人と光の“絆”   作:フルセイバー上手くなりたい

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Episode25 突入-ストライク・フォーメーション-

「沙織!沙織‼︎」

どうして沙織がこんな所にいるのか、その時の俺は、まるで理解出来なかった。by一夏

「織斑…君?」

ゆっくりと瞼をあける沙織にホッとする一夏。

「沙織、大丈夫か、怪我は無い?」

「う、うん…」

そう言ってゆっくりと起き上がろうとする沙織。

「あ〜良かった。けどさ、なんだってこんな場所に?」

ここは一応IS学園敷地内の筈。なぜ生徒では無い沙織がここにいるのだろうか?沙織はそれに答えずに右手を見る。そこには、名前が彫られたドッグタグが握られていた。一夏がそれを確認すると、こう書かれていた。

「“ラウラ・ボーデヴィッヒ”…ラウラ?」

そこにタイミング良くラウラが現れた。

「一夏、起きたのか…ん?なぜ一般人がこんな所に?」

「さあ?ところで、ラウラ。これお前のだろ?何故か沙織…彼女が持ってたんだが…」

「ん?見せてみろ」

ラウラが一夏からドッグタグを受け取り、見ると、表情を険しくさせた。

「貴様!コレをどこで手に入れた⁉︎」

「…え?」

「答えろ!どこで手に入れた⁉︎」

いきなり沙織に怒鳴るラウラを見て、思わず間に入る一夏。

「おい、落ち着けってラウラ…痛っ!」

感情が高ぶっているのか、一夏を殴り倒すラウラ。

「お、織斑君⁉︎」

急に殴られた一夏を心配し、近付く沙織を見ながらラウラは呟く。

「会ったんだな、溝呂木に…」

 

一樹は目の前に流れてる清水を手ですくって飲む。その頭に、昨夜の戦闘が思い出されていた。

 

「フッ、フッ、フッ…」

ピコン、ピコン、ピコン

『フッ!トゥオ‼︎』

ファウストの矢じり型光弾を右に飛び込んで避ける。

「シェアッ!」

お返しとばかりにパーティクルフェザーを撃つ。パーティクルフェザーは見事ファウストの右足に命中した。

「フッ!ハッ‼︎」

『グッ⁉︎グゥゥオォォォ!?』

痛みに苦悶するファウストを見、クロスレイ・シュトロームを撃つウルトラマン。

「フッ!シェア‼︎」

ファウストは左手からバリアを張り、それを受け止める。

『まだまだ楽しませてくれると言うことか…』

そう言い残すと、ラフレイアと共にファウストは消え、ファウストが消えたことにより、ダーク・フィールドも解除された。ウルトラマンはそこで力尽きた様に消えていった…

 

「あのビーストがまだ生きてるだと?」

管制室では千冬が麻耶から報告を受けていた。

「はい、学園に設置されたレーダーがあのビーストの波形を感知しました。どうやら、櫻井君はメタ・フィールドで倒し損ねた様です。おそらく、あの黒い巨人に邪魔されたのでは無いかと…」

「フォローしなくても大丈夫だぞ山田先生。誰も櫻井を責めはしないさ」

千冬の言う通り、昨夜戦闘に出た誰一人、ウルトラマンを責めようとは思わなかった。

 

東京東武総合病院のある病室に、沙織はいた。しかし、目は虚ろで、何も見てはいなかった。ラウラはその様子を見て、どうしても納得が行かなかった。

「(何故あの場所にいたか記憶が無い…か。確かにISで心拍数を計らせても、嘘をついている様子は無かったが…教官に報告しとくか…)」

携帯電話を取り出し、『教官』と登録されている番号にかけた。数コールで相手は通話に出る。

『私だ』

「教官、話したい事があります」

『織斑先生だと「いえ、ドイツ軍時代の話が関係しているので」…何?』

「おそらく、彼女は溝呂木に会っています」

『ッ⁉︎それは本当か‼︎』

「確証はありませんが、おそらく」

『…我々も、警戒しとかねばな』

「ええ…アイツは必ず何か仕掛けてくる…そういう男ですから」

 

