人と光の“絆”   作:フルセイバー上手くなりたい

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今回、一夏は序盤しか出ません。

それと、自分が好きなゲームのキャラを少し出しました。キャラはあまり掴めてませんけど。


Episode35 祭-フェスティバル-

「一樹、お前宛の封筒が来てたぞ」

「ああ、ありがとう」

一夏から封筒を受け取った一樹。

「…この字は」

「ああ。雪恵の母さんのだ」

一樹が封筒を開けると、そこには手紙が1通入っていた。

『一樹君、お元気ですか?実は、嬉しいニュースがあります。先日、織斑君に連れられて、箒ちゃんが雪恵ちゃんのお見舞いに来てくれました。彼女は雪恵ちゃんが生きている事を知って、とても喜んでくれていました』

手紙を読んでいると、とうとう箒が雪恵の真実を知った事が分かる。

「…そっか…」

『今度の日曜日に、一緒に食事でもどうですか?久々に私の腕をふるった料理を食べに来てください。主人も会いたがっています。決まり次第、下の番号に電話下さい。

○○-◇◇◇◇-△△△△

田中』

手紙を読み終えた一樹。顔を上げると、一夏が話しかけてきた。

「…行って来なよ。俺の事は気にするな。千冬姉だって、すぐに了承すると思うぜ」

「…ありがとな」

 

「…久しぶりに来ました。ここは」

「はは、これから毎日来てくれたって構わないよ?」

「将来ここで住むかもしれないしね」

「おばさん、さりげなく娘の将来を決めつけるのはやめましょうよ…」

一樹が頭を抱えながら言うも、田中夫妻は笑っていた。

「君のおかげで雪恵は生きてる。感謝しても仕切れないよ」

「…その話はやめましょう。終わりが見えないので」

「…分かった。では、たくさん食べてくれ」

その後、一樹は雪恵母の料理を食べ始める。

「やっぱり美味い…」

「良かった。一樹君に食べてもらうの久しぶりだから張り切っちゃって…たくさんあるから遠慮なく食べてね」

「ありがとうございます」

懐かしい味に、一樹の箸はしばらく止まらなかった。

「そう言えば、来週の日曜に夏祭りがあるらしいな」

「そうね…夏祭りと言えば…」

「俺も思い出しましたよ。アレを」

 

「ねえねえ雪恵、今度の日曜にお祭りがあるらしいんだけど一緒に行かない?」

小学校3年生のある休み時間、雪恵はクラスメイトの女子から誘われていた。

「ごめんね。もう約束してるの」

「えぇ〜また櫻井君?」

「うん!」

笑顔で答えると、一夏とチェスをしている一樹の元へ近づく雪恵。

「かーくん!今度の日曜にお祭りがあるんだって!行くよ‼︎」

「おいこら待て。俺の予定を聞け。あと一夏。チェック」

「げげっ⁉︎ならこれでチェック!」

「かーくんも浴衣着てね!」

「だから人の話を聞け。あとこれでチェックメイト」

「また負けた…だと?」

こんな事は日常茶飯事なので、女子は微笑ましく、男子は(一夏除く)軽い嫉妬を込めながらその光景を見ていた。

「とにかく!かーくんは私とお祭り回るの!これ決定なの‼︎」

「…ハァ…わあったよ。行けば良いんだろ行けば」

「そうそう!じゃあ19:00に私の家に迎えに来てね!」

「…19:30にしてくれねえか?」

「えー!絶対に「雪?」そうだね19:30が良いよね‼︎そうしよう‼︎」

時間に文句を言おうとした雪恵だが、一樹の満面の笑み(しかし目が笑って無い)を見てすぐに考えを改めた。

 

学校が終わると、いつも通り一緒に帰る一樹、雪恵、一夏、箒。

「一樹は日曜の祭り行くのか?」

「ああ、どっかの誰かさんが脅して来たからな」

「人聞きの悪い事言わないで‼︎」

一樹のおふざけに慣れた様に返す雪恵。箒はそれを見て、自分と一夏もこうなりたいなと思っていた。

 

そして約束の日…

ピンポーン

『はーい』

インターホンを押すと、すぐに雪恵の母親が出た。

「すいません、櫻井です」

『あら、一樹君?ちょっと待ってて』

その後家の中に通され、リビングに入った。

「ごめんなさいね。まだ雪恵ちゃんが着替え終わって無いの」

「…自分が指定した時間だったらどうなってたのやら…」

『お母さーん!助けて〜!』

「…どうやら浴衣が着れて無い様ですね…」

「…そのようね。ちょっと行ってくるからくつろいでて」

雪恵母が部屋から出るのと入れ替えに、雪恵父がリビングに入って来た。

「一樹君、いらっしゃい」

「お邪魔してます」

そこで漸く雪恵が来た。

「お、お待たせ…」

「遅えぞ雪。早くしねえと縁日終わっちまう」

「ちょ、感想は⁉︎」

「言ったろ?『遅えぞ馬鹿』って」

「欲しい感想じゃないしさっきより酷くなってる⁉︎」

「あーはいはい。ユカタニアッテルヨ」

「うわ適当‼︎」

 

