沙織は一夏と散歩した夜、自分の病室で子犬達が遊んでるいる絵を描いていた。
「♪〜♪〜♪」
ご機嫌良く鼻歌を歌いながら。
「今日は織斑君と散歩出来た♪また行けると良いな。IS学園で忙しいのは知ってるけど…また天然ジゴロ発揮して女の子を落としてないと良いなあ」
…時既に遅しです。
その時、沙織の後ろで何かが割れた音がした。沙織が振り返って見ると、一夏と写っていた写真を入れていた写真立てが落ちて割れていた…
「あ!」
沙織はそれを拾い上げる。
「痛っ!」
ガラスの破片が指に刺さった様で、右手の人差し指から血が出ていた。沙織はその指を見ると、目が虚になり、何かに引かれる様にベランダに行く沙織。その様子を、何かが見ていた…
「よし、今日のIS実習は模擬戦を見て貰う。織斑、用意しろ」
「あ、はい。相手は?」
「いつもの相手だ。既にお前はこの2クラスの代表候補のレベルを超えているからな」
「「「「ウグッ!」」」」
そう、白式が麒麟になってからは誰も一夏に勝てないのだ。
「分かりました。来い!白式‼︎」
麒麟を纏い、指定ポイントへ向かう。タイミング良くフリーダムもピットから出ると、その灰色の装甲を鮮やかな白をベースとした色に変わった。
「お互い、変わってからは戦ったことなかったよな」
「だな。テストとかで色々あったし」
「…言っとくが、手加減は無しだぞ?」
「それは保証しかねる。慣らし運転も兼ねてるからな。最初の内は慣らしだ」
「あ、それはオッケーだ。俺ももう少し慣らし運転したいから」
『試合開始!』
アナウンスと同時に2人は動き、一樹はフリーダムのライフル、一夏は麒麟のビームマグナム(ライフルモード)を同時に撃ち、また回って撃つ。2人は無意識に円滑運動をしていた。それはISでも射撃型のバトルスタンスなのだが、ISをマニュアル制御しなければ出来ないので、初心者はなかなか苦労する。が、一夏は最初からフルスピードで回っている。4人の代表候補でさえ、最初からフルスピードは出来ない。見ている生徒全員が口をあんぐり開けているとも知らず、2人は戦い続ける。一夏はフリーダムのレールガンを麒麟のシールドで受け止め、ビームサーベルを抜刀、スラスター推力を上げてフリーダムに接近、一樹もビームサーベルを抜刀、一夏と切り結んだ後半回転し、それぞれのビームサーベルをシールドで受け止めていた。
「チィ…」
「やるな一夏!」
2人が離れ、再び対峙した瞬間、エボルトラスターの鼓動を感じた一樹。
「一夏、悪いが今日はここまでだ」
「へ?」
急いでフリーダムを森に向かって飛ばす一樹。一樹が急ぐ理由を察した千冬はすぐに指示を出す。
「織斑!デュノア!ボーデヴィッヒ!すぐに震動波を確認しろ‼︎」
「「「ッ⁉︎」」」
3人が確認した途端、学園の外にラフレイアが出現した。
「ビースト⁉︎」
一夏が叫ぶ。すぐに避難アラームが鳴り、生徒はすぐ動く。一夏は麒麟をラフレイアに向けて飛ばす。それを見て、専用機持ちが全員飛ぶ。
「一夏!何をしている⁉︎」
「危ないですわよ⁉︎」
「早く逃げなきゃ⁉︎」
事情を知らない3人が止めようとするが、シャルロット、ラウラの態度を見て、何かを知ってると察し、ついて行く。
「あのビーストは…」
巨大な花弁の様な物が目立つビースト、ラフレイアを見た一樹の印象は、今までのビースト程パワーは無いが、厄介そうだと言う事だ。エボルトラスターが光り、ラフレイアの情報を一樹に流した。
「!コイツは…危険すぎる‼︎」
すぐ後ろに気配を感じ、ブラストショットを撃つ一樹。何もいなかった筈のそこにファウストがいた。ラフレイアはファウストが出た瞬間、地面に潜り姿を消した。
『フハハハハ…』
「ファウスト…何故俺につきまとう⁉︎」
『その姿では私と戦えまい…纏え光を!』
一樹はファウストから離れようとするが、ファウストは手から波動弾を出し、それを許さない。ブラストショットで対抗しようにも、ファウストは拳でそれを受け止めてしまう。
『いつまでその姿でいるつもりだ?私の作る、無限の闇がそんなに怖いか?』
「何故それほど俺との戦いを望む⁉︎」
