人と光の“絆”   作:フルセイバー上手くなりたい

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今回から数話、優しさのウルトラマンに登場した方を出します。


Episode37 時の娘-レニ-

夏休みのある日の夜、一樹は学園の屋上で星を見ていた…

「やっぱり星を見るのは落ち着くな…」

そんな時。

ドックン

「ッ⁉︎」

エボルトラスターの鼓動を感じ、反応から距離があると判断、ブラストショットを天空に向けて撃ち、ストーンフリューゲルで現場へ向かう。

 

「ハァ、ハァ、ハァ」

夜の広場で、1人の少女が『ワロガ』に追われていた。そこに、ストーンフリューゲルが到着する。

「人が…クソッ!」

ストーンフリューゲル内でエボルトラスターを引き抜き、ウルトラマンに変身する一樹。

 

「フウゥゥゥ…シェア!」

《ハアァァ…》

現れたウルトラマンに向けて左腕から波動弾を撃つワロガ。ウルトラマンもパーティクルフェザーを撃ち、相殺する。

「シェア!」

ウルトラマンはワロガに殴りかかるが、ワロガは屈んで回避。

「フッ!」

再度ワロガに対峙するが、ワロガは光の球に変わり、その場から離れて行く。ワロガが完全に見えなくなると、ウルトラマンも静かに消えていった…

 

「もしもし、大丈夫ですか?」

倒れていた少女を揺り起こそうとする一樹。少女が目を開けると、凄まじい速さで身を引き、自分の身を守る様に抱える。

「いやいやいやいや!違うから!俺はただ手当しようと…」

「あなたが、助けてくれたの?」

「まあ、一応…君は誰だ?俺は、櫻井一樹」

そこでようやく安心したのか、少し笑みを浮かべた。

「私は………あれ?」

そこで少女は頭を抑える。まるで痛みに耐える様に…

 

「記憶喪失、ですか?」

翌日IS学園の司令室で、千冬等のIS学園組と一樹が保険医の先生の説明を受けていた。

「はい。彼女は何らかの衝撃で記憶を失っています。何故あの場所にいたかもそうですが、自分の名前すら覚えて無いんです…」

「彼女は何故…宇宙生命体に狙われたのでしょうか?」

 

その日の昼、少女の部屋に適当に(花屋さんにちゃんと目的を言って)選んだ花束を持ってお見舞いに行く一樹の姿があった。保健室のブザー(一夏と一樹が入って来た事によって出来た)を鳴らし、入って問題無いか聞く。丁度検査が終わったらしく、数人の先生とすれ違った。

「あ、ゆうべの…ゆうべはありがと」

「いえ…あ、これ。花言葉とか全然知らないですけど、花屋さんに聞いたので失礼な花では無いはず…」

持ってきた花束を少女に渡す一樹。

「え?本当?ありがとう!綺麗…」

「本当はこの学園が誇るイケメンに持って来させて目の保養でもと思ったんだけど…アイツいつの間にか消えてて…ごめんね俺で」

「ううん。それに…一樹さん、だっけ?あなただってブサメンって訳じゃ無いよ?」

「うん、そこで疑問系じゃなかったら良かったな」

ゆうべ出会ったばかりなのに、長年の付き合いかの様な会話だ。

「あ、そうだ。聞こうと思ってたんだけど、『IS』って何?」

「………あ、そうか」

その後、保険医の許可のもと、屋上に行き、ISとIS学園の説明をする一樹。

「女性しか扱えないって言うなら、なんであなたとそのイケメンさんはこの学園に居るの?」

「…そのイケメン…ああ、名前は織斑一夏ね。ソイツが何故かISを扱えてしまって、そのクソッタレの護衛役として俺が派遣された…と、ざっくり言えばこういう感じ」

「…織斑君ってのは仕方ないにしろ、一樹君は完全にとばっちりね」

「……分かってたけど、人に言われるとダメージでかいな…って、そのメモは何だ?」

不意に少女がメモ書きを始めたので、気になった一樹は聞いてみた。

「あ、コレ?先生がね、思いついた事を何でも良いから書いてみろって言うから…なんか一樹って名前、なんとなく聞き覚えがあるから」

「…そっか」

「それに、さっきからこの言葉が頭を離れないの」

『時の娘』

「…時の…娘?」

「うん。どこで、何をしていたか考えると、必ずこの『時の娘』って言葉が出てくるの…何かきっと、大切な言葉なんだと思うんだ…」

 

