人と光の“絆”   作:フルセイバー上手くなりたい

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さあ、始めようぜ。トラウマゲームを。

ネクサスが本格化します!


Episode23 魔人-ファウスト-

夏休みが近いある日、一夏はある病院を尋ねていた。

「すいません、斎藤沙織さんの病室はどこですか?」

「はい、405号室です」

沙織の部屋を聞き、その部屋に行く一夏。

コンコン

『どうぞ』

ノックし、返事が聞こえるのを待ってからドアを開ける。

「久しぶり、沙織」

「織斑君!久しぶり!」

斎藤沙織、美術高校に通っている女生徒で、一夏との出会いは中2の夏、弾や鈴と一緒に動物園に行った時に、一夏とぶつかってしまい、一緒に沙織が描いていた絵を拾ったとこからだ。

「急に体調が悪くなったって言うから心配したよ」

「ごめんね。ただの熱だと思ってたんだけど、お医者さんが…えと、とにかく難しい病名を言ってたから入院したの。あ、症状自体は大したこと無いから近い内に退院出来るの」

「そうか。なら良いんだけど」

一夏はその後、沙織と一緒に医師の許可の元、散歩に行き、楽しい時間を過ごした。

 

「それでな、沙織は俺を見る度に微笑んでくれるんだ…可愛かったなぁ…」

「分かった!分かったから教室で惚気るのは止めてくれ‼︎教室の皆が絶望した様に机に突っ伏してるから‼︎」

一夏に好きな人がいるのを知っていた一樹はもう慣れていたが、それをこの3ヶ月間知らなかったクラスメイト達の絶望っぷりが尋常じゃない。まるで教室全体に黒い縦線が描かれた様だ。

「(好きな人が出来ても唐変木に変わりは無いのか…)」

特にヒロインズ4人の顔が酷い。目が虚になってこっちの世界にいない。

ドックン

「ッ⁉︎」

胸ポケットにしまってあるエボルトラスターの鼓動を感じた一樹はすぐに教室を飛び出した。幸せで別の世界に行ってる一夏と、絶望で別の世界に行ってる1組の生徒達は一樹に気付かなかった。

 

IS学園近くの丘に出た一樹。ブラストショットを構えながらいつ遭遇しても対応出来る様にだ。

「(千冬には一応警戒しといてくれって連絡はいれたし、出て来ないに越した事は無いんだが…)」

瞬間、後ろに殺気を感じた一樹が側転すると、一樹がいた場所を紫色の光弾が攻撃していた。一樹が後ろを見ると、死人の様な漆黒の瞳と胸の真ん中に埋め込まれた黒いクリスタル、道化の様な黒と赤の配色。中性的な体付きに、額から斜めに伸びる2本の細長い角の人型の者がいた。

「…誰だ?」

『ダーク…ファウスト』

暗くて低い男性の声で一樹に答えるファウスト。こうして対峙してるだけでも分かる…ファウストは今までのビーストとは違う。少しでも学園から離れようと一樹は走り出すが、ファウストの闇の波動弾がそれを許さない。

『逃げても無駄だ。何故なら私はお前の影なのだから』

「影だと?」

『光と影。お前が手にした光が、私という影を創り出したのだ』

「どういう意味だ」

『いずれ分かる』

一樹はこれ以上、学園から離れられないことを悟ると、胸ポケットからエボルトラスターを取り出す。

「確かに、俺の心には拭いきれない闇がある。でもそれは!」

エボルトラスターを鞘から引き抜き、正面に構える。

「お前なんかじゃねえ‼︎」

一旦胸元へ引き寄せ、エボルトラスターを天空に掲げ、ウルトラマンに変身する。ウルトラマンはすぐにアンファンスからジュネッスにチェンジすると、メタ・フィールドを展開しようと、光のドームを作る。

『貴様に有利な空間にはさせん!闇に染まれェェェ‼︎』

ファウストは胸の前に腕を突き出してクロス。そのまま右腕を右斜め上、左腕を左斜め上に広げた。その瞬間、メタ・フィールドを展開しようとした光のドームは不気味な紫色に染まり、侵食されていく。

「フッ⁉︎」

ウルトラマンは自分が作ったメタ・フィールドが侵食されていく様子に驚く。完全に侵食されると、辺りはメタ・フィールドとは異なる、光を感じさせない空間へと変貌していた。

『フフフフ…ハハハハハ!ここは無限の闇、ダーク・フィールド。光の存在である貴様に、勝ち目は無い』

ファウストの声がダーク・フィールドに響く…

 

「この特殊震動波は⁉︎」

SHRが終わった後、一夏の白式が震動波を感知した。一夏の言葉にシャルロット、ラウラも自らのISセンサーを見る。

「なんだこれは⁉︎」

「1つはウルトラマンのだけど…もう1つはまるで…」

ウルトラマンと真逆の存在…

 

「フゥゥゥ…」

『ハァァァ…』

ファウスト、ウルトラマンが互いに向かって走り出す。両者は同時に飛び上がり、飛び蹴りの体制になる。

「デェアアア‼︎」

『ファァァ‼︎』

お互いの脚がかすり、通り過ぎる。両者同時に着地すると、すぐに向かい合う。

「シュ!」

『ハァ!』

ウルトラマンはファウストに向かって走り出し、ファウストに前蹴りを放つが、ファウストは両腕でガードし、ウルトラマンの体勢を崩させる。そのままファウストはウルトラマンの腹部を殴る。ウルトラマンは一瞬怯むがすぐに立て直し、ファウストの顔目掛けてパンチを放つがファウストは両腕を振ることでそれを回避、ウルトラマンに向けてパンチを連続で放つ。ウルトラマンは両腕を巧みに使ってファウストの攻撃を受け止めるが、ファウストはウルトラマンの両腕の間をすり抜け、右手でウルトラマンの首を絞め、左手はウルトラマンの右手を抑える。