ファウストはそれに答えず、波動弾を再び撃つ。一樹はそれを避けるとエボルトラスターを取り出す。が、引き抜くのをためらう。
「(あの闇の空間…あの中にいたら、今度こそ…)」
ファウストはそれを見て、さらに波動弾を撃つ。一樹はその爆風の中、エボルトラスターを引き抜いた。
「ッ!」
ウルトラマンに変身した一樹を見て、ファウストは満足気に笑う。
『フフフフ…それで良い。楽しませてくれよ』
「フッ!」
そこに一夏達が到着した。
「巨人が…2人?」
「ウルトラマンとその反対の震動波の巨人だね」
「何か、睨み合っている様だが…」
ウルトラマンとファウストは睨み合いながら円を描いていた。
『フンッ!』
先に動き出したのはファウストだ。ウルトラマンを掴み投げようとするが、ウルトラマンはそれを払う。さらにファウストは回し蹴りを放つが、ウルトラマンは屈んでそれを避け、飛び蹴りを放つが、ファウストは両腕でガード。着地したウルトラマンの一瞬の隙に殴りかかるが、ウルトラマンはギリギリ避けた。ファウストは続けて大振りのパンチを連続で放ってくるのを時に屈み、時に受け止めると、ファウストの腕を掴み、投げるウルトラマン。ファウストはその勢いを側転で殺し、対峙する。ウルトラマンのストレートキックをバック転で避けると、不気味に笑いながら姿を消した。
『フッフフフフ…』
「ファッ⁉︎」
ウルトラマンの背後に隠れていたラフレイアが地面から出て来た。
「ビースト⁉︎」
『総員、攻撃開始!』
「「「「了解‼︎」」」」
管制室にいる千冬の指示でラフレイアにそれぞれの射撃攻撃をするが…
「シュウ!」
ウルトラマンが攻撃とラフレイアの間に入り、アームドネクサスでそれを止めた。
「な、何でだよ⁉︎」
一夏が思わず叫ぶと管制室から通信が入る。
『そのビーストを攻撃してはダメです‼︎』
「何故ですか山田先生⁉︎」
箒が麻耶に問うと麻耶はこう答えた。
『そのビーストの花弁の中には可燃性のガスが充満しています‼︎そこで攻撃すればこの学園に被害が‼︎』
「クソッ!どうすれば⁉︎」
その時、ラフレイアが花粉を振り撒く。
「フッ⁉︎シュ!ヘェア‼︎」
それを見たウルトラマンはアンファンスからジュネッスにチェンジし、メタ・フィールドを展開する。
「シュウッ!ファァァァァ…フッ!ヘェアァ‼︎」
花粉もメタ・フィールドに送られた為、学園に被害は無かった。
「(…一樹…)」
「(櫻井君…)」
「(櫻井…)」
ウルトラマンの正体を知る者が心配する中、ある人物が通信してきた。
『もすもすひねもす〜いっくんに箒ちゃん、聞こえる〜?」
「「束(姉)さん⁉︎」」
「シュゥゥゥ…」
メタ・フィールド内ではウルトラマンとラフレイアが取っ組み合っていた。ウルトラマンはラフレイアを押し、メタ・フィールドの岩盤にぶつけ続け、ラフレイアにダメージを与えて行く。
「シュア!」
ラフレイアを離し、一旦距離を取ると、ストレートキック。ラフレイアの重い体を吹き飛ばした。
『フフフフ…』
メタ・フィールドの地面が歪み、そこから先程消えた筈のファウストが現れる。
「フッ⁉︎」
『フンッ!デュァァァ‼︎』
メタ・フィールドがファウストの波動に侵食され、ダーク・フィールドと化す。
「フッ!」
『デュ!』
ファウストがウルトラマンに向かって走る。右回し蹴りを放つが、ウルトラマンは両腕でガードし、逆に右ストレートキックを当てる。
「ファ!」
『グアアァァ‼︎』
更に殴りかかろうとするウルトラマンだが、ファウストはその勢いを利用し、投げる。ウルトラマンは何とか着地するが、ファウストの両手に、首を掴まれてしまう。
『フアァァァァ‼︎』
「フッ⁉︎」
そのまま振り回され、蹴飛ばされるウルトラマン。すぐに起き上がるが、横からラフレイアの花粉が飛んできて、苦悶するウルトラマン。
「グァ!ウァァ‼︎グゥ‼︎」
『フフフフ…』
『束さんからお得情報!何と君達がいっくんを先頭に連結すれば、ウルトラマンの作り出すメタ・フィールドに入れるよ〜』
「マジっすか⁉︎」
一夏が驚きの声をあげる。つまりはウルトラマン=一樹の援護が出来ると言う事だからだ。
『うん!もちろん指揮は先頭のいっくんだよ!指令コードは“Set into strike formation”だよ‼︎』
