後に現れた。

《ハアァァ…》

「フッ⁉︎」

メタ・フィールドを展開させないためだろうか。ダダを上回る速さで現れたり消えたりを繰り返しているワロガ。ウルトラマンは止むを得ず、メタ・フィールドを展開せずに戦闘することを決めた。

「ハッ!」

ワロガへと走り出すウルトラマン。先制の右ストレートを放つが、ワロガの腕に受け止められ、空いた胴を蹴られるウルトラマン。

「グァッ⁉︎」

腹部の痛みに、思わず前かがみになった背中を殴りつけられる。

「グゥッ⁉︎」

続いてラリアットを喰らい、地面に、背中を強打するウルトラマン。起き上がり、直ぐに構えるもワロガのパンチをまともに喰らってしまい、再び背中を強打した。

「グォッ⁉︎」

足を高く上げた勢いで起き上がり、構えるが、ワロガは消えていく。

「フッ⁉︎」

周囲を警戒するウルトラマン。そんなウルトラマンの背後にワロガが現れ、ウルトラマンを羽交い締めする。

「グァッ⁉︎」

ピコン、ピコン、ピコン…

コアゲージが鳴り響くが、ウルトラマンはワロガの腕を掴んで羽交い締めから逃れると、そのままワロガを投げる。ワロガは一回転して衝撃を殺すと、再び姿を消した。

「フッ⁉︎」

レニはワロガが消えた瞬間、ある一点を見つめた。そこの水面にワロガが写ったと思ったら、実体を表した。レニがバイオチップによるシンクロ能力を利用したのだ。

「許さない…」

実体を表したワロガに向けて、ウルトラマンはパーティクルフェザーを放つ。

「フッ!シェア‼︎」

パーティクルフェザーは見事ワロガに命中。怯んだワロガに両腕でのパンチを叩き込むウルトラマン。

「デェア!」

続いてストレートキック。打たれ弱いのか、ワロガはもうフラフラだった…

「フゥッ!」

必殺技の構えをしたウルトラマン。再度レニに顔を向けると、レニは頷いた。構わずにやってと言う様に…ウルトラマンも頷き返すと、エネルギーを胸に集めて、コアインパルスを放った。

「フッ!フアァァァァ…トゥアァァァァ‼︎」

コアインパルスを受けたワロガは爆散していった…

 

レニは最後、星空を見上げながら笑って消えて行く…ウルトラマンとガルバスは、静かにそれを見送った…

 

翌日、その公園に一樹は来ていた。花束を持って…

「レニ…今後の宇宙がどうなるか、ゆっくり見守ってやってくれ。レニの仲間達が、頑張る姿を」

花を供えると、一樹はその場を去っていった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ありがとう、ウルトラマン』




次回もコスモスの敵出て来ます。その後、ネクサス本編に戻ります。

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