一樹が通話を切った後、一夏達は顔を見合わせていた。
「…なあ、一樹の用って、なんだと思う?」
弾の疑問に、一夏は考える。しかし、答えは出なかった。
「…別に深く考えること無いんじゃない?学校休むって言ってたけど、そもそも進学するつもり無いんだからあまり欠席日数とかも気にして無いだろうし」
鈴の見解はあまり詮索しないことだった。確かに、一樹には触れて欲しく無い事がたくさんある。一夏が知ってる以上にあるだろう。しかし、一夏は気になってしょうがなかった。
「(無茶しなきゃ良いんだけど…)」
普段、鈴やクラスの女子に言われてる自分だが、それでも思わずにはいられなかった…
「今用意出来るのはVF-0だけか…」
一樹(体は普通に戻した)はS.M.Sにいた。主要な機体は皆宇宙に上がっているので、コレしか陸に無いのだ。
「…一応、S型は1機、A型は2機ある…苦し紛れだけどゴーストブースターを装備するよ」
整備室では一樹と
「“フェニックス”も良い機体なんだけど…今回は相手が悪いかもな」
「カメラのハッキングで見たよ。嫌な予感がするってみんな言ってる」
佑人の言葉を聞き、どうにか出来ないかと思案する一樹。そこに、
「一樹!一夏達がロビーにいる‼︎」
「「ハァ⁉︎」」
一樹が近くのモニターを見ると、そこには確かに一夏と弾がいた。鈴は恐らく家の手伝いの為に帰ったのだろう。
「…用件は?」
「“櫻井一樹って中学生を探してくれ”が依頼内容だ」
和哉の報告に、先ほどとは違う意味で一樹は頭を抱えるのだった。
「…一夏、さっき依頼帳に書いたのは一樹の危険を感じたからか?」
ロビーで待ってる間に、普段の弾からは考えられない勘の良さに驚く一夏。
「…何でそう思うんだ?」
「…お前は確かにお人好しだけど、一樹が関わるとそれに拍車がかかってるからな…過去に何があった?」
またもや驚かされる一夏。しかし、それについては答えられない。
「過去の件は話せねえ…色々あったとしかな。あと、俺が一樹が関わるとってのは…きっと、心友だからだと思う」
「心友?親友じゃなくてか?」
「…アイツは…闇を背負ってるから…心から許せれる人は数えれるだけしかいないって言ってた…だから、心友なんだ」
「…S.M.Sなら見つけてくれるか?」
「世界の何でも屋なんだ。しかも代金はこっちの財布に合わせてくれる。まあ、嘘かどうか調べが入るらしいけどな」
S.M.Sが一樹を見つけてくれる事を望んで、一夏達はここへ来た。まさか一樹本人がここにいるとは夢にも思わなかった…
「…どうしたもんかな…」
一樹は一夏達にどう対応するか、悩んでいると、エボルトラスターの鼓動を感じた。
「…来た」
「「ッ⁉︎」」
一樹の言葉に、その場にいた佑人、和哉の顔に驚愕が走る。一樹は2人を見ると言う。
「…お前らは新宿の人達を避難させてくれ。俺は…行ってくる」
「…ああ、行ってこい」
「こっちは任せろ」
エボルトラスターの鼓動を一樹が感じる少し前、ザ・ワンは下水道の中で身体中を水色に光らせていた。
「来い…そして…俺の一部になれ!ウォォォォォォ‼︎」
新宿中のネズミがザ・ワンに集まり、ザ・ワンの体となっていった…
「ギャオオオン‼︎」
ザ・ワンは下水道から地上に向かって地面を掘り登って行った…
S.M.Sの指示で皆が避難していると、急に地面が盛り上がり、ザ・ワンが現れた。人々は恐怖し、ひたすら走る。誘導するS.M.S。しかし、誘導している中に一夏と弾もいた…
「早く!早く逃げて‼︎」
「こっちです‼︎」
中学生でありながら、冷静な状況判断であった。しかしそれを見たザ・ワンは近くのビルを壊し、一夏達向けて崩す。
「ゲッ⁉︎」
「「「「イヤァァァ‼︎」」」」
「「「「イヤァァァ‼︎」」」」