一方、一夏は沙織の見舞いに来ていた。

「色々、あの眼帯を付けた子に聞かれたけど、昨日部屋で絵を描いていたこと以外、何も覚えてないの…どうして私あんな所にいたの?」

沙織の疑問に一夏は応えられない。むしろ一夏もそれを知りたいのだ。

「織斑君、私…怖い」

そう呟く沙織。一夏は思わず手を握っていた。

「心配しなくて良い。俺が…ついてるから」

沙織はその一夏の肩に頭を寄せ、安心した様子で一夏に礼を言う。

「…ありがと」

「…どういたしまして」

「…ねえ、織斑君こそ、何故あそこにいたの?」

この質問に一夏は止まる。今、弱まってる沙織に話しても良いのだろうか?数秒考えるが…

「…悪い、箝口令が敷かれてるんだ」

結局、話せなかった。

「…そう。IS学園、頑張ってね」

「ああ、ありがとう」

 

「殲滅不可能…ですか?」

病院から戻ってきた一夏を含め、専用機持ち全員が指示を受けていた。何故か一夏とラウラ以外疲れ切った顔をしているが…

「はい。殲滅に成功した場合、あのビーストが含有している相当量の花粉が拡散するのは間違いありませんから」

麻耶の説明に鈴が疑問を持つ。

「あの可燃性ガスが理由ですか?」

「いえ、それだけではありません」

麻耶はコンピューターを操作し、花粉の成分をモニターに表情させた。

「付着することで、瞬時に気化し、高熱を発するんです。その温度に人の皮膚は耐えきれません」

麻耶の説明を聞き、一夏がある事に気付く。

「それが…風にのったりすれば…」

山田先生は再びコンピューターを操作し、花粉の拡散予想図を表示させる。

「密度は水素並みです。拡散速度を考えると、風下だけで済む筈がありません」

「ウルトラマンの力を借りるしか無いのか…」

箒の呟きに、麻耶は頷く。

「ええ。幸いと言って良いのかは分かりませんが、ビーストの防御力自体は低く、私達の攻撃でも倒すことは出来そうです。だからあの時ウルトラマンは攻撃を止めたんですね」

麻耶の呟きに皆納得する。確かにあの時ビーストに攻撃が当たっていれば、とんでもない事態になっただろう。

「とくれば、やはりあの戦闘機の操縦を皆が覚えるしか無いな」

千冬の言葉にギクッとなるのが若干名。箒、セシリア、鈴、シャルロットだ。

「あ、あんなのそうそう覚えきれません!」

「わたくし達は射撃を担当します‼︎」

「軍でももう戦闘機なんて扱わないのに‼︎」

「ぼ、僕達には荷が重すぎます‼︎」

先程までこの4人は千冬指導の元、束が送ってきた戦闘機、“クロムチェスター”シリーズの操縦方法を叩き込まれていたのだ。

「ほう…ボーデヴィッヒは覚えられたぞ?ドイツ軍にも、あんな戦闘機は無かったのにだ」

「「「「ウグッ!」」」」

「織斑に至っては自分の手足の様に扱っていたな」

「「「「ウググッ‼︎」」」」

「さあ、やる気の問題だ。なあ織斑」

千冬に問われた一夏は正直な事を言う。

「あのな…アレは戦闘機の中で1番操縦が覚えやすく、しやすいタイプだ。しかもありがたい事に、ISが自動で専用スーツに変形してたから、通常…あのタイプだと10Gかかるところを車と同じレベルで済んでんるだ。ありがたいと思えよ」

「「「「アレで簡単なの⁉︎」」」」

その後、千冬にみっちり操縦方法を叩き込まれ、自信が付いたセシリアが一夏に挑むが、全てにおいて圧倒された為、指揮官機であるα機には前列に箒、後ろの指揮+単独、及び合体時の攻撃+万が一の時の操縦係りに一夏、通信性能の高いβ機にセシリア、鈴。装備武装が最も多いγ機をシャルロット、ラウラが搭乗することが決定した。

 