司令室では、シャルロットがワロガの映像を見ていた。

「…どうして?」

「ん?どうしたんだデュノア」

「あ、織斑先生…いえ、どうしてこの宇宙生命体が急にいなくなったのか考えてて…あれだけ彼女を狙っていたのに、ウルトラマンが現れた途端、すぐに姿を消したのが疑問に思って…」

侵略者の立場から見て、1番厄介と言えるウルトラマン。そのウルトラマンが目の前にいるのに、そそくさ退散するとは、どうしてもシャルロットは考えられなかった…

 

「あ、櫻井君」

「…へ?俺?」

この学園で一樹を呼ぶなど、数えられるくらいの人物しか考えられないので、一瞬対応が遅れた一樹。

「うん、櫻井君。この絵、何だか分かる?例の彼女に昨夜見た夢の絵を描いて貰ったんだけど、私達には分からなくって…」

そこには、カタツムリの様な形の機械が描かれていた…

 

一樹が学園のパソコンで、少女が描いた絵と似ている物をかたっぱしから検索した。そこに…

「こ、これは…」

そこに一夏が入って来た。

「お、一樹。珍しいな、お前がここのパソコン使うなんて。あ、そういえば束さんがクロムチェスターの…」

しかし一樹は、一夏が言い終わる前に部屋を飛び出した。

「おっと…何調べてたんだアイツ」

その画面を見た途端、一夏の表情が変わった。

 

「織斑先生、これを見て下さい」

司令室のパソコンに、USBを刺し、画面に表示させる一夏。

「彼女の名前はレニ・クロサキ。宇宙ステーション開発関係の専門学校卒業後、宇宙飛行士でした。4年前までは…」

「「「「4年前?」」」」

「ああ、彼女は4年前のミッションで…死亡してるんだ」

「死んでる?いやでも一夏!彼女今現在も保健室にいるんだぞ!」

ラウラが一夏に駆け寄ろうとしたタイミングで、保険医が入って来た。

「彼女の医療データが出ました。彼女は死亡後に、何者かによって前頭部に微小なバイオ・チップを埋め込まれています」

「バイオ・チップ?」

保険医は頷くと、モニターに表示させた。確かに彼女の前頭部にはバイオ・チップらしきものが確認出来る。

「彼女は…このバイオ・チップから流れる特殊パルスで、擬似生命活動を開始したんです。それから…このチップから流れる特殊パルスは、例の宇宙生命体から流れるパルスと同じものです」

「…彼女は…あの宇宙生命体によって操られている。そういう事か」

「一夏!貴様何て言い方…」

箒が一夏に怒鳴りかけるが、一夏が拳を硬く握り締めているのを見て止めた。この場の誰より悔しがっているのは、目の前で大切な人を失った一夏だった…

「先生!チップを外して、どうにかする事は出来ないんですか⁉︎」

鈴の悲痛な叫びに、保険医は悔しそうに唇を噛み締めて言う。

「チップを外せば…恐らく数分で人間としての状態に戻るでしょう…レニは、生きてはいないんです…」

 

一樹はレニが所属していた宇宙センターにいた。4年前の話を聞く為に…

「宇宙空間では、死はあっという間に訪れます。4年前のあの時、調整中だった機密バルブの異常が確認され…」

冷静に話そうとしていたレニの元同僚も、途中から涙が流れ、ゆっくりとしか話せなかった。バルブを調整中だったレニは宇宙服も無いまま、宇宙に放り出される結果になったと…

