だけど序盤シリアス。
「…ここは?」
一樹が目覚めたのは、清潔感漂う、ほぼ白一色の部屋だった。
「…病院、なのか」
そこに雪恵の両親が入って来た。2人は一樹を見ると顔を歪ませる。
「一樹君!大丈夫か⁉︎」
「私達の事分かる⁉︎」
「え、ええ…分かりますよ。おじさん、おばさん」
2人の剣幕に一樹は少し驚きながらも応える。
「良かった…君だけでも助かって…」
雪恵の父親の小さな声を一樹の優れた聴覚は捉えてしまった。
「
しまった、と顔に出す雪恵父。
「…落ち着いて一樹君。傷口が開いちゃう」
雪恵母が一樹を落ち着かせようとするが、一樹は止まらない。
「雪はどうしたんですか⁉︎まさか…」
「大丈夫だから!雪恵ちゃんは大丈夫だから‼︎」
そこに看護婦が来て、一樹が目覚めているのを見ると、急いで医師を呼びに行った。その後、医師が一樹に色々質問をする。一樹はその意味が分かった。頭を強く打った場合の記憶能力を調べているのだ。全部をすらすら答える一樹に医者はほっとした様子を見せる。
「
一樹をベットに寝かせると、雪恵の両親を部屋の外に出す。一樹はベットから動かず、全神経を耳に集中させた。
『娘さんの状態ですが…』
『はい…』
『外の損傷は彼が守っていたおかげか、傷1つありません。しかし、脳への衝撃は殺しきれなかったのでしょう…脳死状態です』
『そ、そんな…』
一樹は愕然とした…
「そんな…守りきれなかった…また…」
『現在の医療では、このままの状態で生かすことは出来ます。しかし、完治は絶望的かと…』
医者も唇を噛みながら話しているのが一樹にも分かった。雪恵の両親もそれが分かってるのか、医者を責めることはしなかった。
『生かしておくことは…出来るんですね?』
『はい…』
『しかし、コストがかかると…』
『……はい』
「そんな…雪が…脳死?俺が…守りきれなかったから?う、ウワァァァァァァァァァァァァ‼︎」
泣きながら絶叫する一樹。話を聞かれていたと気づいた医者が部屋に飛び込む。
「櫻井君!落ち着くんだ‼︎」
精神安定剤を一樹に打ち込むが、一樹の体にそんなものは効かない。絶望に憑かれた一樹はただひたすら雪恵の両親に謝り続ける。
「ごめんなさい…雪を…守りきれなくて…俺が…生き残っちゃって…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…」
安定剤が功をなさない一樹の体は、そのまま心を潰そうとしてるかの様に、それを続けていた…そんな一樹を雪恵の母親が抱きしめる。
「謝ることは無いわ…一樹君は、私達のとこに雪恵ちゃんを連れて来てくれたのよ?私達があなたを恨む筈無いわ」
「妻の言う通りだ。本来なら形も残らない状態になっていた筈の雪恵を、外傷が無い状態で君は守ったんだ…君が責任を感じる事は無い」
しかし、そんな優しい言葉も、一樹には逆効果でしか無かった。こんな素晴らしい人達から、最愛の娘を奪ってしまったから…
「ごめんなさい…ごめんなさい…」
「一樹…大丈夫か?」
あれから数日後、一樹の元に一夏が千冬と共に見舞いに来た。脳死…幼い一夏にはその意味は分からないが、死の文字があるだけで少なくとも良い話で無いのだけは分かった。
「ああ…俺は、大丈夫だよ…」
身体中包帯が巻かれている一樹。目は外を向いていたが、何も見てなかった。
「…学校の人にはこう話してくれ。『櫻井一樹が崖から落ちそうになったのを庇って代わりに落ちた』ってな」
「ッ⁉︎それでは‼︎」
千冬はすぐに察した。雪恵が落ちた理由を、自分にして、生徒達のはけ口の役を担う…一樹はそう言っているのだ…
「これで…学校の人達は恨む相手が出来る…人の精神は…はけ口が無いとやっていけないからな」
一樹は普段から学校中の生徒達が鬱陶しがられていた。雪恵という、美少女と仲が良いのがその理由だ。これで、生徒達が一樹を攻撃する絶好の理由が出来てしまうのだ。
「…少しずつでも、償っていかないと…」
「…箒には真相を話すよな?」
「いや、話さない」
「「⁉︎」」
「…俺が…平和な生活を望んじまったバチが当たったんだ…受けるさ。恨みを、全部」
結局、一夏は学校には話さなかったが、匿名の手紙が学校に届き、その話が出回ってしまう。しかも、“脳死”と書いておらずに“死亡”と書いてあったので、教師陣もそれを鵜呑みにしてしまい、生徒達に流した。それが…田中雪恵事件の真相だ。生命維持装置等の費用は一樹が慰謝料として毎月雪恵の両親の講座に送っている。入院した当日以降、一樹は雪恵の両親と顔を合わせていない…見舞いに来ても、一樹は部屋に入れなかったからだ。そして、運命の時を迎える…
「かーくん、こっちこっち!」
一樹の頭は、これを夢だと理解していた。が、一樹はその雪恵について行く。深い森を、どんどん奥に進んで行った。そこに、大きな遺跡があった。遺跡の中に雪恵は入っていく。一樹もそれに続くと、遺跡の壁には、無数の絵が描かれていた。しかし、絵の内容は一樹の頭には入らず、ただただ、雪恵の後を追っていった…
「これに触って」
雪恵が示したのは、石碑状態のストーンフリューゲルだった。一樹は雪恵に頷くと、ストーンフリューゲルに触れる。その途端、一樹は光に包まれ、ストーンフリューゲルに入って行った…
「ウワァァァァァァ⁉︎」
ストーンフリューゲルの中、何も無い空間に一樹はいた。そして、一樹の目の前に、ウルトラマン(アンファンス)が現れた。
「君は誰だ?君が俺を呼んだのか?」
ウルトラマンは頷くと、光の粒子となって、一樹の中に入って行った。
その瞬間、遺跡の外に暗雲が現れ、暗雲の中から3つの頭を持つケルベロスの様なビースト、『ガルベロス』が現れた…
見てれば分かるツッコミどころ