東武病院の病室で、沙織は震えている。

「どうして…織斑君と初めて会った時のこと思い出せない」

沙織の目は虚ろになっていて、何も見ていなかった…

 

IS学園から少し離れた森でラフレイアが現れた。それはIS学園のレーダーで察知され、すぐにいつもの面々が機体に搭乗する。

「く、クロムチェスターα機、出る」

α号のメイン操縦者は箒。一夏は万が一に備え、集中力を取っておく必要があるからだ。

「クロムチェスターβ、行きますわ」

β号はセシリアがメイン操縦。鈴がモニターと睨めっこしている。

「クロムチェスターγ、行くよ」

γ号はシャルロット。持ち前の器用さを生かし、すでにγ号を一夏程では無いにしろ、扱える様になった。3機は外へ飛び出す。一般の人に見えぬ様、束が乗せたシステム(一樹提供)であるミラージュコロイドを使って現場へ急行した。

 

ラフレイアの進行方向で、一樹は待ち伏せしていた。が、一樹の表情は暗い。

「またファウストは現れる。今度あの闇に呑まれたら…いや、そんなこと考えても仕方ねえ。やるしか無いんだ」

エボルトラスターを引き抜き、天空へ掲げ、ウルトラマンへ変身する。そこへ、クロムチェスター隊が到着する。

「(一樹…)」

一夏はウルトラマンを見ると、それに変身している青年の身を案ずる。

「フッ!シェア‼︎」

アンファンスからジュネッスにチェンジし、メタ・フィールドを展開するウルトラマン。

「シュウ!ファァァァァ…フッ!ヘェアァ‼︎」

光のドームはクロムチェスター3機を避ける様に広がった。

「私達の身を案じてくれてるのか?」

「その気持ちはありがたいのですが…」

「気持ちだけ受け取っておくわ!」

 

メタ・フィールドがチェスター3機を避けるように広がるのを管制室も見ていた。

「櫻井君…あの子達の身を案じてあんな事を?」

「…アイツの気持ちを無視する様で良心が痛むな」

 

それぞれの思いを持ちながら、一夏は指令を出す。

「Set into strike formation‼︎」

「「「「了解‼︎」」」」

ストライクチェスターへ合体。急加速していく。

「ジェネレーター、コンタクト!」

箒がブースターを上げる。

「メタ・ジェネレーター、臨界まで89%…95、臨界到達」

ラウラがγ号のモニターを見て、全員に通達する。

「メタ・フィールド境界面との異層同期、開始を確認」

シャルロットがラウラに続いて報告、メタ・フィールドへの突入を開始する。数秒後…

「ぬ、抜けた!」

「ここが…メタ・フィールド、ですの?」

「なんか昔の遺跡みたいな感じね」

「同感だ」

初めてメタ・フィールドに入った面々が話している中、一夏はラフレイアと戦うウルトラマンを見つけた。

 

ウルトラマンはラフレイアの突進を受け止め、押し返すと右回し蹴りを放つ。そこでストライクチェスターに気付くと、驚いた声をあげる。

「フッ⁉︎」

しかし、すぐに気を取り直し、ラフレイアと対峙する。

『本当に楽しませてくれるな』

「フッ⁉︎」

ウルトラマンの後ろに、いつの間にかファウストがいた。

『ダメージの残る体で、自らの墓場を作るとは』

ファウストはウルトラマンをチラリと見ると、ダーク・フィールドを展開する。

『フンッ!デェアァァ‼︎』

 

「黒いウルトラマンまで⁉︎」

シャルロットが驚きの声をあげると、ラウラがモニターを見て、別の事に驚く。

「異層が書き換えられてる、だと?」

「どういうことだラウラ!説明してくれ‼︎」

一夏が切羽詰まった声で問う。この空間が危険だと直感的に分かったのだろう。

「メタ・フィールドがプラスの終局だとしたらここはマイナスの終局。黒いウルトラマンが異層情報を書き換えて自分に有利な空間にしたと言う事だ」

「つまり…ウルトラマンには不利って訳⁉︎」

「長居は無用ですわね」

セシリアの声に皆が同意する。一夏も違った意味でそれには同意した。

「(この空間に長くいれば…一樹が危ない‼︎)」

 