「ステーション建設には、そういう危険があると分かっていました。それでもレニは、自分の手で『時の娘』を完成させようと…」

「『時の娘』?すみません、時の娘って何ですか?」

元同僚から、レニのメモにあった『時の娘』の言葉を聞き、その意味が気になった一樹は聞く。

「…当時の建設員達は、今の宇宙ステーションを『時の娘』と、呼んでいたのです。永い地球の歴史の中で、初めて民間人も住める様なステーションを造りたい。そんな誇りや愛情が、私たちにはあったんです」

レニの同僚は、持っていたファイルから数枚の写真を取り出した。

「これは…私達が建設クルーに選ばれた時に記念に撮ったものです。良かったら、お持ち下さい」

一樹が受け取った写真を見ると、学友や教授達と笑顔で写っているレニの姿があった。

「(レニの覚えていた唯一の言葉は、彼女が命を懸けて造ろうとしたステーションの名前だったのか…)」

 

『レニの処置はコールドスリープ。それが最終決定だ』

画面の一夏は無理に作った冷静な顔で一樹に伝える。

「そんな…レニを永久に眠らせるってことか⁉︎」

『レニは…あの宇宙生命体のバイオ・チップによって動かされている…危険な操り人形なんだ…俺たちは、これ以上危険を犯す訳にはいかない…一樹、レニは生きてはいないんだ。彼女には、医療センターで記憶回復を促す治療を受けると言ってある』

 

レニはラウラ達に連れられ、医療センターに向かう…

 

医療センターに到着したレニ。これから部屋に行く…そんな所に一樹が走って来た。

「クスッ。まるであなたが治療受けるみたいな顔してる。大丈夫だよすぐ思い出すから。自分が誰で、何してたか」

レニはそう言うと、持っていたメモ帳を一樹に渡す。

「この言葉の意味が分かったら、1番最初に教えるから…それじゃ」

レニは係の誘導に従って、部屋へ向かおうとする…

「…レニ‼︎」

一樹は素早くレニに近づく。レニの手を取り、走り出す。

「行かせん‼︎」

「行かせないわよ‼︎」

レニの連れて来たラウラと鈴が通せんぼをするが…

「邪魔だ!どけ‼︎」

2人に止められる一樹ではない。素早く2人を転ばせると、一樹が乗ってきた車にレニを乗せ、アクセル全開で飛ばす。

「ちょ、どうしたの⁉︎」

「記憶治療なんか嘘っぱちだ‼︎本当の目的は…レニ、君を永久に眠らせる事だったんだよ‼︎」

一樹はミラーを見る。後ろからISを展開した鈴とラウラが追ってくる。

「レニ!ちょっと揺れるぞ‼︎」

「え?」

ハンドルを思いっきり切ると、川に飛び込む一樹。

「ちょちょちょちょ!これ車‼︎」

しかし車は普通に走り、ここが水中だと忘れてしまいそうだ…

「これならISも入れない。少し疲れたろ?寝てて良いよ」

一樹自身疲れていたのだろう。充分に医療センターから離れると眠りについた。レニも寝ようとするが、ドアポケットの写真に目が入った。その写真を見た途端…

「私は…」

レニの…

「あの事故で…」

記憶が、戻った…




コスモスは物心ついて、最初にリアルタイムで見たウルトラマンなので、この作品にはその要素がちょくちょく出ると思います。

それと、作中で主人公とそのグループが車に乗る描写が今後も増えると思います。本来、16で車を運転することは出来ません。ですが、S.M.Sの面々には『国家特別免許』が配られています。それで車、バイク等が扱えるという設定です。作中でその説明が出来れば良かったのですが、自分の能力では上手く表現が出来ませんでしたので、この場での発表と変えさせていただきました。申し訳ありません。

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