悲鳴が聞こえた一樹。見てみるとビルが市民の方へ崩れていた。一樹は走りながらエボルトラスターを引き抜いた。
「させるかぁぁぁ!!!!」
一夏達は死を覚悟した。しかし、いつまでたっても衝撃が来ない。目を開けてみると、眩い光が一夏達とビルの間に入っていて、一夏達を守っていた。
「…え?」
ザ・ワンは光がビルを抑えてるのを見て、怒る。
《俺の邪魔しようとは…さっきのガキか⁉︎》
再度、白い波動弾を撃ち、ビルの破片を攻撃。その場に大爆発が起きた。
爆発の中、ウルトラマンはアームドネクサスをエナジーコアにくっ付けた。
「フッ!シェアァ‼︎」
アンファンスからジュネッスにチェンジ。チェンジ時のエネルギーで、炎も鎮火した。
「シェア!」
ザ・ワンとの決着をつける為、ウルトラマンは構えた…
「シェア!」
『このクソガキがァァァ‼︎』
ザ・ワンに向かって走るウルトラマン。ザ・ワンもウルトラマンに向かって走る。ウルトラマンは両手をザ・ワンの頭部に振り下ろした。
「ヘェアッ‼︎」
《グシャァァ⁉︎》
続けてザ・ワンに両手のアッパーを放ち、ビル街から離そうとするウルトラマン。ザ・ワンはそれを振りほどくと、ウルトラマンから距離をとる。
「フッ!」
そこにウルトラマンはストレートキックを放つが、ザ・ワンは大して効いた素振りを見せない。ザ・ワンの両腕からの攻撃を何とか躱したウルトラマンはザ・ワンの腹部に両腕でのパンチを叩き込む。
「デェア!」
《グギャァァ⁉︎》
ザ・ワンが怯んだ所へ更に右前蹴りを放とうとするが、ザ・ワンはウルトラマンの脚を掴み、その攻撃を受け止めると同時に放り投げた。ザ・ワンはその両腕でウルトラマンを攻撃するが、ウルトラマンは必死でガード。しかし、ザ・ワンのパワーに押され気味となり、体制を崩す。そこに左腕の攻撃が来た為、ウルトラマンは吹き飛ばされる。何とか立ち上がった所に、ザ・ワンは強烈な波動弾を撃った。
《ギャァァァァ!》
「グアァ⁉︎」
ウルトラマンは波動弾に吹き飛ばされると、受け身を取る暇も無く地面に叩きつけられる。
「フッ⁉︎シェア‼︎」
『グァァァァァ‼︎』
ザ・ワンの口から波動弾が撃たれたのをウルトラマンは左に飛び込んで回避、ザ・ワンに対峙すると、ザ・ワンは更に波動弾を撃って来た。ウルトラマンは空中に飛び上がり、ザ・ワンの波動弾を回避、人に当たる可能性のあるものはアームドネクサスで受け止めた。
「シュ!シュァァァァ‼︎」
ウルトラマンが全てを受け止めたのを見たザ・ワンは、雄叫びを上げる。
《ギャオオオン‼︎》
ザ・ワンの背中が光ると、そこに新宿中のカラスが集まり、ザ・ワンの翼となった。
邪悪な翼を広げたザ・ワンを見た一夏はこう呟いた。
「あ、悪魔…」
「シェア‼︎」
ウルトラマンは巨大なカッター光線、ラムダ・スラッシャーを撃ち、ザ・ワンを攻撃する。ザ・ワンは空中で体をひねって回避すると、飛行スピードを上げた。ウルトラマンもザ・ワンを追う為スピードを上げる。2つの巨大な影は雲の中に入って行った。
「(クソッ!待ちやがれ‼︎)」
パーティクルフェザーを細かく撃ち、ザ・ワンを攻撃。ザ・ワンはそれを避けると、ウルトラマンに向けて破壊弾を連続で撃ってくる。破壊弾と破壊弾の間を潜り抜けるウルトラマン。ザ・ワンはそれを見ると苛立った声で唸る。
《(面倒くせえ…この街全てを壊してやる‼︎)》
眼下の新宿目掛けて破壊弾を連続で撃つザ・ワン。
《ギシャァァ‼︎》
「フッ⁉︎ハアァァァァ‼︎」
ウルトラマンはザ・ワンの攻撃方向に街があるのが分かると急降下、破壊弾をサークルシールドで受け止めた。
《ギシャァァ‼︎》
ザ・ワンはそれを見ると破壊弾をばら撒く様に撃つ。バリアを張ってる時間は無い…ウルトラマンは自分の体でザ・ワンの攻撃を受け止め、街を守る。