その後、祭り会場に移動した2人。

「迷子になるなよ〜」

「かーくん同い年だよね⁉︎なんで私を子供扱いするの⁉︎」

いつでもこの2人は平常運転だ。

「いやだって…雪って…うん」

「言葉濁した⁉︎凄く気になるんですけど⁉︎」

「うるさいぞ雪。周りに迷惑だ」

「かーくんが大声出させてるんでしょォォォォ‼︎」

2人の仲の良さは近所でも有名なので、周りの人は微笑ましく見ていた。

「んで、どこ回る?」

「花火まではまだ時間あるから…縁日回ろう!」

「だから話を聞け。どこ回る?」

「金魚すくい‼︎」

「はいはい」

丁度目の前に屋台があった為、2人はそこに並ぶ。

「お!近所で有名のカップルだな!いらっしゃい!」

屋台のおっちゃんが結構大きい声で話す。

「か、カップルだなんて…」

雪恵は顔を赤らめているが、一樹は

「…と言われてますよ。お兄さん方」

自分の直ぐ後ろに並んでいた高校生のカップルに話していた。

「…かーくん、ワザとでしょ?」

「当たり前だ。俺は一夏と違って難聴じゃないからな」

 

誰が難聴だ‼︎

 

「…否定の声が聞こえたけど」

「…気にしたら負けだ。ほれ、早くやらないと迷惑だぞ」

「は〜い」

雪恵は代金を払ってポイを貰うと真剣な顔で水槽に向かう。一樹はその顔を首からかけていたデジタル一眼レフで撮った。

カシャ

「……」

カメラの音に慣れてる雪恵は気にせずに水槽を見て、タイミングを計っていた。

「…えいッ!」

素早くポイを入れたが、すぐに破けてしまった。

「うわぁぁん!かーくんやってぇぇ‼︎」

「……めんど「やって‼︎」せめて最後まで言わせろよ…おっちゃん、俺と賭けしない?」

「お?何だ何だ?」

「俺が一つのポイで10匹以上取れたら今の雪の代金返してくれ。それと1匹貰う。10匹取れなかったら2倍払うが金魚はいらない。どうだ?」

「よし乗った‼︎」

ああ…御愁傷様、屋台のおっちゃん。

「さてと…」

ポイを貰った一樹。周りの人達が息を飲む…

「ハッ!」

シュババババ‼︎

一樹のポイが凄まじい速度で動き、次々と宙に舞う金魚。そして一樹の籠に見事着水、見てた人達全員が口をあんぐりと開けている中、一樹は金魚を次々入れていく。

「も、もう良い。兄ちゃん勘弁してくれぇ‼︎」

「ん?あいよ」

約束通り、雪恵が払った代金が帰ってきた上に、金魚を1匹貰った2人。雪恵はその金魚を見てニコニコ笑っていた。

「〜♪〜♪」

陽気に鼻歌を歌いながら。

「雪、お前はしゃぎ過ぎ。袖濡れてるぞ」

「え⁉︎いつの間に⁉︎」

「金魚すくいの時だな。夢中になり過ぎてこうなってる」

先程撮った写真を雪恵に見せる一樹。確かに袖が水についている。

「だから子供っぽいって言うんだよ」

いや、一樹が年上過ぎるだけだから。しかし、それを知らない雪恵は

「うぅぅぅぅ…今日はやけ食いするもん‼︎行くよかーくん‼︎」

「…腹壊すなよ」

年相応に返すのだった。

 

「〜♪〜♪」

先程まで頬を膨らませていた雪恵だが、一樹が綿あめを買ってあげるとすぐご機嫌になった。

「(…単純な奴…)」

「ん?…あ!」

雪恵は少し向こうの友人を見つけた様だ。

「…雪、30分後に連絡くれ」

「え?良いの?」

「目の前でガールズトークされるより全然良い」

「…ありがと♪」

雪恵は友達のとこへ走って行った。一樹はそれを見送ると、自分の食べる物を買いに行った。

 

「おかしい…1時間経ってるのに連絡が来ない。まさか…」

一樹は近くのベンチに座ると目を閉じ、集中する。雪恵の気配を感知すると…

「ッ⁉︎」

急ぎ駆け出した。

 