ファウストは大振りのパンチにキックを連発してくる。ウルトラマンは受け止めたり、屈んだりしてそれを避けると、隙を見て、強烈なフックパンチを放つ。フックパンチを喰らい、怯んだファウストに続けて回し蹴りを放つ。

「フッ!ハッ!」

『グッ⁉︎』

ラフレイアの背後にストライクチェスターが迫り、ラフレイアの至る所に一夏の視線が行き、ロックオンされていく。

「ロックオン、スパイダーミサイル、発射‼︎」

しかし、いくら発射ボタンを押してもミサイルが発射されない。

「ッ⁉︎どういうことだ!ラウラ!調べてくれ‼︎」

「エンジンが異層の変化について行けずに異常過熱している!放熱が追いつかない⁉︎」

ラウラの悲鳴混じりの報告を聞き、すぐに判断を切り替える。

「ならストライクバニッシャーだ!」

そこで機体が大きく揺れる。

「今度は何だ⁉︎」

「メタ・ジェネレーターが臨界を維持出来ない⁉︎」

今度はシャルロットが悲鳴をあげる。一夏は素早く判断、鈴に指示を送る。

「鈴!ストライクバニッシャー用のジェネレーターをそっちに回してくれ‼︎」

「わ、分かった!」

「ですが一夏さん!それではストライクバニッシャーが⁉︎」

「予備のジェネレーターに1発分チャージしてある!1発あれば充分だ‼︎」

 

ストライクチェスターでハプニングが起きてる間も、ボロボロになっているウルトラマンをラフレイアとファウストが集中攻撃、起き上がれずにラフレイア側に転がったと思えば、ファウスト側に転がったりを繰り返していた。

「グッ!グァァァァァ⁉︎」

『フフフフ…』

倒れているウルトラマンを強引に立たせると、背後から羽交い締めにし、ラフレイアを向かせる。

「グッ⁉︎グァァァァァ!?」

ピコン、ピコン、ピコン

コアゲージが鳴り響くのを見た一夏は箒に指示を出す。

「箒、操縦変わってくれ」

「あ、ああ…」

箒が操縦桿を離すと、一夏はストライクチェスターをウルトラマンのラフレイアの間を飛び、急上昇する。一瞬、一夏とウルトラマンの視線が合わさり、互いを信頼してるかの様に頷いた。ラフレイアの上空へ行くと、今度はラフレイアに向けて急降下、砲塔をラフレイアの花粉弁に向ける。

「ストライクバニッシャー!ファイア‼︎」

ストライクバニッシャーが撃たれると同時にウルトラマンはファウストに肘打ちを喰らわせ、羽交い締めから抜け出すと、ファウストをラフレイア向けて投げ、ジャンプでその場から離れる。

「シュア‼︎」

『グッ!』

ファウストはラフレイア爆発の影響をまともに受けた。

『グッ!グォォォォォ⁉︎』

ラフレイアの爆発によってダーク・フィールドは解除される。急な異層変化にストライクチェスターはついて行けず、落ちていく。

「クソッ!ダメだ!コントロールが出来ない‼︎」

「脱出システムも作動しない⁉︎」

一夏が必死でコントロールを取り戻そうとするが、機体は言う事を聞かない。ラウラが強制脱出させようにも、システムがブラックダウンしているので、作動しない。このままでは墜落する。全員が覚悟を決めた…

「…あれ?」

「何故、衝撃が来ない?」

「止まって…ます」

「っていうか、どんどん上に来てるんだけど?」

「助かってるん…だよね?」

「ああ、その様だ。右を見てみろ」

ラウラの言葉に全員が右を見ると、ウルトラマンがストライクチェスターをキャッチしていた。

「ウルトラマン!」

一夏の言葉に頷くとそっと地面にストライクチェスターを下ろし、光の球になって、空高く飛んで行った…




やっぱりかっこいいなぁ!空中キャッチ!

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