「グッ⁉︎グォッ!?」
何とか全部受け止めたウルトラマン。ウルトラマンの目の前にザ・ワンがゆっくりと降りてきた。
《邪魔ばかりしやがって…いい加減落ちろ‼︎》
破壊弾のダメージで動けないウルトラマンに、ザ・ワンは容赦なく破壊弾を連続で撃つ。
「グッ!グォォォォォ‼︎」
街を守る為に動けないウルトラマンへ、破壊弾は集中する。
「グゥゥゥ…フッ!ハアァァァァ…ヘェア‼︎」
ウルトラマンは気合を入れて破壊弾を弾くと、ザ・ワンに連続パンチ。コンボの終わりに両腕を振り下ろし、ザ・ワンを叩き落そうとする。
「シュ!ヘェア!」
《グギャァァ⁉︎》
更にザ・ワンを掴もうとするウルトラマン。しかし、ザ・ワンは横に回転する事でそれを回避、その長い尻尾でウルトラマンを捕らえると、自らに引き寄せ、羽交い締めにする。
「グッ…グァァァァァ⁉︎」
ザ・ワンは更に尾でウルトラマンのエナジーコアを強打。溢れ出た光を口で吸った。
《テメエの力…俺が使ってやる!ありがてえだろ⁉︎》
「グッ!グォッ‼︎」
尚もエナジーコアを叩き、ウルトラマンの光を奪う。両腕を押さえつけられてるウルトラマンは身動きが取れない。
ピコン、ピコン、ピコン…
ウルトラマンのコアゲージが鳴り響く。人々の顔に絶望が写ったその瞬間
「「「やめろォォォォ‼︎」」」
3機のバルキリーがザ・ワンをミサイル攻撃。S型に宗介、残りのA型2機に和哉、佑人が乗っている。ザ・ワンは3機に破壊弾を撃つが、3機はガウォーク形態に変形し、急ブレーキで破壊弾を避けると、直ぐにザ・ワンの背後に回る。3人の視線がザ・ワンの至る所に走ると、そこが次々とロックオン表示になる。
「「「喰らえェェェェ‼︎」」」
フェニックス+ゴーストブースターに搭載されているマイクロミサイルを全て撃つ。背中で起こる爆発にザ・ワンは思わずウルトラマンを離す。ウルトラマンは直ぐにザ・ワンと距離を取ると、両腕のアームドネクサスに力を込めて振り下ろす。
「フッ!シェアァ‼︎」
2本のラムダ・スラッシャーがザ・ワンの両翼を切断、両翼はカラスに戻り、ザ・ワンは落ちる。巨大な土煙を上げながらもザ・ワンは立ち上がる。しかし、超高度から落ちた事で、流石のザ・ワンもふらついていた。ザ・ワンの目の前にウルトラマンは軟着陸、持てるエネルギー全てを使ってオーバーレイ・シュトロームを撃つ。
「フッ!シュ!ファァァ…フンッ!ヘェア‼︎」
《グッ!グァァァァァ⁉︎》
ザ・ワンは光の粒子となり、消えていく…ウルトラマンはそれを見ると、片膝をついて、消えていった…
「ハア、ハア…俺…少しは守れたか?」
倒れそうになる一樹の腕を誰かが掴む。それは…一夏だった。
「…お前、一樹だろ?」
「…一樹?誰のことですか?」
「とぼけんな。何年の付き合いだと思ってんだ。
「…」
一夏の言葉に嘘をついてる様子は無い。確かに一樹だと理解してる様だ。
「…ああ、俺は櫻井一樹だよ。どうだ?驚いたか?自由自在に体の大きさを変えれる化け物だって俺を拒絶するか?学校の皆に言うのか?」
「…俺は気にしない。どんなに体が個性的でも、お前は『櫻井一樹』っていう人間だから…ただ、ひとつ頼みたい事がある」
一夏は…一樹の体の事を知っても、心友として付き合うと言う。一樹はそれを聞き、思わず笑顔になる。笑顔のまま一夏の言葉を待つ。
「…俺と弾を…S.M.Sに入れてくれ‼︎」
この言葉をきっかけに、一夏、弾は一樹の体の特徴を知り、己の体を鍛え、下手な軍人では相手にならない程鍛え上げられた。EX-ギアの操縦もこなした為、一夏は後の基礎となったのだった…これが、一樹が光を得た経緯と、一夏の強さの証だ…
書き溜めが無くなったのでまた更新頻度は落ちます。ご了承下さい。