「なんだ嬢ちゃん達。あんたらがぶつかったから服が汚れちまったじゃえねか」

雪恵達はどこかのチンピラ達に絡まれていた。雪恵は確かに一樹が出す殺気で慣れているが、雪恵自身はそこまで強くない。友人を庇う様に前に出ているが、実際は恐怖で足が震えそうだ。

「(かーくん…)」

「どうしてくれんだ?」

「どうもこうも小学生に絡むなんてあんたら暇か?」

「「「「あぁ⁉︎」」」」

やーさん達が後ろを向くと、そこには一樹がいた。

「なんだクソガキ。お前が責任持つのか?」

「責任?何の?」

「そこの嬢ちゃん達がした事の責任だよ‼︎」

チンピラの1人が叫ぶが、一樹は呆れた様な表情になる。

「はぁ…あんたら、馬鹿だろ」

ブチッ

「上等じゃあ‼︎」

一樹の挑発に引っかかったチンピラ達は各々ドスを構え、一樹に向かって走る。一樹はニヤリと笑うと

「正当防衛成立♪」

一瞬で移動した。

「「「「あれ?」」」」

チンピラ達は一樹を見失った。ちなみに一樹は雪恵の目の前にいたりする。

「よう雪」

一樹が小声で話しかけてきたので、雪恵も小声で話す。

「なんであの人達は見えてないの?」

「んーと…殺気で俺を認識出来ない様にしてるからだな」

「かーくんって…出来ない事ある?」

「いっぱいあるぞ…まあそれはともかく、雪も雪の友達もちょっとの間目閉じて耳塞いでいてくれ。30秒で終わらせるから」

「う、うん」

雪恵は友達に一樹の言葉を伝えると、直ぐに目を閉じ、両手で耳を塞いだ。それを確認すると、一樹は両手をパキパキ鳴らす。

「サンドバッグにしてやるから覚悟しろ」

しばらくお待ち下さい…

「つ、強すぎる…」

「なんだこのガキは…」

チンピラ達は一樹にボコボコにされていた。

「…お前ら、どこの組だ?」

「はっ!話すと思うか⁉︎」

「んにゃ、思わない。だから俺が知ってる組を一個ずつ聞く。真島組」

「「「「ッ⁉︎」」」」

「1発クリア」

「だ、だからなんだってんだよ⁉︎」

「こうする」

一樹は携帯を取り出す。目的の番号にかけると、相手はすぐ出た。

『かず坊!久しぶりやないか!どないしたんや?』

出たのは一樹の予想外の人物だったが。

「え?え?おじさん?」

『そうや。なんでそんな驚いてるんや?』

「だ、だってこれマサ兄の携帯じゃん」

『ああ、マサが相手が珍しくかず坊だって言うてな。俺が出た方が早いやろ?』

「そうだけど…大丈夫なの?おじさんのとこ順序とか厳しそうだし。って逃げるなごら」

こっそり逃げようとしていたチンピラ達に蹴りを入れる。更に雪恵達にこれ以降の場面を見せないために木陰へと蹴り転がす。

『…今『逃げるな』言うてたな?どういう意味や?』

先ほどまで一樹と気さくに話していた男の雰囲気がガラッと変わった。

「おじさん、○○神社の祭りに誰か出してる?」

『おう、何人か送っとるで』

「…おじさんだからありえないと思うけど、小学生の女の子からカツアゲさせるために?」

『…カツアゲしてたのはどんなやつや?』

一樹がチンピラ達の特徴を言って行くと、電話口で何かが割れる音が聞こえた。

『ソイツらは確かにウチのもんやな。俺が直々に行こうか?』

「いや、こんな下っ端だけを送るおじさんじゃないでしょ?絶対幹部格1人いるでしょ?その人は俺を知ってる?」

『…マサ。今日の祭りに送った人間はかず坊のこと知っとるか?』

『へい、今日行ってるのはシュウですからかず坊のことはよく知ってる筈です』

『…ということや。ソイツを向かわせる。すまんがそれまでそのゴミども見といてくれや』

「ごめん。忙しい時に」

『かず坊が気にすることやないで。今度メシ食いに来てくれや』

「うん。近いうちにご馳走になりに行くよ…だから逃げんなって言ってるだろ。消すぞ?」

懲りずに逃げようとするチンピラを叩きのめす一樹。

『マサ!急いでシュウを行かせるんや!ウチのゴミをかず坊に押し付けるんやないで‼︎』

『へい!』

男の言葉に、マサが走り出した音が聞こえた。とりあえず自分のやることを終えた一樹は携帯をしまった。

「て、てめえなんて事してやがる!」

震えながらチンピラ達のリーダーが一樹に怒鳴る。

「…おじさんの組を知ってるからだよ。おじさんの組は見た目こそ極道と変わらないけど、実際は下手な警察官よりカッコいいからな」

「んな事は聞いてねえんだよ!さっきは手加減してやったが、こうなったらてめえを東京湾に沈めてやる‼︎」

チンピラ達がナイフを一樹に振り下ろす。だが…

 

バギィィィィンッ!!!!