「グ、グォォ…」

『フンッ!』

ウルトラマンを腕を振り上げ、空いた胴に強烈な肘打ちを入れる。

「グァ⁉︎」

肘打ちがまともに入ったのか、ウルトラマンの動きが止まる。ファウストはウルトラマンを掴み、投げ飛ばす。ウルトラマンはなんとか着地するが、ファウストはウルトラマンに二段回し蹴りで攻撃してくる。一段、二段とまともに喰らったウルトラマンの体から火花が散り、吹き飛び、地面に体を強く打つ。

「ハッ、ハッ…フッ⁉︎」

なんとか起き上がったウルトラマンにファウストは矢じり形の光弾を打つ。

『デュア!』

ウルトラマンはバリア“サークルシールド”を貼り、その攻撃を受け止める。

「シュア!」

ファウストはそれを見ると胸の上で腕をクロスしエネルギーを貯める。そしてそのエネルギーを天空へ上げた。

『フンッ!デュア‼︎』

「フッ⁉︎」

ウルトラマンが空を見ると、ファウストが上げたエネルギー球が空中で分裂、無数のエネルギー弾となりウルトラマンを襲う。

「グッ!グァァァァァ⁉︎」

うつ伏せに倒れるウルトラマン。それを見て不気味に笑うファウスト。

『フハハハハ!』

「グッ…グゥゥゥ」

ピコン、ピコン、ピコン

胸のコアゲージが鳴り、赤く点滅する。ウルトラマンの活動時間限界が迫っているのだ。

『フハハハハ…』

笑いながらウルトラマンに近づくファウスト。ダメージの大きさにウルトラマンはまだ立ち上がれずにいる。ファウストは右手でウルトラマンの首を絞めながら、片手で持ち上げた。

『脆すぎる』

「フッ、グッ、グォ」

自らの体重でより首がしまるウルトラマンにファウストは語りかける。

『これがお前の力か?正直期待外れだな…この闇の中で息絶え、消え去るが良い!』

ファウストの余裕からか、一瞬腕の力が緩んだ。ウルトラマンはその隙を逃さず縛りを振りほどき、一本背負いの容量で地面に叩きつける。

「フッ!シェア‼︎」

『グゥ⁉︎』

思ってもいなかったウルトラマンの攻撃に、ファウストは一瞬動きを止めるがすぐに起き上がり、ウルトラマンと対峙。連続回し蹴りを放つも、ウルトラマンは時に受け止め、時に屈んでやり過ごす。ファウストの右ストレートキックが腹部に入るが、タイミング良く力を入れていたので、大したダメージにはならなかった。

「フッ!」

『ファ…』

2人の巨人は睨み合いながら円を描く様に動く。

『ファ!』

先に動いたのはファウストだ。ウルトラマンにパンチを放つがウルトラマンはその手を受け止め、ファウストに回し蹴りを放ち、続いてニーキック。エルボーカッターで斬りつけ、強烈な回し蹴りを放った。

「シュア‼︎」

『グォォ⁉︎』

回し蹴りがよほど協力だったのか、ファウストの動きはフラフラだ。それを見たウルトラマンは腕を十字に組み、クロスレイ・シュトロームを撃つ。

「フッ!シュア‼︎」

『グァァァ⁉︎』

クロスレイ・シュトロームを喰らったファウストは楽しそうに笑いながら立ち上がった。

『フフフフ…ハハハハハ。それでこそ戦う意味がある。また楽しませてくれよ』

そう言うとファウストは消えて行った。ウルトラマンもファウストが消えると同時に片膝を付き、うっすらと消えて行った。ウルトラマンが消えるとダーク・フィールドもまた消えていった…

 

「ハァ、ハァ、ハァ…ファウスト、あの黒い巨人は一体…」

変身を解いた一樹は満身創痍の状態で片膝をついていた。

「ウグッ!」

戦いのダメージの大きさにその場に倒れると、左胸ポケットからブラストショットを取り出し、天空へ向かって撃ち、ストーンフリューゲルを呼ぶと同時に気絶。その後ストーンフリューゲルが傷ついた一樹を乗せるとその場を離れた。

 

「櫻井君を乗せた飛行機が離れて行きます!」

「なんとかなった様だな。大丈夫だ山田先生。あの飛行機は櫻井の傷を癒してくれると聞いた。今は少し休ましてやれ」

「了解しました」

「さて、そこにいるんだろ?束…」

「あ、バレてたか〜」

「くだらんことはどうでも良い。何の用だ」

「いや、私もここにいることにしたからその報告だよ〜」

「何?お前がか?」

「うん。かずくんを援護するためにメタ・フィールドに突入出来るもの持ってきたんだ。いる?」

「…ああ、くれ。これ以上、櫻井だけに負担をかける訳にはいかないからな」




ここからは、心を強く持て。でなければ闇に飲み込まれるぞby一樹。

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