束の言葉と同時に、連結パターンがそれぞれのISに送られる。正直、先頭が一夏、そのすぐ後ろが箒であれば問題は無い様だ。
『この配置に文句ある人もいるかもしれないけど〜これはISの性能上、仕方ないことなんだよ!白式のバックアップは紅椿じゃなきゃダメなんだよ!まあ今の紅椿だったらあんま関係無いけど‼︎』
最後の一言に箒が愕然とする。まるで、今の自分の力が当てにならないと言われていると感じたのだ。
『まあでも、慣れる為にもそれで並んで‼︎』
「「「「了解」」」」
全員が了承すると、一夏が指示を出す。
「Set into strike formation‼︎」
まず、先頭の一夏が配置に付き、その後に箒がすぐ後ろに並ぶ。すると2機の間にレーザーポインターが走る。続けてセシリア、鈴、シャルロット、ラウラの順に並ぶと、全員のISが光り輝く。光が晴れたとこには細長い水色の戦闘機があった。
「「「「えぇぇぇぇぇ⁉︎」」」」
中でコクピットに座っている全員が驚く。そうしている内にその戦闘機が地上に墜落しそうになるのを慌てて一夏が操縦桿を握り、なんとか体制を保てた。
「な、なんじゃこりゃぁぁぁ⁉︎」
『その戦闘機の名前は『ストライクチェスター』って言うんだ。本当は3機の戦闘機『クロムチェスター』から成るんだけど、いっくん以外操縦出来ないだろうから今は強引にISに詰め込んだの!あ、拡張領域は使わず束さんのところにデータはあるから安心していいよ!』
「「『出来るか‼︎』」」
束の言葉に一夏、千冬、箒が思わずツッコミを入れていた。
「フッ!ハァ!」
ラフレイアの花粉からなんとか抜け出したウルトラマンはファウストに向かって矢じり型光弾“パーティクルフェザー”を撃つが、ファウストは右手でそれを弾く。
『フンッ!』
パーティクルフェザーはダーク・フィールドの端まで行くと消えて行った。
「ん?なんだ?」
ストライクチェスターを操縦している一夏の前に突如時空の歪みが発生し、矢じり型の光弾が飛んできた。
「危ねえ‼︎」
咄嗟に操縦桿を動かし、矢じり型光弾を避けるが、それで姿勢制御を失い、落下していく。
「ウワァァァ⁉︎」
「「「「キャァァァ‼︎」」」」
『フンッ!』
「ヘェア」
ファウストの前蹴りを横にすり抜け回避するウルトラマン。パンチを放とうとするが、ファウストは屈んで避け、ウルトラマンにエルボーを食らわす。
『デュア!』
「グァッ!」
そしてすぐに一回転回し蹴りを放ってくるファウストの脚をなんとか受け止めるウルトラマン。そのまま掴もうとするが、ファウストはウルトラマンが脚を掴んでるのを逆に利用し、バック転。殴りかかるがウルトラマンはそれをガード。しかしファウストはその腕を掴み、ウルトラマンの後頭部に上段回し蹴りを放つ。
『デュア!』
「グァッ!」
怯みながらもファウストの方を向くウルトラマンに容赦なくストレートキックを放つファウスト。
『デェア!』
「グッ‼︎」
腹部に入り、片膝片手をつくウルトラマン。
ピコン、ピコン、ピコン
コアゲージが鳴り、ウルトラマンの活動限界が近いことを知らせる。
『フッ!トゥオ‼︎』
そのウルトラマンに矢じり型光弾を撃つファウスト。
「ヘェアァ‼︎」
ウルトラマンは横に飛び込み、それを避けると、お返しとばかりにパーティクルフェザーを撃つ。
「フッ!ハァ!」
パーティクルフェザーは見事ファウストの右足に命中した。
『グゥゥオォォォ⁉︎』
痛みに苦悶するファウスト。
「痛っつう…」
墜落したストライクチェスターの中で一夏は目覚める。外は明るく、朝日が昇っていた。
「気絶して朝になっちまったのか…」
前を見てみると座っていた筈の箒がいない。モニターで後ろの座席を見ても、セシリア、鈴、シャルロット、ラウラはいなかった。
「あれ?みんな?」
一夏も降り、辺りを探索する。すると、白い袖が目に入った。近づいてみると、女の人が倒れている。
「ッ⁉︎大丈夫ですか⁉︎」
急ぎ近付き、その人を起こす。すると、見慣れた顔があった。
「…沙織?」
ご都合主義万歳。
後掛け声がformationなのは仕様です。