 

「「「「ガッ!?」」」」

一樹にナイフが当たるより速く、チンピラ達に拳が当たった。

「…ナイスタイミング。シュウ兄」

マサが向かわせたシュウとその腹心がチンピラ達を吹き飛ばしていた。

「…遅くなってしまいすいませんでした。一樹さん」

ゴツい見た目からは想像もつかない礼儀正しさのシュウ。一応歳下である一樹に深く頭を下げている点からもその律儀さは伺える。

「いや、俺こそごめん。見回りの邪魔して」

「一樹さんが気にすることではありません。本来、この見回りは市民がゴロツキにカツアゲされないためのですから…まさか身内がこんな事をするとは思いませんでしたが。一樹さんの連れの方にもお詫びしなければ」

「ストップストップ!シュウ兄はあいつらには怖すぎるから!色んな意味で‼︎」

「…そうですか。では」

シュウは財布から諭吉さんを取り出す。

「これで祭りをもう一度楽しんでください。それと、もし怪我などしていたら一樹さん経由で構いません。私の携帯に連絡を」

「お金それは流石に大きいから!小学校3年生だよ⁉︎英世さんにして!お願いだから!」

「しかし…」

「じゃあシュウ兄。ちょっと耳貸して」

「ん?はい」

シュウは一樹の背丈に合わせるために屈む。

「________」

「…分かりました。全力で用意させていただきます」

 

「さて、花火ももうすぐだな。行くぞ雪」

「うん…」

先程の事があるからか、元気がない雪恵。

「…雪、元気出せよ」

「でも…」

「なら帰るか?花火も見ないで」

「…その言い方ずるい」

「じゃあ俺はかえ「花火見る!見るからまだダメ‼︎」…最初っからそうすれば良いんだよ」

「はっ!流された⁉︎」

ようやくいつもの調子に戻った雪恵。一樹は小さく笑いながら雪恵の手を取り、秘密の場所へ向かう。

「雪、ちゃんと掴まってろよー」

「うん」

いわゆるお姫様抱っこをやり、ジャンプ。神社の屋根に着地した。

「かーくん、ありがとね」

「…どういたしまして」

花火が始まった。

「来年も…これからもずっと、一緒にいたいな…」

子供らしい願い。しかし、それに込められている意味はとても複雑だ。

「ねえ…かーくんはどう思う?」

「俺は… 」

一樹が言った事は、花火の音で消されてしまった。雪恵は泣きそうな顔になっている。それが悲しくて泣きそうなのか、嬉しくて泣きそうなのかは、2人しか分からない。

 

「泣き疲れて寝てやんの…」

今、一樹は雪恵をおぶっていた。花火大会の後、泣き疲れた雪恵は一樹の肩で寝てしまっていた。ちなみに現時刻は21:00。子供は寝てておかしく無い時間だ。

「…このままじゃ時間かかるな…よっと」

左手で雪恵を支え、携帯を取り出す一樹。そして、雪恵の父親に電話をかける。

『もしもし?』

「すみません、連絡遅れました。櫻井です」

『おお!一樹君、今どこだね?』

「それが…雪が寝てて…まだ○○公園なんです。迎えに来てもらって良いですか?」

『分かった。すぐに行くよ』

3分後…

「お待たせ、一樹君」

「すみません」

「いや、こちらこそすまない。送って行くよ」

「いえ、もう迎えは呼んであるんで、大丈夫です」

「そうか…気を付けて帰ってくれ」

雪恵の父親は雪恵を抱えると、家に向かって行った。一樹はそれを見送ると、指をひと鳴らし。本来の大きさに戻る(服はS.M.Sの制服に変わってる)と、家に帰った。

 

「そんなことがあったの!?」

「私たちは聞いてないぞ!?」

途中、雪恵とその友人がチンピラに絡まれていた事を聞いた2人は驚きの声をあげた。

「え⁉︎雪何も言ってなかったんですか⁉︎」

「え、ええ…」

「あの子は全く…」

我が子に呆れのため息をつく2人。一樹は苦笑するしかない。

「それで、そのシュウという人に頼んだのはなんだい?」

「それは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あいつらの記憶にずっと残る様な、盛大な花火を上げてもらうことですよ」




半分以上追憶でしたが、楽しんでいただけたでしょうか?ではまた次回。

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